出願公開と設定登録前の金銭的請求権(12条の2・13条の2)しゅつがんこうかいとせっていとうろくまえのきんせんてきせいきゅうけん
出願公開と設定登録前の金銭的請求権とは、特許庁長官が商標登録出願があったときに出願人・商標・指定商品又は指定役務などを商標公報に掲載して必ず公開する制度(12条の2)と、出願人が出願の後に出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたとき、その警告後商標権の設定の登録前にその商標を使用した者に対して、使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払を請求できる権利(13条の2)です。
甲が「ハナ」を菓子について出願して使い始めたところ、登録を待つ間に乙が同じ「ハナ」を菓子に使い出した場面を考えます。商標権は設定の登録で発生するので、登録前の乙の使用を侵害として止めることはできません。しかし出願は公開されていて誰でも見られるのに、登録までの間にただ乗りされ放題では出願人の業務上の信用が傷つきます。そこで13条の2は、出願の後に書面で警告をしておけば、警告後から登録前までの使用による業務上の損失を、登録後に金銭で請求できることにしています。

出願公開は全ての商標登録出願について必ず行い、公序良俗を害するおそれがある商標や指定商品は公報に掲載しないだけで出願公開自体はします
12条の2第1項は、特許庁長官は商標登録出願があったときは出願公開をしなければならないと定めています。特許法のように出願の日から一定期間を待つことはなく、請求も要りません。2項は、出願人の氏名又は名称及び住所又は居所、出願の番号及び年月日、願書に記載した商標(標準文字の場合は標準文字により現したもの)、指定商品又は指定役務、そのほか必要な事項を商標公報に掲載して行うとし、ただし書で、商標と指定商品又は指定役務については、公報に掲載することが公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるときは掲載しないことができるとしています。掲載しないのは3号・4号の事項だけで出願公開はするので、商標並びに指定商品又は指定役務を「例外なく商標公報に掲載しなければならない」という枝は誤りで、公序良俗を害するおそれがあると認めるときは「当該出願の出願公開をしない」という枝も誤りです。日本国を指定する領域指定は68条の9第1項により商標登録出願とみなされるので国際商標登録出願も出願公開され、公序良俗を害するおそれがあると認めるときは「当該商標は掲載されない」という枝は正しいです。12条の2は68条1項で防護標章登録出願に準用されますが、防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願には準用されていないので、その出願については「常に出願公開がされない」という枝は正しいです。
- 公開の時期と対象(12条の2第1項)商標登録出願があったときに、全ての出願について行います。待ち期間や請求はありません
- 掲載事項(2項)出願人の氏名又は名称及び住所又は居所、出願の番号及び年月日、願書に記載した商標、指定商品又は指定役務、必要な事項です
- 掲載しないことができる事項(2項ただし書)商標と指定商品又は指定役務について、公報への掲載が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるときです。出願公開自体はします
- 準用防護標章登録出願には準用されます(68条1項)。更新登録の出願には準用されません
金銭的請求権は出願の後に出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたときに生じ、出願公開は要件ではなく、相手が出願を知っていても警告が要ります
13条の2第1項は、商標登録出願人は、商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品又は指定役務について当該出願に係る商標の使用をした者に対し、当該使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払を請求することができると定めています。特許法65条1項は出願公開があった後の警告を要件とし、警告をしなくても出願公開がされた発明であることを知って実施した者には請求できるとしていますが、商標法にはどちらの定めもありません。商標は出願から短期間で公開され、警告は出願後であればよいので、警告の時期は「当該出願の出願公開後である必要はない」という枝は正しいです。また、悪意の使用者に警告を不要とする規定がないので、出願の内容を知りながら使用していても「商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしなければならない」という枝は正しく、出願公開された商標であることを知って使用した者であっても警告をしなければ「金銭の支払を請求することができない」という枝は正しいです。

特許法65条の補償金請求権との違い
| 項目 | 商標法13条の2 | 特許法65条 |
|---|---|---|
| 警告の時期 | 出願の後です。出願公開の前でも足ります | 出願公開があった後です |
| 警告をしないとき | 請求できません。悪意の使用者でも警告が要ります | 出願公開がされた発明と知って実施した者には請求できます |
| 額 | 使用により生じた業務上の損失に相当する額です | 実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額です |
| 行使の時期 | 商標権の設定の登録の後です | 特許権の設定の登録の後です |
請求できるのは使用により生じた業務上の損失に相当する額で、出願人が商標を使用していなければ損失はなく、類似する商標の使用者にも請求できます
請求できる額は、特許法65条の「受けるべき金銭の額」ではなく「当該使用により生じた業務上の損失に相当する額」です。商標は使用によって初めて業務上の信用が化体するので、登録前の使用に対しては、他人の使用で出願人の業務上の信用がどれだけ損なわれたかを金銭にするからです。したがって、「当該使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭の支払を請求することができる」旨が規定されているという枝は誤りです。出願人が出願に係る商標を使用していなければ、その商標に業務上の信用が積み上がっておらず他人の使用で損なわれる損失もないので、使用していない場合でも警告をすれば「常に」業務上の損失に相当する額の金銭の支払を請求できるという枝は誤りです。13条の2第5項は37条の侵害とみなす行為の規定を準用するので、出願に係る商標と同一の商標の使用者だけでなく、指定商品又は指定役務についてその商標に「類似する商標の使用をした者に対しても」請求できるという枝は正しいです。13条の2は68条1項で防護標章登録出願にも準用され、そのときの37条は67条(1号を除く)に読み替えられるので、防護標章登録出願人は警告後に出願に係る標章と同一の商標の使用をした者に金銭の支払を「請求することができない」という枝は誤りです。
請求権は設定の登録の後でなければ行使できず、時効は設定の登録の日から3年で、無効の抗弁の準用があり、拒絶や無効が確定すれば初めから生じなかったものとみなされます
13条の2第2項により、請求権は商標権の設定の登録があった後でなければ行使できず、3項により請求権の行使は商標権の行使を妨げません。5項は民法724条を準用し、設定登録前に使用の事実と使用者を知ったときは「損害及び加害者を知った時」を「商標権の設定の登録の日」と読み替えるので、設定登録前に知っていても時効は「商標権の設定の登録の日から3年間行使しないときは時効によって消滅する」という枝は正しいです。5項は39条で準用する特許法104条の3第1項・2項も準用するので、金銭の支払の請求に係る訴訟でも被告は商標登録が無効審判により無効にされるべきものであることを抗弁として主張でき、「抗弁として主張することは商標法上認められていない」という枝は誤りです。4項により、出願が放棄・取下げ・却下されたとき、拒絶査定若しくは審決が確定したとき、登録異議の取消決定が確定したとき、又は46条の2第1項ただし書の場合を除き無効審決が確定したときは、請求権は初めから生じなかったものとみなされます。ただし38条の2により、金銭の支払の請求に係る訴訟の終局判決が確定した後に無効審決が確定しても、当事者であった者は再審の訴えでその審決の確定を主張できないので、再審の訴えで「既に支払った金銭の返還を請求することができる」という枝は誤りで、その訴訟を本案とする仮処分命令事件の債権者に対する損害賠償の請求を目的とする訴えにおいて「当該審決が確定したことを主張することができない」という枝は正しいです。

- 行使の時期(13条の2第2項)商標権の設定の登録の後です
- 商標権との関係(3項)請求権の行使は商標権の行使を妨げません
- 消滅(4項)放棄・取下げ・却下、拒絶査定若しくは審決の確定、取消決定の確定、無効審決の確定(46条の2第1項ただし書の場合を除きます)で、初めから生じなかったものとみなします
- 準用(5項)37条、39条で準用する特許法104条の3第1項・2項など、民法719条・724条です。時効の起算点は設定の登録の日に読み替えます
- 確定判決後の無効審決(38条の2)再審の訴えでその確定を主張できません
商標法12条の2第1項特許庁長官は、商標登録出願があつたときは、出願公開をしなければならない。
商標法13条の2第1項商標登録出願人は、商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品又は指定役務について当該出願に係る商標の使用をした者に対し、当該使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払を請求することができる。
商標法13条の2第2項前項の規定による請求権は、商標権の設定の登録があつた後でなければ、行使することができない。
商標法13条の2第4項商標登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、商標登録出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき、第四十三条の三第二項の取消決定が確定したとき、又は第四十六条の二第一項ただし書の場合を除き商標登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、第一項の請求権は、初めから生じなかつたものとみなす。
試験ではこう問われる
- 出願公開は全ての商標登録出願について必ず行う。公序良俗を害するおそれがある商標は公報に「掲載しない」だけで、「出願公開をしない」という枝は誤り。「例外なく商標公報に掲載しなければならない」という枝も誤り
- 国際商標登録出願も出願公開される。防護標章登録出願には準用されるが、防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願は公開されない
- 金銭的請求権の要件は出願後の書面による警告で、出願公開後である必要はない。相手が出願の内容を知っていても警告が要る(特許法65条のような悪意者の例外はない)
- 額は「業務上の損失に相当する額」で、「受けるべき金銭の額」は特許法の文言。出願人が商標を使用していなければ損失がなく、「常に」請求できるわけではない
- 37条の準用で類似する商標の使用者にも請求できる。防護標章登録出願にも準用される(68条1項)
- 行使は設定登録後。時効は民法724条の読替えで設定登録の日から3年。無効の抗弁(特許法104条の3)の準用がある
- 拒絶査定・無効審決などが確定すれば初めから生じなかったものとみなすが、終局判決の確定後に無効審決が確定しても再審で主張できない(38条の2)
この用語が問われた枝
特許庁長官は、商標登録出願があったときは、出願公開をしなければならず、出願公開においては、願書に記載した商標並びに指定商品又は指定役務を、例外なく商標公報に掲載しなければならない。
特許庁長官は、商標登録出願に係る願書に記載した商標を商標公報に掲載することが公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると認めるときは、当該出願の出願公開をしない。
特許庁長官は、商標登録出願があったときは、出願公開をしなければならず、全ての商標登録出願について出願公開がされるが、防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願については、常に出願公開がされない。
特許庁長官は、国際商標登録出願があったときは、出願公開をしなければならないが、願書に記載した商標について、これを商標公報に掲載することが公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるときは、当該商標は掲載されない。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。