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周知表示混同惹起(2条1項1号)しゅうちひょうじこんどうじゃっき

著作権・不正競争防止法 第8章 不正競争の類型(2条1項各号) 短答で12枝

周知表示混同惹起とは、他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為です(不正競争防止法2条1項1号)。

ある町で長く愛されてきた和菓子店の屋号を、別の店が同じ町で看板に掲げたとします。客はその店を老舗の支店だと思い込み、老舗が築いた信用に乗って客が流れます。商標登録をしていなくても、需要者の間に広く認識されている表示をまねて混同を生じさせる行為は、2条1項1号の不正競争です。表示に化体した信用を守り、需要者が出所を取り違えないようにすることが、公正な競争の土台だからです。

商店街の和菓子店の店先の場面。先生が老舗の店主役(札「甲(老舗の店主)」)で、看板「甲月堂」を掲げた店の前に立っている。隣に新しい店があり、そっくりの看板「甲月堂」を掲げ、その前で男性の店主(札「乙」)が吹き出し「商標登録はしていないんだろ

周知とは需要者の間に広く認識されていることで、一地方で足り、その表示の需要者の層で判断します

1号の「需要者の間に広く認識されている」ことを周知といいます。全国的に知られていることは要らず、一地方で広く認識されていれば足ります(ニューアマモト事件)。混同は表示が知られている地域で起きるので、その地域で守れば足りるからです。「周知な商品等表示に該当するためには、全国的に広く認識されている必要がある」という枝は誤りで、「関東地方でのみ周知である商品等表示でも、周知性は認められる」という枝は正しいです。全国的な認識が要るのは2号の著名のほうです。需要者は商品や役務の取引の相手方で、最終消費者だけでなく各段階の取引業者も含みます。「業界で周知であっても、消費者に周知でない商品等表示には、周知性は認められない」という枝は誤りです。反対に、ある需要者の層にだけ知られている表示は、別の層との関係では周知ではありません。美容関係者の間では周知でも一般消費者には知られていない表示を、「美容関係者向けでなく一般消費者向けの化粧品に表示Aを使用したとしても、不正競争とならない」という枝は正しいです。周知かどうかは、商品の性質、取引の態様、需要者の層、宣伝の状況などから総合的に判断するので、「新聞や雑誌にたびたび商品等表示が掲載されていることは、その周知性を判断する際の要素となる」という枝は正しいです。なお、1号には周知の地域を日本国内に限る文言がなく(平成5年改正で削られました)、輸出先の外国で混同が生じている事案では輸出行為について国内の周知を立証する必要はないと解されているので、「甲の商品等表示に係る国内における周知性の立証も必要である」という枝は誤りです。

日本地図を背にした教室の場面。先生が先生役(札「先生」)で、関東地方だけに色を付けた日本地図の前に立ち、指し棒で関東地方を指している。地図の横に「表示A:関東地方の需要者の間で広く認識」と書かれた札。生徒の男性(札「受験生」)が吹き出し「全

混同は需要者を基準に判断し、関連企業と誤信させる広義の混同を含み、商品の同一も競争関係も要りません

「混同を生じさせる」とは、需要者に他人の商品又は営業と取り違えさせることで、現に混同が起きたことまでは要らず、混同のおそれがあれば足ります。判断の基準は取引の相手方である需要者なので、「消費者ではなく、競業事業者が混同するかどうかを基準として判断される」という枝は誤りです。混同には、同じ出所だと誤信させる狭義の混同のほか、親会社と子会社や系列会社のような緊密な営業上の関係があると誤信させる広義の混同も含みます(スナックシャネル事件)。だから商品が同じである必要はなく、競争関係も要りません。神奈川県内で和菓子の表示として周知の表示Aを、乙が同県内で「表示Aと同一の表示を、和菓子以外の商品に使用している場合には、乙の行為が不正競争となることはない」という枝は誤りです。周知なシャンパンの名称Bについて「日本で、Bという店名のワイン・バーを経営することは、不正競争とならない」という枝も誤りで、シャンパンの製造者と関係があると誤信させる広義の混同が生じ得ます。他人の側が営利事業である必要もなく、「非営利事業を行っている他人の周知な商品等表示を使用して、その他人の役務提供との混同を生じさせる行為は、不正競争となる」という枝は正しいです。

ワイン・バーの入口の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で入口の脇に立ち、判決書を手にしている。入口の上に店名の看板「シャンパンB」が掲げられ、店主の男性(札「乙(店主)」)が吹き出し「うちはお酒を造っていないし、甲社と競争もしていない。客

行為は商品等表示の使用と使用した商品の譲渡等で、無償でも該当しますが、自己の出所を示す使用でなければ当たりません

1号の行為は、同一若しくは類似の商品等表示を使用すること、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供することです。譲渡や引渡しに有償・無償の限定はないので、周知なロゴマークを付したボールペンを「自らの顧客に無償で提供した」場合でも、他人の商品との誤認を生じさせるときは「不正競争となる」という枝は正しいです。一方、ここでの使用は、自己の商品や営業の出所を示す表示としての使用です。販売する商品を紹介するためにその商品名を書くのは、その商品自体を指し示しているだけなので、「その販売する商品を紹介する目的で、著名な商品名を当該ウェブサイトに掲載する行為は、不正競争とならない」という枝は正しいです。また、商品等表示には出所表示機能が要るので、いったん周知になった商品の形態でも、同種商品が多数売られて出所表示性が消えれば商品等表示ではなくなります。「出所表示性が消滅し、商品等表示性が否定されて不正競争とはならない場合がある」という枝は正しいです(ギブソンギター事件)。

周知性は差止請求なら事実審の口頭弁論終結時に、損害賠償請求なら行為の時に備わっていれば足ります

差止めは将来の行為を止める請求なので、周知性は事実審の口頭弁論終結時に備わっていることを要し、それで足ります。損害賠償は過去の行為による損害を償わせる請求なので、類似の表示を使用した各時点で周知であれば足り、その後に周知性が失われても請求できます(アースベルト事件)。口頭弁論終結時に周知性が失われていた場合は「差止請求も損害賠償請求も認められない」という枝は誤りです。

先使用・普通名称・自己の氏名は19条で適用除外になり、刑事罰は不正の目的が要件で未遂は罰せられず、親告罪ではありません

他人の表示が周知になる前からこれと同一若しくは類似の表示を使用する者とその業務を承継した者が不正の目的でなく使用する行為には、差止めや損害賠償の規定が適用されません(19条1項4号)。表示を知らずに使っていた者も先使用者です。周知前から「表示Aを知らずに、表示Aを付した商品を、甲と同一の地域で販売していた」乙が周知後に使用を継続する行為は「不正競争となる」という枝は誤りです(平成27年度の出題当時は19条1項3号でしたが、令和5年改正で現行の4号になりました)。普通名称や慣用表示を普通に用いられる方法で使う行為(19条1項1号)、自己の氏名を不正の目的でなく使う行為(同項2号)も適用除外で、先使用者などに対しては混同を防ぐのに適当な表示を付すことを請求できます(19条2項)。損害賠償では、1号は5条1項の譲渡数量による算定と5条3項1号の使用料相当額の両方の対象です。刑事罰は「不正の目的をもって」1号の不正競争を行った場合に限られます(21条3項1号)。「目的の如何を問わず刑事罰の対象となる」という枝は誤りです。未遂が罰せられるのは営業秘密侵害罪の一部だけなので、1号について「その未遂も刑事罰の対象である」という枝は誤りです。親告罪は秘密保持命令違反の罪だけなので、1号の罪は「告訴がなくても公訴を提起することができる」という枝は正しいです(令和4年度の出題当時は21条2項1号・4項・5項でしたが、現行法では3項1号・6項・7項です)。

警察署の取調室の場面。先生が検察官役(札「検察官」)で机に座り、「2条1項1号の不正競争」と書かれた調書を見ている。向かいに男性(札「被疑者」)が吹き出し「混同が起きたのは結果で、わざとじゃない。それに告訴もされていない」。先生の吹き出し「
  • 周知需要者の間に広く認識されていることです。一地方で足り、取引業者も需要者に含みます
  • 同一・類似の商品等表示使用、又は使用した商品の譲渡・引渡し・展示・輸出・輸入・電気通信回線を通じた提供です。無償でも該当します
  • 混同需要者を基準に、広義の混同を含めて判断します。商品の同一も競争関係も要りません
  • 適用除外普通名称等(19条1項1号)、自己の氏名(2号)、先使用(4号)です。先使用者等には混同防止表示を請求できます(19条2項)
  • 刑事罰不正の目的が要件です(21条3項1号)。未遂は不処罰で、親告罪ではありません
不正競争防止法2条1項1号

他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

不正競争防止法19条1項4号

第二条第一項第一号に掲げる不正競争他人の商品等表示が需要者の間に広く認識される前からその商品等表示と同一若しくは類似の商品等表示を使用する者又はその商品等表示に係る業務を承継した者がその商品等表示を不正の目的でなく使用し、又はその商品等表示を不正の目的でなく使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

不正競争防止法21条3項1号

不正の目的をもって第二条第一項第一号又は第二十号に掲げる不正競争を行ったとき。

試験ではこう問われる

  1. 周知は一地方で足りる。「全国的に広く認識されている必要がある」という枝は誤りで、「関東地方でのみ周知である商品等表示でも、周知性は認められる」という枝は正しい
  2. 需要者には取引業者を含む。「消費者に周知でない商品等表示には、周知性は認められない」という枝は誤り。美容関係者にだけ周知の表示を一般消費者向けの商品に使っても不正競争にならない
  3. 混同は需要者を基準に判断し、広義の混同を含む。「競業事業者が混同するかどうかを基準として判断される」という枝は誤り。和菓子以外の商品への使用やワイン・バーの店名でも混同が生じ得る
  4. 譲渡・引渡しは無償でも該当する。周知なロゴを付したボールペンの無償提供で誤認を生じさせれば不正競争
  5. 自己の出所を示す使用でなければ当たらない。販売商品の紹介のための商品名の掲載は不正競争にならない。出所表示性が消滅した形態は商品等表示でなくなる
  6. 周知性の時点は差止めなら口頭弁論終結時、損害賠償なら行為時。両方とも認められないという枝は誤り
  7. 周知前からの先使用者が不正の目的なく続ける使用は適用除外(19条1項4号。旧3号)。表示を知らずに使っていても先使用者
  8. 刑事罰は不正の目的が要件(21条3項1号)。「目的の如何を問わず刑事罰の対象となる」という枝と「その未遂も刑事罰の対象である」という枝は誤り。親告罪ではない

この用語が問われた枝

平成29年度 問59 枝ロ誤り

不正競争防止法のいわゆる周知な商品等表示に該当するためには、全国的に広く認識されている必要がある。

令和元年度 問57 枝ホ正しい

商品等表示Aは、美容関係者のみに販売される化粧品に使用されている。表示Aが、美容関係者の間では周知性を有しているが、一般消費者の間では知られていない場合には、美容関係者向けでなく一般消費者向けの化粧品に表示Aを使用したとしても、不正競争とならない。

令和5年度 問60 枝ロ誤り

甲の周知商品等表示を使用した乙の商品の輸出により、輸出先である外国において商品の混同が生じている場合に、当該乙の輸出行為を不正競争として差し止めるためには、甲の商品等表示に係る国内における周知性の立証も必要である。

平成29年度 問59 枝イ誤り

他人の商品表示を使用することによって、他人の商品と混同を生じさせるか否かは、消費者ではなく、競業事業者が混同するかどうかを基準として判断される。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

著作権・不正競争防止法を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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