技術的制限手段(2条1項17号・18号・2条8項・19条1項10号)ぎじゅつてきせいげんしゅだん
技術的制限手段とは、電磁的方法により影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録を制限する手段で、視聴等機器が特定の反応をする信号を記録・送信する方式か、特定の変換を必要とするよう情報を変換して記録・送信する方式によるものです。営業上用いられているその効果を妨げる装置・プログラム・指令符号の譲渡等と役務の提供が、2条1項17号・18号の不正競争になります。
有料放送のスクランブルや、DVD のコピープロテクションのように、料金を払った人だけが視聴や複製をできるようにする仕組みが技術的制限手段です。これを破る装置やプログラムが出回ると、コンテンツを提供する事業は成り立ちません。不正競争防止法は、著作権法の技術的保護手段と違って、無効化する装置やプログラムを譲渡・提供する行為を事業者の間の不正競争として規制し、自分で解除する行為そのものは対象にしていません。

技術的制限手段は電磁的方法で視聴・実行・処理・記録を制限する手段で、営業上用いられているものだけが保護されます
2条8項の定義は、電磁的方法により影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録を制限する手段で、視聴等機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し又は送信する方式か、視聴等機器が特定の変換を必要とするよう情報を変換して記録・送信する方式によるものです。平成30年改正で「情報の処理」と「その他の情報」が加わり、影像・音・プログラム以外のデータの記録を制限する手段も含まれるようになりました。「それらに当たらない情報を対象とするものは、技術的制限手段に該当することはない」という枝は誤りです。17号・18号は「営業上用いられている」技術的制限手段に限るので、政府が個人情報の保護のために用いるアクセス制限のような営業と無関係な手段は対象外です。17号は誰に対しても視聴等をさせないために用いる手段(市販の DVD のコピープロテクションなど)、18号は他人が特定の者以外の者に視聴等をさせないために用いる手段(契約者だけが見られる有料放送のスクランブルなど)を扱い、18号の譲渡等は「当該特定の者以外の者」に対するものに限られます。
- 制限の対象影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理、影像、音、プログラムその他の情報の記録です(平成30年改正で情報の処理とその他の情報の記録が加わりました)
- 方式視聴等機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し又は送信する方式と、視聴等機器が特定の変換を必要とするよう情報を変換して記録・送信する方式です
- 17号営業上用いられている技術的制限手段のうち、特定の者以外の者に視聴等をさせないために用いているものを除いたものです
- 18号他人が特定の者以外の者に視聴等をさせないために営業上用いている技術的制限手段で、譲渡等の相手は当該特定の者以外の者に限られます
不正競争になるのは無効化機能を有する装置・プログラム・指令符号の譲渡・引渡し・展示・輸出・輸入・回線提供と、無効化の役務の提供です
規制される物は、技術的制限手段の効果を妨げることにより影像の視聴等を可能とする機能を有する装置、その機能を有するプログラム、指令符号を記録した記録媒体又は記憶した機器です。装置には当該装置を組み込んだ機器と、容易に組み立てることができる部品一式が含まれるので、「当該部品一式からその装置を容易に組み立てることができる場合には、不正競争に該当する」という枝は正しいです。指令符号は電子計算機に対する指令で当該指令のみによって一の結果を得ることができるものをいい、不正に生成されたシリアルコードがこれに当たります。「不正に生成されたシリアルコードを記録した媒体を譲渡する行為は、技術的制限手段の無効化機能を有するプログラムを記録した媒体の譲渡等と異なり、不正競争に該当することはない」という枝は誤りです。行為は譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又はプログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供することで、輸出と輸入は同列に並んでいます。「輸出する行為は、そのような機能を有する装置の輸入と異なり、不正競争に該当することはない」という枝は誤りです。平成30年改正で、効果を妨げることにより視聴等を可能とする役務を提供する行為も加わったので、「サービスを提供する行為は、技術的制限手段の無効化機能を有する装置の譲渡等と異なり、不正競争に該当することはない」という枝は誤りです。譲渡に有償や相手の多数は要らないので、「音楽の著作物に施されている技術的制限手段を解除するプログラムを無償で譲渡することは、技術的制限手段に係る不正競争となる」という枝は正しく、「無料で少数の親しい友人のみに譲渡したにすぎない場合は、甲の譲渡行為は、技術的制限手段に係る不正競争に該当しない」という枝は誤りです。装置やプログラムが無効化以外の機能を併せて持つ場合は、無効化の用途に供するために行う譲渡等に限って不正競争になります(平成23年改正の前は無効化の機能「のみ」を有するものに限られていました)。

製造する行為、自ら解除する行為、パスワードを漏らす行為、制限信号に反応しないだけの機器の販売は対象外です
17号・18号は提供行為を列挙した規定なので、列挙にない行為は不正競争になりません。製造は書かれていないので、「無効化機能を有する装置を製造する行為は、目的を問わず、不正競争に該当することはない」という枝は正しいです。自分で技術的制限手段を解除する行為も提供ではないので、「映画に施されている技術的制限手段を解除することは、技術的制限手段に係る不正競争となる」という枝は誤りで、人工知能に学習させるために映画の DVD のコピープロテクションを解除した事例で「甲の解除行為は、技術的制限手段に係る不正競争に該当しない」という枝は正しいです(著作権法では技術的保護手段の回避による私的複製が30条1項2号で除外されるなど別の規律があります)。パスワードは技術的制限手段の効果を妨げる装置やプログラムではないので、「会社から貸与されている携帯電話のパスワードを、従業員が第三者に漏洩することは、技術的制限手段に係る不正競争となる」という枝は誤りです。制限用の信号を検知しないだけの機器は効果を「妨げる」ものではないので、「技術的制限手段に反応しないDVD再生機器を販売することは、技術的制限手段に係る不正競争となる」という枝も誤りです。
技術的制限手段の試験又は研究のために用いられる装置等の譲渡等には、3条から15条までが適用されません
19条1項10号は、技術的制限手段の試験又は研究のために用いられる装置、プログラム若しくは指令符号を記録した記録媒体若しくは記憶した機器の譲渡等と、試験研究のための役務の提供を適用除外にしています。より強い制限手段を開発するには既存の手段を破って試す必要があるからです。同業者より優れた技術的制限手段を研究したい乙に無効化装置を譲渡した甲について、「甲に過失があったとしても、丙は、甲に対して不正競争を理由として損害賠償を請求することはできない」という枝は正しいです。譲受人が営利企業であっても、試験研究のために用いられるのであれば除外に当たります。

刑事罰は図利加害目的の場合に限られ、損害額の算定では譲渡数量算定と使用料相当額の対象から外れています
罰則は平成30年改正で加わり、21条3項4号が、不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で17号・18号の不正競争を行った者を5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処します。「目的の如何を問わず刑事罰の対象となる」という枝は誤りです(平成16年度には罰則がない前提の枝が出ており、当時はそのとおりでした)。民事では3条の差止請求、4条の損害賠償請求と、14条の信用回復の措置が使えます。14条は不正競争の類型を限定していないので、「信用回復の措置の対象となる不正競争には、技術的制限手段に係る不正競争は含まれていない」という枝は誤りです。一方、5条1項の譲渡数量による算定は1号から16号までと22号、5条3項の使用料相当額は1号から9号まで・11号から16号まで・19号・22号が対象で、17号・18号はどちらにも入っていません。侵害者の利益を損害額と推定する5条2項は不正競争一般に適用されます。
不正競争防止法2条8項この法律において「技術的制限手段」とは、電磁的方法により影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録のために用いられる機器をいう。以下この項において同じ。)が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音、プログラムその他の情報を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。
不正競争防止法19条1項10号第二条第一項第十七号及び第十八号に掲げる不正競争技術的制限手段の試験又は研究のために用いられる同項第十七号及び第十八号に規定する装置、これらの号に規定するプログラム若しくは指令符号を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、若しくは当該プログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為又は技術的制限手段の試験又は研究のために行われるこれらの号に規定する役務を提供する行為
不正競争防止法21条3項4号不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、第二条第一項第十七号又は第十八号に掲げる不正競争を行ったとき。
試験ではこう問われる
- 対象は営業上用いられている手段で、平成30年改正で影像・音・プログラム以外の情報の処理・記録も入った。影像・音・プログラムに当たらない情報を対象とするものは該当しないという枝は誤り
- 規制行為は譲渡・引渡し・展示・輸出・輸入・回線提供と役務の提供。輸出は輸入と違って該当しないという枝、無効化サービスの提供は該当しないという枝は誤り
- 容易に組み立てられる部品一式、他のプログラムと組み合わされたプログラム、シリアルコードのような指令符号を記録した媒体も対象。製造は列挙にないので「目的を問わず、不正競争に該当することはない」という枝は正しい
- 譲渡に有償・多数は要らない。無償で譲渡しても該当し、「無料で少数の親しい友人のみに譲渡した」場合に該当しないという枝は誤り
- 自ら解除する行為は対象外。映画の技術的制限手段を解除することが不正競争となるという枝は誤りで、機械学習のために DVD のコピープロテクションを解除した行為は該当しないという枝は正しい
- パスワードの漏洩、制限信号に反応しないだけの再生機器の販売は該当しない
- 試験研究のための装置等の譲渡は19条1項10号で除外。研究目的の同業者に無効化装置を譲渡した者に過失があっても損害賠償を請求できないという枝は正しい
- 刑事罰は図利加害目的が要る(21条3項4号)。「目的の如何を問わず刑事罰の対象となる」という枝は誤り。信用回復の措置(14条)の対象にはなるが、譲渡数量算定(5条1項)と使用料相当額(5条3項)の対象ではない
この用語が問われた枝
技術的制限手段の効果を妨げる機能を有する装置の部品一式を販売する行為は、当該部品一式からその装置を容易に組み立てることができる場合には、不正競争に該当する。
技術的制限手段のうち記録を制限するものは、影像、音、又はプログラムを対象とし、それらに当たらない情報を対象とするものは、技術的制限手段に該当することはない。
技術的制限手段により制限されているプログラムの実行について、当該技術的制限手段の効果を妨げることでそれを可能にするようなサービスを提供する行為は、技術的制限手段の無効化機能を有する装置の譲渡等と異なり、不正競争に該当することはない。
技術的制限手段の無効化機能を有する不正に生成されたシリアルコードを記録した媒体を譲渡する行為は、技術的制限手段の無効化機能を有するプログラムを記録した媒体の譲渡等と異なり、不正競争に該当することはない。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。