国際特許出願のその他の特例(184条の9〜11・12の2〜17・20、186条)こくさいとっきょしゅつがんのそのたのとくれい
国際特許出願のその他の特例とは、国際出願日にされた特許出願とみなされた国際特許出願について、出願公開の代わりになる国際公開・国内公表と補償金請求権の起点(特許法184条の9・10)、在外者の特許管理人(184条の11)、仮専用実施権の登録(184条の12の2)、29条の2の読替え(184条の13)、新規性喪失の例外・優先権・出願の変更・出願審査の請求の時期(184条の14〜17)、受理官庁の拒否等に対する決定の申出(184条の20)など、通常の特許出願の手続を国際出願の流れに合わせて読み替えた規定の集まりです。
国際特許出願は国際出願日にされた特許出願とみなされますが、日本の特許法は出願公開や優先権証明書の提出など、国内出願を前提にした手続を多く持っています。国際出願には国際公開があり、優先権書類は受理官庁や国際事務局に出してあり、出願人は国内処理基準時まで日本に代理人を置かないのが普通です。そこで184条の9から184条の20までが、出願公開の代わりに何を使うか、補償金請求権はいつから生じるか、特許管理人はいつまでに要るかといった点を、国際出願の流れに合わせて一つずつ読み替えています。

出願公開の代わりに日本語特許出願は国際公開、外国語特許出願は国内書面提出期間の経過後の国内公表を使い、補償金請求権の警告はそれぞれの後にできます
184条の9第4項は国際特許出願に64条の出願公開を適用せず、日本語特許出願ではPCT21条の国際公開が出願公開の役目を果たします。外国語特許出願は国際公開が外国語なので、特許庁長官が翻訳文を特許公報に掲載する国内公表を行います(同条1項・2項)。国内公表は国内書面提出期間(翻訳文提出特例期間が適用される出願ではその期間)の経過後に遅滞なく行うのが原則で、期間内に出願人から出願審査の請求があった国際特許出願で国際公開がされているものは請求の後に、184条の4第4項の救済で明細書等翻訳文が提出された出願はその提出の後に行います。期間内に審査請求があれば、国内書面提出期間の満了前に国内公表されることもあります。一方、早まるのは国際公開がされているものに限られるので、「国際公開がされる前であっても、出願審査の請求の後、遅滞なく、国内公表しなければならない」という枝は誤りです。国際公開前に日本だけで内容を公にしないためです。184条の10第1項は、65条の補償金請求権の起点を、日本語特許出願は国際公開の後、外国語特許出願は国内公表の後の警告とします。「国内公表があった後に、国際特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をしたときは」補償金の支払を請求できるという枝は正しいです。外国語の国際公開だけでは日本の第三者が発明の内容を知れないので、外国語特許出願では国際公開の後の警告では足りません。警告をしなくても、国際公開又は国内公表がされた国際特許出願に係る発明であることを知って実施した者には請求できます。

在外者の出願人は国内処理基準時までは特許管理人によらないで手続ができ、その後は省令の期間内に特許管理人を選任して届け出ますが、届出がなくても取下げ擬制には救済があります
8条1項は在外者に特許管理人による手続を求めますが、184条の11第1項は在外者である国際特許出願の出願人が国内処理基準時までは特許管理人によらないで手続できるとします。翻訳文の提出や出願審査の請求のために、日本で代理人を探す前に手続できるようにするためです。「特許管理人によらず、出願審査の請求の手続をすることができる場合がある」という枝は正しいです。国内処理基準時の属する日後、経済産業省令で定める期間内に特許管理人を選任して特許庁長官に届け出なければならず(同条2項)、届出がないと長官が通知し、通知後の省令期間内にも届出がなければ国際特許出願は取り下げたものとみなされます(同条3項〜5項)。ただし、特許管理人により184条の4第4項の翻訳文提出の手続をしたときは2項から7項までは適用されないので(同条8項)、「いかなる場合においても、国内処理基準時の属する日後経済産業省令で定める期間内に、特許管理人を選任して特許庁長官に届け出なければならない」という枝は誤りです。取り下げたものとみなされた後も、故意に届出をしなかったと認められる場合を除き、省令の期間内に特許管理人を選任して届け出られます(同条6項)。翻訳文提出特例期間内に明細書等翻訳文を出さなかった出願も、184条の4第4項の救済を特許管理人によって受けられるので、「必ずこの外国語特許出願は取り下げられたものとみなされる」という枝は誤りです。

国際特許出願が29条の2の他の特許出願になるときは出願公開を国際公開に、対比する書面を国際出願日における国際出願の明細書等に読み替え、翻訳文を出さずに取り下げられたものとみなされた外国語特許出願は除かれます
184条の13は、29条の2の他の特許出願が国際特許出願である場合に、同条の「出願公開」に国際公開を加え、「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」を国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に読み替えます。先願の地位が生じる起点は日本語でも外国語でも国際公開なので、「いわゆる拡大された先願の地位が発生する」のが国内公表によるという枝は誤りです。国際公開の後に翻訳文を出して取り下げられた出願でも、国際公開があれば、国内公表されなくても先願の地位は失われません。対比する範囲は翻訳文に記載された発明ではなく国際出願日における明細書等なので、外国語特許出願Bの国際出願日における明細書に記載された発明ロと同一の発明イについて後願Aは「Aに係るイについては特許を受けることができない」という枝は正しいです。ただし、184条の4第3項により翻訳文の不提出で取り下げられたものとみなされた外国語特許出願は除かれるので、明細書の翻訳文が提出されなかった出願は、国際公開されていても後願を排除しません。日本語の書面が一度も特許庁に出ていない出願に先願の地位を認めると、第三者がその内容を確かめられないからです。
新規性喪失の例外の書面は国内処理基準時の属する日後の省令の期間内に出せ、優先権証明書は要らず、国内優先権に仮専用実施権者の承諾は要らず、審査請求・変更・仮専用実施権の登録は国内書面と手数料の後です
30条3項は新規性喪失の例外の適用を受ける旨の書面を出願と同時に、証明する書面を出願の日から30日以内に出させますが、国際出願の願書にその旨を書く欄はなく、国際段階で日本の書面を出すのも無理です。そこで184条の14は、30条3項にかかわらず、その旨を記載した書面と証明する書面を国内処理基準時の属する日後経済産業省令で定める期間内に提出できるとします。国内処理基準時の属する日の後に出すので、「国内処理基準時の属する日までに限り、特許庁長官に提出することができる」という枝は誤りです。国内書面提出期間内に出願審査の請求をすればその時が国内処理基準時なので、その請求の時の属する日の後の省令の期間内に提出することになります。184条の3第2項で43条が適用されないため、優先権証明書は受理官庁か国際事務局に出してあれば足り、指定官庁としての日本国特許庁には提出しません。184条の15第1項は国内優先権について41条1項ただし書・4項と42条2項を適用しないので、先の出願に仮専用実施権者がいても「その者の承諾を得ることは要求されていない」という枝は正しく、先の出願が取り下げられたものとみなされた後に優先権の主張を取り下げても先の出願は復活しません。同条2項〜4項は41条3項の「出願公開」を国際公開に、先の出願が国際出願のときの書面を国際出願日における明細書等に読み替えます。手続の順序では、184条の17により出願人の出願審査の請求は国内書面(外国語特許出願は翻訳文も)と手数料の後、184条の16により実用新案登録出願とみなされた国際出願の特許出願への変更は実用新案法48条の5第1項の国内書面と手数料の後です。日本語による国際出願について「国内書面を提出し、かつ、納付すべき手数料を納付した後でなければ、特許出願への変更をすることができない」という枝は正しいです。184条の12の2により、仮専用実施権の登録は日本語特許出願では国内書面と手数料の後、外国語特許出願ではそれに翻訳文の提出と国内処理基準時の経過が加わるので、外国語特許出願は「国内処理基準時を経過した後でなければ、仮専用実施権の登録を受けることができない」という枝は正しいです。
- 新規性喪失の例外の書面(184条の14)国内処理基準時の属する日後、経済産業省令で定める期間内に提出できます
- パリ条約の優先権証明書(184条の3第2項)43条を適用しないので、日本には提出しません
- 国内優先権(184条の15)仮専用実施権者の承諾は不要で、42条2項(優先権の主張の取下げによる先の出願の復活)も適用しません。出願公開は国際公開に読み替えます
- 出願審査の請求(184条の17)出願人は国内書面(外国語特許出願は翻訳文も)と手数料の後、出願人以外は国内書面提出期間の経過後です
- 特許出願への変更(184条の16)実用新案登録出願とみなされた国際出願は、実用新案法48条の5第1項の国内書面と手数料の後です
- 仮専用実施権の登録(184条の12の2)日本語特許出願は国内書面と手数料の後、外国語特許出願はそれに翻訳文の提出と国内処理基準時の経過が加わります
受理官庁の拒否や取下げの宣言を受けた出願人は特許庁長官に決定を申し出ることができ、正当でないと決定されれば国際出願日となるべき日にされた特許出願とみなされます
PCT25条は、受理官庁が国際出願日の認定を拒否した場合などに、指定官庁が出願人の請求によりその拒否が正当だったかを検査する仕組みを定めています。184条の20はこれを受け、日本国を指定国に含む国際出願(特許出願に係るものに限ります)について、受理官庁の拒否若しくは取下げの宣言又は国際事務局の記録原本に関する認定があったとき、出願人が経済産業省令で定める期間内に特許庁長官へ決定をすべき旨の申出をできるとします(同条1項)。外国語の国際出願なら申出の際に翻訳文を出します(同条2項)。長官は拒否・宣言・認定が条約と規則に照らして正当かを決定し(同条3項)、正当でない旨の決定をしたときは、その国際出願は、拒否等がなかったとした場合に国際出願日となったと認められる日にされた特許出願とみなされます(同条4項)。日本に出願した効果を国際出願日から確保させるためです。なお186条1項1号は特許権の設定の登録又は出願公開がされていない出願書類の証明・閲覧の請求を長官が秘密保持の必要から断れるとしており、184条の9第6項の読替えで、外国語特許出願の国際出願の願書・明細書等も、設定の登録か国際公開がされるまでは同じ扱いになります。
特許法184条の10第1項国際特許出願の出願人は、日本語特許出願については国際公開があつた後に、外国語特許出願については国内公表があつた後に、国際特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対し、その発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。当該警告をしない場合においても、日本語特許出願については国際公開がされた国際特許出願に係る発明であることを知つて特許権の設定の登録前に、外国語特許出願については国内公表がされた国際特許出願に係る発明であることを知つて特許権の設定の登録前に、業としてその発明を実施した者に対しては、同様とする。
特許法184条の11第1項在外者である国際特許出願の出願人は、国内処理基準時までは、第八条第一項の規定にかかわらず、特許管理人によらないで手続をすることができる。
特許法184条の14第三十条第二項の規定の適用を受けようとする国際特許出願の出願人は、その旨を記載した書面及び第二十九条第一項各号のいずれかに該当するに至つた発明が第三十条第二項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面を、同条第三項の規定にかかわらず、国内処理基準時の属する日後経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出することができる。
特許法184条の15第1項国際特許出願については、第四十一条第一項ただし書及び第四項並びに第四十二条第二項の規定は、適用しない。
試験ではこう問われる
- 外国語特許出願の国内公表は国内書面提出期間の経過後が原則。期間内に出願審査の請求があれば国際公開がされているものに限り請求後遅滞なく行う(184条の9第1項)。「国際公開がされる前であっても」請求後に国内公表するという枝は誤り
- 補償金請求権の警告は日本語特許出願は国際公開の後、外国語特許出願は国内公表の後(184条の10第1項)。外国語特許出願では国際公開の後の警告では足りない
- 在外者は国内処理基準時までは特許管理人によらないで手続でき、出願審査の請求もできる(184条の11第1項)。特許管理人により184条の4第4項の手続をしたときは選任の届出の規定は適用されず、「いかなる場合においても」届け出なければならないという枝は誤り。届出がないことによる取下げ擬制には故意でない場合の救済がある(同条6項)
- 29条の2の他の特許出願が国際特許出願のときは出願公開を国際公開に読み替える(184条の13)。外国語特許出願でも先願の地位は国内公表ではなく国際公開で生じる。範囲は国際出願日における明細書等。翻訳文不提出で取り下げられたものとみなされた外国語特許出願は除く
- 新規性喪失の例外の書面は国内処理基準時の属する日後の省令の期間内に提出できる(184条の14)。「国内処理基準時の属する日までに限り」という枝は誤り
- 43条は適用されず優先権証明書は日本に提出しない(184条の3第2項)。国内優先権では仮専用実施権者の承諾が不要で、42条2項も適用されない(184条の15第1項)
- 出願審査の請求は出願人なら国内書面(外国語は翻訳文も)と手数料の後(184条の17)。実用新案登録出願とみなされた国際出願の特許出願への変更は国内書面と手数料の後(184条の16)。外国語特許出願の仮専用実施権の登録は国内処理基準時の経過後(184条の12の2)
- 受理官庁の拒否等には特許庁長官に決定の申出ができ、正当でない旨の決定で国際出願日となるべき日にされた特許出願とみなす(184条の20)。PCT25条で指定官庁へ書類の写しを送るのは国際事務局
この用語が問われた枝
特許庁長官は、翻訳文が提出された外国語特許出願について、特許掲載公報の発行をしたものを除き、国内書面提出期間内に出願人から出願審査の請求があった場合は、特許協力条約第 21 条に規定する国際公開がされる前であっても、出願審査の請求の後、遅滞なく、国内公表しなければならない。
外国語特許出願の出願人は、国内公表があった後に、国際特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対し、その発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。
在外者である国際特許出願の出願人は、いかなる場合においても、国内処理基準時の属する日後経済産業省令で定める期間内に、特許管理人を選任して特許庁長官に届け出なければならない。
在外者である外国語特許出願の出願人が、国内処理基準時までに特許管理人によらないで手続をした後に、翻訳文提出特例期間内に明細書等の翻訳文を提出せず、かつ、国内処理基準時の属する日後、経済産業省令で定める期間内に特許管理人の選任の届出をしなかった場合において、その後選任した特許管理人が翻訳文提出特例期間経過後に翻訳文を提出したとしても、必ずこの外国語特許出願は取り下げられたものとみなされる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。