出願時の特例とパリ条約の例による優先権(9条・9条の2〜13条)しゅつがんじのとくれいとぱりじょうやくのれいによるゆうせんけん
出願時の特例とパリ条約の例による優先権とは、博覧会に出品した商品又は出展した役務について使用をした商標を出品又は出展の日から6月以内に出願したときにその出願を出品又は出展の時にしたものとみなす制度(9条)と、パリ条約の同盟国・世界貿易機関の加盟国・商標法条約の締約国でした商標の登録の出願に基づいて、パリ条約4条の例により日本の商標登録出願で優先権を主張できる制度(9条の2・9条の3・13条)です。
見本市に新しいブランド名を付けた商品を出した甲が、会場で評判になったのを見て商標登録を急ぐ場面を考えます。商標には特許のような新規性はないので、出品で商標が知られること自体は登録の妨げになりません。ただ、見本市を見た乙が先に同じ商標を出願すると、先願主義で甲が負けてしまいます。そこで9条は、出品又は出展の日から6月以内に出願すれば出品・出展の時に出願したものとみなして先後願の判断を繰り上げます。外国で先に出願した人にも同じ考えで、パリ条約の例による優先権が認められています。

博覧会に出品した商品又は出展した役務について使用をした商標は、出品又は出展の日から6月以内に出願すれば出品又は出展の時にしたものとみなされます
9条1項は、対象になる博覧会を四つ挙げています。一つ目は政府等が開設する博覧会、二つ目は政府等以外の者が開設する博覧会であって特許庁長官の定める基準に適合するものです。三つ目はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会です。四つ目は、それらのいずれにも該当しない国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会であって特許庁長官の定める基準に適合するものです。これらに出品した商品又は出展した役務について使用をした商標について、出品した者又は出展した者がその出品又は出展の日から6月以内にその商品又は役務を指定商品又は指定役務として商標登録出願をしたときは、その出願は出品又は出展の時にしたものとみなされます。政府等以外の者が開設する国内の博覧会でも基準に適合すれば対象になるので、その出品の日から6月以内に出願したときは「その商標登録出願は、その出品の時にしたものとみなされる」という枝は正しいです。特許法30条の新規性喪失の例外が新規性を失わなかったことにするだけで出願日を動かさないのに対し、商標の出願時の特例は出願の時そのものを出品又は出展の時に繰り上げるので、8条の先後願や4条1項11号の先願登録商標との関係がその時点で判断されます。
- 対象の博覧会(9条1項)政府等が開設する博覧会、政府等以外の者が開設する博覧会で特許庁長官の定める基準に適合するもの、パリ条約の同盟国・世界貿易機関の加盟国・商標法条約の締約国でその政府等又はその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会、それ以外の国でその政府等又はその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会で基準に適合するものです
- 期間出品又は出展の日から6月以内に、その商品又は役務を指定商品又は指定役務として出願します
- 効果その商標登録出願は出品又は出展の時にしたものとみなされます
特例を受けるにはその旨の書面を出願と同時に、証明書を出願の日から30日以内に提出し、30日を過ぎても省令で定める期間内なら提出でき、分割や変更のときは提出したものとみなされます
9条2項は、特例の適用を受けようとする者に、その旨を記載した書面を商標登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、商標と商品又は役務が1項のものであることを証明する書面(証明書)を商標登録出願の日から30日以内に提出することを求めています。3項により、30日以内に証明書を提出できないときは、その期間が経過した後であっても経済産業省令で定める期間内に限り提出でき、理由は問われません。この期間は商標法施行規則6条の2第2項で30日の期間の経過後2月と定められています。したがって、「当該期間経過後2月以内であれば、当該証明書を提出することができる」という枝は正しいです。4項は、その責めに帰することができない理由で3項の期間内にも提出できないときに、理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内でその期間の経過後6月以内の提出を認めるもので、不責事由が要るのはこの4項の救済だけです。出願を分割したときは、10条2項ただし書により9条2項と優先権の書面については新たな出願の時を基準にしますが、10条3項により、もとの出願について提出された書面又は書類で新たな出願について9条2項により提出しなければならないものは、新たな出願と同時に提出されたものとみなされます。この10条3項は11条6項で出願の変更にも準用されるので、出品の時にしたものとみなされた出願を団体商標の商標登録出願に変更した場合、もとの出願で提出した9条2項の書面は「団体商標への出願変更と同時に提出されたものとみなされる」という枝は正しいです。

- その旨の書面(9条2項)商標登録出願と同時に提出します
- 証明書(9条2項)商標登録出願の日から30日以内に提出します
- 30日を過ぎたとき(9条3項)経済産業省令で定める期間内なら理由を問わず提出できます
- 不責事由があるとき(9条4項)理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内で、3項の期間の経過後6月以内に提出できます
- 分割・変更のとき(10条3項・11条6項)もとの出願で提出した書面は新たな出願と同時に提出されたものとみなされます
パリ条約の同盟国でした商標の登録の出願に基づく優先権はパリ条約4条の例により主張でき、世界貿易機関の加盟国や商標法条約の締約国でした出願も同じ扱いです
パリ条約4条C(1)は、商標の優先期間を最初の出願の日から6月と定めています。9条の2は、パリ条約の同盟国でされた商標の登録の出願に基づく優先権をパリ条約4条に定める例により主張できるとし、役務についての商標に基づく優先権も商品についての商標と同じ例によるとしています。9条の3は、日本国民又はパリ条約の同盟国の国民が世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国でした出願、世界貿易機関の加盟国の国民又は商標法条約の締約国の国民がパリ条約の同盟国・世界貿易機関の加盟国・商標法条約の締約国でした出願に基づく優先権も、パリ条約4条の規定の例により主張できるとしています。したがって、日本国民が商標法条約の締約国でした出願に基づく優先権をパリ条約4条の規定の例により主張でき、優先権証明書を「当該商標登録出願の日から3月以内に特許庁長官に提出しなければならない」という枝は正しいです。
優先権の主張の書面は出願と同時に、優先権証明書は出願の日から3月以内に提出し、出さなければ主張の効力を失うだけで、国際商標登録出願では主張の書面は要りません
13条1項は特許法43条を読み替えて準用し、優先権を主張しようとする者はその旨と最初に出願をした同盟国の国名及び出願の年月日を記載した書面を商標登録出願と同時に提出し(特許法43条1項の読替え)、優先権証明書類等を商標登録出願の日から3月以内に提出しなければなりません(同条2項の読替え。特許の1年4月ではありません)。期間内に優先権証明書類等を提出しないときは優先権の主張がその効力を失うだけで(同条4項)、出願が却下されたり拒絶されたりするわけではなく、期間が経過した後でも経済産業省令で定める期間内なら提出でき、不責事由があればさらに救済されます(同条7項・8項の読替え)。したがって、優先権証明書を「必ず提出しなければならない」という枝は誤りです。国際商標登録出願については、優先権の主張は国際登録の手続の中でされるので、68条の15第1項により13条1項で読み替えて準用する特許法43条1項から4項まで等を適用せず、その旨と国名及び出願の年月日を記載した書面を「特許庁長官に提出する必要がない」という枝は正しいです。国際登録が取り消された後の68条の32の商標登録出願でも、もとの国際商標登録出願に優先権が認められていたときは同条3項によりその出願に優先権が認められるので、改めて「記載した書面を特許庁長官に提出する必要はない」という枝は正しいです。

書面の提出時期の対比
| 書面 | 出願時の特例(9条) | パリ条約の例による優先権(13条1項) |
|---|---|---|
| その旨の書面 | 商標登録出願と同時です | 商標登録出願と同時です(特許法43条1項の読替え) |
| 証明書・優先権証明書類等 | 商標登録出願の日から30日以内です | 商標登録出願の日から3月以内です(特許の1年4月ではありません) |
| 期間を過ぎたとき | 経済産業省令で定める期間内なら提出でき、不責事由があればさらに救済されます | 主張の効力を失いますが、経済産業省令で定める期間内の提出で効力を保てます |
| 国際商標登録出願 | その旨の書面は国際商標登録出願の日から30日以内です(68条の11) | 主張の書面は不要です(68条の15第1項) |
商標法9条2項商標登録出願に係る商標について前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を商標登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、その商標登録出願に係る商標及び商品又は役務が同項に規定する商標及び商品又は役務であることを証明する書面(次項及び第四項において「証明書」という。)を商標登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。
商標法9条の2パリ条約の同盟国でされた商標(第二条第一項第二号に規定する商標に相当するものに限る。)の登録の出願に基づく優先権は、同項第一号に規定する商標に相当する商標の登録の出願に基づく優先権についてパリ条約第四条に定める例により、これを主張することができる。
商標法68条の15第1項国際商標登録出願については、第十三条第一項において読み替えて準用する特許法第四十三条第一項から第四項まで及び第七項から第九項までの規定は、適用しない。
パリ条約4条C(1)(2)C (1) A(1)に規定する優先期間は,特許及び実用新案については12箇月,意匠及び商標については6箇月とする。(2) 優先期間は,最初の出願の日から開始する。出願の日は,期間に算入しない。
試験ではこう問われる
- 博覧会は政府等の開設するもの、政府等以外の者が開設する基準適合のもの、パリ同盟国・世界貿易機関加盟国・商標法条約締約国の政府等又はその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会、それ以外の国の基準適合の国際的な博覧会の四つ。出品又は出展の日から6月以内の出願は「その出品の時にしたものとみなされる」
- 9条2項の書面は出願と同時、証明書は出願の日から30日以内。30日を過ぎても省令で定める期間内なら理由を問わず提出でき、「当該期間経過後2月以内であれば、当該証明書を提出することができる」という枝は正しい。不責事由が要るのは4項の救済だけ
- 分割・変更をしたときは、もとの出願で提出した9条2項の書面は新たな出願と同時に提出されたものとみなされる(10条3項・11条6項)
- 商標法条約の締約国でした出願に基づく優先権もパリ条約4条の規定の例による(9条の3)。優先期間は6月(パリ条約4条C(1))
- 優先権証明書は出願の日から3月以内(13条1項の読替え。特許の1年4月ではない)。出さなければ主張の効力を失うだけで、「必ず提出しなければならない」という枝は誤り
- 国際商標登録出願では優先権主張の書面を特許庁長官に提出する必要がない(68条の15第1項)。国際登録の取消し後の再出願にも優先権が引き継がれる(68条の32第3項)
この用語が問われた枝
パリ条約の同盟国の領域内でその政府等が開設する国際的な博覧会に出品した商品について使用をした商標について、その商標の使用をした商品を出品した者がその出品の日から6月以内にその商品を指定商品として商標登録出願をする場合、その商標登録出願がその出品の時にしたものとみなされるためには、商標法第9条第2項により商標登録出願の日から30日以内に所定の証明書を提出しなければならないが、当該証明書を提出できないことについてその責めに帰することができない理由が存在しない場合であっても、当該期間経過後2月以内であれば、当該証明書を提出することができる。
パリ条約の同盟国の領域内でその政府等が開設する国際的な博覧会に出品した商品について使用をした商標について、その商標の使用をした商品を出品した者がその出品の日から6月以内にその商品を指定商品として商標登録出願をし、その出品の時にしたものとみなされた当該商標登録出願が、団体商標の商標登録出願に変更された場合、もとの商標登録出願について提出された書面又は書類であって、商標法第9条第2項の規定により提出しなければならないものは、団体商標への出願変更と同時に提出されたものとみなされる。
日本国民が日本国以外の商標法条約の締約国においてした出願に基づく優先権は、パリ条約第4条の規定の例により、商標登録出願について、これを主張することができるが、当該優先権の主張をした者は、いわゆる優先権証明書を、原則として、当該商標登録出願の日から3月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
国際商標登録出願について、パリ条約第4条の規定による優先権を主張しようとする場合、その出願人は、その旨並びに第一国出願をしたパリ条約の同盟国の国名及び出願の年月日を記載した書面を、特許庁長官に提出する必要がない。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。