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営業秘密の三要件(2条6項)えいぎょうひみつのさんようけん

著作権・不正競争防止法 第8章 不正競争の類型(2条1項各号) 短答で60枝

営業秘密の三要件とは、ある情報が不正競争防止法2条6項の営業秘密に当たるための、秘密として管理されていること(秘密管理性)、事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)、公然と知られていないこと(非公知性)の三つの要件です。

長年の試行錯誤でたどり着いた製造方法や、こつこつ集めた顧客名簿は、特許や商標のように登録して公開するものではありません。公開せずに自分だけが使うことに価値があるからです。不正競争防止法は、こうした情報を営業秘密として、不正に取得したり漏らしたりする行為を不正競争にしています。ただし、公開の代わりに保護を受ける以上、保有者の側にも秘密として管理する責任があります。何を守るかが外から分からないと、従業員も取引先も安心して働けないからです。

会社の資料室の場面。先生が社長役(札「社長(営業秘密保有者)」)で、施錠された書庫の前に立ち、扉に貼られた「マル秘・閲覧は開発部のみ」の札を指している。書庫の中に「製造方法A」と書かれたファイルが見える。向かいに若い男性の従業員(札「新入社

営業秘密は秘密管理性・有用性・非公知性の三つを情報ごとに満たす技術上又は営業上の情報で、媒体に記録されている必要はありません

2条6項は、営業秘密を、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものと定義します。三つの要件は情報ごとに判断するので、契約で秘密保持の対象にしたからといって、その中の公知の情報や有用性のない情報まで営業秘密になるわけではありません。「当該契約に基づき開示されたすべての情報は、乙社の営業秘密として保護される」という枝は誤りです。反対に、公開情報を使って作った資料でも、注文した者と注文内容を記録した顧客カードは保有者しか持たない有用な情報なので、秘密として管理していれば「甲社の営業秘密として保護される」という枝は正しいです。情報が文書や記録媒体に記録されていることは要件ではないので、「従業員が頭の中に記憶している情報は、事業者が当該情報について秘密管理措置を実施していたとしても、営業秘密に該当することはない」という枝は誤りです。

  • 秘密管理性秘密として管理されていることです。秘密管理意思が合理的な管理措置によって従業員等に示され、認識できる状態にあることが要ります
  • 有用性事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であることです。法令違反や反社会的な行為に関する情報は除かれます
  • 非公知性公然と知られていないことです。保有者の管理下以外では一般に入手できない状態をいいます

秘密管理性は保有者が秘密と認識しているだけでは足りず、管理措置によって従業員等が秘密と認識できる状態にあることです

秘密管理性は、保有者の秘密にしたいという意思が、文書への秘密の表示や保管場所の施錠、アクセス制限などの合理的な管理措置によって従業員や取引先に示され、その人たちが秘密だと認識できる状態にあることです。何が秘密かを示しておかないと、情報に触れる人が何を守るべきか分からず、不正競争として責任を問うことが酷だからです。「秘密として管理するためにとっていた措置のいかんを問わず、当該資料は、甲社の営業秘密として保護される」という枝は誤りで、「当該情報が秘密であることが十分に認識できるようにされていることが考慮される」という枝は正しいです。秘密管理がなければ、情報がどれほど重要でも、行為者にどんな目的があっても営業秘密に係る不正競争になりません。「秘密管理がなされていなかった場合、不正の利益を得る目的で当該情報を使用する行為でも、営業秘密に係る不正競争とはならない」という枝は正しく、重要な技術上の情報について秘密管理がなかったのに「保有者に損害を加える目的で当該情報を使用する行為は、営業秘密に係る不正競争となる」という枝は誤りです。

裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で法壇に座っている。原告席の男性(札「甲社(保有者)」)が、何の表示もない普通のファイル「仕入先一覧」を掲げて吹き出し「社外に知られてはならない秘密だと私は認識していました」。被告席の男性(

有用性は事業活動に役立つことで、法令違反や反社会的な情報は除かれますが、失敗した実験のデータは含まれます

有用性は、その情報が事業活動に客観的に役立つことです。この要件の働きは、脱税や有害物質の垂れ流しのような公序良俗に反する情報を、法が守る価値のないものとして外すことにあります。「外国公務員に対して不正の利益を供与したという情報は、当該情報が秘密として厳重に管理されている場合には、甲社の営業秘密として保護される」という枝は誤りで、「違法薬物の製造に関する情報は、営業秘密に該当しない」という枝は正しいです。法令に反する廃水の流出に関する情報も有用性を欠くので、それを「新聞記者に漏らすことは、不正競争とはならない」という枝は正しいです。一方、有用性は現に利益を生む情報に限りません。治療薬に有用でないと判明した化合物のデータも、同じ失敗を避けて研究開発の費用と時間を節約できるので、「営業秘密に係る不正競争における営業秘密に該当し得る」という枝は正しいです。

非公知性は保有者の管理下以外で一般に入手できないことで、外国刊行物への過去の掲載や他社の独自保有、出願の取下げでは失われません

非公知性は、その情報が保有者の管理下以外では一般に入手できない状態にあることです。絶対に誰も知らないことまでは要りません。過去に外国の刊行物に載っていても、管理地でその事実が知られておらず、入手に相当の時間と費用がかかるなら、「非公知性の要件は、過去に外国の刊行物に掲載されていた情報であっても認められる場合がある」という枝は正しいです。断片が各種の刊行物に載っていても、組合せ自体に価値があり総体として容易に入手できなければ非公知なので、「様々な刊行物に掲載された情報の断片を集めて構成された情報が、営業秘密に該当することはない」という枝は誤りです。第三者が同じ情報を先に独自に開発していても、その第三者も秘密として管理していれば公然と知られたことにならないので、「甲の保有する技術情報は営業秘密に該当し得る」という枝は正しいです。特許出願をしても出願公開前に取り下げれば内容は公開されないので、「出願公開前に取り下げられた場合でも、営業秘密として保護されることはない」という枝は誤りです。反対に、市販品をごく簡単に解析すれば分かる情報は、製品の販売によって公然と知られたと評価されるので、「ごく簡単な解析を行うことにより、事業活動に有用な技術上の情報を容易に知ることができるという場合でも」秘密管理していれば保護されるという枝は誤りで、「ごく簡単に入手できる情報は、たとえ秘密として管理されていても、営業秘密に該当しない」という枝は正しいです。

図書館の閲覧室の場面。先生が先生役(札「先生」)で机に向かい、古い外国語の雑誌を開いている。雑誌には「○○国の技術雑誌(30年前)」の札が付き、ページの一部に甲社の製造方法と同じ図が小さく載っている。隣に男性(札「受験生」)が吹き出し「昔の

市販品を買って解析して得た情報の使用は不正取得ではなく、公知になった後は差止めできませんが、それまでの不正使用の損害賠償は請求できます

営業秘密は秘密であることで守られる情報なので、他人が正当な手段で同じ情報にたどり着くことまでは止められません。市場で買った製品を自分で分析して成分や構造を知る行為(リバースエンジニアリング)は、4号の窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段による取得ではありません。「その製品を分析して、同一の製品を製造販売することは、不正競争とはならない」という枝は正しく、分解研究が容易でなかった場合でも、得た情報で新製品を開発・販売した「乙社の行為は、営業秘密に係る不正競争には該当しない」という枝は正しいです。また、第三者の論文掲載などで情報が公知になれば、その後は営業秘密の要件を欠くので、以後の使用の差止めは請求できません。しかし公知になる前の不正取得と使用は不正競争だったので、その損害の賠償は請求できます。論文が掲載されたならば「差止請求及び損害賠償請求をすることができない」という枝は誤りです。

研究所の実験室の場面。先生が研究員役(札「乙社の研究員」)で、作業台の上で市販の製品「甲社のヒット商品」を分解し、部品を並べて観察している。作業台に「市場で購入」と書かれたレシートが置かれている。隣に男性(札「乙社の社長」)が吹き出し「甲社
不正競争防止法2条6項

この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。

試験ではこう問われる

  1. 三要件は情報ごとに判断する。秘密保持契約で「開示されたすべての情報は、乙社の営業秘密として保護される」という枝は誤り。記憶している情報も媒体に記録されていなくても営業秘密になる
  2. 秘密管理性は管理措置で従業員等が秘密と認識できること。「措置のいかんを問わず」保護されるという枝は誤り
  3. 秘密管理がなければ、重要な情報でも、加害目的でも営業秘密に係る不正競争にならない
  4. 有用性は反社会的な情報を除く。外国公務員への不正な利益供与の情報や違法薬物の製造情報は営業秘密でなく、廃水流出の情報を記者に漏らしても不正競争でない。失敗した化合物のデータは有用
  5. 非公知性は管理下以外で一般に入手できないこと。過去の外国刊行物、刊行物の断片の組合せ、他社の独自の秘密保有、出願公開前の取下げでは失われない
  6. 市販品からごく簡単に得られる情報は、秘密管理していても公知で営業秘密でない
  7. 市販品を買って解析して得た情報の使用は不正取得でなく、容易でなかった分解研究でも不正競争にならない
  8. 公知になった後は差止めできないが、公知になる前の不正取得・使用の損害賠償は請求できる

この用語が問われた枝

平成28年度 問59 枝ハ誤り

甲社が、乙社との事業提携の交渉に際して、乙社から開示を受けるすべての情報を対象とした秘密保持契約を乙社との間で締結した場合は、当該契約に基づき開示されたすべての情報は、乙社の営業秘密として保護される。

平成28年度 問59 枝ニ正しい

甲社は、公開情報を用いて上場会社の役員らに対して通信販売用の商品カタログを送付し、商品を注文してきた者について注文内容を記録した顧客カードを作成し、秘密として管理していた。当該顧客カードは、甲社の営業秘密として保護される。

令和2年度 問59 枝イ誤り

従業員が頭の中に記憶している情報は、事業者が当該情報について秘密管理措置を実施していたとしても、営業秘密に該当することはない。

令和8年度 問59 枝イ正しい

製薬会社が、糖尿病治療薬開発のための試行錯誤のプロセスにおいて得られたデータすべてを、秘密として管理している場合、そのうちの、糖尿病治療薬に有用でないことが判明した化合物についてのデータも、営業秘密に係る不正競争における営業秘密に該当し得る。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

著作権・不正競争防止法を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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