国際出願法(受理官庁としての特許庁の手続)こくさいしゅつがんほう
国際出願法とは、特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律の略称で、日本国特許庁が受理官庁・国際調査機関・国際予備審査機関として働くときの手続を定めた法律です。誰が特許庁長官に国際出願できるか(2条)、願書と言語(3条)、国際出願日の認定と補完・補正の命令(4条〜7条)、国際予備審査(12条・13条)、代表者と特許法の準用(16条・19条)を定めています。
PCTは国際出願を受理官庁にすると定めるだけで、受理官庁がどう受け付けて国際出願日を認めるかは各国に任せています。日本国特許庁に国際出願をするときの手続を書いたのが国際出願法です。出願人が日本語か英語で願書・明細書・請求の範囲・図面・要約書を特許庁長官に出すと、長官は到達した日を国際出願日として認定しますが、出願人の資格や明細書が欠けていれば補完を命じ、発明の名称や要約書が欠けているだけなら補正を命じます。特許庁が国際調査機関・国際予備審査機関として働くときの手続も、この法律に置かれています。

特許庁長官に国際出願できるのは日本国民等で、日本国民等と日本国民等以外の者が共同して出願するときも同じであり、代表者や筆頭出願人を日本国民等にする要件はありません
2条は、日本国民又は日本国内に住所若しくは居所(法人は営業所)を有する外国人を日本国民等とし、日本国民等が特許庁長官に国際出願をできると定めます。後段で、日本国民等と日本国民等以外の者が共同して国際出願をするときも同様とします。PCT規則19.2が、出願人が2人以上のときは1人が受理官庁の要件を満たせばよいとしているのを受けた規定です。日本に住所のない外国人が「日本国内に住所を有する外国人と共同して日本国特許庁長官に国際出願をすることができる」という枝は正しいです。条文は共同出願人の一人が日本国民等であることだけを求めるので、「日本国民が代表者であるか又は筆頭出願人でなければ、特許庁長官に対し国際出願することは認められない」という枝は誤りであり、日本国民が代表でも筆頭出願人でもない場合に長官は「相当の期間を指定して、手続の補完をするべきことを命じなければならない」という枝も誤りです。3条1項は、願書・明細書・請求の範囲・必要な図面・要約書を日本語又は経済産業省令で定める外国語(英語)で作成して特許庁長官に提出させ、同条2項は願書の記載事項として、条約に従って処理すべき旨の申立て、出願人の氏名又は名称と国籍・住所(出願人が2人以上のときは日本国民等である出願人のうち少なくとも1人の分)、発明の名称などを挙げます。
国際出願日の認定要件を欠く国際出願には手続の補完を命じ、補完されれば補完に係る書面の到達の日が国際出願日になり、図面の記載だけがあるときは通知して図面の到達の日が国際出願日になります
4条1項は、特許庁長官が国際出願の特許庁に到達した日を国際出願日として認定しなければならないとしたうえで、例外を5つ挙げます。出願人が2条の要件を満たしていないとき、条約に従って処理すべき旨の申立ての記載がないとき、出願人の氏名又は名称の記載がないか出願人を特定できる程度に明確でないとき、明細書又は請求の範囲が含まれていないとき、明細書及び請求の範囲が日本語又は省令で定める外国語で作成されていないときです。PCT11条(1)の国際出願日の要件と同じ並びです。これらに当たるときは、長官が相当の期間を指定して書面により手続の補完を命じ(同条2項)、期間内に補完されれば補完に係る書面の到達の日を国際出願日として認定します(同条3項)。当初の到達日には戻らないので、出願人の氏名の記載がない場合に「手続の補正をすべきことが命じられ」、補正をすれば「当該国際出願が特許庁に到達した日を国際出願日として認定する」という枝は誤りです(命令も補正ではなく補完です)。発明の名称は国際出願日の要件ではなく6条の補正命令の事由なので、発明の名称の書面を出せば「その書面が特許庁に到達した日が国際出願日として認定される」という枝は誤りです。5条は、国際出願に含まれていない図面についての記載があるときに長官がその旨を出願人に通知し、省令で定める期間(施行規則27条では通知の日から2月)内に図面が提出されればその図面の到達の日を国際出願日として認定するとします。提出しなければ国際出願日は当初の到達の日のままでその記載がなかったものとして扱われるだけで、7条の取下げの決定の事由にも入っていないので、図面を提出しなかった場合に「その国際出願は取り下げられたものとみなされる」という枝も、長官は「その国際出願が取り下げられたものとみなす旨の決定をしなければならない」という枝も誤りです。17条により、出願人が補完命令や図面の通知を受ける前に自分から執るべき手続を執ったときは、省令で定める場合(施行規則72条では、補完命令に係る手続は国際出願として提出された書類が特許庁に到達した日から、図面の通知に係る手続は国際出願日から、それぞれ2月を経過した後に執った場合)を除き、命令や通知を受けたことにより執った手続とみなされるので、申立ての記載を欠く出願について到達の日から2月を過ぎていなければ自ら補完した手続は「補完命令を受けたことにより執った手続とみなす」という枝は正しいです。

- 補完命令(4条)出願人の資格・申立て・出願人の氏名・明細書又は請求の範囲・その言語を欠くときです。補完に係る書面の到達の日が国際出願日になります
- 図面の通知(5条)含まれていない図面についての記載があるときです。省令の期間内に図面を出せば図面の到達の日が国際出願日になり、出さなければ記載がないものとして扱われます
- 補正命令(6条)願書の言語、発明の名称、図面の説明・要約書の言語、要約書の欠如、代理人の資格・手続をする能力の規定違反、方式違反です。国際出願日は動きません。応じなければ7条の取下げの決定です
願書の言語や発明の名称・要約書の欠如などは手続の補正を命じ、指定期間内に補正がなく手数料も納付されないときは取り下げられたものとみなす旨の決定をします
6条は、願書が日本語又は省令で定める外国語で作成されていないとき、発明の名称の記載がないとき、図面の中の説明や要約書が明細書・請求の範囲と同一の言語でないとき、要約書が含まれていないとき、代理人の資格(16条3項)や準用する特許法7条1項から3項までの手続をする能力の規定に違反するとき、省令で定める方式に違反するときに、長官が相当の期間を指定して書面により手続の補正を命じなければならないとします。PCT14条(1)の欠陥に当たるもので、国際出願日の認定には影響しません。要約書が含まれていないときに「書面により手続の補完をすべきことを命じなければならない」という枝は誤りで、補完ではなく補正の命令です。願書が中国語で作成されている場合も6条1号の補正命令の事由であって4条の補完命令の事由ではないので、「書面により手続の補完をすべきことを命じなければならない」という枝は誤りです。7条は、補正命令に指定期間内に応じなかったとき、18条2項の手数料が省令の期間内に納付されなかったとき、国際出願日を認定した出願が4条1項各号に当たることを省令の期間内に発見したときに、長官が国際出願を取り下げられたものとみなす旨の決定をしなければならないとします。この決定は条約25条(1)の受理官庁による宣言に当たるので、日本国を指定国に含む国際出願であれば、出願人は特許法184条の20第1項により省令で定める期間内に特許庁長官へ決定をすべき旨の申出をすることができます。
特許庁が国際予備審査機関のときは審査官が国際予備審査報告を作成し、単一性を欠けば減縮か追加手数料を命じ、否定的な見解を出す前に答弁書の機会を与えます
12条1項は、国際予備審査の請求があったときに特許庁長官が審査官にPCT35条の国際予備審査報告を作成させると定めます。請求に係る国際出願がPCT34条(3)(a)の発明の単一性の要件を満たしていないときは、長官が相当の期間を指定して、国際予備審査を受けようとする請求の範囲を減縮するか、各号に定める金額(明細書・請求の範囲が日本語なら2万8千円、英語なら4万5千円)に発明の数から1を減じた数を乗じた金額の範囲内で政令で定める手数料を追加して納付するかを命じなければなりません(同条3項)。「所定金額に当該請求の範囲に記載されている発明の数から1を減じて得た数を乗じて得た金額の範囲内において政令で定める金額の手数料を追加して納付すべきことを命じなければならない」という枝は正しいです。応じなければ、手数料の納付があった発明に係る部分だけ審査の結果を報告に書きます(同条4項)。13条は、請求の範囲の発明に新規性・進歩性・産業上の利用可能性がないときなどに、審査官が報告の作成前にその旨と理由を通知し、相当の期間を指定して答弁書を提出する機会を与えなければならないとします。PCT34条(2)の書面による見解に対する答弁の機会を国内法で保障したものです。
共同出願の手続は代表者が行い、代表者を定めないときは長官が省令の定めで最初に記載された日本国民等を指定でき、在外者の特許管理人など特許法の総則規定が準用されます
16条1項は、2人以上が共同して国際出願をした場合の手続を、省令で定める場合を除き出願人の代表者が行い、又は代表者に対して行うことができるとします。代表者を定めていないときは、長官が経済産業省令で定めるところにより代表者を指定できます(同条2項)。施行規則は、願書に出願人として記載されている日本国民等のうち最初に記載されているものを指定すると定めているので、日本国民等の「うちいずれかのものを代表者として指定することができる」という枝は誤りです。代理人により手続をする者は、法定代理人による場合などを除き弁理士又は弁護士を代理人としなければなりません(同条3項)。19条1項は、特許法7条1項から3項まで(未成年者等の手続能力)、8条(在外者の特許管理人)、11条(代理権の不消滅)、13条1項・4項(代理人の改任等)、16条(手続をする能力がない場合の追認)、20条(手続の効力の承継)、21条(手続の続行)をこの法律の手続に準用します。在外者の特許管理人を定める特許法8条も入っているので、同条の規定は国際出願法の手続に「準用されない」という枝は誤りです。国際出願の書類をファクシミリで提出する手続はこの法律にも施行規則にもなく、判読できない部分について書類の提出を「求めなければならない」という枝は誤りです。

特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律2条日本国民又は日本国内に住所若しくは居所(法人にあつては、営業所)を有する外国人(以下「日本国民等」という。)は、特許庁長官に条約第二条(vii)の国際出願(以下「国際出願」という。)をすることができる。日本国民等と日本国民等以外の者が共同して国際出願をするときも、同様とする。
特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律4条3項特許庁長官は、前項の規定により手続の補完をすべきことを命じられた者が同項の規定により指定された期間内に手続の補完をしたときは、手続の補完に係る書面の到達の日を国際出願日として認定しなければならない。
特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律5条特許庁長官は、国際出願において、その国際出願に含まれていない図面についての記載がされているときは、その旨を出願人に通知しなければならない。
2 特許庁長官は、前項の規定による通知を受けた者が経済産業省令で定める期間内に同項の記載に係る図面を提出したときは、その図面の到達の日を国際出願日として認定しなければならない。
特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律17条出願人が第四条第二項の規定による命令又は第五条第一項の規定による通知を受ける前に、その命令又は通知を受けた場合に執るべき手続を執つたときは、経済産業省令で定める場合を除き、当該手続は、その命令又は通知を受けたことにより執つた手続とみなす。
試験ではこう問われる
- 日本国民等と日本国民等以外の者の共同出願も特許庁長官にできる(2条後段)。日本国民が代表者・筆頭出願人である要件はなく、補完命令の対象にもならない
- 国際出願日の認定要件(2条の資格・申立て・出願人の氏名・明細書又は請求の範囲・その言語)を欠くときは「補完」を命じ、補完に係る書面の到達の日が国際出願日(4条3項)。当初の到達日ではない
- 発明の名称・要約書の欠如、願書の言語、方式違反は「補正」命令(6条)。国際出願日は動かない。発明の名称を補正した書面の到達日が国際出願日になるという枝は誤り
- 含まれていない図面についての記載があれば「通知」(5条1項)。省令の期間内に図面を出せば図面の到達の日が国際出願日。出さなくても取下げ擬制や取下げの決定にはならない
- 補完命令・通知の前に自ら手続を執れば、省令で定める場合(補完は書類の到達の日から、図面は国際出願日から2月経過後)を除き命令・通知により執った手続とみなす(17条)
- 補正命令に応じないとき、手数料不納、認定後に4条1項各号の発見があれば、取り下げられたものとみなす旨の決定(7条)
- 国際予備審査で単一性を欠けば、請求の範囲の減縮か政令で定める追加手数料の納付を命じなければならない(12条3項)。否定的見解の前に答弁書の機会(13条)
- 代表者を定めないときは省令により最初に記載された日本国民等を指定できる(16条2項)。特許法7条〜8条・11条・13条・16条・20条・21条を準用し、在外者の特許管理人(8条)も準用される(19条1項)。ファクシミリ提出の規定はない
この用語が問われた枝
日本国内に住所又は居所(法人にあっては、営業所)を有しない外国人と日本国民が共同して国際出願をする場合、日本国民が代表者であるか又は筆頭出願人でなければ、特許庁長官に対し国際出願することは認められない。
日本国民と日本国内に営業所を有しない外国法人が共同して国際出願を行ったとき、日本国民が出願人の代表でない場合又は日本国民が筆頭出願人でない場合、特許庁長官は、相当の期間を指定して、手続の補完をするべきことを命じなければならない。
国際出願においてその国際出願に含まれていない図面についての記載がされているとき、特許庁長官からの補正命令に対して出願人が指定された期間内に図面を提出しなかった場合には、特許庁長官は、その国際出願が取り下げられたものとみなす旨の決定をしなければならない。
国際出願の願書において当該出願を条約に従って処理すべき旨の申立てを記載しなかったとき、特許庁長官による手続の補完命令を受ける前であっても、国際出願として提出された書類が特許庁に到達した日から2月を経過した後でなければ、出願人が手続の補完をすることにより、当該手続は、補完命令を受けたことにより執った手続とみなす。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。