限定提供データ(2条1項11〜16号・2条7項・19条1項9号)げんていていきょうでーた
限定提供データとは、業として特定の者に提供する情報として電磁的方法により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(営業秘密を除く。)です。その不正取得・使用・開示は2条1項11号から16号までの不正競争になります。
気象会社が長年集めた観測データを、会員企業に有料で配信しているとします。会員に広く渡すデータなので秘密ではなく、営業秘密として守ることはできません。それでも、会員でない者が不正に持ち出して売り歩けば、データを集めた投資は回収できなくなります。平成30年改正は、このように特定の者に提供するために蓄積・管理されたデータを限定提供データと名付け、その不正取得・使用・開示を不正競争に加えました。

限定提供データは、業として特定の者に提供し、電磁的方法で相当量蓄積・管理されている技術上又は営業上の情報で、営業秘密は除かれます
2条7項の定義は、業として特定の者に提供する情報であること、電磁的方法により相当量蓄積され、及び管理されていること、技術上又は営業上の情報であることの三つで組み立てられています。「特定の者」は一定の条件の下で提供を受ける者をいい、人数の多さは問いません。会費を払えば誰でも受け取れるデータでも、会費を払った者は特定の者に当たるので、「会費を払いさえすれば誰でも提供を受けられるデータについては、限定提供データに該当することはない」という枝は誤りです。保有者が管理するデータの全部を提供することも要件ではなく、提供される一部だけで相当量の蓄積があれば足りるので、「保有者が管理しているデータの全部ではなく一部だけが提供される場合、当該一部のデータが限定提供データに該当することはない」という枝は誤りです。除外されるのは営業秘密です。令和5年改正の前は「秘密として管理されているもの」が除かれていましたが、改正後は、秘密として管理されていても公然と知られているなどの理由で営業秘密に当たらない情報は限定提供データになり得ます。そのため令和6年度の「秘密として管理されている情報は、限定提供データに該当することはない」という枝は誤りです。一方、令和3年度の「秘密として管理されている情報については、限定提供データに該当することがある」という枝は誤りとされました(当時の定義は秘密管理されている情報を一律に除いていたからです)。この枝は旧定義で正誤が決まるので、現行法では結論が逆になることに注意してください。
- 限定提供性業として特定の者に提供する情報です。特定の者は条件を満たして提供を受ける者で、数の多寡を問いません
- 相当量蓄積・管理性電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法)により相当量蓄積され、及び管理されていることです
- 有用性技術上又は営業上の情報であることです
- 除外営業秘密(2条6項)は除かれます。令和5年改正前は「秘密として管理されているもの」が除かれていました
不正競争になる行為は11号から16号までで、営業秘密の4号から9号までに並びますが、重過失で知らない転得は含まれません
11号は窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段による取得(限定提供データ不正取得行為)と、そうして取得したデータの使用・開示です。12号は不正取得行為が介在したことを知って取得し、又はその取得したデータを使用・開示する行為です。営業秘密の5号と違って「重大な過失により知らないで」が書かれていないので、「限定提供データ不正取得行為が介在したことを、重過失により知らないで限定提供データを取得する行為は、限定提供データに係る不正競争に該当する」という枝は誤りです。15号の不正開示行為の転得も同じく「知って」だけなので、「限定提供データ不正開示行為が介在したことを、重過失により知らないで限定提供データを取得する行為は、限定提供データに係る不正競争に該当する」という枝も誤りです。13号と16号は、取得した後に不正取得行為や不正開示行為の介在を知った場合を扱いますが、不正競争になるのは「開示する行為」だけで、使用は含まれません。営業秘密の6号・9号が使用と開示の両方を対象にするのと違う点です。したがって「その取得した後に、その限定提供データについて限定提供データ不正開示行為が介在したことを知って、その限定提供データを使用する行為は、限定提供データに係る不正競争に該当する」という枝は誤りです。

- 転得者の主観営業秘密(5号・8号)は知って又は重大な過失により知らないで取得した場合を含みますが、限定提供データ(12号・15号)は知って取得した場合だけです
- 取得後に知った場合営業秘密(6号・9号)は使用と開示が不正競争ですが、限定提供データ(13号・16号)は開示だけが不正競争です
- 示された者の行為営業秘密(7号)は図利加害目的の使用・開示です。限定提供データ(14号)は図利加害目的の開示と、管理に係る任務に違反して行う図利加害目的の使用です
- 生じた物の譲渡等営業秘密には10号がありますが、限定提供データには対応する号がありません
- 刑事罰営業秘密は21条1項・2項で処罰されますが、限定提供データには刑事罰がありません
保有者から示された者の使用は、図利加害目的に加えて管理に係る任務に違反して行うものに限られます
14号は、限定提供データ保有者からそのデータを示された者が、不正の利益を得る目的で、又は保有者に損害を加える目的で、そのデータを使用し、又は開示する行為です。使用については「その限定提供データの管理に係る任務に違反して行うものに限る」というかっこ書が付いているので、図利加害目的があっても任務違反がなければ使用は不正競争になりません。「図利加害目的が認められても、その限定提供データの管理に係る任務に違反して行うものでなければ、その限定提供データを使用する行為は、限定提供データに係る不正競争に該当しない」という枝は正しいです。開示にはこのかっこ書がありませんが、図利加害目的は要ります。業務委託先が納期に間に合わせるために承諾を得ずに再委託先へデータを開示した事例では、契約違反ではあっても不正の利益を得る目的や保有者に損害を加える目的がないので、「乙の当該開示行為は、限定提供データに係る不正競争に該当する」という枝は誤りです。14号の目的をもってする開示が15号で「限定提供データ不正開示行為」と定義され、転得者の責任の起点になります。

無償で公衆に利用可能な情報と同一のデータの取得等と、善意で取引により取得した者の権原の範囲内の開示には適用がありません
19条1項9号は二つの適用除外を置きます。イは、取引によって限定提供データを取得した者(取得の時に不正開示行為や不正取得行為の介在を知らない者に限ります)が、その取引で得た権原の範囲内で開示する行為です。ロは、相当量蓄積されている情報が無償で公衆に利用可能となっている情報と同一の限定提供データを取得し、使用し、又は開示する行為です。誰でも無償で手に入る情報と同じものを独占させる理由がないからです。「その相当量蓄積されている情報が無償で公衆に利用可能となっている情報と同一であれば、その限定提供データを取得する行為は、限定提供データに係る不正競争防止法上の規制の対象となることはない」という枝は正しいです(令和3年度の枝で、当時は19条1項8号ロでしたが、令和5年改正で9号ロに繰り下がりました)。除外されるのは「無償で」利用可能な情報と同一のものに限られるので、利用料を払えば誰でも使える情報は除外に当たりません。「一定の利用料を払えば誰でも自由に使うことができる場合において、当該情報と同一の限定提供データを取得する行為は、限定提供データに係る不正競争防止法上の規制の対象とならない」という枝は誤りです。
救済は差止めと損害賠償で、差止請求権の消滅時効は営業秘密の規定を準用しますが、刑事罰はありません
11号から16号までの不正競争には、3条の差止請求、4条の損害賠償請求が使えます。5条1項の譲渡数量による損害額の算定は1号から16号までと22号が対象なので限定提供データも含まれ、5条3項4号で「当該侵害に係る限定提供データの使用」に対し受けるべき金銭の額を損害額として請求できます。限定提供データを使用する行為に対する差止請求権は、15条2項が営業秘密の15条1項を準用し、保有者がその事実及び行為者を知った時から3年間行わないとき、又はその行為の開始の時から20年を経過したときに時効によって消滅します。「その行為の開始時から 10 年を経過したときは、時効によって消滅する」という枝は誤りです。罰則を定める21条は、営業秘密の不正取得等や技術的制限手段の不正競争を処罰しますが、限定提供データに係る不正競争を掲げていません。「人を欺いて限定提供データを取得する行為は、刑事罰の対象となる」という枝も、取得後に不正取得行為の介在を知って「その限定提供データを開示する行為は、刑事罰の対象となる」という枝も誤りです。民事の差止め・損害賠償の対象にはなります。
不正競争防止法2条7項この法律において「限定提供データ」とは、業として特定の者に提供する情報として電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法をいう。次項において同じ。)により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(営業秘密を除く。)をいう。
不正競争防止法2条1項14号限定提供データを保有する事業者(以下「限定提供データ保有者」という。)からその限定提供データを示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその限定提供データ保有者に損害を加える目的で、その限定提供データを使用する行為(その限定提供データの管理に係る任務に違反して行うものに限る。)又は開示する行為
不正競争防止法19条1項9号ロその相当量蓄積されている情報が無償で公衆に利用可能となっている情報と同一の限定提供データを取得し、又はその取得した限定提供データを使用し、若しくは開示する行為
試験ではこう問われる
- 「特定の者」は数の多寡を問わない。「会費を払いさえすれば誰でも提供を受けられるデータについては、限定提供データに該当することはない」という枝は誤り。一部のデータの提供でも該当し得る
- 除外は令和5年改正で「秘密として管理されているもの」から「営業秘密」に変わった。「秘密として管理されている情報は、限定提供データに該当することはない」という枝は誤り。令和3年度の同趣旨の枝は旧定義で正誤が決まる
- 転得は「知って」だけで重過失を含まない(12号・15号)。「重過失により知らないで限定提供データを取得する行為」が不正競争に該当するという枝は誤り
- 取得後に不正取得・不正開示の介在を知った場合は開示だけが不正競争(13号・16号)。知って「使用する行為」が該当するという枝は誤り
- 示された者の使用は図利加害目的に加えて管理に係る任務違反が要る(14号かっこ書)。任務違反でなければ使用は該当しないという枝は正しい。開示は図利加害目的が要るので、納期のための再委託先への開示は該当しない
- 適用除外は「無償で」公衆に利用可能な情報と同一のデータ(19条1項9号ロ)。有料で誰でも使える情報と同一のデータの取得は規制の対象のままなので、対象とならないという枝は誤り
- 差止請求権の消滅時効は15条2項の準用で知った時から3年・行為開始から20年。「10 年を経過したときは、時効によって消滅する」という枝は誤り
- 刑事罰はない。欺いて取得しても、取得後に知って開示しても、刑事罰の対象となるという枝は誤り。譲渡数量算定(5条1項)と使用料相当額(5条3項4号)の対象にはなる
この用語が問われた枝
不正競争のうち、限定提供データを使用する行為に対する差止請求権は、その行為の開始時から 10 年を経過したときは、時効によって消滅する。
秘密として管理されている情報は、限定提供データに該当することはない。
限定提供データ保有者からその限定提供データを示された場合において、図利加害目的が認められても、その限定提供データの管理に係る任務に違反して行うものでなければ、その限定提供データを使用する行為は、限定提供データに係る不正競争に該当しない。
その限定提供データについて、限定提供データ不正開示行為が介在したことを、重過失により知らないで限定提供データを取得する行為は、限定提供データに係る不正競争に該当する。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。