国際調査と調査報告・見解書(15〜18条・20条・規則33〜45の2)こくさいちょうさとちょうさほうこくけんかいしょ
国際調査とは、各国際出願を対象として、総会が選定した国際調査機関が請求の範囲に基づき関連のある先行技術を発見するために行う調査です(15条・16条)。国際調査報告はその結果を所定の期間内に所定の様式で作成した文書で(18条)、見解書は国際調査機関が報告と同時に作成する新規性・進歩性・産業上の利用可能性についての書面による見解です(規則43の2)。
国際出願は一通で多くの国に効果が及びますが、各国の特許庁がそれぞれ一から先行技術を探すのでは手間が重なります。そこで条約は、国際段階で一度だけ専門の国際調査機関に先行技術を調べさせ、その結果を国際調査報告と見解書にまとめて出願人と各国に配る仕組みを置きました。出願人は特許になりそうかを早い段階で知って、国内移行するかどうかや請求の範囲の補正を判断できます。

各国際出願は国際調査の対象で、総会が選定した国際調査機関が請求の範囲に基づき関連のある先行技術を発見するために行います
15条(1)は各国際出願を国際調査の対象とし、(2)は目的を関連のある先行技術の発見とし、(3)は請求の範囲に基づき明細書と図面に妥当な考慮を払って行うと定めます。国際調査を行う国際調査機関は総会が選定し、国内官庁か、出願の対象である発明に関する先行技術についての資料調査報告を作成する任務を有する政府間機関がなります(16条(1)(3)(a))。この内容の「国際調査機関とすることができる」という枝は正しいです。調査の範囲について、「補正後の請求の範囲に含まれるであろうと合理的に予測される事項の全体について行う」という枝は規則33.3(b)のとおり正しいです。関連のある先行技術は、国際出願日前に世界のいずれかの場所で公衆が利用できるようにされたもので、新規性と進歩性の判断に役立ち得るものです(規則33.1(a))。出題当時の規則33.1(a)は書面による開示に限っていたので、関連のある先行技術は「口頭により開示されているものを含む」という枝は誤りとされました。令和8年1月発効の改正で手段を問わないことになったので、現行の規則では口頭による開示も含まれます。公表の日が国際出願日と同じか後で、出願の日(又は優先日)が国際出願日前の出願や特許は、「国際調査報告において特別に指摘される」という枝は規則33.1(c)のとおり正しいです。調査は発明を分類できる技術分野だけでなく類似の技術にも及び、何が類似の技術かは発明の必然的かつ本質的な機能や用途に照らして考えるので、「明示的に記載されている特定の機能のみに照らして考慮する」という枝は誤りです(規則33.2(c))。必ず調査する最小限資料は所定の特許文献と、国際調査機関が合意し国際事務局が一覧表で公表する非特許文献からなるので、最小限資料に「非特許文献は含まれない」という枝は誤りです(規則34.1(b))。
国際調査を要しない対象や有意義な調査ができないときは、国際調査機関が報告を作成しない旨を宣言します
17条(2)(a)は、国際出願の対象が規則により国際調査を要しないものであってその事案で調査しないことを決めた場合、又は明細書・請求の範囲・図面が有意義な調査を行うことができる程度にまで所定の要件を満たしていない場合に、国際調査機関がその旨を宣言し、出願人と国際事務局に国際調査報告を作成しない旨を通知すると定めます。したがって、「受理された全ての国際出願に対して」国際調査報告が作成されるという枝は誤りで、有意義な調査ができないときに「国際調査報告を作成しない旨を通知する」という枝は正しいです。調査を要しない対象は規則39.1が列挙していて、科学や数学の理論、植物や動物の品種、事業活動や純粋に精神的な行為の計画や方法、人体や動物の治療方法、情報の単なる提示、コンピュータ・プログラムのうち国際調査機関が先行技術の調査をする設備を有しないものなどです。一部の請求の範囲だけがこれに当たるときは、報告にその旨を表示し、他の請求の範囲については報告を作成します(17条(2)(b))。発明の単一性を欠くときは追加手数料の支払を求め、主発明の部分と手数料が支払われた発明の部分について報告を作成します(17条(3))。

国際調査報告は調査用写しの受領から3月か優先日から9月の遅く満了する期間内に作成され、国際調査機関が出願人と国際事務局に送付します
国際調査報告は所定の期間内に所定の様式で作成します(18条(1))。期間は国際調査機関による調査用写しの受領から3月又は優先日から9月のうちいずれか遅く満了する期間なので、この内容の「いずれか遅く満了する期間とする」という枝は正しいです(規則42.1)。作成された報告は、国際調査機関が出願人と国際事務局に送付します(18条(2)・規則44.1)。送付の主体は国際事務局ではないので、「国際事務局が出願人に送付する」という枝は誤りです。国際事務局は、国際出願と国際調査報告又は作成しない旨の宣言を各指定官庁に送達します(20条(1))。報告に列記された文献の写しは、指定官庁又は出願人の請求により国際調査機関が送付し、請求は国際出願日から7年の間いつでもできます(20条(3)・規則44.3(a))。
国際調査機関は報告と同時に見解書を作成し、報告を作成しない宣言のときも作成し、見解書は国際公開の後は公衆が利用できます
国際調査機関は、国際調査報告の作成と同時に、又は17条(2)(a)の報告を作成しない旨の宣言の作成と同時に、請求の範囲に記載されている発明が新規性・進歩性・産業上の利用可能性を有すると認められるかどうかと、国際出願が点検した範囲で条約と規則の要件を満たしているかどうかについて書面による見解を作成します(規則43の2.1(a))。報告を作成しない場合にも見解は作成されるので、「国際調査報告を作成しない場合は、書面による見解を作成しない」という枝は誤りです。見解書は、国際予備審査の請求があれば国際予備審査機関の書面による見解とみなされる旨と、その場合に出願人が答弁書を国際予備審査機関に提出するよう求められる旨の通知を含みます(規則43の2.1(c))。国際出願が国際公開された後は、国際事務局は何人の請求にも応じて一件書類中の文書の写しを提供するので、見解書は国際公開後に公衆が利用できます(規則94.1(b))。以前は見解書を優先日から30月まで公衆に利用させない規則がありましたが削除されているので、見解書は「優先日から30月が経過するまで、一般公衆に公開されることはない」という枝は誤りです。

補充国際調査は優先日から22月を経過する前に国際事務局に請求し、主たる国際調査をした機関は管轄せず、手数料は国際事務局が徴収します
出願人は、優先日から22月を経過する前はいつでも、規則45の2.9により管轄を有する国際調査機関が補充国際調査を行うことを請求でき、請求は二以上の機関についてすることができます(規則45の2.1(a))。「1又は2以上の国際調査機関が補充国際調査を行うことを請求することができる」という枝は正しいです。請求は国際事務局に提出します(規則45の2.1(b))。16条(1)に基づきその国際出願の国際調査を行う国際調査機関は、その国際出願の補充国際調査を管轄しないので、「当該国際出願について補充国際調査を管轄する」という枝は誤りです(規則45の2.9(b))。補充調査手数料は補充国際調査を行う機関が自己のために要求できますが、徴収するのは国際事務局なので、補充国際調査を行う国際調査機関が「出願人から、当該調査の実施に係る手数料」を徴収するという枝は誤りです(規則45の2.3(a)(b))。補充国際調査報告は優先日から28月以内に作成され、国際事務局と出願人に同じ日に送付されます(規則45の2.7(a)・45の2.8(a))。
特許協力条約15条(1)〜(3)各国際出願は、国際調査の対象とする。
国際調査は、関連のある先行技術を発見することを目的とする。
国際調査は、明細書及び図面に妥当な考慮を払つた上で、請求の範囲に基づいて行う。
特許協力条約17条(2)(a)(a) 国際調査機関は、国際出願について次のいずれかの事由がある場合には、その旨を宣言するものとし、出願人及び国際事務局に対し国際調査報告を作成しない旨を通知する。
(i) 当該国際調査機関が、当該国際出願の対象が規則により国際調査機関による調査を要しないとされているものであると認め、かつ、当該国際出願について調査を行わないことを決定したこと。
(ii) 当該国際調査機関が、明細書、請求の範囲又は図面が有意義な調査を行うことができる程度にまで所定の要件を満たしていないと認めたこと。
(b) (a)に規定するいずれかの事由が一部の請求の範囲のみとの関連においてある場合には、国際調査報告は、当該請求の範囲についてはその旨を表示するものとし、他の請求の範囲については次条の規定に従つて作成される。
試験ではこう問われる
- 各国際出願は国際調査の対象(15条(1))。国際調査機関は総会が選定し、国内官庁か資料調査報告を作成する任務を有する政府間機関(16条(1)(3))
- 関連のある先行技術は国際出願日前に公衆が利用できるようにされたもの(規則33.1(a))。出題当時は書面による開示に限られ、口頭による開示を含むという枝は誤りとされたが、令和8年1月発効の改正で手段を問わない。公表が国際出願日以後で出願日が前のものは報告で特別に指摘する(規則33.1(c))
- 類似の技術は発明の必然的かつ本質的な機能や用途に照らして決める(規則33.2(c))。最小限資料には非特許文献も含まれる(規則34.1(b))
- 調査を要しない対象や有意義な調査ができないときは報告を作成しない旨を宣言する(17条(2)(a))。「受理された全ての国際出願に対して」報告が作成されるという枝は誤り
- 報告の期間は調査用写しの受領から3月か優先日から9月の遅い方(規則42.1)。報告は国際調査機関が出願人と国際事務局に送付する(18条(2))。「国際事務局が出願人に送付する」という枝は誤り
- 見解書は報告と同時に作成し、報告を作成しない宣言のときも作成する(規則43の2.1(a))。国際公開後は公衆が利用できる(規則94.1(b))
- 補充国際調査は優先日から22月を経過する前に国際事務局へ請求し、二以上の機関にもできる(規則45の2.1)。主たる調査をした機関は管轄しない(規則45の2.9(b))。補充調査手数料を徴収するのは国際事務局(規則45の2.3(b))
この用語が問われた枝
国際調査は、国際特許協力同盟の総会によって選定された国際調査機関が行うものとし、国内官庁又は出願の対象である発明に関する先行技術についての資料調査報告を作成する任務を有する政府間機関を国際調査機関とすることができる。
国際調査は、可能かつ合理的である限り、請求の範囲に含まれる事項の全体又は補正後の請求の範囲に含まれるであろうと合理的に予測される事項の全体について行う。
国際調査は、国際出願の請求の範囲に記載されている発明に関し、関連のある先行技術を発見することを目的として行われるが、関連のある先行技術とは、請求の範囲に記載されている発明が新規性を有するもの及び進歩性を有するものと認められるかどうか決定するにあたって役立ち得るすべてのものをいい、口頭により開示されているものを含む。
いずれかの公表された出願又はいずれかの特許は、その公表の日が調査の対象となっている国際出願の国際出願日と同じ日又はその後であるがその出願の日(該当する場合には、その主張する優先日)が当該国際出願日前であるものである場合において、当該国際出願日前に公表されたとしたならば特許協力条約の国際調査に関する規定の適用上関連のある先行技術を構成したであろうとされるものであるときは、国際調査報告において特別に指摘される。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。