存続期間と更新登録・回復(19条〜23条)そんぞくきかんとこうしんとうろくかいふく
存続期間とは、商標権が設定の登録の日から10年をもって終了するまでの期間です。更新登録とは、商標権者の更新登録の申請により存続期間を更新する手続で、申請できる期間を過ぎて消滅したものとみなされた商標権を、故意でない場合に限り申請し直して満了の時にさかのぼって更新する仕組みが回復です。
特許権や意匠権は期限が来れば終わりますが、商標は使い続けるほど信用がたまるので、10年ごとに更新すればいつまでも保てます。商標法は19条で存続期間を設定の登録の日から10年と定め、商標権者の申請で更新できるとしました。更新のときに商標を使っているかの審査はなく、申請と登録料の納付があれば更新されます。使っていない商標は不使用取消審判で整理する建前だからです。ただし、申請できる期間は満了前6月から満了の日までと決まっていて、うっかり過ぎたときの救済が20条3項と21条に段階的に置かれています。

存続期間は設定の登録の日から10年で終了し、更新登録の申請は満了前6月から満了の日までの間にします
商標権の存続期間は設定の登録の日から10年をもって終了し(19条1項)、商標権者の更新登録の申請により更新できます(19条2項)。更新登録の申請は、存続期間の満了前6月から満了の日までの間にしなければなりません(20条2項)。更新できる者は商標権者であり、更新を認めるかどうかの審査で商標の使用の有無は問われません。申請できる期間の始まりは満了の日の6月前の応当日の翌日と扱われます。満了の日が令和2年5月20日であれば「からその存続期間の更新登録の申請をすることができる」のは令和元年11月21日からで、この枝は正しいです。平成18年11月10日に設定の登録がされた商標権の満了の日は平成28年11月10日なので、平成28年5月10日「から手続きをすることができる」という枝は誤りです(始まりは5月11日だからです)。更新登録の申請は商標権に係る「商品及び役務の区分の数を減じてすることができる」ので、この枝は正しいです(20条1項3号の省令事項として区分を減らす申請が予定されているからです)。登録料を分割して納付しても存続期間は10年のままで、「存続期間自体が短縮されるものではない」という枝は正しく、「設定登録の日から5年で満了するとみなされる」という枝は誤りです(41条の2第6項は後期分割登録料の不納のときに満了前5年の日にさかのぼって消滅したものとみなすだけだからです)。

- 存続期間設定の登録の日から10年をもって終了します(19条1項)。更新した旨の登録があると満了の時に更新されます(19条3項)
- 申請できる者商標権者です(19条2項)。申請書には申請人の氏名・住所と商標登録の登録番号を書きます(20条1項)
- 申請の期間満了前6月から満了の日までです(20条2項)。期間内にできないときは、期間の経過後でも経済産業省令で定める期間内(満了後6月以内)に申請できます(20条3項)
- 期間内に申請がないとき存続期間の満了の時にさかのぼって消滅したものとみなされます(20条4項)
- 更新の登録登録料の納付があったときに更新した旨の登録をします。20条3項・21条1項の申請では登録料と割増登録料の納付があったときです(23条1項・2項)
満了前6月の期間を過ぎても満了後6月以内なら割増登録料を納めて申請でき、それもなければ満了の時にさかのぼって消滅したものとみなされます
20条3項は、満了前6月から満了の日までに申請できないときは、その期間が経過した後でも経済産業省令で定める期間内に申請できると定め、商標法施行規則10条2項がその期間を満了後6月以内としています。この申請をする者は、登録料のほかにその登録料と同額の割増登録料を納めます(43条1項本文)。責めに帰することができない理由で期間内に納付できないときは割増登録料は要りません(43条1項ただし書)。満了後6月の期間にも申請がないとき、はじめて商標権は存続期間の満了の時にさかのぼって消滅したものとみなされます(20条4項)。順序が大事で、満了の時に消滅していたわけではありません。満了前6月の期間に申請がなければ「その商標権は存続期間の満了の時に消滅するが」、6月以内の申請と割増登録料の納付で「存続期間の満了の時にさかのぼって更新されたものとみなされる」という枝は誤りです(20条3項の申請で更新した旨の登録があれば19条3項により満了の時に更新されるのであって、さかのぼって更新されたとみなすのは21条2項の回復の場合だからです)。
消滅したものとみなされた後でも、故意でなければ満了後12月までは21条の申請で回復できますが、回復した商標権の効力は更新登録前の使用に及びません
20条4項で消滅したものとみなされた商標権の原商標権者は、経済産業省令で定める期間内に限り、更新登録の申請をすることができます(21条1項本文)。ただし、故意に20条3項の期間内に申請しなかったと認められる場合は申請できません(21条1項ただし書)。以前は申請できなかったことについて「正当な理由」があることが要件でしたが、令和3年改正で「故意でないこと」に緩められました。期間は商標法施行規則10条3項が、申請をすることができるようになった日から2月以内で、かつ20条3項の期間の経過後6月以内と定めており、満了の日から数えて12月が上限です。満了後「を経過しても、更新登録の申請をすることができる場合がある」という枝は誤りです(12月を過ぎれば回復の道はないからです)。21条1項の申請があると、存続期間は満了の時にさかのぼって更新されたものとみなされます(21条2項)。もっとも、さかのぼって更新しても、その間に商標権が消えたと思って使った人を侵害者にするのは酷です。そこで22条は、回復した商標権の効力は、20条3項の期間の経過後、更新した旨の登録がされる前における指定商品・指定役務についての登録商標の使用と37条各号の行為には及ばないと定めました。回復した商標権の効力は「当該登録商標の使用には、及ばない」という枝は正しいです。一方、その間に善意で使用して周知になった者に継続使用権を与える規定はありません。回復の場面で周知になっていれば「その商品についてその商標の使用をする権利を有する」という枝は誤りです(再審で回復した商標権についての60条のような継続使用権は、21条の回復には置かれていないからです)。

更新登録の申請の三段階
| 通常の申請(20条2項) | 満了前6月から満了の日まで | 登録料のみで、更新した旨の登録により満了の時に更新されます |
|---|---|---|
| 期間経過後の申請(20条3項) | 満了後6月以内(施行規則10条2項) | 登録料と同額の割増登録料が要ります。この期間にも申請がなければ満了の時にさかのぼって消滅したものとみなされます |
| 回復の申請(21条) | 申請できるようになった日から2月以内で、かつ満了後12月まで(施行規則10条3項) | 故意でないことが要件で、割増登録料も要ります。満了の時にさかのぼって更新されたものとみなされますが、効力は更新登録前の使用に及びません(22条) |
防護標章登録に基づく権利の更新は「出願」であり、期間を過ぎたときは故意でない場合の救済だけで、割増登録料で更新する制度はありません
防護標章登録に基づく権利の存続期間も設定の登録の日から10年で(65条の2第1項)、更新登録の出願により更新できますが、登録防護標章が64条の要件を満たさなくなったときは更新できません(65条の2第2項ただし書)。防護標章は著名性が続いているかを審査し直すので、商標権の「申請」と違って「出願」なのです。出願は満了前6月から満了の日までにしなければならず(65条の3第2項)、期間内に出願できなかったときは経済産業省令で定める期間内に限り出願できますが、故意に期間内に出願しなかったと認められる場合は除かれます(65条の3第3項)。故意に期間内に出願しなかったと認められるときは「当該出願をすることはできない」という枝は正しいです。商標権の20条3項のような割増登録料を納めて当然に申請できる段階はありません。満了後6月以内の出願なら「登録料と同額の割増登録料を納付することにより、その存続期間を更新することができる」という枝は誤りです。この救済規定は平成23年改正で設けられ、令和3年改正で「正当な理由」から故意でないことに変わりました。平成28年度の枝のように「正当な理由があるとき」と書く枝は旧法の文言です。更新登録の出願があったときは存続期間は満了の時に更新されたものとみなされますが、その出願について拒絶をすべき旨の査定・審決が確定したとき、又は更新した旨の登録があったときはこの限りでありません(65条の3第4項)。「常にその満了の時に更新されたものとみなされる」という枝は誤りで、「その満了の時に更新されたものとみなされない場合がある」という枝は正しいです。

国際登録に基づく商標権の存続期間は国際登録の日から10年で、更新は国際登録の存続期間の更新によります
国際登録に基づく商標権の存続期間は、その国際登録の日から10年をもって終了します(68条の21第1項)。設定の登録前に国際登録の存続期間の更新がされているときは、直近の更新の日から10年です。事後指定に係る国際商標登録出願でも、事後指定の日が出願日とみなされるだけで(68条の9第1項ただし書)、存続期間の起算点は変わりません。「事後指定の日ではなく、国際登録の日」から10年で終了するという枝は正しく、「その商標権の存続期間は、その事後指定の日から」10年で終了するという枝は誤りです。更新は国内の更新登録の申請ではなく、国際事務局への国際登録の存続期間の更新によって行い(68条の21第2項)、更新がなければ満了の時にさかのぼって消滅したものとみなされます(68条の21第4項)。19条から22条までは国際登録に基づく商標権には適用されません。
商標法19条商標権の存続期間は、設定の登録の日から十年をもつて終了する。
2 商標権の存続期間は、商標権者の更新登録の申請により更新することができる。
3 商標権の存続期間を更新した旨の登録があつたときは、存続期間は、その満了の時に更新されるものとする。
商標法20条2項〜4項2 更新登録の申請は、商標権の存続期間の満了前六月から満了の日までの間にしなければならない。
3 商標権者は、前項に規定する期間内に更新登録の申請をすることができないときは、その期間が経過した後であつても、経済産業省令で定める期間内にその申請をすることができる。
4 商標権者が前項の規定により更新登録の申請をすることができる期間内に、その申請をしないときは、その商標権は、存続期間の満了の時にさかのぼつて消滅したものとみなす。
商標法21条前条第四項の規定により消滅したものとみなされた商標権の原商標権者は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、その申請をすることができる。ただし、故意に、同条第三項の規定により更新登録の申請をすることができる期間内にその申請をしなかつたと認められる場合は、この限りでない。
2 前項の規定による更新登録の申請があつたときは、存続期間は、その満了の時にさかのぼつて更新されたものとみなす。
商標法22条前条第二項の規定により回復した商標権の効力は、第二十条第三項に規定する更新登録の申請をすることができる期間の経過後前条第一項の申請により商標権の存続期間を更新した旨の登録がされる前における次に掲げる行為には、及ばない。
一 当該指定商品又は指定役務についての当該登録商標の使用
二 第三十七条各号に掲げる行為
試験ではこう問われる
- 申請できるのは満了の日の6月前の応当日の翌日から。満了が令和2年5月20日なら令和元年11月21日から申請できるという枝は正しく、満了が平成28年11月10日なのに平成28年5月10日「から手続きをすることができる」という枝は誤り
- 満了前6月の期間に申請がなくても満了の時に消滅はしない。満了後6月以内なら割増登録料で申請でき、それも無いときに満了の時にさかのぼって消滅したものとみなす(20条3項・4項)。「存続期間の満了の時にさかのぼって更新されたものとみなされる」のは21条2項の回復だけ
- 回復(21条)は故意でないことが要件で、満了後12月が上限。12月「を経過しても、更新登録の申請をすることができる場合がある」という枝は誤り。以前の要件は「正当な理由」
- 回復した商標権の効力は20条3項の期間経過後、更新した旨の登録前の登録商標の使用と37条各号の行為に及ばない(22条)。その間に周知になっても継続使用権はないので、「その商品についてその商標の使用をする権利を有する」という枝は誤り
- 更新の申請は「商品及び役務の区分の数を減じてすることができる」。更新時に使用の審査はなく、申請できるのは商標権者
- 分割納付をしても存続期間は10年のままで、「設定登録の日から5年で満了するとみなされる」という枝は誤り。後期分割登録料の不納のときに満了前5年の日にさかのぼって消滅したものとみなすだけ(41条の2第6項)
- 防護標章の更新は「出願」で、満了後の出願は故意でない場合の救済だけ。「割増登録料を納付することにより、その存続期間を更新することができる」という枝は誤り。出願があっても拒絶査定・審決の確定で「その満了の時に更新されたものとみなされない場合がある」
- 国際登録に基づく商標権は国際登録の日から10年で、「その事後指定の日から」10年という枝は誤り。更新は国際登録の存続期間の更新による(68条の21)
この用語が問われた枝
平成18年11月10日(金曜日)に設定の登録がされた商標権の存続期間の更新登録の申請は、平成28年5月10日(火曜日)から手続きをすることができる。
商標権者は、商標権の存続期間の満了前6月から更新登録の申請ができるので、商標権の存続期間の満了の日が令和2年5月20日(水曜日)である商標権については、令和元年11月21日(木曜日)からその存続期間の更新登録の申請をすることができる。
商標権の存続期間の満了前6月から満了の日までの間に更新登録の申請がされない場合、その商標権は存続期間の満了の時に消滅するが、その期間経過後6月以内に更新登録の申請並びに登録料及びその登録料と同額の割増登録料の納付があったときは、その商標権は存続期間の満了の時にさかのぼって更新されたものとみなされる。
商標権の存続期間の満了の日の経過後6月以内に更新登録の申請がされず、商標権が存続期間の満了の時にさかのぼって消滅したものとみなされた場合において、当該商標権の原商標権者は、商標権の存続期間の満了の日の経過後 12月(期間の末日が、行政機関の休日に関する法律(昭和 63 年法律第 91号)第1条第1項各号に掲げる日に当たる場合を除く。)を経過しても、更新登録の申請をすることができる場合がある。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。