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補正と要旨変更(9条の4・16条の2・17条の2・68条の40)ほせいとようしへんこう

商標 第3章 出願 短答で16枝

補正と要旨変更とは、商標登録出願などの手続をした者が事件の係属中にその手続を直す補正(68条の40)と、願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものであるときに審査官が決定をもって却下し(16条の2)、設定登録の後に要旨変更と認められたときは出願日を手続補正書の提出時に繰り下げる(9条の4)仕組みです。

甲が「ハナ」を指定商品「菓子」で出願した後、やはり「パン」も入れたいと思って願書を直す場面を考えます。出願の後で指定商品を広げると、出願日の時点では無かった権利の範囲が後から生まれ、その間に出願した他人との先後が狂います。そこで商標法は、手続を直す補正は認めつつ、指定商品又は指定役務と商標の要旨を変える補正は審査官が決定で却下し、もし登録まで見逃されたときは出願日を手続補正書を出した時まで繰り下げることで、先願主義とのつじつまを合わせています。

特許庁の審査室の場面。先生が審査官役(札「審査官」)で机に座り、「手続補正書:指定商品 菓子 → 菓子、パン」と書かれた書面に大きく×印を付け、その横に「補正の却下の決定(理由を付す)」と書かれた文書を置いている。向かいに出願人の男性(札「

手続の補正は事件が審査、登録異議の申立てについての審理、審判又は再審に係属している場合に限ってでき、審決取消訴訟の係属中はできません

68条の40第1項は、商標登録出願、防護標章登録出願、請求その他の手続をした者は、事件が審査、登録異議の申立てについての審理、審判又は再審に係属している場合に限り、その補正をすることができると定めています。拒絶審決に対する訴えが裁判所に係属している場合はここに入っていないので、10条1項の出願の分割が訴えの係属中にもできるのと違って、訴えが裁判所に係属している場合は「当該補正をすることはできない」という枝は正しいです。拒絶査定不服審判に係属している間は補正できるので、指定役務の一部を「削除する補正をすることができる」という枝は正しいです。2項は、商標登録出願をした者が40条1項又は41条の2第1項の登録料の納付と同時に、出願に係る区分の数を減ずる補正をすることを、1項の時期にかかわらず認めています。

  • 補正できる時期(68条の40第1項)事件が審査、登録異議の申立てについての審理、審判又は再審に係属している場合に限ります。審決取消訴訟の係属中はできません
  • 登録料の納付と同時の補正(2項)区分の数を減ずる補正だけは、1項の時期にかかわらず登録料の納付と同時にできます
  • 出願の分割との違い(10条1項)分割は拒絶審決に対する訴えの係属中にもできますが、補正はできません

指定商品若しくは指定役務又は商標の要旨を変更する補正は審査官が決定をもって却下し、却下の決定の謄本の送達の日から3月を経過するまで査定をしてはなりません

16条の2第1項は、願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものであるときは、審査官は決定をもってその補正を却下しなければならないと定め、2項により却下の決定は文書で理由を付して行います。指定商品又は指定役務の要旨変更は、範囲を広げたり別の商品又は役務に入れ替えたりする補正で、類似する商品又は役務への変更でも範囲が変わるので要旨変更になり得ます。したがって、類似する商品又は役務に変更する補正は「要旨を変更するものとされることはない」という枝は誤りです。小売等役務と商品は2条2項で別のものとして扱われるので、第35類の小売等役務を第3類の「化粧品」に変更する補正も要旨変更で、「要旨を変更するものとして却下されることはない」という枝は誤りです。3項は、却下の決定があったときは決定の謄本の送達があった日から3月を経過するまでその出願について査定をしてはならないとし、出願人が審判を請求するか新たな出願をするかを決める時間を確保しています。却下の後に要旨を変更しない補正をし直しても、この3月の待ち期間は変わらないので、「3月を経過しなくても、当該商標登録出願について査定を行うことができる」という枝は誤りです。4項により、出願人が却下の決定に対して45条1項の審判を請求したときは、審決が確定するまで審査を中止します。

却下の決定には45条の審判か、補正後の商標についての新たな出願のどちらかで対応し、新たな出願をすれば審判は請求できません

45条1項は、16条の2第1項の却下の決定を受けた者は、決定の謄本の送達があった日から3月以内に審判を請求できると定めています。もう一つの道は、17条の2第1項で準用する意匠法17条の3で、却下の決定の謄本の送達があった日から3月以内に補正後の商標について新たな商標登録出願をすると、その新たな出願は補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなされ(同条1項)、もとの出願は取り下げたものとみなされます(同条2項)。この扱いを受けるには、その旨を記載した書面を新たな出願と同時に提出します(同条3項)。新たな出願はもとの出願の時までは遡らず手続補正書の提出時になるので、新たな出願をしたときは「その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなされる」という枝は正しいです。二つの道は両立しないので、45条1項ただし書により、新たな出願をしたときは審判を請求できず、新たな出願をした場合は「補正却下の決定に対する審判を請求することができない」という枝、「当該商標登録出願をした後は、その補正の却下の決定に対する審判を請求することができない」という枝はいずれも正しいです。

分岐の図。先生が先生役(札「先生」)で図の上に立ち、指し棒で札を示している。左に札「補正の却下の決定(謄本の送達)」があり、そこから二つの矢印が分かれる。上の矢印の先に札「補正却下決定不服審判(45条1項):3月以内/もとの出願のまま、審決

補正の却下の決定への二つの対応

項目補正却下決定不服審判(45条1項)補正後の商標についての新出願(17条の2・意匠法17条の3)
期間謄本の送達の日から3月以内です謄本の送達の日から3月以内です(審判段階の却下では30日です)
出願日もとの出願のままで、審決の確定まで審査を中止します(16条の2第4項)手続補正書を提出した時にしたものとみなされ、もとの出願は取り下げたものとみなされます
両者の関係新たな出願をしたときは請求できません(45条1項ただし書)新たな出願をしたときは、もとの出願は取り下げたものとみなされ、審判は請求できません(45条1項ただし書)

拒絶査定不服審判の中での補正の却下には審判ではなく東京高等裁判所への訴えで争い、新たな出願の期間は30日に読み替えられます

55条の2第3項は、16条の2と意匠法17条の3を拒絶査定不服審判に準用し、16条の2第3項と意匠法17条の3第1項の「3月」を「30日」に、16条の2第4項の「45条1項の審判を請求したとき」を「63条1項の訴えを提起したとき」に読み替えています。審判の中でされた却下の決定に対して、さらに審判で争う仕組みにはなっていないからです。63条1項は、この却下の決定に対する訴えを東京高等裁判所の専属管轄としています。したがって、審判係属中の補正の却下に不服があるときは「その決定の謄本の送達があった日から3月以内に審判を請求することができる」という枝は誤りで、審判請求人は「この決定に対する訴えを東京高等裁判所に提起することができる」という枝は正しいです。審判段階の却下の後に、謄本の送達の日から30日以内に「その補正後の指定役務について新たな商標登録出願をしたときは」手続補正書を提出した時にしたものとみなされるという枝は正しいです。

商標権の設定の登録の後に要旨を変更するものと認められた補正は出願日を手続補正書の提出時に繰り下げ、その間に他人の出願があれば無効理由になります

9条の4は、願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正が、これらの要旨を変更するものと商標権の設定の登録があった後に認められたときは、その商標登録出願は手続補正書を提出した時にしたものとみなすと定めています。審査で見逃された要旨変更をそのまま認めると、補正で広げた範囲について出願日の利益を不当に得ることになるので、出願日の方を繰り下げるのです。設定登録の後に要旨変更と認められたときは「その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなされる」という枝は正しく、その結果、当初の出願の時と手続補正書の提出時との間に同一又は類似の商標に係る他人の出願があれば、8条1項に違反する登録として46条1項1号の無効理由になり、「商標登録の無効の審判により無効とされることがある」という枝は正しいです。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の左から順に札「甲の商標登録出願(菓子)」「乙の商標登録出願(類似の商標・菓子、パン)」「甲の手続補正書(パンを追加)」「甲の商標権の設定の

国際商標登録出願は拒絶理由の通知を受けた後に限り指定商品又は指定役務を補正でき、商標は補正できません

68条の28第1項は、国際商標登録出願については、15条の2又は15条の3の拒絶理由の通知を受けた後は、事件が審査、審判又は再審に係属している場合に限り、願書に記載した指定商品又は指定役務について補正をすることができると定めています。拒絶理由の通知を受ける前は補正できないので、審査に係属している場合には「いつでも、願書に記載した指定商品又は指定役務について補正をすることができる」という枝は誤りです。商標は国際登録簿の記載が願書の記載とみなされるもので(68条の9第2項)、日本の特許庁で直すことはできないので、商標については「いかなる補正もすることができない」という枝は正しいです。同条2項により、国際商標登録出願には商標の詳細な説明とみなされた事項を除いて68条の40は適用されません。

商標法68条の40第1項

商標登録出願、防護標章登録出願、請求その他商標登録又は防護標章登録に関する手続をした者は、事件が審査、登録異議の申立てについての審理、審判又は再審に係属している場合に限り、その補正をすることができる。

商標法16条の2第1項

願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものであるときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。

商標法16条の2第3項

第一項の規定による却下の決定があつたときは、決定の謄本の送達があつた日から三月を経過するまでは、当該商標登録出願について査定をしてはならない。

商標法45条1項

第十六条の二第一項の規定による却下の決定を受けた者は、その決定に不服があるときは、その決定の謄本の送達があつた日から三月以内に審判を請求することができる。ただし、第十七条の二第一項において準用する意匠法第十七条の三第一項に規定する新たな商標登録出願をしたときは、この限りでない。

商標法9条の4

願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものと商標権の設定の登録があつた後に認められたときは、その商標登録出願は、その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす。

試験ではこう問われる

  1. 補正は審査・登録異議の審理・審判・再審の係属中に限る(68条の40第1項)。拒絶審決に対する訴えの係属中は補正できない(分割はできる)。登録料の納付と同時に区分の数を減ずる補正はできる
  2. 指定商品・指定役務や商標の要旨変更の補正は決定で却下する。類似商品への変更や小売等役務から商品への変更も要旨変更で、「却下されることはない」という枝は誤り
  3. 却下の決定の謄本の送達から3月を経過するまで査定をしてはならない。補正をし直しても「3月を経過しなくても査定を行うことができる」わけではない
  4. 却下には45条の審判(3月以内)か補正後の商標についての新出願(3月以内、手続補正書の提出時にしたものとみなす)のどちらか。新出願をすれば審判は請求できない
  5. 拒絶査定不服審判の中の補正却下は審判ではなく東京高裁への訴えで争い、新出願の期間は30日(55条の2第3項・63条1項)
  6. 登録後に要旨変更と認められれば出願日が手続補正書の提出時に繰り下がり、その間の他人の出願で無効とされることがある(9条の4)
  7. 国際商標登録出願は拒絶理由の通知後に限り指定商品・指定役務を補正でき、商標はいかなる補正もできない(68条の28)

この用語が問われた枝

令和6年度 問36 枝ハ正しい

商標登録出願に関する手続をした者は、事件が審査、登録異議の申立てについての審理、審判又は再審に係属している場合に商標法第 68 条の 40 第1項に規定される補正をすることができるが、商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合は、当該補正をすることはできない。

令和5年度 問38 枝イ正しい

「A,B,C」を指定役務とする商標登録出願について、拒絶をすべき旨の査定を受けた者が、当該査定に対して審判を請求したときは、その請求人は、当該出願が当該審判に係属している場合、当該指定役務中「B,C」を削除する補正をすることができる。

平成29年度 問37 枝イ誤り

商標登録出願に係る指定商品又は指定役務を、その指定商品又は指定役務に類似する商品又は役務に変更する補正は、非類似の商品又は役務への変更ではないので、要旨を変更するものとされることはない。

令和2年度 問38 枝イ誤り

商標登録出願に係る指定役務が、第35類の「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」である場合に、これを第3類の「化粧品」に変更する補正は、要旨を変更するものとして却下されることはない。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

商標を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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