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不正使用等による取消審判(51条〜53条の3)ふせいしようとうによるとりけししんぱん

商標 第7章 審判・再審・訴訟 短答で12枝

不正使用等による取消審判とは、商標権者が故意に類似範囲の商標を使って品質の誤認や他人の商品との混同を生じさせたとき(51条)、商標権の移転等で分かれた類似の登録商標の商標権者が不正競争の目的で混同を生じさせたとき(52条の2)、使用権者が品質の誤認や混同を生ずる使用をしたとき(53条)、又は条約の同盟国等で商標に関する権利を有する者の代理人等が承諾なく登録を受けたとき(53条の2)に、その商標登録を取り消すことについて請求できる審判です。不使用取消審判と違い、商標の信用を損ねる行為への制裁として商標登録全体を取り消します。

登録商標を持っていても、わざと少し変えた形で使って他社の人気商品と間違えさせたり、品質を誤認させたりすれば、商標法が守る需要者の信頼を自分で壊していることになります。そうした商標権者や使用権者から登録を取り上げるのが51条から53条までの不正使用による取消審判で、不使用取消審判と違って制裁なので商標登録全体が取り消され、5年間は登録し直せません。53条の2は、外国の商標権者の代理人が勝手に登録した商標を本来の権利者の請求で取り消す仕組みです。

特許庁の審判廷の場面。先生が審判長役(札「審判長」)で中央に座り、左右に審判官(札「審判官」)が座る。左に請求人の男性(札「請求人(何人も)」)が「取消審判請求書:51条1項」と書かれた書類を掲げ、机の上に二つの商品箱が並ぶ。一つは「登録商

51条は商標権者が故意に類似範囲の商標を使って品質の誤認又は混同を生じさせたときに何人も請求でき、指定商品についての登録商標そのものの使用や色違いの使用は対象になりません

51条1項の要件は、商標権者が、故意に、指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用、又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用をし、それが商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものであることです。対象は専用権の範囲の外にある類似範囲の使用で、指定商品について登録商標そのものを使う行為は、たとえ品質が劣悪でも51条には当たりません。登録の範囲内で使っている限り、それは登録を認めた制度の側の問題だからです。色違いの商標も同じで、70条3項により、37条1号と51条1項の「登録商標に類似する商標」には、色彩を登録商標と同一にすれば登録商標と同一と認められる商標を含みません。商標権者が指定商品について「色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを使用して」故意に混同を生じさせても取り消されることはないという枝は正しいです。請求人は何人もです。2項により、商標権者であった者は、取消審決が確定した日から5年を経過した後でなければ、その商標登録に係る指定商品等又はこれらに類似する商品等について、その登録商標又はこれに類似する商標についての商標登録を受けられません。起算点は審決の確定した日なので、「審決の謄本の送達があった日から5年を経過した後であっても」登録を受けられないときがあるという枝は正しいです。52条により、51条の審判は商標権者の不正使用の事実がなくなった日から5年を経過した後は請求できません。

工場の出荷場の場面。先生が先生役(札「先生」)で作業台の横に立ち、三つの商品箱を指している。左の箱は「登録商標そのもの(指定商品)」と書かれ、上に札「51条の対象外」。中央の箱は「色だけ違う登録商標」と書かれ、上に札「70条3項:類似する商

51条と53条の審判は商標登録全体を取り消す制裁なので、一部の指定商品についての請求も商標権の消滅後の請求もできません

46条1項後段や50条1項には指定商品又は指定役務ごとに請求できる旨の定めがありますが、51条1項と53条1項は「その商標登録を取り消すことについて」請求するとだけ定めています。不正使用への制裁として登録全体を取り消す趣旨なので、2以上の指定商品のうち「その一部の指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる」という枝は誤りです。同じく、46条3項のような商標権の消滅後も請求できる旨の定めが無いので、51条と53条の審判は「その商標権の消滅後においても、請求することができる場合がある」という枝は誤りです。消滅した後に制裁として取り消す意味が無いからです。

52条の2は商標権の移転等で分かれた類似の登録商標について、一方の商標権者が不正競争の目的で混同を生ずる使用をしたときの取消審判です

52条の2第1項は、24条の4各号に掲げる事由(コンセント制度による登録、8条のただし書による登録、査定の謄本の送達後の権利の承継、商標権の移転)により、同一の商品等について使用をする類似の登録商標、又は類似の商品等について使用をする同一若しくは類似の登録商標に係る商標権が異なった商標権者に属することとなった場合に、その一の登録商標に係る商標権者が不正競争の目的で指定商品又は指定役務についての登録商標の使用であって他の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるものをしたときは、何人もその商標登録を取り消すことについて請求できると定めます。51条と違い、ここでは指定商品についての登録商標そのものの使用が対象で、類似の登録商標が別々の人に属する状態を前提にしているからです。移転の結果分かれた商標権者が不正競争の目的で「他の登録商標に係る通常使用権者の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたときは」請求できるという枝は正しく、この審判でも「指定商品ごとに取消しを請求することは認められない」という枝は正しいです。2項が51条2項と52条を準用するので、取消審決が確定した日から5年は再登録を受けられず、使用の事実がなくなった日から5年で請求できなくなります。商標権者であった者は「当該審決が確定した日から5年を経過した後であれば、他の拒絶理由に該当しない限り」類似する商標の登録を受けられるという枝は正しいです。令和5年改正(令和6年4月施行)の前は商標権が移転された場合だけが対象で、同改正でコンセント制度による登録などの24条の4各号の事由に広がりました。令和5年度までの枝が「商標権が移転された結果」とだけ書いているのはそのためです。

53条は使用権者の不正使用で故意を要件とせず、商標権者が知らずに相当の注意をしていたときだけ免れます

53条1項は、専用使用権者又は通常使用権者が、指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であって、商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人もその商標登録を取り消すことについて請求できると定めます。51条と違って故意は要件でなく、使用の範囲も指定商品についての登録商標そのものの使用を含みます。使用権者を監督する責任が商標権者にあるからで、ただし書により、商標権者がその事実を知らなかった場合において相当の注意をしていたときだけ取消しを免れます。専用使用権者の品質誤認を生ずる使用について「当該使用が故意である場合に限り当該商標登録は取り消される」という枝は誤りです。2項により、商標権者であった者と、不正使用をした使用権者であった者は、審決が確定した日から5年を経過するまで同一・類似の商標の登録を受けられません。3項が52条を準用するので、通常使用権者の混同を生ずる使用を理由とする審判は「当該使用の事実がなくなった日から5年を経過した後は、請求することができない」という枝は正しいです。

商店の店先の場面。先生が先生役(札「先生」)で店の前に立つ。店の中に店主の男性(札「通常使用権者」)が「登録商標を付した品質の劣る商品」と書かれた箱を並べていて、箱に札「品質の誤認」。店の外に商標権者の男性(札「商標権者」)が驚いた顔で立ち

53条の2は条約の同盟国等で商標権に相当する権利を有する者だけが請求でき、設定登録から5年の除斥期間があり、取消しの効果は将来に向かいます

53条の2は、登録商標がパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限ります)を有する者の商標又はこれに類似する商標であって、その権利に係る商品等又はこれらに類似する商品等を指定商品等とするものであり、かつ、その出願が正当な理由がないのにその権利者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者、又は出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたものであるときは、その商標に関する権利を有する者が取消審判を請求できると定めます。パリ条約6条の7を受けた規定で、請求人は何人もではなく本来の権利者に限られ、質権に相当する権利を有する者は商標権に相当する権利を有する者ではないので請求できません。「質権に相当する権利を有する者が含まれる」という枝は誤りです。53条の3により、この審判は商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は請求できません。「商標権の設定の登録の日から5年経過後であっても、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる」という枝は誤りです。代理人の不正登録は4条1項各号の不登録事由には無いので、登録異議の申立ての理由にも無効理由にもならず、この取消審判だけが手段です。取消しの効果は、51条から53条の2までのいずれも54条1項により審決の確定後に将来に向かって消滅するもので、請求の登録の日に遡るのは50条の不使用取消審判だけです。53条の2の審判で「商標登録を取り消すべき旨の審決が確定したときは、商標権は、その後消滅する」という枝は正しいです。

特許庁の審判廷の場面。先生が審判長役(札「審判長」)で中央に座る。左に請求人の男性(札「外国の商標権者(商標権に相当する権利を有する者)」)が「取消審判請求書:53条の2」と書かれた書類と「設定登録から4年」と書かれたカレンダーを持ち、吹き

不正使用等による取消審判の比較

51条商標権者が故意に類似範囲の商標を使用して品質の誤認又は混同を生じさせたとき(色違いと登録商標そのものの使用は除く)何人も使用の事実がなくなった日から5年(52条)。再登録は審決確定の日から5年不可(51条2項)
52条の2移転等で分かれた類似の登録商標の商標権者が不正競争の目的で指定商品についての登録商標を使用して混同を生じさせたとき何人も51条2項・52条を準用
53条専用使用権者・通常使用権者が品質の誤認又は混同を生ずる使用をしたとき(故意不要。商標権者が知らず相当の注意をしていたときを除く)何人も52条を準用。再登録は審決確定の日から5年不可(53条2項)
53条の2条約当事国で商標権に相当する権利を有する者の代理人等が承諾なく正当な理由なしに出願して登録を受けたときその商標に関する権利を有する者設定登録の日から5年の除斥期間(53条の3)
商標法51条1項

商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。

商標法53条1項

専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。ただし、当該商標権者がその事実を知らなかつた場合において、相当の注意をしていたときは、この限りでない。

商標法53条の3

前条の審判は、商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない。

試験ではこう問われる

  1. 51条は商標権者の故意の類似範囲の使用が対象。色違いの商標(70条3項)や指定商品についての登録商標そのものの使用では「取り消されることはない」
  2. 再登録の禁止は「審決が確定した日から5年」。「審決の謄本の送達があった日から5年を経過した後であっても」受けられないときがある。52条の2・53条も同じ
  3. 51条・53条は商標登録全体の取消し。「一部の指定商品」についての請求、「商標権の消滅後」の請求はできない。52条の2も「指定商品ごとに取消しを請求することは認められない」
  4. 52条の2は移転等で分かれた類似の登録商標の商標権者が不正競争の目的で混同を生ずる使用をしたとき。「通常使用権者の業務に係る商品と混同」でもよい。使用の事実がなくなった日から5年で請求不可
  5. 53条の使用権者の不正使用は故意不要。「故意である場合に限り」という枝は誤り。商標権者が知らず相当の注意をしていたときだけ免れる
  6. 53条の2の請求人は商標権に相当する権利を有する者で、「質権に相当する権利を有する者が含まれる」という枝は誤り。設定登録の日から5年の除斥期間(53条の3)があり、「5年経過後であっても」請求できるという枝は誤り
  7. 取消しの効果は「その後消滅する」(54条1項)。請求の登録の日に遡るのは不使用取消審判だけ

この用語が問われた枝

令和元年度 問39 枝ニ正しい

商標権者が、指定商品について、登録商標(色彩のみからなる登録商標を除く。以下本枝において同様とする。)に類似する商標であって、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを使用して、故意に他人の業務に係る商品と混同を生じさせたとしても、商標法第 51 条第1項の審判(商標権者の不正使用による商標登録の取消しの審判)により、当該商標登録が取り消されることはない。

令和8年度 問38 枝ロ正しい

商標法第51条第1項の審判(商標権者の不正使用による商標登録の取消しの審判)により当該商標登録が取り消された場合において、商標権者であった者は、同項の規定により商標登録を取り消すべき旨の審決の謄本の送達があった日から5年を経過した後であっても、同条第2項の規定により、その商標登録に係る指定商品に類似する商品について、その登録商標の商標登録を受けることができないときがある。

令和元年度 問39 枝ハ誤り

商標法第 51 条第 1 項の審判(商標権者の不正使用による商標登録の取消しの審判)及び商標法第53条第1項の審判(使用権者の不正使用による商標登録の取消しの審判)において、商標登録に係る指定商品又は指定役務が2以上のものについては、その一部の指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。

平成30年度 問35 枝ホ誤り

商標法第51条第1項の審判(商標権者の不正使用による商標登録の取消しの審判)及び商標法第53条第1項の審判(使用権者の不正使用による商標登録の取消しの審判)は、その商標権の消滅後においても、請求することができる場合がある。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

商標を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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