商標権の効力と専用権・禁止権(25条・37条1号)、登録商標の範囲・判定・色違い類似の特則(27条・28条・70条)しょうひょうけんのこうりょくとせんようけんきんしけんとうろくしょうひょうのはんいはんていいろちがいるいじのとくそく
商標権の効力とは、商標権者が指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有すること(25条)と、その類似範囲の使用を他人に禁止できること(37条1号)です。前者を専用権、後者を禁止権と呼び、登録商標の範囲は願書に記載した商標に基づいて定め(27条)、効力に疑義があれば特許庁に判定を求めることができます(28条)。
商標登録を受けると、商標権者は指定商品・指定役務についてその登録商標を独占して使えます。一方で、似た商標を似た商品に使われれば出所の混同が起きるので、商標法はその範囲の使用を侵害とみなして止められるようにしました。ただ、似た範囲まで商標権者に独占して使う権利を与えると、別の商標権者の禁止権と重なって収拾がつかないので、類似範囲は他人を排除する力だけにとどめています。これが専用権と禁止権の違いで、専用使用権の設定・色違いの商標・判定の問題はすべてこの線引きから出てきます。

専用権は指定商品・指定役務についての登録商標の使用に限られ、類似範囲の使用は禁止権で他人を排除できるだけです
25条は、商標権者は指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有すると定めます。これが専用権です。指定商品に類似する商品についての登録商標の使用や、指定商品についての登録商標に類似する商標の使用は、37条1号で商標権を侵害するものとみなされます。これが禁止権です。禁止権は他人の使用を排除する効力であって、商標権者自身がその範囲を使用する権利ではありません。商標権者が「商標権のうちの類似範囲の商標についても使用をする権利が商標法上認められている」という枝は誤りです。禁止権の範囲が他の商標権の禁止権の範囲と相互に抵触する場合には、「双方の権利の発生の時間的先後関係を問わず、抵触する部分は両方とも使用が禁止されることとなる」という枝は正しいです(どちらの商標権者もその部分を使用する権利を持たず、互いに禁止権だけが及ぶからです)。専用使用権は30条2項で設定行為の範囲内において指定商品・指定役務について登録商標の使用をする権利を専有するものなので、設定できるのは専用権の範囲だけです。専用使用権は専用権の部分だけでなく「禁止権の部分にも設定できる場合がある」という枝は誤りです。専用使用権を設定した範囲では商標権者も使用できませんが(25条ただし書)、専用使用権者は商標権者の承諾を得て通常使用権を許諾でき(30条4項で準用する特許法77条4項)、商標権者が専用使用権者から許諾を受ければ使用できます。専用使用権者が専有する範囲について「甲が当該登録商標の使用をすることができる場合はない」という枝は誤りです。商標権の効力は商標の「使用」に対して働くので、他人が登録商標を指定商品の普通名称として辞書に掲載する行為は商標の使用に当たらず、差止請求権を行使して「当該行為の停止を請求することができる」という枝は誤りです。

専用権と禁止権
| 範囲 | 指定商品・指定役務についての登録商標の使用です | 指定商品・指定役務についての類似商標の使用と、類似商品・類似役務についての登録商標・類似商標の使用です |
|---|---|---|
| 商標権者の使用 | 独占して使用できます | 使用する権利はなく、他の商標権の禁止権と抵触すれば双方とも使用できません |
| 専用使用権の設定 | 設定できます(30条2項) | 設定できません |
| 色違いの類似商標(70条) | 「登録商標」に含まれ、専用権の範囲に入ります(1項) | 「登録商標に類似する商標」に含まれません(3項) |
登録商標の範囲は願書に記載した商標に基づいて定め、商標の詳細な説明と添付した物件を考慮して解釈します
登録商標の範囲は願書に記載した商標に基づいて定めなければならず(27条1項)、指定商品・指定役務の範囲は願書の記載に基づいて定めます(27条2項)。音商標や位置商標のように記載だけでは特定しにくい商標があるので、27条3項は、5条4項の商標の詳細な説明の記載と願書に添付した物件を考慮して、願書に記載した商標の記載の意義を解釈するとしました。範囲の特定に際して「願書に添付した物件が考慮されることはない」という枝は誤りです。標準文字で商標登録を受けた商標は、特許庁長官が指定する文字で現したものが願書に記載した商標として扱われるので、「文字書体が特定されていない同一の文字のみからなる商標とみなされるものではない」という枝は正しいです。
商標権の効力については特許庁に判定を求めることができますが、判定に法的な拘束力はありません
商標権の効力については、特許庁に対し判定を求めることができ(28条1項)、特許庁長官は3名の審判官を指定して判定をさせます(28条2項)。判定は特許庁の公的な見解にとどまり、当事者も裁判所も拘束しません。侵害訴訟で判定が証拠として提出されても、裁判所は「判定とは異なる内容の判決をすることができる」という枝は正しいです。拘束力がなくても手続の公正は必要なので、28条3項で準用する特許法71条3項により審判官の除斥・忌避の規定が判定にも準用されます。判定に拘束力がないから「除斥又は忌避の申立をすることはできない」という枝は誤りです。判定の対象は商標権の効力の範囲全般で、登録商標が指定商品の品質表示や内容表示に当たり26条1項2号で効力が及ばないかどうかも含みます。品質表示に該当するか否かについて「判定を求めることができる場合はない」という枝は誤りです。防護標章登録に基づく権利の効力も商標権の効力の一部として対象になるので、「防護標章登録に基づく権利の効力については、特許庁に対し、判定を求めることができる」という枝は正しいです。裁判所から商標権の効力について鑑定の嘱託があったときも、特許庁長官は3名の審判官を指定して鑑定をさせます(28条の2)。

70条により、色彩を同一にすれば登録商標と同一と認められる類似商標は専用権の側の「登録商標」に含まれ、禁止権や不正使用取消しの「登録商標に類似する商標」には含まれません
登録商標の色を変えただけの商標は、商標権者が普通に使い分ける範囲なので、70条1項は25条・29条・30条2項・31条2項・31条の2第1項・34条1項・38条1項2号と3項から5項まで・50条・52条の2第1項・59条1号・64条・73条・74条の「登録商標」に、登録商標に類似する商標であって色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含めました。商標権者が色違いの商標を付した消しゴムを製造し販売する行為は「登録商標の使用に該当する」という枝は正しく、色違いの商標Bについて「専用使用権を設定することができない」という枝は誤りです(商標Bは30条2項の登録商標に含まれ、専用権の範囲に入るからです)。反対に70条3項は、37条1号と51条1項の「登録商標に類似する商標」には色違いの商標を含めないとしました。商標権者が色違いの商標を使って故意に混同を生じさせても、それは登録商標の使用であって51条1項の類似商標の使用ではないので、「当該商標登録が取り消されることはない」という枝は正しいです。色彩のみからなる登録商標については色を変えれば別の商標になるので、70条1項から3項は適用されません(70条4項)。色彩のみからなる登録商標の通常使用権者が「当該登録商標の色違いの商標を使用することができる」という枝は誤りです。

商標法25条商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
商標法27条登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならない。
2 指定商品又は指定役務の範囲は、願書の記載に基づいて定めなければならない。
3 第一項の場合においては、第五条第四項の記載及び物件を考慮して、願書に記載した商標の記載の意義を解釈するものとする。
商標法28条商標権の効力については、特許庁に対し、判定を求めることができる。
2 特許庁長官は、前項の規定による求があつたときは、三名の審判官を指定して、その判定をさせなければならない。
3 特許法第七十一条第三項及び第四項の規定は、第一項の判定に準用する。
商標法70条3項・4項第三十七条第一号又は第五十一条第一項における「登録商標に類似する商標」には、その登録商標に類似する商標であつて、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含まないものとする。
4 前三項の規定は、色彩のみからなる登録商標については、適用しない。
試験ではこう問われる
- 専用権は指定商品・指定役務についての登録商標の使用だけ。商標権者に「類似範囲の商標についても使用をする権利が商標法上認められている」という枝は誤り
- 禁止権同士が抵触する部分は「時間的先後関係を問わず、抵触する部分は両方とも使用が禁止される」
- 専用使用権は専用権の範囲にしか設定できず、「禁止権の部分にも設定できる場合がある」という枝は誤り。設定後も商標権者は専用使用権者から通常使用権の許諾を受ければ使用できる
- 登録商標の範囲は願書に記載した商標に基づき、商標の詳細な説明と添付物件を考慮して解釈する(27条3項)。「添付した物件が考慮されることはない」という枝は誤り
- 判定(28条)は裁判所を拘束しないが、審判官の除斥・忌避の規定は準用される。品質表示該当性も防護標章登録に基づく権利の効力も判定の対象
- 色違いの類似商標は25条・30条2項・31条2項・50条等の「登録商標」に含まれる(70条1項)ので、色違いの商標について専用使用権を「設定することができない」という枝は誤り
- 37条1号・51条1項の「登録商標に類似する商標」には色違いの商標を含まない(70条3項)ので、色違いの使用で混同を生じさせても51条で「取り消されることはない」
- 色彩のみからなる登録商標には70条が適用されない(4項)。その通常使用権者が「色違いの商標を使用することができる」という枝は誤り
この用語が問われた枝
専用使用権は、商標権のうち、商標権者が指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する部分だけではなく、禁止権の部分にも設定できる場合がある。
商標権者である甲が乙に対してその商標権について専用使用権を設定したときは、乙がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲について、甲が当該登録商標の使用をすることができる場合はない。
商標権者は、自己の登録商標をその指定商品の普通名称として辞書に掲載する他人の行為に対し、当該登録商標の商標権に基づき、差止請求権を行使して当該行為の停止を請求することができる。
登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならず、その範囲の特定に際して、願書に添付した物件が考慮されることはない。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。