コンセント制度(4条4項)と混同防止表示請求(24条の4)こんせんとせいどとこんどうぼうしひょうじせいきゅう
コンセント制度とは、商標法4条1項11号に該当する商標であっても、出願人が同号の他人の承諾を得ており、かつ、その商標を使用する商品役務と他人の登録商標に係る商標権者・専用使用権者・通常使用権者の業務に係る商品役務との間で混同を生ずるおそれがないものには11号を適用しないとする4条4項の仕組みです。混同防止表示請求とは、こうして類似の登録商標が異なった商標権者に属することとなった場合などに、業務上の利益が害されるおそれのある商標権者又は専用使用権者が、相手方にその者の業務に係る商品役務と自己の業務に係る商品役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求できる24条の4の仕組みです。
乙が菓子に「ハヤブサ」の登録商標を持っていて、甲がよく似た「はやぶさ」をパンに出願したとします。以前は乙が承諾しても審査官は11号で拒絶するしかありませんでした。令和5年改正で4条4項が加わり、乙の承諾があり、しかも両者の商品の間で混同を生ずるおそれがなければ、甲も登録を受けられるようになりました。承諾があっても需要者が取り違えるなら登録できないのは、商標法が需要者の利益も守るからです。似た登録商標が並び立った後に混同の心配が出れば、24条の4で混同を防ぐ表示を相手に求められます。

4条4項は、11号に該当する商標でも、他人の承諾を得ており、かつ混同を生ずるおそれがないものには11号を適用しません
4条4項は「第一項第十一号に該当する商標であつても、その商標登録出願人が、商標登録を受けることについて同号の他人の承諾を得ており、かつ、当該商標の使用をする商品又は役務と同号の他人の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務との間で混同を生ずるおそれがないものについては、同号の規定は、適用しない」と定めます。令和5年改正で設けられ、令和6年4月1日から施行されています。要件は承諾と混同のおそれがないことの二つで、どちらも必要です。先願登録商標ロと類似する商標イの出願について、「甲が商標登録を受けることについて乙から承諾を得ており、かつ」指定商品と乙の業務に係る商品との間で混同を生ずるおそれがない場合は、甲が「商標登録を受けることができるときがある」という枝は正しいです。混同のおそれがないことは審査官が実際に判断する要件なので、承諾書の中に「混同を生ずるおそれがない旨が明記されている場合」であっても、「その商標登録出願は同号に該当することを理由として拒絶されるときはない」という枝は誤りです。同じ改正で8条1項ただし書・2項ただし書・5項ただし書にも同じ型の例外が置かれ、先願の出願人の承諾と混同のおそれがないことがあれば後出願人も登録を受けられます。
24条の4は、コンセントや先願の承諾、移転などで類似の登録商標が異なった商標権者に属することとなった場合に、業務上の利益が害されるおそれのある商標権者・専用使用権者が混同防止表示を請求できるとします
24条の4第1項は、4条4項により商標登録がされたこと、8条1項ただし書などにより商標登録がされたこと、登録査定の謄本の送達後に出願により生じた権利が承継されたこと、商標権が移転されたことのいずれかの事由により、同一の商品役務に使う類似の登録商標、又は類似の商品役務に使う同一若しくは類似の登録商標に係る商標権が異なった商標権者に属することとなった場合を対象にします。その一方の商標権者・専用使用権者・通常使用権者の登録商標の使用により、他方の登録商標に係る商標権者又は専用使用権者の業務上の利益が害されるおそれのあるときは、その商標権者又は専用使用権者が、相手方に対して混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求できます。要件は害される「おそれ」なので、業務上の利益が「現実に害されていなければ、当該他の登録商標に係る商標権者は」請求できないという枝は誤りです。請求できる主体は商標権者又は専用使用権者に限られ、通常使用権者は請求の相手方にはなっても主体にはならないので、「当該他の登録商標に係る通常使用権者は、当該一の登録商標に係る通常使用権者に対し」請求できるという枝は誤りです。譲渡で商標権が分かれた場合は、譲渡人側も譲受人側も請求できます。団体商標の構成員は31条の2第3項により24条の4の適用について通常使用権者とみなされるので、団体商標に係る商標権の分割移転の後に、その商標権者はその団体の構成員に対して混同防止表示を請求することができます。令和5年改正前の24条の4は商標権の移転の場合だけを対象にしていましたが、コンセント制度の新設に合わせて各号に事由を列記する形になりました。

- 請求できる人業務上の利益が害されるおそれのある他の登録商標に係る商標権者又は専用使用権者です。通常使用権者は主体になりません
- 請求の相手一の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者です。団体構成員・地域団体構成員は通常使用権者とみなされます
- 要件登録商標の使用により業務上の利益(他の登録商標を使用している指定商品役務に係るものに限ります)が害されるおそれのあることです。現実の損害は要りません
- 対象となる事由4条4項による登録、8条1項・2項・5項のただし書による登録、登録査定の謄本送達後の出願により生じた権利の承継、商標権の移転です
先使用権者と中用権者に対しては、32条2項と33条3項により商標権者又は専用使用権者が混同防止表示を請求できます
混同防止表示の請求は、登録商標どうしの併存のほかに、登録のない使用権との併存でも使います。32条2項は、商標権者又は専用使用権者が先使用による商標の使用をする権利を有する者に対して、その者の業務に係る商品役務と自己の業務に係る商品役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求できるとします。団体商標の商標権者も、先使用による商標の使用をする権利を取得した者に対してこの表示を請求することができます。33条3項は32条2項を中用権に準用するので、同一の指定商品に使う同一の商標についての二つの商標登録の一方が無効にされた場合の原商標権者が中用権を持つときも、「商標権者は、その者に対し、その者の業務に係る商品と自己の業務に係る商品との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる」という枝は正しいです。中用権は、その商標が原商標権者の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたことを要件に成り立つ権利なので、周知であることは請求を妨げる理由になりません。
併存登録の一方が不正競争の目的で混同を生ずる使用をしたときは、何人も52条の2の取消審判を請求でき、取消しの審決が確定した日から5年間はその者は登録を受けられません
52条の2第1項は、24条の4各号に掲げる事由により類似の登録商標に係る商標権が異なった商標権者に属することとなった場合に、その一方の商標権者が不正競争の目的で、他方の商標権者・専用使用権者・通常使用権者の業務に係る商品役務と混同を生ずる登録商標の使用をしたときは、何人もその商標登録の取消しの審判を請求できるとします。混同防止表示請求が穏やかな調整であるのに対し、こちらは悪意の使用者から登録そのものを奪う制裁です。「その商標登録」の取消しを求める審判なので、50条の不使用取消審判と違って「指定商品ごとに取消しを請求することは認められない」という枝は正しいです。52条の2第2項が準用する52条により、「当該使用の事実がなくなった日から5年を経過した後は、請求することができない」という枝は正しいです。取消しの審決が確定すると54条1項によりその商標権はその後消滅するので、「その審判の請求の登録の日に消滅したものとみなされる場合がある」という枝は誤りです。商標権の消滅後には請求できないので、52条の2と53条の2の審判は「商標権の消滅後には、請求することができない」という枝は正しいです。同じく準用される51条2項により、商標権者であった者は審決確定の日から5年を経過した後でなければ同一・類似の商品役務について同一・類似の商標の登録を受けられないので、「当該審決が確定した日から5年を経過した後であれば」他の拒絶理由がない限り登録を受けられるという枝は正しいです。

商標法4条4項第一項第十一号に該当する商標であつても、その商標登録出願人が、商標登録を受けることについて同号の他人の承諾を得ており、かつ、当該商標の使用をする商品又は役務と同号の他人の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務との間で混同を生ずるおそれがないものについては、同号の規定は、適用しない。
商標法24条の4第1項次に掲げる事由により、同一の商品若しくは役務について使用をする類似の登録商標又は類似の商品若しくは役務について使用をする同一若しくは類似の登録商標に係る商標権が異なつた商標権者に属することとなつた場合において、その一の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の指定商品又は指定役務についての登録商標の使用により他の登録商標に係る商標権者又は専用使用権者の業務上の利益(当該他の登録商標の使用をしている指定商品又は指定役務に係るものに限る。)が害されるおそれのあるときは、当該他の登録商標に係る商標権者又は専用使用権者は、当該一の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者に対し、当該使用について、その者の業務に係る商品又は役務と自己の業務に係る商品又は役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。
商標法32条2項当該商標権者又は専用使用権者は、前項の規定により商標の使用をする権利を有する者に対し、その者の業務に係る商品又は役務と自己の業務に係る商品又は役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。
商標法52条の2第1項第二十四条の四各号に掲げる事由により、同一の商品若しくは役務について使用をする類似の登録商標又は類似の商品若しくは役務について使用をする同一若しくは類似の登録商標に係る商標権が異なつた商標権者に属することとなつた場合において、その一の登録商標に係る商標権者が不正競争の目的で指定商品又は指定役務についての登録商標の使用であつて他の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。
試験ではこう問われる
- 4条4項の要件は承諾と混同を生ずるおそれがないことの両方。承諾書に「混同を生ずるおそれがない旨が明記されている場合」でも、拒絶される「ときはない」という枝は誤り
- 24条の4の請求は業務上の利益が害される「おそれ」で足りる。「現実に害されていなければ」請求できないという枝は誤り
- 24条の4の請求の主体は商標権者又は専用使用権者。通常使用権者が通常使用権者に対し請求できるという枝は誤り。相手方には通常使用権者も入る
- 譲渡で分かれた場合は譲渡人側も譲受人側も請求でき、譲受人に限られない
- 団体構成員は31条の2第3項で通常使用権者とみなされ、団体商標の分割移転後に商標権者から構成員に請求できる
- 先使用権者には32条2項、中用権者には33条3項の準用で商標権者・専用使用権者が請求できる。中用権者の商標が周知でも請求を妨げない
- 52条の2の審判は何人も請求でき、指定商品ごとの取消請求はできない。使用の事実がなくなった日から5年で請求できなくなり、商標権の消滅後も請求できない
- 52条の2の取消しで商標権はその後消滅し、請求の登録の日に遡らない。商標権者であった者は審決確定の日から5年を経過しなければ同一・類似の商標を登録できない
この用語が問われた枝
甲が自己が使用する商標イについて商品aを指定する商標登録出願を行ったところ、商品aと類似する商品bを指定する商標イと類似する他人乙の先願に係る登録商標ロがあった。この場合であっても、甲が商標登録を受けることについて乙から承諾を得ており、かつ、商標イの指定商品aと乙の業務に係る商品との間で混同を生ずるおそれがない場合は、甲は、商標イについて商標登録を受けることができるときがある。
商標法第4条第1項第 11 号に該当する商標であっても、その商標登録出願人が、商標登録を受けることについて、同号の他人の承諾を得ており、かつ、その承諾を表す書面の中で、当該商標の使用をする商品又は役務と同号の他人の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務との間で混同を生ずるおそれがない旨が明記されている場合、その商標登録出願は同号に該当することを理由として拒絶されるときはない。
商標権が移転された結果、類似の商品について使用する同一の登録商標に係る商標権が異なった商標権者に属することとなった場合、その一の登録商標に係る商標権者の指定商品についての登録商標の使用により他の登録商標に係る商標権者の業務上の利益(当該他の登録商標の使用をしている指定商品に係るものに限る。)が現実に害されていなければ、当該他の登録商標に係る商標権者は、当該一の登録商標に係る商標権者に対し、当該使用について、その者の業務に係る商品と自己の業務に係る商品との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができない。
商標権が分割移転された結果、類似の商品について使用をする同一の登録商標に係る商標権が異なった商標権者に属することとなった場合において、その一の登録商標に係る通常使用権者の指定商品についての登録商標の使用により他の登録商標に係る通常使用権者の業務上の利益(当該他の登録商標の使用をしている指定商品に係るものに限る。)が害されるおそれのあるときは、当該他の登録商標に係る通常使用権者は、当該一の登録商標に係る通常使用権者に対し、当該使用について、その者の業務に係る商品と自己の業務に係る商品との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。