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商標権の分割・移転・質権・放棄(24条〜24条の3・34条〜35条)しょうひょうけんのぶんかついてんしちけんほうき

商標 第5章 商標権の効力・存続・移転・使用権 短答で16枝

商標権の分割とは、指定商品・指定役務が2以上あるときに指定商品・指定役務ごとに商標権を分けることで(24条)、移転とは商標権を他人に承継させることです(24条の2・24条の3)。商標権には質権を設定でき(34条)、放棄には専用使用権者・質権者・通常使用権者の承諾が要ります(34条の2)。分割・移転・信託による変更・放棄・処分の制限は登録が効力要件です(35条で準用する特許法98条1項1号)。

商標権は財産なので、会社の事業を売るときに一緒に譲ったり、銀行から借りるときの担保にしたりできます。特許権と違うのは、商標権が営業上の信用の印であることです。一つの商標権を商品ごとに分けて別々の人に移すと、同じ商標が別の出所を示すことになりますが、商標法はそれでも分割移転を認め、混同は混同防止表示の請求と不正使用取消しで後から調整します。一方で、国や地方公共団体の商標や地域団体商標のように、特定の主体と結びついて登録された商標権は譲渡できません。

特許庁の窓口の場面。先生が窓口の職員役(札「特許庁」)でカウンターの内側に座り、「商標権の移転登録申請書:指定商品 菓子 → 乙へ、指定商品 パン → 丙へ」と書かれた紙を受け取っている。カウンターの外に店主の男性(札「商標権者 甲」)が立

商標権の分割は指定商品・指定役務ごとにでき、消滅後も無効審判の事件が審判・再審・訴訟に係属している間はでき、専用使用権者の承諾は要りません

商標権の分割は、指定商品・指定役務が2以上あるときは、指定商品・指定役務ごとにすることができます(24条1項)。無効審判は指定商品ごとに請求されるので、消滅した商標権についても分割して争う実益があります。そこで24条2項は、商標権の消滅後においても、46条3項の無効審判の請求があったときは、その事件が審判、再審又は訴訟に係属している場合に限り分割できるとしました。訴訟に係属している場合は明文で含まれるので、審判・再審に係属していないから「商標権の分割をすることはできない」という枝は誤りです。分割に専用使用権者の承諾を要する規定はありません。専用使用権を設定していた商標権を分割するに当たり「乙の承諾を得なければならない」という枝は誤りです(承諾が要るのは放棄の場面だからです)。商標権を分割すると、その商標権に基づく防護標章登録に基づく権利は消滅します(66条1項)。商標権の分割、移転(一般承継を除く)、信託による変更、放棄による消滅、処分の制限は登録が効力要件なので(35条で読み替えて準用する特許法98条1項1号)、これらは「登録しなければその効力を生じない」という枝は正しいです。

商標権の移転は指定商品・指定役務ごとに分割してでき、類似する指定商品を別人に移してもよく、混同は混同防止表示の請求で調整します

商標権の移転は、指定商品・指定役務が2以上あるときは、指定商品・指定役務ごとに分割してすることができます(24条の2第1項)。指定商品が相互に類似する場合を除く規定はないので、それらが「相互に類似するものであっても、指定商品ごとに分割してすることができる」という枝は正しいです。事業と切り離した譲渡も自由です。その結果として同一・類似の登録商標が別の商標権者に属し、一方の使用で他方の業務上の利益が害されるおそれがあるときは、他方の商標権者・専用使用権者は混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求できます(24条の4)。要件は害されるおそれであって現実の損害ではないので、業務上の利益が「現実に害されていなければ」請求できないという枝は誤りです。不正競争の目的で混同を生じさせれば52条の2の取消審判の対象になります。特許法74条のような移転請求権は商標法になく、35条が準用する特許法の規定にも74条は入っていません。4条1項19号に違反して登録された場合でも、周知商標の主体が商標権の移転を「請求することができる場合はない」という枝は正しく、無効審判で争うことになります。

図の中央に三枚の商標登録証を並べた図式。左の登録証に「国・地方公共団体の商標(4条2項)」、中央の登録証に「地域団体商標」、右の登録証に「公益事業者の商標(4条2項)」と書かれ、左と中央の登録証には「譲渡できない(24条の2第2項・4項)」

4条2項の商標権と地域団体商標は譲渡できませんが、相続その他の一般承継による移転はできます

国・地方公共団体等の4条2項に規定する出願に係る商標権は譲渡できず(24条の2第2項)、公益事業者の4条2項の商標権はその事業とともにする場合を除き移転できません(同条3項)。地域団体商標に係る商標権も譲渡できません(同条4項)。いずれも特定の主体だからこそ登録を認めた商標で、他人に渡れば登録の前提が崩れるからです。禁じられているのは譲渡なので、合併などの一般承継による移転は妨げられず、地方公共団体の4条2項の商標権は「移転することができる場合はない」という枝は誤りです。地域団体商標の譲渡に例外はなく、32条の2の「先使用権を有する者に対してのみ、譲渡することができる」という枝も誤りです。団体商標に係る商標権が移転されたときは、通常の商標権に変更されたものとみなされます(24条の3第1項)。団体商標のまま移転するには、その旨を記載した書面と7条3項の書面を移転の登録の申請と同時に提出します(同条2項)。書面の提出がなければ通常の商標権として移転されるのであって、「商標権の移転が認められない」という枝は誤りです。この手続は団体商標に係る商標権を移す場合のもので、書面を提出しても通常の商標権が「団体商標に係る商標権として移転されることはない」という枝は正しいです。

  • 譲渡できない商標権国・地方公共団体等の4条2項の商標権(24条の2第2項)と地域団体商標に係る商標権(同条4項)です。一般承継による移転はできます
  • 事業とともにする場合だけ移転できる商標権公益事業者の4条2項の商標権です(24条の2第3項)
  • 団体商標の移転書面を同時に提出すれば団体商標のまま移転でき、なければ通常の商標権に変更されたものとみなされます(24条の3)
  • 移転後の調整混同防止表示の請求(24条の4)と不正使用による取消審判(52条の2)です。移転請求権はありません

商標権には質権を設定できますが、質権者は契約で別段の定めがなければ使用できず、抵当権や出願により生じた権利への質権は認められません

商標権、専用使用権、通常使用権を目的として質権を設定できます。質権者は、契約で別段の定めをした場合を除き、指定商品・指定役務について登録商標の使用をすることができません(34条1項)。裏返せば契約で定めれば使用できるので、質権者が登録商標の使用を「することができる場合はない」という枝は誤りです。商標法が予定する約定担保は質権だけで、民法上も抵当権の目的は不動産等に限られるので、商標権は「抵当権の目的とすることができない」という枝は正しいです。譲り渡すことができない権利には質権を設定できないので、4条2項の商標権と地域団体商標に係る商標権は「共有に係るときでなくても、質権の目的とすることができない場合がある」という枝は正しいです。商標登録出願により生じた権利には特許法33条2項が準用され質権を設定できないので、「質権の目的とすることができる場合がある」という枝は誤りです。先使用権や中用権も業務と結びついた権利で質権の目的になりません。商標権・専用使用権を目的とする質権の設定等は登録が効力要件で(34条4項で準用する特許法98条1項3号)、通常使用権を目的とする質権は登録が対抗要件です(34条2項)。

銀行の融資窓口の場面。先生が銀行員役(札「銀行」)でカウンターの内側に座り、「質権設定契約書:商標権」と書かれた書類を手にしている。カウンターの外に店主の男性(札「商標権者」)が立ち、吹き出し「商標権を担保に融資を受けたい。抵当権ではだめで

商標権の放棄には専用使用権者・質権者・通常使用権者の承諾が要りますが、国際登録に基づく商標権には承諾の規定が適用されません

商標権者は、専用使用権者、質権者又は通常使用権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、商標権を放棄できます(34条の2)。放棄すれば使用権や質権の土台が消えるからです。国際登録に基づく商標権については、国際登録の名義人が国際事務局で放棄する仕組みなので34条の2は適用されず(68条の25第2項)、国際登録に基づく商標権者は専用使用権者があっても「当該専用使用権者の承諾を得なければ、当該商標権を放棄することができない」という枝は誤りです。放棄による消滅は登録が効力要件で、商標公報に掲載されます。

商標法24条

商標権の分割は、その指定商品又は指定役務が二以上あるときは、指定商品又は指定役務ごとにすることができる。
2 前項の分割は、商標権の消滅後においても、第四十六条第三項の審判の請求があつたときは、その事件が審判、再審又は訴訟に係属している場合に限り、することができる。

商標法24条の2

商標権の移転は、その指定商品又は指定役務が二以上あるときは、指定商品又は指定役務ごとに分割してすることができる。
2 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関又は公益に関する団体であつて営利を目的としないものの商標登録出願であつて、第四条第二項に規定するものに係る商標権は、譲渡することができない。
3 公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者の商標登録出願であつて、第四条第二項に規定するものに係る商標権は、その事業とともにする場合を除き、移転することができない。
4 地域団体商標に係る商標権は、譲渡することができない。

商標法34条1項

商標権、専用使用権又は通常使用権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定めをした場合を除き、当該指定商品又は指定役務について当該登録商標の使用をすることができない。

商標法34条の2

商標権者は、専用使用権者、質権者又は通常使用権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その商標権を放棄することができる。

試験ではこう問われる

  1. 分割は指定商品ごと。消滅後も無効審判の事件が審判・再審・訴訟に係属していればでき、「訴訟」も含まれる。専用使用権者の「承諾を得なければならない」という枝は誤り
  2. 分割・移転・信託による変更・放棄・処分の制限は「登録しなければその効力を生じない」(35条で準用する特許法98条1項1号)
  3. 類似する指定商品でも「指定商品ごとに分割してすることができる」。混同防止表示請求(24条の4)は害されるおそれで足り、「現実に害されていなければ」請求できないという枝は誤り
  4. 4条2項の商標権と地域団体商標は譲渡できないが一般承継はできる。「移転することができる場合はない」「先使用権を有する者に対してのみ、譲渡することができる」という枝は誤り
  5. 団体商標は書面を同時に提出しなければ通常の商標権に変更されたものとみなされ、「移転が認められない」わけではない。通常の商標権を団体商標として移転することはできない
  6. 特許法74条のような移転請求権はなく、19号違反でも移転を「請求することができる場合はない」
  7. 質権者は契約で別段の定めがあれば使用できる。抵当権は設定できず、譲渡できない商標権と出願により生じた権利には質権を設定できない
  8. 放棄には専用使用権者・質権者・通常使用権者の承諾が要るが、国際登録に基づく商標権には34条の2が適用されない

この用語が問われた枝

令和4年度 問37 枝ロ誤り

商標権の分割は、その指定商品が2以上あるときは、指定商品ごとにすることができるところ、商標権の消滅後にその商標登録を無効にすることについて審判の請求があって、その事件が訴訟に係属している場合であっても、審判又は再審のいずれかに係属しているわけではないので、商標権の分割をすることはできない。

令和元年度 問38 枝ハ誤り

商標権者甲は、自己の商標権について指定商品又は指定役務が2以上ある場合であって、他人乙に専用使用権を設定していたときは、その商標権を分割するに当たり、乙の承諾を得なければならない。

令和2年度 問37 枝イ正しい

商標権の分割、信託による変更、放棄による消滅又は処分の制限は、登録しなければその効力を生じない。

令和6年度 問37 枝イ正しい

商標権の移転は、その指定商品が2以上ある場合において、それらが相互に類似するものであっても、指定商品ごとに分割してすることができる。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

商標を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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