弁理士試験AIブートラボ 弁理士AIブートラボ

不正競争の体系と商品等表示の意義(2条1項柱書・2条2項〜11項・22号)ふせいきょうそうのたいけいとしょうひんとうひょうじのいぎ

著作権・不正競争防止法 第8章 不正競争の類型(2条1項各号) 短答で51枝

不正競争の体系とは、不正競争防止法2条1項が「不正競争」として1号から22号までに限定して列挙した行為の全体の仕組みです。商品等表示とは、人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいいます。

人気店の看板をまねた店が隣にできたり、よく売れている財布とそっくりの財布が出回ったりすると、客は本物と取り違え、信用を築いた側が損をします。登録された権利がなくても、こうした行為は公正な競争を壊すので、不正競争防止法は「不正競争」を定めて差止めや損害賠償の対象にしています。ただし、2条1項が1号から22号までに列挙した行為だけが不正競争です。何が不正競争かが条文で決まっていないと、事業者がどこまで競争してよいか分からなくなるからです。

商店街の店先の場面。先生が店主役(札「店主」)で、老舗の店の前に立ち、店の看板「甲屋」を指している。隣に新しくできた店があり、看板「甲屋」とそっくりの看板「甲ヤ」を掲げ、その前に男性の店主(札「乙」)が立って吹き出し「商標登録なんて取ってな

「不正競争」は2条1項の1号から22号までに限定して列挙され、列挙にない行為は不正競争になりません

不正競争防止法は、特許法のように権利を設定する法律ではなく、2条1項に列挙した行為を不正競争と定義し、それによって営業上の利益を侵害された者に差止請求(3条)と損害賠償請求(4条)を認める法律です。列挙は限定的なので、条文に書かれていない行為は、どれほど不当に見えても不正競争防止法では止められません。たとえば3号の商品形態模倣が対象にする行為は、模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為で、模倣商品を製造する行為そのものは挙げられていません。「乙がBを製造する行為自体は、不正競争とならない」という枝は正しく、「他人の商品の形態を模倣して商品を製造する行為は、その製造した商品が販売されていなくても、不正競争となる」という枝は誤りです。平成30年度の「商品として開発・販売された他人のデータベースをコピーして、同一のデータベースを販売する行為は、不正競争とならない」という枝も、出題当時はデータの複製と販売を不正競争とする規定がなかったので正しいです。現行法では平成30年改正で11号から16号までに限定提供データの不正競争が加わったので、要件を満たせば不正競争になり得ます。

  • 1号・2号周知な商品等表示との混同惹起と、著名な商品等表示の冒用です
  • 3号他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡等です
  • 4号〜10号営業秘密の不正取得・使用・開示と、技術上の秘密の不正使用により生じた物の譲渡等です
  • 11号〜16号限定提供データの不正取得・使用・開示です(平成30年改正で挿入)
  • 17号・18号技術的制限手段の効果を妨げる装置等の提供です
  • 19号図利加害目的でのドメイン名の取得・保有・使用です
  • 20号・21号原産地・品質等の誤認惹起表示と、競争関係にある他人の信用毀損です
  • 22号パリ条約の同盟国等の商標権者の代理人等による商標の冒用です

商品等表示は氏名・商号・商標・標章・容器包装その他の商品又は営業を表示するもので、出所を示す働きがあれば形を問いません

商品等表示の定義は2条1項1号のかっこ書にあり、人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいいます。ここでの商標と標章は商標法2条1項に規定するものです(2条2項・3項)が、商標登録の有無は問いません。「商標登録を受けている文字商標は、不正競争防止法第2条第1項第1号の商品等表示には含まれない」という枝は誤りで、登録商標でも商品や営業を表示するものである限り商品等表示です。容器・包装は条文に明記されているので、「商品の容器・包装は、特定の企業の商品の出所を示す表示として機能する場合であっても」商品等表示に含まれないという枝は誤りです。決め手は出所を示す表示かどうかなので、「化粧水のラベルに表示された商品の成分を示すための記載が含まれる」という枝は誤りです(成分の記載は品質や内容を示すだけで、出所を示しません)。反対に、条文の「その他の商品又は営業を表示するもの」は広く、「コマーシャル・ソングも、商品等表示となりうる」という枝も、「フランチャイズ方式の飲食店の店舗外観は、営業表示となりうる」という枝も正しいです。企業が自分では使っていない略称でも、取引者や需要者がその企業を指す呼び名として広く用いていれば営業表示になるので、「企業名の略称は、当該企業自身がその略称を使用していない場合でも、営業表示となりうる」という枝は正しいです(アメックス事件)。色彩の組合せや商品の形態も、出所を示すものとして認識されていれば商品等表示になり得ます。

ドラッグストアの売場の場面。先生が店員役(札「店員」)で棚の前に立ち、化粧水の瓶を手にしている。瓶のラベルに大きく「甲ブランド」の文字と、小さく「成分:水、グリセリン」の文字が見える。向かいに男性の客(札「客」)が吹き出し「ラベルに書いてあ

「営業」は経済的対価を得ることを目的とする事業を広く含み、「商品」は無体物も含みます

商品等表示の「営業」は、会社の営利事業に限らず、広く経済的対価を得ることを目的とする事業を指します。公正な競争秩序を守るという法の目的(1条)からは、利益を目的にしているかではなく、市場で対価を得て事業を続けているかが問題だからです。「病院の経営において使用される営業の表示は、不正競争防止法第2条第1項第1号の商品等表示に含まれる」という枝、「特許事務所の名称は、営業表示となりうる」という枝、「華道の流派の名称も、商品等表示となりうる」という枝はいずれも正しいです。令和8年度の「私立学校のみならず公立学校の大学経営も、広く経済的対価を得ることを目的とする事業といえるから、公立大学の名称は、商品等表示として不正競争防止法上の保護を受けることができる」という枝も正しいです(京都芸術大学事件)。一方、宗教儀礼の執行や教義の普及伝道のような本来的な宗教活動は営業に当たらないので、「宗教法人の名称は、本来的な宗教活動でのみ使用される場合でも、営業表示となりうる」という枝は誤りです(天理教豊文教会事件)。「商品」も条文上は有体物に限られておらず、市場で取引の対象になれば無体物も含みます。「無体物であるタイプフェイス(印刷用書体)は、不正競争防止法第2条第1項第1号の商品等表示における商品には含まれない」という枝は誤りです(モリサワタイプフェイス事件)。なお、2条11項はこの法律にいう「物」にプログラムを含むと定めているので、営業秘密や技術的制限手段の規定の「物」にもプログラムが入ります。

街の通りの場面。先生が先生役(札「先生」)で通りに立ち、指し棒で並んだ建物を順に示している。建物は左から「甲病院」「乙特許事務所」「公立丙大学」で、それぞれの入口に名前の看板が掛かっている。通りの端に「丁教会」の建物があり、その前で男性(札

「他人」は商品等表示の主体で、使用許諾のグループも含みますが、他人の表示を冒用している者はなれません

1号・2号の「他人の商品等表示」の「他人」は、その表示の出所として需要者に認識されている主体です。一つの事業者である必要はなく、商品化契約で結束した使用許諾者と使用権者のグループも「他人」になれます(フットボール・シンボルマーク事件)。「特定の表示の使用許諾者と使用権者のグループが共同で使用している表示は含まれない」という枝は誤りです。反対に、第三者の表示を無断で使って信用を築いた者は、その表示の主体ではないので保護を受けられません。「米国で周知である乙の商品等表示を日本国内で無断で事業に使用し、乙の信用に基づいて当該事業の日本国内における信用が形成された場合」に甲が自己の商品等表示として1号の保護を受けられるという枝は誤りです。

22号の代理人等の商標冒用は、外国の商標権者を守る規定なので、国内での周知を要件とせず、使用料相当額の損害賠償の対象になります

22号は、パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国で商標に関する権利を有する者の代理人若しくは代表者、又は行為の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者が、正当な理由がないのに、権利者の承諾を得ないでその商標と同一若しくは類似の商標を同一若しくは類似の商品若しくは役務に使用する行為などを不正競争とします。パリ条約6条の7を受けた規定で、日本で商標権を持たない外国の権利者を代理人の裏切りから守るものです。権利の効力は登録した国に限られるのが原則ですが、この規定はその例外として外国の権利を国内で保護するので、「属地主義の原則の例外として規定されたものである」という枝は正しいです。1号や2号と違って、その商標が日本の需要者に周知であることは要件ではありません。「当該商標が日本の需要者に周知でなければ、不正競争とならない」という枝は誤りです(平成30年度の出題当時は16号でしたが、現行法では22号です)。損害賠償では、5条3項6号が22号の不正競争について「当該侵害に係る商標の使用」に対し受けるべき金銭の額に相当する額を損害額として請求できると定めているので、使用料相当額を請求できる「規定は、設けられていない」という枝は誤りです(令和元年度の出題当時は5条3項5号でした)。

裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で法壇に座っている。原告席に外国の商標権者を示す男性(札「X国の商標権者」)が「X国の商標登録証」を掲げ、被告席に男性(札「元代理人(行為の日前1年以内に代理人だった)」)が吹き出し「その商

2条1項の号番号は改正のたびにずれているので、古い年度の枝は現行法の号に読み替えます

平成27年改正で営業秘密の10号(技術上の秘密の不正使用により生じた物の譲渡等)が加わり、平成30年改正で限定提供データの11号から16号までが挿入されたため、それより後ろの号は二段階でずれています。令和5年改正では3号の行為に「電気通信回線を通じて提供」する行為が加わりました(1号・2号・22号にはすでに平成15年改正で加わっています)。過去問の枝が「第16号」「第13号」のように旧号で問うているときは、出題年度に応じて現行の号に読み替えて考えます。

2条1項の号番号の対応(旧号から現行号へ)

類型平成27年改正前平成27年改正後(平成30年改正前)現行(平成30年改正後)
営業秘密の不正使用により生じた物の譲渡等規定なし10号10号
限定提供データ規定なし規定なし11号〜16号
技術的制限手段10号・11号11号・12号17号・18号
ドメイン名12号13号19号
誤認惹起表示13号14号20号
信用毀損14号15号21号
代理人等の商標冒用15号16号22号
不正競争防止法2条1項柱書

この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

不正競争防止法2条1項1号

他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

不正競争防止法2条1項22号

パリ条約(商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第四条第一項第二号に規定するパリ条約をいう。)の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。以下この号において単に「権利」という。)を有する者の代理人若しくは代表者又はその行為の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者が、正当な理由がないのに、その権利を有する者の承諾を得ないでその権利に係る商標と同一若しくは類似の商標をその権利に係る商品若しくは役務と同一若しくは類似の商品若しくは役務に使用し、又は当該商標を使用したその権利に係る商品と同一若しくは類似の商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは当該商標を使用してその権利に係る役務と同一若しくは類似の役務を提供する行為

不正競争防止法2条11項

この法律にいう「物」には、プログラムを含むものとする。

試験ではこう問われる

  1. 不正競争は2条1項に列挙された行為に限られる。模倣商品を「製造する行為自体は、不正競争とならない」という枝は正しく、「製造した商品が販売されていなくても、不正競争となる」という枝は誤り
  2. データベースのコピー販売が「不正競争とならない」という平成30年度の枝は出題当時の法で正しい。現行法では限定提供データ(11号〜16号)の要件を満たせば不正競争になり得る
  3. 登録商標も商品等表示に含まれる。「商標登録を受けている文字商標は」商品等表示に含まれないという枝は誤り。容器・包装は条文に明記
  4. 出所を示さない表示は商品等表示でない。「商品の成分を示すための記載が含まれる」という枝は誤り。コマーシャル・ソング、店舗外観、企業が使っていない略称は商品等表示になり得る
  5. 「営業」は経済的対価を得る事業を広く含む。病院、特許事務所、華道の流派、公立大学の名称は営業表示になり得るが、本来的な宗教活動でのみ使う宗教法人の名称はならない
  6. 「商品」は無体物も含む。「無体物であるタイプフェイス」は商品に含まれないという枝は誤り。2条11項で「物」にはプログラムを含む
  7. 「他人」には使用許諾者と使用権者のグループも含まれるが、他人の表示を冒用して信用を築いた者は自己の商品等表示として保護されない
  8. 22号の代理人等の商標冒用は、日本での周知が要件でなく、5条3項6号で使用料相当額を請求できる。旧16号・旧5条3項5号で出た枝は読み替える

この用語が問われた枝

平成28年度 問57 枝イ正しい

乙がBを製造する行為自体は、不正競争とならない。

平成30年度 問54 枝ニ誤り

他人の商品の形態を模倣して商品を製造する行為は、その製造した商品が販売されていなくても、不正競争となる。

令和2年度 問57 枝イ誤り

商品の容器・包装は、特定の企業の商品の出所を示す表示として機能する場合であっても、不正競争防止法第2条第1項第1号の商品等表示には含まれない。

令和2年度 問57 枝ハ誤り

商標登録を受けている文字商標は、不正競争防止法第2条第1項第1号の商品等表示には含まれない。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

著作権・不正競争防止法を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

関連する用語

不正競争の救済・適用除外・罰則

差止請求と廃棄除却・請求権者・消滅時効(3条・15条)

差止請求とは、不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者が、その侵害する者又は侵害するお...
不正競争の類型(2条1項各号)

周知表示混同惹起(2条1項1号)

周知表示混同惹起とは、他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用...
不正競争の救済・適用除外・罰則

損害賠償と損害額の推定・信用回復措置(4条・5条・5条の2・9条・14条)

損害賠償とは、故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者が、これによって生じた損害を賠償する...
不正競争の類型(2条1項各号)

著名表示冒用(2条1項2号)

著名表示冒用とは、自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示...
不正競争の救済・適用除外・罰則

適用除外(19条)

適用除外とは、不正競争に当たる行為のうち不正競争防止法19条1項各号に定める行為について、差止請求(3条)から消滅...
不正競争の類型(2条1項各号)

商品形態模倣(2条1項3号・2条4項・5項・19条1項6号)

商品形態模倣とは、他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸...