国際出願日の認定と欠陥の補充(11条・12条・14条・規則20・26)こくさいしゅつがんびのにんていとけっかんのほじゅう
国際出願日の認定とは、受理官庁が、国際出願として提出された書類の受理の時に11条(1)の要件が満たされていることを確認して、その受理の日を国際出願日として認める手続です。欠陥の補充とは、11条(1)の要件に欠けるとき(11条(2)・規則20)や、署名・出願人の記載・発明の名称・要約・様式の欠陥があるとき(14条(1)・規則26)に、受理官庁の求めに応じて出願人が国際出願を直す手続です。
国際出願は、その国際出願日に全ての指定国に正規の国内出願をしたことになる強い効果を持ちます。だからこそ、その日付をいつと認めるかは受理官庁が厳しく確かめます。ただし、書類の体裁が少し整っていないだけで日付を失わせるのは出願人に酷なので、条約は国際出願日に必要な最低限の要件(11条)と、後から直せばよい欠陥(14条)を分け、直し方と直さなかったときの扱いを決めています。

国際出願日は、受理の時に11条(1)の要件が満たされていると受理官庁が確認した受理の日で、発明の名称・要約・図面は要件に入りません
11条(1)は、受理官庁が受理の時に次の要件が満たされていることを確認した場合に、その受理の日を国際出願日として認めると定めます。要件は、出願人が居住又は国籍の理由でその受理官庁に国際出願をする権利を明らかに欠いていないこと、所定の言語で作成されていること、国際出願をする意思の表示、少なくとも一の締約国の指定、所定の出願人の氏名又は名称、明細書であると外見上認められる部分、請求の範囲であると外見上認められる部分です。発明の名称、要約、図面は含まれないので、「国際出願に発明の名称の記載がない場合に、国際出願の受理日を国際出願日として認めることはない」という枝は誤りです(名称の欠落は14条(1)の補充の対象にすぎないからです)。出願人の氏名は、綴りを誤っていても出願人の同一性が確認できる程度に表示されていれば足ります(規則20.1(b))。国際出願日が認められた国際出願は、国際出願日から各指定国における正規の国内出願の効果を有し、国際出願日が各指定国における実際の出願日とみなされます(11条(3))。
- 出願人の資格居住又は国籍の理由でその受理官庁に国際出願をする権利を明らかに欠いていないことです(11条(1)(i))
- 言語所定の言語で作成されていることです(11条(1)(ii))。明細書と請求の範囲の部分が受理官庁の認める言語であれば足ります(規則20.1(c))
- 意思の表示国際出願として出願する意思の表示です(11条(1)(iii)(a))
- 指定少なくとも一の締約国の指定です(11条(1)(iii)(b))。願書の提出が全締約国の指定を構成します
- 出願人の氏名所定のとおり出願人の氏名又は名称が記載されていることです(11条(1)(iii)(c))
- 明細書・請求の範囲明細書であると外見上認められる部分と請求の範囲であると外見上認められる部分です(11条(1)(iii)(d)(e))。発明の名称・要約・図面は要件ではありません
11条(1)の要件に欠けるときは、補充か引用による含めかを出願人が選び、補充の受理の日が国際出願日になります
受理の時に11条(1)の要件が満たされていないと認めた受理官庁は、出願人に対し、11条(2)の補充をすること、又は欠けているのが明細書か請求の範囲の要素であるときは規則4.18の引用により含める旨の陳述に基づきその要素を含めることの確認をすること、のいずれかを出願人の選択により速やかに求めます(規則20.3(a))。二つの道があるので、受理官庁は出願人に対して「必ず補充書の提出を求めなければならない」という枝は誤りです。引用により含めることができるのは、国際出願が優先権を主張している先の出願に完全に記載されている要素又は部分であって、「明細書に明示的に引用された非特許文献に完全に記載されている要素及び部分」を含める書面の提出を求めるという枝は誤りです(規則4.18・20.6)。出願人が補充をしたときは、受理官庁はその補充の受理の日を国際出願日として認めます(11条(2)(b)・規則20.3(b)(i))。引用による含めが認められたときは、その要素は書類が最初に受理された日から含まれていたものとみなされるので、国際出願日は遡ります(規則20.6(b))。期間は求めの日から2月、求めが無いときは書類が最初に受理された日から2月です(規則20.7)。期間内に補充も確認も無いか、あってもなお要件を満たさないときは、受理官庁は出願人に国際出願として取り扱わない旨とその理由を通知し、書類に付した番号が国際出願番号として用いられないことは国際事務局に通知します(規則20.4)。番号が用いられないことを「出願人に対し」通知するという枝は誤りです。明細書・請求の範囲・図面の一部だけが欠けているときは欠落部分として扱われ、11条(1)の要件がそろった後に欠落部分が提出されると国際出願日はその部分の受理の日に訂正されますが、出願人は通知の日から1月以内にその部分を無視するよう請求して元の国際出願日を保つことができます(規則20.5(c)(e))。国際出願が実際には含まれていない図面に言及しているときは、受理官庁がその旨を通知し、出願人が所定の期間内に図面を提出すれば図面の受理の日が国際出願日になり、提出しなければその言及は無いものとみなされます(14条(2))。

署名・出願人の記載・発明の名称・要約・様式の欠陥は14条(1)の補充の対象で、求めの日から2月以内に補充しなければ取り下げられたものとみなされます
14条(1)(a)は、受理官庁が点検する欠陥として、規則に定める署名が無いこと、出願人に関する所定の記載が無いこと、発明の名称が無いこと、要約が無いこと、規則に定める程度まで様式上の要件を満たしていないことの五つを挙げます。これらの欠陥を発見した受理官庁は所定の期間内に補充を求め、補充が無ければその国際出願は取り下げられたものとみなされ、受理官庁がその旨を宣言します(14条(1)(b))。「補充をしなかった場合には、その国際出願は、取り下げられたものとみなされ、受理官庁は、その旨を宣言する」という枝は正しいです。補充の期間は求めの日から2月で、受理官庁は決定をする前はいつでも延長できます(規則26.2)。したがって、求めの日から2月以内に補充書の提出を求めるが「この期間は延長されることはない」という枝は誤りです。様式上の要件は、国際出願が国際公開の言語で行われた場合には、国際公開が適度に均一なものであるために必要な程度まで満たされているかだけを点検します(規則26.3(a))。「必要な程度にまで満たされているかいないかのみを点検する」という枝は正しく、補充された国際出願がその程度まで様式上の要件を満たしていれば「当該様式上の要件を満たさないことを理由として取り下げられたものとみなされない」という枝も正しいです(規則26.5)。出願人が二人以上あるときは、14条(1)(a)(i)の署名は一人の署名で足ります(規則26.2の2(a))。国際出願日を認めた後に、受理官庁が国際出願日から4月以内(規則30.1)に11条(1)(i)から(iii)の要件がその日に満たされていなかったことを発見したときも、国際出願は取り下げられたものとみなされます(14条(4))。

11条の補充と14条の補充の違い
| 11条(1)の要件の欠陥 | 14条(1)の欠陥 | |
|---|---|---|
| 対象 | 出願人の資格・言語・意思の表示・指定・出願人の氏名・明細書・請求の範囲です | 署名・出願人の所定の記載・発明の名称・要約・様式です |
| 求めの内容 | 補充か引用による含めの確認かを出願人が選びます(規則20.3) | 補充書の提出を求め、意見を述べる機会を与えます(規則26.1) |
| 期間 | 求めの日から2月です(規則20.7) | 求めの日から2月で、決定前は延長できます(規則26.2) |
| 国際出願日 | 補充の受理の日が国際出願日になります(11条(2)(b)) | 国際出願日は動きません |
| 補充が無いとき | 国際出願として取り扱わない旨を出願人に通知します(規則20.4) | 取り下げられたものとみなして受理官庁が宣言します(14条(1)(b)) |
記録原本は国際事務局へ、調査用写しは国際調査機関へ送られ、名称や要約の補充中でも国際調査は続行されます
国際出願日が認められると、受理官庁は国際出願の写しを三つに分け、受理官庁用写しを手元に残し、記録原本を国際事務局に、調査用写しを管轄国際調査機関に送付します(12条(1)・規則22.1・23.1)。記録原本は国際出願の正本とされ、「国際事務局が所定の期間内に記録原本を受理しなかった場合には、国際出願は、取り下げられたものとみなされる」という枝は12条(3)のとおり正しいです。記録原本を受理した国際事務局はその事実と日付を出願人、受理官庁及び国際調査機関に通知しますが、国際調査機関への通知は通知を受けることを希望しない旨を国際事務局に通知していない場合に限られるので、「国際調査機関に必ず通知しなければならない」という枝は誤りです(規則24.2(a))。調査用写しは、規則12.3(a)の翻訳文が要求されていない場合には、調査手数料が支払われていない場合を除き、「遅くとも記録原本が国際事務局に送付される日と同じ日に受理官庁が国際調査機関に送付する」という枝は規則23.1(a)のとおり正しいです。発明の名称や要約が無く、受理官庁が出願人に補充を求めた旨を国際調査機関に通知したときは、国際調査機関は取り下げられたものとみなす旨の通知を受領しない限り国際調査を続行します(規則37.1・38.1)。「その欠陥が補充されるまで国際調査を中断する」という枝は誤りで、「取り下げられたものとみなす旨の通知を受領しない限り、国際調査を続行する」という枝は正しいです。受理官庁からその通知が無いときに名称や要約を自ら決定するのは国際調査機関なので、「国際事務局は、自ら発明の名称を決定する」という枝は誤りです(規則37.2・38.2)。受理官庁が国際出願日の認定を拒否し又は取下げを宣言したとき、出願人の請求により指定官庁に書類の写しを送付するのは国際事務局であって受理官庁ではありません(25条(1)(a))。「受理官庁は、出願人の請求に応じ」送付するという枝は誤りです。
特許協力条約11条(1)受理官庁は、次の要件が受理の時に満たされていることを確認することを条件として、国際出願の受理の日を国際出願日として認める。
(i) 出願人が、当該受理官庁に国際出願をする資格を住所又は国籍上の理由により明らかに欠いている者でないこと。
(ii) 国際出願が所定の言語で作成されていること。
(iii) 国際出願に少なくとも次のものが含まれていること。
(a) 国際出願をする意思の表示
(b) 少なくとも一の締約国の指定
(c) 出願人の氏名又は名称の所定の表示
(d) 明細書であると外見上認められる部分
(e) 請求の範囲であると外見上認められる部分
特許協力条約11条(3)第六十四条(4)の規定に従うことを条件として、(1)(i)から(iii)までに掲げる要件を満たし、かつ、国際出願日の認められる国際出願は、国際出願日から各指定国における正規の国内出願の効果を有するものとし、国際出願日は、各指定国における実際の出願日とみなす。
試験ではこう問われる
- 国際出願日の要件は出願人の資格・言語・意思の表示・一の締約国の指定・出願人の氏名・明細書と請求の範囲と認められる部分(11条(1))。発明の名称・要約・図面は要件でないので、「発明の名称の記載がない場合に、国際出願の受理日を国際出願日として認めることはない」という枝は誤り
- 11条(1)に欠けるときは補充か引用による含めの確認かを出願人の選択で求める(規則20.3)。「必ず補充書の提出を求めなければならない」という枝は誤り。引用により含められるのは先の出願に完全に記載された要素・部分で、非特許文献ではない
- 補充の受理の日が国際出願日(11条(2)(b))。補充が無ければ出願人には国際出願として取り扱わない旨を通知し、番号を用いないことは国際事務局に通知する(規則20.4)
- 14条(1)の欠陥(署名・出願人の記載・名称・要約・様式)は補充を求め、補充が無ければ取り下げられたものとみなして宣言する。期間は求めの日から2月で延長できる(規則26.2)。「この期間は延長されることはない」という枝は誤り
- 様式は国際公開が適度に均一なものであるために必要な程度まで点検し(規則26.3)、その程度を満たせば取り下げられたものとみなさない(規則26.5)
- 国際出願日の認定後4月以内に11条(1)の要件の欠如を発見すれば取り下げられたものとみなす(14条(4)・規則30.1)
- 記録原本を国際事務局が所定の期間内に受理しなければ取り下げられたものとみなす(12条(3))。受理の通知は国際調査機関が希望しない旨を通知していれば行われない(規則24.2)
- 名称・要約の補充中も国際調査機関は取下げの通知を受領しない限り国際調査を続行する(規則37.1・38.1)。受理官庁の通知が無いとき名称・要約を決めるのは国際調査機関で、国際事務局ではない(規則37.2・38.2)
この用語が問われた枝
受理官庁は、受理の時に、国際出願に発明の名称の記載がない場合に、国際出願の受理日を国際出願日として認めることはない。
受理官庁は、国際出願として提出される書類が、特許協力条約第 11 条(1)に掲げる要件を満たしていない、又は満たしていると思われないと認めた場合には、当該受理官庁は、出願人に対して必ず補充書の提出を求めなければならない。
受理官庁が、国際出願として提出された明細書又は図面が誤って提出されたと認める場合、出願人に対して規則4.18(引用により含める旨の陳述)の規定に基づき国際出願の明細書に明示的に引用された非特許文献に完全に記載されている要素及び部分を明細書又は図面に含める書面を、所定の期間内に、受理官庁に提出することを求める。
条約第11条(2)により補充された国際出願について、なお国際出願日の認定の要件である条約第11条(1)に掲げる要件が満たされていない場合には、受理官庁は、出願人に対し、国際出願として提出された書類に受理官庁が付した番号が国際出願番号として用いられないことを通知する。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。