商品形態模倣(2条1項3号・2条4項・5項・19条1項6号)しょうひんけいたいもほう
商品形態模倣とは、他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為です(不正競争防止法2条1項3号)。模倣するとは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいいます(2条5項)。
新しい形の財布を開発して売り出した途端に、そっくりの財布が安く出回ったとします。開発にかけた資金と労力を回収する前に、何もかけていない者が成果だけを持っていく状態です。意匠登録をしていなくても、商品の形態をそのまま写したデッドコピーを売る行為は3号の不正競争になります。先行者が投資を回収できる最低限の期間を確保するための規定なので、保護は日本国内で最初に販売された日から3年で終わります。

商品の形態は需要者が通常の用法で知覚できる外部・内部の形状と結合した模様・色彩・光沢・質感で、機能を確保するために不可欠な形態を除きます
2条4項は、商品の形態を、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感と定義します。内部の形状も入りますが、通常の使用で需要者が目にしないものは入りません。「通常目にすることがない商品内部の形状や模様は、「商品の形態」には含まれない」という枝は正しいです。知覚には触覚も含まれ、質感は条文に明記されているので、「商品の手触りなどの質感は、「商品の形態」には含まれない」という枝は誤りです。複数の商品を組み合わせて箱に収めたセット商品も全体が一つの商品として取引されるので、「セット商品の外観は、「商品の形態」には含まれない」という枝は誤りです(タオルセット事件)。立体に限る文言もないので、カレンダーをそっくりコピーした行為は「平面的形態の模倣であっても商品形態の模倣に係る不正競争にあたる」という枝は正しいです。3号のかっこ書は、当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除きます。誰が作っても同じにならざるを得ない形まで独占させると、商品そのものの競争を止めてしまうからです。プラグの「端末側の端子とかみあう部分の形態を模倣して販売した」行為が不正競争になるという枝は誤りです。令和5年改正で3号の行為に「電気通信回線を通じて提供する行為」が加わり、デジタル空間上の商品の形態も対象になったので、アバターの衣装の形態を模倣した衣装をデジタル空間上で販売した行為は「商品形態の模倣に係る不正競争とはならない」という枝は誤りです。一方、データベースに収められたデータの内容は情報であって形態ではないので、完全にコピーしたデータベースの販売について「商品形態の模倣に係る不正競争にあたるとして、その販売の差止めを請求することができる」という枝は誤りです。

模倣とは他人の商品の形態に依拠して実質的に同一の形態の商品を作り出すことで、独自の創作は当たらず、ありふれた形態は保護されません
2条5項の「模倣する」は、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことです。依拠と実質的同一の両方が要るので、他人の商品を知らずに独自に作ったものは、形が同じでも模倣ではありません。「当該他人とは無関係に独自に創作したうえでそれを譲渡する行為も、商品形態模倣に係る不正競争に該当する」という枝は誤りです。実質的同一は商品全体の形態で見るので、ハンドバッグの内部デザインだけが同じで「その外部のデザインが異なる場合であっても、不正競争となる」という枝は誤りです。保護に新規性や創作性は要りませんが、同種の商品にありふれた形態は特定の者に独占させるべきものではなく、3号で保護される商品の形態に当たらないと解されています。「ありふれた形態であったとしても、その形態を模倣した商品を譲渡する行為は不正競争に該当する」という枝は誤りです。
「他人の商品」は資金・労力を投下して商品化を完了した物で、スケッチの段階は保護されず、共同開発者や模倣者は請求できません
3号が守るのは、資金と労力を投下して商品化を完了し、取引の対象となし得る状態にした先行者の成果です。アイデアやスケッチの段階には模倣の対象となる商品がないので、おにぎりのスケッチを見て同一のおにぎりを作って売った者に対し「商品形態の模倣に係る不正競争にあたるとして、その販売の差止めを請求することができる」という枝は誤りです(スティック加湿器事件)。反対に、現に販売されている必要はなく、商品展示会に出展され、販売を可能とする段階に至ったことが外見的に明らかな物品は保護されます。「量産態勢の整備をする段階に至っていない場合でも、その物品の形態を模倣した商品を譲渡する行為は商品形態模倣に係る不正競争に該当することがある」という枝は正しいです。共同で形態を開発した者にとってその商品は他人の商品ではないので、共同開発者の乙が「甲との契約に反してその同意を得ずに当該商品を販売することは、不正競争に該当する」という枝は誤りです。差止めを請求できるのは、原則として自ら商品を開発・商品化した者です。他人の商品Aを模倣した商品Bの販売者は、「商品Bを模倣した商品Cを販売する者に対して」差止請求をすることができるという枝は誤りです。一方、商品開発者でなくても、独占的販売権者は営業上の利益を侵害される者として「差止を請求することができる場合がある」という枝は正しいです。

行為は譲渡・貸渡し・展示・輸出・輸入・電気通信回線を通じた提供で、模倣した商品を製造する行為そのものは含まれません
3号の行為は、模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供することです。製造は挙げられていないので、「乙がBを製造する行為自体は、不正競争とならない」という枝は正しく、試験研究の目的で「爪切りの形態を模倣した爪切りを製造する行為は、不正競争に該当する」という枝は誤りです。貸渡しは明文で入っているので、模倣品と知って譲り受けた者が「商品Bを消費者向けにレンタルする営業を行うことは、不正競争に該当しない」という枝は誤りです。
日本国内で最初に販売された日から3年を経過した商品の形態は保護されず、善意無重過失で譲り受けた者の譲渡等も除外され、基準時は譲り受けた時です
19条1項6号イは、日本国内において最初に販売された日から起算して3年を経過した商品について、その形態を模倣した商品を譲渡等する行為を適用除外とします。起算点は保護を求める形態を初めて備えた商品の販売日で、若干の変更を加えた後続商品の販売日ではありません。「後続商品の販売日から3年を経過していなくても、商品形態模倣に係る不正競争防止法上の規制の対象とならない」という枝は正しいです(空調ユニットシステム事件)。外国での販売日も起算点ではないので、米国で4年前、日本で1年前に発売したランプについて「差止めを請求することはできない」という枝は誤りです。同号ロは、模倣した商品を譲り受けた時にそれが模倣した商品であることを知らず、かつ知らないことにつき重大な過失がない者が、その商品を譲渡等する行為を適用除外とします。基準時は譲り受けた時なので、後から模倣品と知っても責任を負いません。譲受時は善意無重過失でも「丁がBを販売する時点で、BがAの模倣品であることを知っていた場合は、不正競争防止法上の責任を負う」という枝は誤りです(平成28年度の出題当時は19条1項5号でしたが、令和5年改正で現行の6号になりました)。

刑事罰は不正の利益を得る目的が要件で、損害賠償は譲渡数量による算定と使用料相当額の両方の対象です
不正の利益を得る目的で3号の不正競争を行った者は、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処せられ、又は併科されます(21条3項3号)。要件は不正の利益を得る目的で、他人に損害を加える目的ではありません。「乙が甲に損害を加える目的で販売したときに限られる」という枝は誤りです。展示も3号の行為なので、「譲渡若しくは貸渡しのために展示する行為は、不正の利益を得る目的であっても、刑事罰の対象とはならない」という枝は誤りです(これらの枝の出題当時は21条2項3号でしたが、現行法では3項3号です)。損害賠償では、3号は5条1項の譲渡数量による算定と、5条3項2号の商品の形態の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額の両方の対象です。
- 商品の形態通常の用法で知覚できる外部・内部の形状と、結合した模様・色彩・光沢・質感です。機能を確保するために不可欠な形態を除きます
- 模倣依拠して実質的に同一の形態の商品を作り出すことです。独自創作は当たらず、ありふれた形態は保護されません
- 他人の商品資金・労力を投下して商品化を完了した物です。展示会出展で足り、スケッチは不可で、共同開発者は他人になりません
- 行為譲渡・貸渡し・展示・輸出・輸入・電気通信回線を通じた提供です。製造は含みません
- 保護期間日本国内で最初に販売された日から3年です(19条1項6号イ)
- 善意の譲受人譲り受けた時に善意無重過失なら譲渡等は適用除外です(19条1項6号ロ)
- 刑事罰不正の利益を得る目的が要件です(21条3項3号)
不正競争防止法2条1項3号他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
不正競争防止法2条4項この法律において「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。
不正競争防止法2条5項この法律において「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。
不正競争防止法19条1項6号イ日本国内において最初に販売された日から起算して三年を経過した商品について、その商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
不正競争防止法19条1項6号ロ他人の商品の形態を模倣した商品を譲り受けた者(その譲り受けた時にその商品が他人の商品の形態を模倣した商品であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)がその商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
試験ではこう問われる
- 形態は通常の用法で知覚できる範囲。通常目にしない内部の形状は含まれず、質感は含まれ、セット商品の外観や平面的なカレンダーも形態になる
- 機能を確保するために不可欠な形態は除く。プラグの端子とかみ合う部分の模倣は不正競争にならない
- 令和5年改正で電気通信回線を通じた提供が加わり、アバターの衣装の形態も対象。データベースの内容は形態でない
- 模倣は依拠+実質的同一。独自創作は当たらず、内部だけ同じで外部が違えば模倣でない。ありふれた形態は保護されない
- 他人の商品は商品化を完了した物。スケッチは不可、展示会出展で販売可能な段階なら可。共同開発者は他人でなく、模倣者は差止めを請求できず、独占的販売権者は請求できる場合がある
- 製造そのものは行為に含まれない。試験研究目的の製造も不正競争でない。レンタルは貸渡しとして該当
- 日本国内で最初に販売された日から3年(19条1項6号イ。旧5号イ)。起算点は後続商品や外国での販売日ではない
- 善意無重過失の譲受人は譲受時が基準(19条1項6号ロ)。販売時に知っていても責任を負わない。刑事罰は不正の利益を得る目的(21条3項3号)で、損害を加える目的ではない
この用語が問われた枝
甲が作成販売したカレンダーを、そっくりそのままコピーして販売した乙の行為は、平面的形態の模倣であっても商品形態の模倣に係る不正競争にあたる。
甲は、乙の商品である、端末機とプリンター等を接続するためのコードのプラグについて、その端末側の端子とかみあう部分の形態を模倣して販売した。甲の行為は、商品形態の模倣に係る不正競争となる。
甲は、乙がデジタル空間上で販売しているアバターの衣装について、その形態を模倣した衣装をデジタル空間上で販売した。甲の行為は、商品形態の模倣に係る不正競争とはならない。
甲は、日本全国の道路における車両走行データを網羅したデータベースを作成し販売しているところ、乙は、これを完全にコピーしたデータベースを販売した。甲は、乙の行為は商品形態の模倣に係る不正競争にあたるとして、その販売の差止めを請求することができる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。