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優先権の要件(4条A・C)ゆうせんけんのようけん

条約 第1章 パリ条約 短答で25枝

優先権の要件とは、いずれかの同盟国において正規に特許出願若しくは実用新案、意匠若しくは商標の登録出願をした者又はその承継人が、他の同盟国において出願することに関し、特許及び実用新案については12箇月、意匠及び商標については6箇月の優先期間中に優先権を有するというパリ条約4条A・Cの定めです。正規の国内出願は結果のいかんを問わず出願の日付を確定するために十分なすべての出願をいい、優先期間は最初の出願の日から開始します。

日本で特許出願をした人が同じ発明をアメリカにも出願したいとき、翻訳や代理人の手配に数か月かかります。その間に他人が先に出願したり、自分の発明が公表されたりすると、本来なら新規性や先願で負けてしまいます。パリ条約4条の優先権は、最初の出願から12箇月(意匠・商標は6箇月)の間に他の同盟国へ出願すれば、その出願を最初の出願の日に出したのと同じ扱いにする仕組みです。4条Aは誰がどの出願を基礎にできるかを、4条Cは期間の長さと数え方を決めています。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の左端に札「日本:最初の出願(特許)」、右へ12箇月分の目盛りを置き、途中に札「米国へ出願(優先権の主張)」、右端に札「12箇月の満了」。横

優先権を有するのは、いずれかの同盟国において正規の出願をした者又はその承継人です

4条A(1)は、いずれかの同盟国において正規に特許出願若しくは実用新案、意匠若しくは商標の登録出願をした者又はその承継人が、他の同盟国において出願することに関し、所定の期間中優先権を有すると定めます。承継人も含むので、最初の出願をした会社から出願する権利を譲り受けた者も優先権を主張できますし、正規に出願「をした者に限り、他の同盟国において出願をすることに関し、優先権を有する」という枝は誤りです。主張できる者は同盟国の国民のほか、3条で同盟国の国民とみなされる者です。商標について「優先期間として定められた6月の期間中、優先権を有する」という枝は正しいです。4条が対象にするのは特許、実用新案、意匠、商標の出願で、サービス・マークは挙げられていません。パリ条約だけを見れば、サービス・マークについて4条の優先権を認める義務は同盟国にありません。ただしTRIPS協定62条3がパリ条約4条をサービス・マークについて準用するので、世界貿易機関の加盟国はサービス・マークにも優先権を認めなければなりません。「パリ条約第4条の規定は、サービス・マークについて準用する」という枝は、TRIPS協定の規定として正しいです。

基礎になるのは正規の国内出願で、結果のいかんを問わず、同盟国間の条約による出願も含まれます

4条A(2)は、各同盟国の国内法令又は同盟国の間で締結された2国間若しくは多数国間の条約により正規の国内出願とされるすべての出願が優先権を生じさせると定めます。特許協力条約に基づく国際出願は、この多数国間の条約により正規の国内出願とされる出願です。したがって「同盟国の間で締結された2国間の条約により正規の国内出願とされるすべての出願は、優先権を生じさせるものと認められる」という枝は正しく、「各同盟国の国内法令により正規の国内出願と認められる出願でなければ、優先権を生じさせることはできない」という枝は誤りです。4条A(3)は、正規の国内出願を、結果のいかんを問わず、当該国に出願をした日付を確定するために十分なすべての出願と定義します。優先権は出願日を確保するための制度なので、基礎の出願がその後どうなったかは関係ありません。「出願後に当該出願が拒絶され、又は、放棄がされた場合は、優先権が消滅する」という枝は誤りで、正規の国内出願を「取り下げられ、放棄され又は拒絶の処分を受けていないものをいう」という枝も誤りです。

特許庁の窓口の場面。先生が窓口の職員役(札「特許庁」)でカウンターの内側に座り、手に「優先権の主張:基礎は同盟国Xの出願A(拒絶の処分を受けた)」と書かれた願書を持っている。カウンターの外に出願人の男性(札「出願人」)が立ち、吹き出し「X国

優先期間は特許・実用新案が12箇月、意匠・商標が6箇月で、最初の出願の日から開始し、出願の日は算入しません

4条C(1)は、優先期間を特許及び実用新案については12箇月、意匠及び商標については6箇月と定めます。4条C(2)は、優先期間が最初の出願の日から開始し、出願の日は期間に算入しないと定めます。4条C(3)は、期間の末日が保護の請求される国において法定の休日又は所轄庁が出願を受理するために開いていない日に当たるときは、その日の後の最初の就業日まで延長すると定めます。延長の基準になる休日は、最初の出願をした国ではなく保護の請求される国の休日です。商標については6条の5Fが、優先期間内にされた登録出願は本国における登録がその期間の満了後にされた場合にも優先権の利益を失わないと定めるので、商標の登録出願は「本国における登録が当該優先期間の満了後にされた場合にも、優先権の利益を失わない」という枝は正しいです。

  • 特許・実用新案最初の出願の日から12箇月です
  • 意匠・商標最初の出願の日から6箇月です
  • 起算最初の出願の日から開始し、出願の日は算入しません
  • 末日が休日のとき保護の請求される国の法定の休日又は所轄庁が開いていない日なら、その後の最初の就業日まで延長されます

同一の同盟国にした後の出願は、先の出願が閲覧に付されず・権利を存続させず・後の出願の日までに取下げ等され・まだ基礎とされていないときに限り、最初の出願とみなされます

優先期間は最初の出願から数えるので、同じ発明をもう一度同じ国に出願し直しても、原則として期間は延びません。4条C(4)は例外として、最初の出願と同一の対象について同一の同盟国においてされた後の出願を最初の出願とみなす条件を定めます。条件は、先の出願が、公衆の閲覧に付されないで、かつ、いかなる権利をも存続させないで、後の出願の日までに取り下げられ、放棄され又は拒絶の処分を受けたこと、及びその先の出願がまだ優先権の主張の基礎とされていないことの四つです。すべて満たせば後の出願の日が優先期間の初日になり、先の出願はもう優先権の主張の基礎にできません。条文どおりに四つの条件を並べて「最初の出願とみなされ、その出願の日は、優先期間の初日とされる」とする枝は正しく、同盟国Xでの出願Aと「同盟国Xにおいてされた出願人甲による後の特許出願B」の事例で四つの条件を満たして出願Bが最初の出願とみなされるという枝も正しいです。一方、先の出願が「優先権の主張の基礎とされた後に」取り下げられた場合を条件に挙げる枝は誤りです(先の出願がまだ基礎とされていないことが条件だからです)。異なる同盟国にした後の出願はこの規定の対象でなく、最初の出願とはみなされません。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立つ。横軸の左から札「同盟国X:出願A」「出願Aの取下げ(公衆の閲覧に付されず、権利を存続させない)」「同盟国X:出願B(出願Aと同一の対象)」「同盟国Yへ出願(出願Bを基礎
パリ条約4条A

A (1) いずれかの同盟国において正規に特許出願若しくは実用新案,意匠若しくは商標の登録出願をした者又はその承継人は,他の同盟国において出願することに関し,以下に定める期間中優先権を有する。
(2) 各同盟国の国内法令又は同盟国の間で締結された2国間若しくは多数国間の条約により正規の国内出願とされるすべての出願は,優先権を生じさせるものと認められる。
(3) 正規の国内出願とは,結果のいかんを問わず,当該国に出願をした日付を確定するために十分なすべての出願をいう。

パリ条約4条C

C (1) A(1)に規定する優先期間は,特許及び実用新案については12箇月,意匠及び商標については6箇月とする。
(2) 優先期間は,最初の出願の日から開始する。出願の日は,期間に算入しない。
(3) 優先期間は,その末日が保護の請求される国において法定の休日又は所轄庁が出願を受理するために開いていない日に当たるときは,その日の後の最初の就業日まで延長される。
(4) (2)にいう最初の出願と同一の対象について同一の同盟国においてされた後の出願は,先の出願が,公衆の閲覧に付されないで,かつ,いかなる権利をも存続させないで,後の出願の日までに取り下げられ,放棄され又は拒絶の処分を受けたこと,及びその先の出願がまだ優先権の主張の基礎とされていないことを条件として,最初の出願とみなされ,その出願の日は,優先期間の初日とされる。この場合において,先の出願は,優先権の主張の基礎とすることができない。

試験ではこう問われる

  1. 優先権を有するのは正規の出願をした者「又はその承継人」。特許・実用新案は12箇月、意匠・商標は6箇月
  2. 正規の国内出願は結果のいかんを問わない。「出願後に当該出願が拒絶され、又は、放棄がされた場合は、優先権が消滅する」は誤り
  3. 国内法令だけでなく同盟国間の2国間・多数国間条約により正規の国内出願とされる出願も基礎になる(PCT国際出願)。国内法令による出願でなければ生じないという枝は誤り
  4. 優先期間は最初の出願の日から開始し、出願の日は算入しない。末日が保護請求国の休日なら次の就業日まで延長
  5. 同一国の後の出願が最初の出願とみなされる条件は四つ(閲覧に付されない・権利を存続させない・後の出願の日までに取下げ等・まだ基礎とされていない)。「優先権の主張の基礎とされた後に」取り下げた場合とする枝は誤り
  6. パリ条約だけではサービス・マークに優先権を認める義務はないが、TRIPS協定62条3で4条が準用される
  7. 商標は本国登録が優先期間の満了後でも優先権の利益を失わない(6条の5F)

この用語が問われた枝

令和8年度 問48 枝イ正しい

いずれかの同盟国において正規に商標の登録出願をした者又はその承継人は、他の同盟国において出願することに関し、優先期間として定められた6月の期間中、優先権を有する。

平成30年度 問47 枝イ誤り

いずれかの同盟国において正規に特許出願若しくは実用新案、意匠若しくは商標の登録出願をした者に限り、他の同盟国において出願をすることに関し、優先権を有する。

平成29年度 問47 枝イ誤り

いずれかの同盟国において、特許出願もしくは実用新案、意匠もしくは商標の登録出願をした者又はその承継人は、他の同盟国において出願をすることに関し、所定の期間中優先権を有するが、優先権の主張の基礎となる出願は、正規の国内出願である必要がある。したがって、出願後に当該出願が拒絶され、又は、放棄がされた場合は、優先権が消滅する。

令和3年度 問47 枝ロ誤り

正規の国内出願とは、当該国に出願した日付を確定するために十分なすべての出願であって、出願後、取り下げられ、放棄され又は拒絶の処分を受けていないものをいう。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

条約を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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