指定官庁・選択官庁での国内手続(PCT22〜28条・39〜41条・46条)していかんちょうせんたくかんちょうでのこくないてつづき
指定官庁・選択官庁での国内手続とは、国際出願の出願人が、優先日から30箇月を経過する時までに各指定官庁(国際予備審査の請求で選択した国では選択官庁)に国際出願の写し及び所定の翻訳文を提出し、国内手数料を支払って、その国の特許庁の処理・審査を受けるPCT22条〜28条・39条〜41条の手続です。条約は、その処理の時期・国内法令が課せる要件・補正の機会・翻訳の誤りの扱いにも枠をはめています。
国際出願は一通の出願で多くの国に出願した効果を持ちますが、特許を与えるかどうかは国ごとに決めます。そこで出願人は、優先日から30箇月を経過する時までに、特許が欲しい国の官庁(指定官庁)に国際出願の写しと翻訳文を提出し、国内手数料を支払って、その国の手続に入ります。これが国内段階で、PCT22条から28条が指定官庁での手続、39条から41条が国際予備審査を請求した国の選択官庁での手続を定めています。条約は、各国が勝手に要件を足したり期間の前に処理したりしないよう枠をはめ、翻訳の誤りの扱いまで決めています。

出願人は優先日から30箇月を経過する時までに各指定官庁に写しと翻訳文を提出して国内手数料を支払いますが、写しは20条の送達が済んでいれば要らず、国内法令はもっと遅い期間を定められます
22条(1)は、優先日から30箇月を経過する時までに、各指定官庁に国際出願の写し(20条の送達が既に行われている場合を除きます)及び所定の翻訳文を提出し、該当する場合には国内手数料を支払うことを出願人に求めます。指定官庁の国内法令が発明者の氏名などの提出を要求していて願書に書かれていないときは、同じ期間内にその事項も提出します。写しは国際事務局が20条で各指定官庁に送達するので、出願人が出す場面は少ないです。22条(3)により国内法令はこれより遅い時に満了する期間を定められるので、「優先日から30月よりも遅い時に満了する期間を定めることができる」という枝は正しいです。日本は特許法184条の4で優先日から2年6月(国内書面提出期間)とし、翻訳文提出特例期間を足しています。30箇月という期間は条約本文の数字ですが、47条(2)により国際特許協力同盟の総会での締約国の決定でも変更できます。国際予備審査を請求して選択した国では、39条(1)(a)により22条に代えて各選択官庁に同じ行為をし、(b)で国内法令はやはり遅い期間を定められます。写しの提出は国際事務局から送付済みなら不要なので、「例外なく国際出願の写し及び所定の翻訳文を提出し」という枝は誤りです。なお13条(2)(a)で出願人は国際出願の写しをいつでも指定官庁に送付できるので、「所定の期間内に限り、国際出願の写しを指定官庁に送付することができる」という枝は誤りです。
- 期限優先日から30箇月を経過する時までです。国内法令はこれより遅い期間を定められます(22条(3)・39条(1)(b))
- 提出するもの国際出願の写し(20条の送達が済んでいれば不要)、所定の翻訳文、該当する場合の国内手数料です。国内法令が要求する発明者に関する事項も同じ期間内に出します
- 相手指定官庁です。国際予備審査の請求で選択した国では選択官庁です(39条)
- 日本での対応特許法184条の4(翻訳文)・184条の5(国内書面と手数料)です
指定官庁は22条の期間の満了前に処理・審査をしてはなりませんが、出願人の明示の請求があればいつでも行え、期間内に手続をしなければ11条(3)の効果は国内出願の取下げと同一の効果で消滅します
23条(1)は、指定官庁が22条の期間の満了前に国際出願の処理又は審査を行うことを禁じます。出願人は30箇月の間にどの国で手続を続けるかを決める猶予を持ち、その間に各国で審査が走って費用がかかることを避けるためです。ただし(2)で、出願人の明示の請求があればいつでも処理・審査を行えるので、「指定官庁は、出願人の明示の請求により、国際出願の処理又は審査をいつでも行うことができる」という枝は正しいです。40条は選択官庁について同じことを定めます。日本では184条の4第6項により、国内書面提出期間が満了する時が国内処理基準時ですが、期間内に出願人が出願審査の請求をすればその請求の時が国内処理基準時になります。期間内に22条の行為をしなかったときは、24条(1)(iii)により11条(3)の国際出願の効果(正規の国内出願の効果)が、その指定国において国内出願の取下げの効果と同一の効果をもって消滅します。ただし24条(2)により、指定官庁はその効果を維持することができます。選択官庁については39条(2)(3)が同じ構造です。一方、国際予備審査の請求や選択を22条の期間の満了前に取り下げても、37条(4)(b)により国際出願の取下げとはみなされません(締約国は、期間内に写し・翻訳文・国内手数料を受け取った場合に限ると国内法令で定められます)。「常に、国際出願が取り下げられたとみなされる」という枝は誤りです。

受理官庁が国際出願日の認定を拒否した場合には、国際事務局が出願人の請求により指定官庁へ書類の写しを送付し、指定官庁がその拒否が正当だったかを検査します
受理官庁が国際出願日を認めることを拒否した場合、国際出願を取り下げられたものとみなす旨を宣言した場合、又は国際事務局が12条(3)により所定の期間内に記録原本を受理しなかったと認定した場合、出願人は指定官庁に救済を求められます。25条(1)で、出願人の請求に応じて、出願人が特定した指定官庁に一件書類の写しを速やかに送付するのは国際事務局です。記録原本を保管しているのが国際事務局であり、拒否した受理官庁に送付を任せる仕組みではないからです。「出願人が特定した指定官庁に対し当該出願に関する書類の写しを速やかに送付する」のが受理官庁だという枝は誤りです。25条(2)で、指定官庁は所定の期間内に国内手数料と翻訳文を受け取ったときに、その拒否・宣言・認定が条約と規則に照らして正当であったかを決定し、受理官庁又は国際事務局の過誤又は怠慢の結果であると認めれば、その国について国際出願を正規の国内出願として取り扱います。日本では184条の20が、この場合に特許庁長官へ決定を申し出る手続を定めています。
指定官庁は補充の機会を与えずに却下できず、国内法令は条約・規則と異なる要件や追加の要件を課せませんが、2通以上の提出や代理人の要求はでき、特許性の実体的な条件は各国が自由に定めます
26条は、同一又は類似の場合の国内出願について国内法令が定める範囲内と手続で国際出願の補充をする機会をあらかじめ出願人に与えることなく、条約・規則の要件を満たしていないことを理由に国際出願を却下することを指定官庁に禁じます。「国際出願の補充をする機会をあらかじめ出願人に与えることなく」却下してはならないという枝は正しいです。27条(1)は、国際出願の形式又は内容について、条約と規則に定める要件と異なる要件又は追加の要件を国内法令が課すことを禁じます。受理官庁で一度形式を整えた出願を、各国でもう一度違う様式に直させないためです。ただし27条(7)で、出願人がその官庁に対して出願人を代理する資格のある代理人により代理されることは要求でき、規則51の2.1(c)により国際出願・翻訳文・関係書類を2通以上提出することも27条(1)の枠内で要求できます。発明者の宣誓など規則51の2で認められた書類の提出も要求できます。他方、27条(5)は、特許性の実体的な条件を各締約国が自由に定める権能を制限しないと明記しているので、新規性・進歩性の基準は国内法令で決まります。
出願人は各指定官庁・選択官庁で所定の期間内に補正の機会を与えられ、官庁は明示の同意なく期間満了前に特許を与えたり拒絶したりできず、開示の範囲を超える補正も国内法令が認めればできます
28条(1)は、出願人が各指定官庁において所定の期間内に請求の範囲、明細書及び図面について補正をする機会を与えられること、指定官庁は出願人の明示の同意がない限りその期間の満了前に特許を与え又は特許を拒絶してはならないことを定めます。国際段階の19条補正・34条補正とは別に、国内段階に入ってからも各国の審査に合わせて直す機会を保障するためです。「指定官庁は、出願人の明示の同意がない限り、その期間の満了前に特許を与えてはならない」という枝は正しく、選択官庁について同じことを41条(1)が定めるので、「選択官庁は、出願人の明示の同意がない限り、その期間の満了前に特許を与えてはならず又は特許を拒絶してはならない」という枝も正しいです。規則78.1(a)により選択官庁での期間は原則として39条(1)(a)の要件を満たした時から1箇月なので、「の規定に基づく要件を満たした時から1月以内に、請求の範囲、明細書及び図面について補正をする機会を与えられる」という枝は正しいです。補正の範囲は28条(2)・41条(2)で出願時における国際出願の開示の範囲を超えてはならないのが原則ですが、指定国・選択国の国内法令が認める場合は除かれます。「補正は、いかなる場合も、出願時における国際出願の開示の範囲を超えてしてはならない」という枝は誤りです。また42条により、国際予備審査報告を受領した選択官庁は、他の選択官庁での審査に係る書類の写しの提出や情報の提供を出願人に要求できないので、「他の選択官庁における当該国際出願に関する審査に係る書類の写しの提出又はその書類の内容に関する情報の提供を要求することができる」という枝は誤りです。日本では184条の12第1項が、外国語特許出願は翻訳文・国内書面・手数料の提出後であって国内処理基準時を経過した後でなければ手続の補正ができないと定めています。

翻訳が不正確で特許の範囲が原語の国際出願の範囲を超えるときは、その締約国の権限のある当局が範囲を遡及して限定し、超える限りで無効を宣言できます
46条は、国際出願が正確に翻訳されなかったため、その国際出願に基づいて与えられた特許の範囲が原語の国際出願の範囲を超えることとなる場合に、当該締約国の権限のある当局が、それに応じて特許の範囲を遡及して限定でき、超える限りにおいて特許が無効であることを宣言できると定めます。各国での権利の範囲は翻訳文で定まりますが、出願人が本来開示した範囲は原語の国際出願であり、翻訳の誤りで広い権利を得させないためです。特許を与えた国の特許庁や裁判所が判断する事柄なので、主体を「国際事務局は、それに応じて特許の範囲を遡及して限定することができる」とする枝は誤りです。日本では特許法184条の18が、外国語特許出願について国際出願日における明細書等に記載した事項の範囲内にないことを拒絶理由・異議申立理由・無効理由としています。

特許協力条約22条(1)出願人は、優先日から三十箇月を経過する時までに各指定官庁に対し、国際出願の写し(第二十条の送達が既にされている場合を除く。)及び所定の翻訳文を提出し並びに、該当する場合には、国内手数料を支払う。出願人は、指定国の国内法令が発明者の氏名又は名称その他の発明者に関する所定の事項を表示することを定めているが国内出願をする時よりも遅い時に表示することを認めている場合において、それらの事項が願書に記載されていないときは、当該指定国の国内官庁又は当該指定国のために行動する国内官庁に対し、優先日から三十箇月を経過する時までにそれらの事項を届け出る。
特許協力条約23条指定官庁は、前条に規定する当該期間の満了前に、国際出願の処理又は審査を行つてはならない。
(1)の規定にかかわらず、指定官庁は、出願人の明示の請求により、国際出願の処理又は審査をいつでも行うことができる。
特許協力条約27条(1)国内法令は、国際出願が、その形式又は内容について、この条約及び規則に定める要件と異なる要件又はこれに追加する要件を満たすことを要求してはならない。
試験ではこう問われる
- 22条の期間は優先日から30箇月で、国内法令は「優先日から30月よりも遅い時に満了する期間を定めることができる」。期間は47条(2)の総会での締約国の決定でも変更できる
- 写しは20条の送達が済んでいれば提出不要。選択官庁に「例外なく国際出願の写し及び所定の翻訳文を提出し」という枝は誤り。出願人は13条(2)(a)で写しをいつでも指定官庁に送付できる
- 指定官庁は期間満了前に処理・審査をしないが、「出願人の明示の請求により、国際出願の処理又は審査をいつでも行うことができる」。選択官庁は40条
- 期間内に手続をしないと11条(3)の効果は国内出願の取下げと同一の効果で消滅するが、指定官庁はその効果を維持できる(24条(2))。予備審査の請求や選択の取下げは「常に、国際出願が取り下げられたとみなされる」わけではない(37条(4)(b))
- 国際出願日の認定の拒否などの場合に指定官庁へ書類の写しを送付するのは国際事務局(25条)。受理官庁ではない
- 国内法令は異なる要件・追加の要件を課せないが、代理人や2通以上の提出は要求できる(27条(7)・規則51の2.1(c))。特許性の実体的な条件は各国が自由に定める(27条(5))。補充の機会を与えずに却下できない(26条)
- 補正の機会は28条・41条。明示の同意なく期間満了前に特許を与え又は拒絶できない。「補正は、いかなる場合も、出願時における国際出願の開示の範囲を超えてしてはならない」という枝は誤り(国内法令が認める場合は除かれる)。選択官庁での期間は原則39条(1)(a)の要件を満たした時から1箇月(規則78.1)
- 翻訳が不正確で範囲が原語を超えるときに遡及して限定・無効を宣言できるのは締約国の権限のある当局(46条)。国際事務局ではない
この用語が問われた枝
指定官庁の国内法令は、出願人に対し、所定の翻訳文を提出するべき期間として、優先日から30月よりも遅い時に満了する期間を定めることができる。
出願人は、優先日から30月を経過する時までに各選択官庁に対し、例外なく国際出願の写し及び所定の翻訳文を提出し並びに、該当する場合には、国内手数料を支払わなければならない。
出願人は、所定の期間内に限り、国際出願の写しを指定官庁に送付することができる。
指定官庁は、出願人の明示の請求により、国際出願の処理又は審査をいつでも行うことができる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。