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商標の「使用」の定義(2条3項・4項・7項)しょうひょうのしようのていぎ

商標 第1章 商標の定義と使用・総則 短答で92枝

商標の「使用」とは、商品若しくは商品の包装に標章を付する行為、標章を付した商品を譲渡し、引き渡し、展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為、役務の提供に当たり物や映像面に標章を付し又は表示する行為、広告や価格表に標章を付して展示し又は頒布する行為、音の標章を発する行為など、2条3項各号に掲げる行為です。商品その他の物を標章の形状とすることや記録媒体に標章を記録することも「付する」に含まれ(2条4項)、外国にある者が他人をして持ち込ませる行為も輸入に含まれます(2条7項)。

商標は、商品に刻印され、下げ札で結ばれ、店に並べて売られ、看板や広告に出され、客に渡す袋に印刷され、店で音として流されます。商標はこうした行為を通じて需要者の目や耳に届き、信用を積み上げます。商標法はどの行為が「使用」に当たるかを2条3項に1号から10号まで列挙し、商標権の効力(25条)も侵害(37条)も不使用取消し(50条)も、すべてこの「使用」を土台にします。列挙にするのは、何が使用かを権利者も第三者も条文だけで判断できるようにするためです。

菓子工場の出荷場から店先までが一枚に見える場面。先生が工場長役(札「商標権者」)で、流れてくる菓子の箱に「○○堂」の商標を刻印し、箱の一つには「○○堂」と印刷した下げ札を紐で結んでいる。奥では店員の男性(札「販売店」)が「○○堂」の箱を棚に

1号の「商品又は商品の包装に標章を付する行為」は付け方を問わず、商品を標章の形状とすることや記録媒体に標章を記録することも含みます

1号は「商品又は商品の包装に標章を付する行為」です。付する方法に限定は無く、印刷でも刻印でも下げ札でも足ります。「自己の標章が印刷された下げ札を商品に紐で結ぶ行為は、当該商品自体に標章が付されていないとしても、標章の使用に該当する」という枝は正しいです。石けんに平面商標を刻印する行為が「その部分に僅かな凹凸ができるので、当該平面商標の使用に該当しない」という枝は誤りです(刻印も標章を付する一つの方法で、凹凸ができても平面商標を付したことに変わりないからです)。2条4項1号は、商品、商品の包装、役務の提供の用に供する物、広告を標章の形状とすることも「付する」に含めるので、立体的形状の標章を商品自体の形状にして生産する行為は1号の使用です。ただし広告については8号が「付して展示し、若しくは頒布」することを使用とするので、立体的形状の店頭人形を作成しただけでは使用になりません。店頭人形を作成する行為が「広告に標章を付する行為となるため、商標法上の使用に該当する」という枝は誤りです(広告は付しただけでは足りず、展示か頒布まで必要だからです)。2条4項2号は、商品に記録媒体が取り付けられている場合にその記録媒体に音の標章を記録することも「付する」に含めるので、「商品に取り付けられている記録媒体に音の標章を記録する行為は、音の標章の使用には該当しない」という枝は誤りです。プログラムの起動時に画面に商標が表示されるように電磁的な情報を組み込む行為も、商品であるプログラムに標章を付する行為です。「当該プログラムに登録商標イの電磁的な情報を組み込む行為は、登録商標イの使用に該当する」という枝は正しいです。

石けん工場の作業台の場面。先生が工場長役(札「商標権者」)で、石けんに文字の商標「○○堂」を刻印した型を手に持ち、隣には「○○堂」と印刷された下げ札を紐で結んだ石けんの箱と、大きな石けんの形をした店頭人形が置かれている。向かいに若い従業員の

2号は標章を付した商品を譲渡し、引き渡し、展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為で、無償の配布も商品の使用になり、ダウンロードさせない提供は役務の使用になります

2号は「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為」です。電気通信回線を通じた提供は平成14年改正で加わりました。商品は商取引の対象になる物であればよく、読者から対価を取らなくても広告主から広告料を得て配る雑誌は商品なので、登録商標を付した雑誌を無償で配布するとき「甲の当該配布行為は登録商標イの使用に該当する場合がある」という枝は正しいです。電子出版物のような電子情報財は、ダウンロードさせて需要者の手元に流通させるときは商品ですが、ダウンロードさせずにオンライン上で読ませるだけなら物が流通していないので役務の提供です。したがって、ダウンロードさせない有償提供について「甲の当該提供行為は登録商標ハの使用に該当する場合はない」という枝は正しいです(商品「電子出版物」についての使用ではなく、役務の使用だからです)。2条7項は、輸入する行為に、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含めます。令和3年改正で加わった規定で、外国の業者が運送業者に商品を運ばせて国内に入れる場面を輸入として捉えます。商標を付したボールペンを国内で販売するために「外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為は、登録商標の使用に該当する」という枝は正しいです。

港の通関窓口の場面。先生が税関職員役(札「税関」)でカウンターの内側に立ち、手元には外国から届いた段ボール箱があり、箱の中のボールペンに「○○堂」の商標が付いている。箱の送り状には「外国にある者が運送業者をして持ち込ませる」と書かれている。

役務についての使用は、提供を受ける者の利用に供する物(3号〜5号)、提供を受ける者の役務の提供に係る物(6号)、映像面(7号)のどれに標章を付したかで号が分かれます

役務には手に取れる商品が無いので、2条3項は役務の提供に使う物に標章を付す行為を使用とします。3号は「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」に標章を付する行為で、ラーメン店の割り箸の袋やスーパーのショッピングカートがこれに当たります。「ラーメンの提供を受ける客が利用する割り箸の袋に当該ラーメン店の標章を付する行為は」役務についての「標章の使用には該当しない」という枝は誤りです(割り箸の袋は客の利用に供する物だからです)。4号はその物を用いて役務を提供する行為、5号は「役務の提供の用に供する物」に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為です。靴修理業者が「靴修理機械に当該靴修理業者の標章を付したものを、その顧客に見えるように設置しておくこと」は5号に該当するという枝は正しいです。6号は「役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物」に標章を付する行為で、修理やクリーニングのように客の物を預かって加工して返す役務に向きます。「修理後の顧客の自動車に自己の標章を付する行為は、自動車の修理についての標章の使用に該当する」という枝は正しいです。7号は電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たり、その映像面に標章を表示して役務を提供する行為で、インターネット上の語学教授の画面に標章を表示する行為はここに入ります。「顧客のコンピュータディスプレイに標章が表示されることになるので」6号に該当するという枝は誤りです(画面は客から預かった物ではなく、映像面を介した役務の提供として7号で捉えるからです)。

ラーメン店と自動車修理工場が隣り合う通りの場面。先生がラーメン店の店主役(札「役務を提供する者」)で、「○○軒」の標章を印刷した割り箸の袋を客に渡している。隣の修理工場では整備士の男性(札「自動車修理業者」)が修理を終えた客の自動車に「○○

役務についての使用の号の分け方

3号・4号提供を受ける者の利用に供する物に付する/それを用いて提供する割り箸の袋、ショッピングカート、ホテルの寝具
5号提供の用に供する物に付したものを提供のために展示する靴修理機械、レンタカー、配膳ロボット
6号提供を受ける者の役務の提供に係る物に付する修理後の自動車、クリーニング後の被服
7号映像面を介した役務の提供に当たり映像面に表示するインターネット上の語学教授の画面

8号の広告は標章を付して展示し、頒布し、又は電磁的方法により提供した時に使用になり、開業前でも使用で、9号の音は発する行為が使用です

8号は「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」です。同号は役務が現に提供されていることを求めていないので、開業前にウェブサイトへ標章を付した宿泊料金表を載せる行為も使用です。「開業前であって現に宿泊施設の提供という役務を提供していないため、商標法上の使用には該当しない」という枝は誤りです(8号の使用は広告や価格表を提供した時点で成立するからです)。9号は平成26年改正で音の商標とともに入った規定で、音の標章については前各号のほか「商品の譲渡若しくは引渡し又は役務の提供のために音の標章を発する行為」を使用とします。被服の販売店で「被服の譲渡のために登録商標ハに係る音を店内放送で流す行為は、当該指定商品についての登録商標ハの使用に該当しない」という枝は誤りです(商品の譲渡のために音の標章を発する行為そのものだからです)。

商標は業として商品や役務を扱う者が使用をする標章なので、個人で使うために作る行為は登録商標の使用に当たりません

2条3項の行為に形の上で当たっても、2条1項が商標を「業として」商品を生産し、証明し、又は譲渡する者や役務を提供し、又は証明する者が使用をする標章と定めている以上、業としてでない行為は商標の使用になりません。登録商標と同一の標章を付したマガジンラックを「その者が業としてではなく個人で使用するために製作する行為は、登録商標の使用に該当しない」という枝は正しいです。同じ理由で、会社が自社の宣伝のためだけに封筒へ表示する行為のように、商品や役務との結び付きが無い表示も使用にはなりません。使用の形に当たるかどうかと、それが出所を示す態様かどうかは別の問題で、後者は26条1項6号の商標的使用で扱います。

商標法2条3項(抜粋)

この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
一 商品又は商品の包装に標章を付する行為
二 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
三 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為
八 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為
九 音の標章にあつては、前各号に掲げるもののほか、商品の譲渡若しくは引渡し又は役務の提供のために音の標章を発する行為

商標法2条4項(抜粋)

前項において、商品その他の物に標章を付することには、次の各号に掲げる各標章については、それぞれ当該各号に掲げることが含まれるものとする。
一 文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合の標章 商品若しくは商品の包装、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告を標章の形状とすること。

商標法2条7項

この法律において、輸入する行為には、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為が含まれるものとする。

試験ではこう問われる

  1. 1号の「付する」は方法を問わない。下げ札を紐で結ぶ行為も刻印も使用で、「僅かな凹凸ができるので、当該平面商標の使用に該当しない」という枝は誤り
  2. 2条4項により商品を標章の形状とすることや記録媒体に音を記録することも「付する」に含まれる。ただし広告は付して展示・頒布して初めて使用で、店頭人形を作成しただけでは使用でない
  3. 無償配布の雑誌も商品で、配布は2号の使用に「該当する場合がある」。ダウンロードさせないオンライン提供は商品の使用に「該当する場合はない」(役務の使用になる)
  4. 2条7項により、外国にある者が「他人をして持ち込ませる行為」も輸入で、登録商標の使用に該当する
  5. 役務の使用は物の性質で号が分かれる。割り箸の袋・ショッピングカートは3号、靴修理機械の展示は5号、修理後の自動車は6号、インターネットの画面は7号(6号ではない)
  6. 8号の広告・価格表は開業前でも使用で、「現に宿泊施設の提供という役務を提供していないため」使用でないとする枝は誤り
  7. 9号により、商品の譲渡のために店内放送で音の標章を流す行為は使用に該当する
  8. 業としてでなく個人で使用するために製作する行為は、登録商標の使用に該当しない(2条1項)

この用語が問われた枝

平成30年度 問37 枝ロ誤り

インターネットを利用する「語学の教授」の役務の提供時に、顧客のコンピュータディスプレイの映像面に表示されるインターネットサイト上に標章を表示する行為は、顧客のコンピュータディスプレイに標章が表示されることになるので、「役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為」に該当する。

平成30年度 問37 枝ホ正しい

靴修理業者が、靴修理に使用する靴修理機械に当該靴修理業者の標章を付したものを、その顧客に見えるように設置しておくことは、「役務の提供の用に供する物に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為」に該当する。

令和2年度 問33 枝ロ誤り

立体的形状からなる標章については、これを商品自体の形状として当該商品を生産することは商品に標章を付する行為として商標法上の使用に該当し、これを広告用の店頭人形自体の形状として当該店頭人形を作成する行為は、広告に標章を付する行為となるため、商標法上の使用に該当する。

令和2年度 問33 枝ハ誤り

ホテルが、新規にその営業を開始する前に、当該ホテルの標章を付した宿泊料金表を当該ホテルのウェブサイト上に表示して電磁的方法により提供しても、開業前であって現に宿泊施設の提供という役務を提供していないため、商標法上の使用には該当しない。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

商標を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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