国際段階の優先権(8条・規則2.4・4.10・17・26の2・49の3・90の2.3)こくさいだんかいのゆうせんけん
国際段階の優先権とは、国際出願がパリ条約の同盟国においてした一又は二以上の先の出願に基づく優先権の主張を伴うことができるとする8条の仕組みと、その主張の補充・追加(規則26の2.1)、優先権書類の提出(規則17)、優先期間の満了後2月以内の国際出願についての優先権の回復(規則26の2.3・49の3)、主張の取下げ(規則90の2.3)を定めた規則の総称です。
日本で特許出願をした会社が、その発明を外国でも守るために一年近く経ってから国際出願をする場面はよくあります。国際出願でもパリ条約の優先権を主張できるので、新規性や先後願の判断は先の出願の日を基準にしてもらえます。ただ、国際出願は多くの国にまとめて効果が及ぶので、主張の書き方、直せる期限、優先権書類の出し方、期限を少し過ぎたときの救済を条約と規則で細かくそろえています。

国際出願はパリ条約の同盟国でした先の出願に基づく優先権の主張を伴うことができ、優先期間は先の出願の日を含めない12月です
8条(1)は、国際出願がパリ条約の同盟国において又は同盟国についてした一又は二以上の先の出願に基づく優先権の主張を伴うことができると定め、その条件と効果はパリ条約4条によります(8条(2)(a))。規則4.10は、パリ条約の同盟国でない世界貿易機関の加盟国でした先の出願も基礎にできるとし、主張は願書に記載し、先の出願の日・番号・出願した国などを表示します。先の出願をした締約国を国際出願で指定することもでき、「当該指定国における優先権の主張の条件及び効果は、当該指定国の国内法令の定めるところによる」という枝は8条(2)(b)のとおり正しいです。期間の計算の起点となる優先日は、優先権の主張を伴う国際出願では主張の基礎となる先の出願の日(二以上あれば最先の日)で、主張が無ければ国際出願日です(2条(xi))。優先期間は先の出願の日から12月の期間で、先の出願の日はその期間に含めないので、「先の出願の出願の日を含めて」12月とする枝は誤りです(規則2.4(a))。
優先権の主張は優先日から16月か国際出願日から4月の早く満了する期間内に補充・追加でき、番号の欠落や優先権書類との不一致だけでは無効とみなされません
優先権の主張の補充や願書への追加は、優先日から16月、又は補充・追加で優先日が変わるときは変更後の優先日から16月のうち早く満了する期間内にできますが、国際出願日から4月の満了までは必ずできます(規則26の2.1(a))。したがって、「優先期間の満了の日から4月以内に優先権の主張を追加する書面を提出すれば優先権を回復できる」という枝は誤りです(起算点は国際出願日で、追加であって回復ではないからです)。21条(2)(b)の早期の国際公開を出願人が請求した後に受理された補充・追加の書面は、その請求が国際公開の技術的な準備の完了前に取り下げられない限り提出されなかったものとみなされるので、期間内であれば「いかなる場合であっても」補充・追加ができるという枝は誤りです(規則26の2.1(b))。受理官庁(怠ったときは国際事務局)は、国際出願日が優先期間の満了の日の後で回復の請求が無いとき、主張が規則4.10に合わないとき、主張の表示が優先権書類の表示と合致しないときに補充を求め、期間内に補充が無ければ主張は無いものとみなして宣言します(規則26の2.2(a)(b))。ただし、「先の出願の番号の表示が欠落しているという理由のみでは無効とはみなされない」という枝と、「優先権書類に記載されている表示と合致しないとの理由のみでは無効とはみなさない」という枝はいずれも正しく、国際出願日が優先期間の満了の日から2月以内であることだけを理由にも無効とみなされません(規則26の2.2(c))。優先権の回復の請求ができる旨を出願人に通知するのは、国際出願日が優先期間の満了の日の後でその日から2月以内の場合なので、「優先権書類に記載されている表示と合致しない場合において」回復の請求の可能性を通知するという枝は誤りです。

優先権書類は優先日から16月以内に国際事務局か受理官庁に提出し、電子図書館からの入手は国際公開の日前に国際事務局に請求します
先の出願の受理官庁が認証した写しである優先権書類は、出願人が優先日から16月以内に国際事務局又は受理官庁に提出します(規則17.1(a))。受理官庁が発行する書類であれば、優先日から16月以内に受理官庁に作成と国際事務局への送付を請求することもできます(規則17.1(b))。国際事務局が国際公開の日前に電子図書館から優先権書類を入手できるときは、出願人は提出に代えて、国際公開の日前に国際事務局に入手を請求できます(規則17.1(b-bis))。請求先を「受理官庁に対し」とし、期限を「優先日から16月以内」とする枝は誤りです。いずれも満たされないときは、指定官庁は出願人に相当の期間内に提出する機会を与えた上で優先権の主張を無視することができますが、先の出願がその指定官庁に国内官庁としてされたものであるときや電子図書館から入手できるときは無視できません(規則17.1(c)(d))。
優先期間の満了後2月以内にした国際出願は受理官庁に優先権の回復を請求でき、拒否の決定に指定国は拘束されません
国際出願日が優先期間の満了の日の後でも、その日から2月以内であれば、出願人は受理官庁に優先権の回復を請求できます(規則26の2.3(a))。受理官庁は、優先期間内に国際出願をしなかったことが、状況により必要とされる相当な注意を払ったにもかかわらず生じた場合か故意ではない場合かのうち、自らが採用する基準に当たると認めたときに回復します。各受理官庁は少なくとも一方の基準を適用し、両方を適用することもできるので、この内容を述べた「優先権を回復する」という枝は正しいです。請求は優先期間の満了の日から2月以内に理由を述べてし、受理官庁は手数料を求めることができます(規則26の2.3(b)(d)(e))。相当な注意の基準で回復されたときは各指定国で効力があり、故意ではない基準で回復されたときはその基準かそれより出願人に有利な基準を国内法令に持つ指定国で効力があります(規則49の3.1(a)(b))。回復の請求を拒否する受理官庁の決定にはどの指定国も拘束されないので、「指定国は、優先権の回復のための請求を拒否する受理官庁の決定に拘束される」という枝は誤りです(規則49の3.1(e))。拒否された出願人は指定官庁に改めて回復を請求でき、受理官庁への請求をその請求とみなすこともできます(規則49の3.1(f)・49の3.2)。国際予備審査でも、優先期間の満了後2月以内の国際出願日であれば、先の出願の日が新規性・進歩性の基準日となることがあるので、「判断の基準日となることがある」という枝は正しいです(規則64.1(b)(iii))。

優先権の主張は優先日から30月を経過する前に取り下げることができ、優先日が変わると未了の期間は変更後の優先日から起算します
出願人は、優先日から30月を経過する前はいつでも、国際出願に含めた優先権の主張の一部又は全部を取り下げることができ、通告が国際事務局、受理官庁又は国際予備審査機関に届いた時に効力を生じます(規則90の2.3(a)〜(c))。取下げで優先日が変わると、もとの優先日から起算してまだ満了していない期間は変更後の優先日から起算しますが、国際公開の期間については、取下げの通告が国際公開の技術的な準備の完了後に国際事務局に届いたときは、もとの優先日を基礎に国際公開を行うことができます(規則90の2.3(d)(e))。まだ満了していない期間は「常に、変更の後の優先日から起算する」という枝は誤りです。補充・追加で優先日が変わったときも同じく未了の期間は変更後の優先日から起算します(規則26の2.1(c))。
特許協力条約8条(1)国際出願は、規則の定めるところにより、工業所有権の保護に関するパリ条約の締約国において又は同条約の締約国についてされた先の出願に基づく優先権を主張する申立てを伴うことができる。
試験ではこう問われる
- 優先期間は先の出願の日から12月で、先の出願の日は含めない(規則2.4(a))。「先の出願の出願の日を含めて」という枝は誤り
- 先の出願をした締約国も指定でき、指定国の国内出願や一国のみを指定した国際出願を基礎とするときの条件・効果はその指定国の国内法令による(8条(2)(b))
- 主張の補充・追加は優先日から16月か国際出願日から4月の早い方まで(規則26の2.1(a))。「優先期間の満了の日から4月以内」に追加すれば「回復できる」という枝は誤り。早期公開の請求後の書面は提出されなかったものとみなす
- 番号の欠落・優先権書類との不一致・満了後2月以内の国際出願日だけでは無効とみなさない(規則26の2.2(c))。回復の請求の可能性の通知は満了後2月以内の国際出願日の場合だけ
- 優先権書類は優先日から16月以内に国際事務局か受理官庁へ(規則17.1(a))。電子図書館からの入手の請求は国際公開の日前に国際事務局へ(規則17.1(b-bis))
- 満了後2月以内の国際出願は受理官庁が相当な注意か故意でない基準で回復する(規則26の2.3)。拒否の決定に指定国は拘束されず(規則49の3.1(e))、指定官庁にも回復を請求できる(規則49の3.2)
- 取下げは優先日から30月を経過する前に(規則90の2.3(a))。優先日が変わると未了の期間は変更後の優先日から起算するが、国際公開はもとの優先日で行えることがある(規則90の2.3(d)(e))。「常に」という枝は誤り
この用語が問われた枝
優先権の主張に関して「優先期間」というときは、その優先権の基礎となる先の出願の出願の日を含めて 12 月の期間をいうものとする。
いずれかの締約国において又はいずれかの締約国についてされた先の出願に基づく優先権の主張を伴う国際出願には、当該締約国の指定を含めることができる。国際出願が、いずれかの指定国において若しくはいずれかの指定国についてされた国内出願に基づく優先権の主張を伴う場合又は一の国のみの指定を含む国際出願に基づく優先権の主張を伴う場合には、当該指定国における優先権の主張の条件及び効果は、当該指定国の国内法令の定めるところによる。
先の国際出願についての優先権の主張が国際出願に記載されていない場合には、出願人は、優先期間の満了の日から4月以内に優先権の主張を追加する書面を提出すれば優先権を回復できる。
出願人は、優先日から 16 月の期間又は、優先権の主張の補充若しくは優先権の主張の願書への追加により優先日について変更が生じる場合には、変更された優先日から 16月の期間のうちいずれか早く満了する期間内であれば、いかなる場合であっても、優先権の主張の補充又は追加をすることができる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。