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侵害とみなす行為(37条)と侵害の罪(78条・78条の2)しんがいとみなすこういとしんがいのつみ

商標 第6章 侵害と救済 短答で16枝

侵害とみなす行為とは、登録商標の類似範囲の使用や、登録商標を付した商品の譲渡のための所持のように、商標権又は専用使用権の侵害そのものではない行為を、37条と67条が侵害するものとみなす仕組みです。侵害の罪とは、商標権又は専用使用権を侵害した者を78条で、侵害とみなされる行為を行った者を78条の2で処罰する刑事罰です。

商標権者が登録商標を独占して使えるのは指定商品についてだけですが(25条)、それだけでは守りきれません。偽ブランドの業者は、少し変えた商標を似た商品に付けたり、売る前の段階で倉庫に積んでおいたり、ラベルを印刷する紙型だけを作って売ったりします。これらは25条の「使用」の侵害には当たらないことがあるので、37条はそうした類似範囲の使用と売る前の準備行為を侵害とみなします。刑事罰も、本来の侵害(78条)と、みなされる侵害(78条の2)とで刑の重さを分けています。

裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で壇上に座る。前に被告の男性(札「偽ブランドの業者」)が立ち、足元に「登録商標を付した商品」と書かれた段ボール箱が積まれ、箱に「倉庫で保管中」の紙が貼ってある。横に商標権者の男性(札「商標権

37条1号は類似範囲の使用を侵害とみなし、商標権者の禁止権の根拠になります

商標権の専用権(25条)は指定商品又は指定役務についての登録商標の使用に限られます。37条1号は、指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用と、指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用を侵害とみなします。この号があるから、商標権者は類似範囲での他人の使用を止めることができ、これを禁止権と呼びます。同じ構造は防護標章登録に基づく権利にもあり、67条1号は指定商品又は指定役務についての登録防護標章の使用を侵害とみなします。ただし防護標章では類似範囲に広がらないので、権原なき第三者が「防護標章登録に係る指定商品と類似する商品について登録防護標章を使用する行為」は侵害とみなされるという枝は誤りです(67条各号は指定商品又は指定役務そのものについての行為だけを挙げているからです)。

2号から4号は登録商標を付した商品や役務用の物の所持・譲渡・輸入を、目的を限って侵害とみなします

2号は、指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であって、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為です。所持そのものではなく、市場に出す目的のある所持だけを侵害とみなします。そこで、付したものを「譲渡のために所持する行為は、商標権を侵害するものとみなされる」という枝は正しく、「その商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出するという目的がある場合に限り」侵害とみなされるという枝も正しいです。役務については、提供を受ける者の利用に供する物(レンタル用のタオルや店で出す食器など)に登録商標等を付したものを、自ら役務を提供するために所持し又は輸入する行為が3号、他人に役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し若しくは輸入する行為が4号です。自分で使う側と、使わせるために渡す側の両方を押さえているので、「これを用いて当該役務を提供させるために譲渡するために所持する行為」は侵害とみなされるという枝は正しく、「これを用いて他人に当該役務を提供させるために譲渡する行為は商標権又は専用使用権を侵害するものとみなされることはない」という枝は誤りです(4号の譲渡そのものが侵害とみなされるからです)。

クリーニング店の店先の場面。先生が先生役(札「先生」)で店の前に立ち、両手で左右を指している。左に店主の男性(札「クリーニング店(自ら役務を提供)」)が「登録商標を付したタオル」と書かれたタオルの束を棚に置いていて、棚に札「37条3号:提供

5号から8号は商標を表示する物とその製造用の物を対象にし、8号は業としての製造・譲渡・引渡し・輸入が対象で所持も譲渡等の目的も要件にしていません

5号から7号は、商品や役務用の物ではなく、登録商標又はこれに類似する商標を表示する物(ラベル、タグ、包装紙など)が対象です。使用をするために表示する物を所持する行為が5号、使用をさせるために表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為が6号、使用をし又は使用をさせるために表示する物を製造し又は輸入する行為が7号です。「登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為」は侵害とみなされるという枝と、使用をさせるために「登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡するために所持する行為」は侵害とみなされるという枝はいずれも正しいです。8号はさらに一段手前の、登録商標等を表示する物を製造するためにのみ用いる物(紙型や印刷用の版など)を対象にし、業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為を侵害とみなします。8号には所持が入っておらず、譲渡等の目的も要件にしていません。そこで、「製造するためにのみ用いる物を業として譲渡するために所持する行為」は侵害とみなされるという枝は誤りで、「登録商標を印刷する以外に用いることができない紙型を業として製造する行為」が「その紙型を譲渡、引渡し又は輸出するという目的がある場合に限り」侵害とみなされるという枝も誤りです(製造は目的を問わずに侵害とみなされるからです)。

37条各号の対象と行為

1号類似範囲の商標・商品・役務使用
2号登録商標等を付した商品譲渡・引渡し・輸出のための所持
3号役務の提供を受ける者の利用に供する物自ら提供するための所持・輸入
4号役務の提供を受ける者の利用に供する物提供させるための譲渡・引渡し、そのための所持・輸入
5号登録商標等を表示する物使用をするための所持
6号登録商標等を表示する物使用をさせるための譲渡・引渡し、そのための所持
7号登録商標等を表示する物使用をし又はさせるための製造・輸入
8号表示する物を製造するためにのみ用いる物業としての製造・譲渡・引渡し・輸入(所持は含まない)

みなし侵害にも39条が準用する特許法103条の過失の推定が働きます

37条や67条で侵害とみなされる行為は、差止請求(36条)や損害賠償の場面では本来の侵害と同じに扱われます。39条が準用する特許法103条は「他人の特許権又は専用実施権を侵害した者」の過失を推定しますが、侵害とみなされる行為を行った者も侵害した者として推定を受け、予備的な行為だから推定を外すという規定はありません。そこで、登録防護標章を付した指定商品を譲渡等のために所持する行為について、「当該行為はいわゆる予備的行為なので」「その侵害の行為について過失があったものと推定されることはない」という枝は誤りです。

裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で壇上に座る。前に被告の男性(札「被告」)が立ち、足元に「登録防護標章を付した指定商品」と書かれた箱が積まれ、箱に「譲渡のために所持」の紙。被告の吹き出し「売る前の予備的行為にすぎないのだか

侵害の罪は78条と78条の2で刑の重さが違い、どちらも故意が必要で告訴なしに起訴できます

78条は、商標権又は専用使用権を侵害した者(37条又は67条で侵害とみなされる行為を行った者を除く)を10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科します。78条の2は、侵害とみなされる行為を行った者を5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科します。予備的な行為は本来の侵害より法益の侵害が小さいので刑を軽くしています。したがって、37条1号で侵害とみなされる「行為とみなされる行為を行った者は、刑事訴訟において」罰金1000万円に処される場合があるという枝は誤りです。刑罰は刑法38条1項の原則どおり故意犯で、39条が準用する特許法103条の過失の推定は民事の損害賠償についてのものです。そこで、過失の推定があるため「故意又は過失の立証を要することなく」侵害の罪が成立するという枝は誤りです。侵害の罪には告訴を要件とする定めがなく非親告罪ですが、秘密保持命令違反の罪(81条の2)は2項で告訴がなければ公訴を提起できない親告罪とされ、3項で国外犯にも適用されます。そこで侵害の罪と秘密保持命令違反の罪は「いずれも告訴がなくても公訴を提起することができる」という枝は誤りです。なお平成30年度までの枝は「懲役」で出題されていますが、令和7年6月からは拘禁刑に改められています。

刑事裁判の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で壇上に座る。左に検察官の男性(札「検察官」)が立ち、吹き出し「被告人は登録商標に類似する商標を使用しました。罰金1000万円を求刑します」。右に被告人の男性(札「被告人(37条1号の類似

詐欺の行為の罪と虚偽表示の罪は併科も未遂処罰もなく、偽証等の罪の減免は決定・審決の確定前の自白が条件です

79条の詐欺の行為の罪と80条の虚偽表示の罪は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金で、併科の定めがありません。そこで、侵害の罪と秘密保持命令違反の罪は「いずれも懲役若しくは罰金又はこれを併科するのに対し」、詐欺の行為の罪と虚偽表示の罪は懲役又は罰金であるという枝は正しいです。79条は詐欺の行為により商標登録等を「受けた者」を罰する規定で、未遂を罰する規定はありません。そこで、「審査官乙がその行為を看破したために、商標登録を受けるに至らなかったとき」に未遂として処罰されるという枝は誤りです。81条の偽証等の罪は、2項で事件の判定の謄本が送達され、又は登録異議の申立てについての決定若しくは審決が確定する前に自白したときに刑を減軽し又は免除することができます。決定がされた後でも確定前なら減免の余地があるので、「その登録異議の申立てについての決定前に自白をした場合に限られる」という枝は誤りです。82条の両罰規定により、法人の従業者等が業務に関して侵害の罪等を犯したときは、行為者のほか法人にも罰金刑が科され、78条・78条の2・81条の2第1項の違反は3億円以下、79条・80条の違反は1億円以下です。

  • 78条 侵害の罪10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、又は併科です。非親告罪です
  • 78条の2 みなし侵害の罪5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又は併科です。非親告罪です
  • 79条 詐欺の行為の罪・80条 虚偽表示の罪3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金で、併科も未遂処罰もありません
  • 81条 偽証等の罪3月以上10年以下の拘禁刑です。決定・審決の確定前の自白で減免できます
  • 81条の2 秘密保持命令違反の罪5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又は併科です。親告罪で国外犯にも適用されます
  • 82条 両罰規定法人には78条・78条の2・81条の2第1項の違反で3億円以下、79条・80条の違反で1億円以下の罰金刑です
商標法37条2号

指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為

商標法37条8号

登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為

商標法78条

商標権又は専用使用権を侵害した者(第三十七条又は第六十七条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)は、十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

商標法78条の2

第三十七条又は第六十七条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

試験ではこう問われる

  1. 2号の所持は譲渡・引渡し・輸出の目的があるときだけ。「譲渡のために所持する行為は、商標権を侵害するものとみなされる」という枝は正しく、目的がある場合に限るという枝も正しい
  2. 役務用の物は、自ら提供するための所持・輸入が3号、提供させるための譲渡・引渡し・所持・輸入が4号。提供させるための譲渡は「侵害するものとみなされることはない」という枝は誤り
  3. 表示する物の所持(5号)、使用させるための譲渡のための所持(6号)は侵害とみなされる
  4. 8号の製造にのみ用いる物は業としての製造・譲渡・引渡し・輸入が対象で、所持は含まず、製造に譲渡等の目的は不要。「業として譲渡するために所持する行為」という枝、紙型の製造が目的がある場合に限るという枝はいずれも誤り
  5. 防護標章は67条で指定商品又は指定役務そのものに限られ、類似する商品についての使用は侵害とみなされない。みなし侵害にも過失の推定(39条・特許法103条)は働く
  6. 78条は10年以下・1000万円以下で併科あり、78条の2のみなし侵害は5年以下・500万円以下。37条1号の行為者が「罰金1000万円に処される場合がある」という枝は誤り
  7. 侵害の罪は故意犯で過失の推定は民事だけ。侵害の罪は非親告罪、秘密保持命令違反の罪は親告罪で国外犯処罰あり
  8. 詐欺の行為の罪・虚偽表示の罪は併科なし・未遂処罰なし。偽証等の罪の減免は決定・審決の「確定前」の自白で、決定前に限られない

この用語が問われた枝

令和8年度 問35 枝イ正しい

指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であって、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡のために所持する行為は、商標権を侵害するものとみなされる。

令和8年度 問35 枝ロ正しい

指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡するために所持する行為は、商標権を侵害するものとみなされる。

令和8年度 問35 枝ハ正しい

指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為は、商標権を侵害するものとみなされる。

令和8年度 問35 枝ニ正しい

指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡するために所持する行為は、商標権を侵害するものとみなされる。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

商標を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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