国際公開と秘密保持(21条・29条・30条・64条(3)・規則48)こくさいこうかいとひみつほじ
国際公開とは、国際事務局が国際出願の優先日から18月を経過した後速やかに行う、国際出願の公開です。秘密保持とは、国際公開が行われる前に国際事務局・国際調査機関が国際出願を知得されるようにしてはならず、国際予備審査の一件書類についてはいつでも知得されるようにしてはならないという義務です。
国際出願を一つすれば多くの国に出願した効果が生じますが、各国の公報に載るのを待っていては、その発明がどの国でも公開されない期間が長く続きます。そこでPCTは、国際事務局が優先日から18月を経過した後に国際出願を一括して国際公開し、各指定国では国内公開と同じ効果を与えることにしました。反対に、公開の日までは国際事務局や国際調査機関が出願の中身を外に漏らしてはならず、国際予備審査の一件書類は公開後も秘密に保たれます。公開と秘密の線引きが決まっているのは、出願人の秘密と第三者の知る利益を同じ日で切り替えるためです。

国際公開は国際事務局が優先日から18月を経過した後速やかに行いますが、出願人の請求による早期公開と、64条(3)の留保国のみを指定する出願の例外があります
21条(1)により国際公開を行うのは国際事務局です。21条(2)(a)は、(b)及び64条(3)に定める場合を除くほか、国際出願の優先日から18月を経過した後速やかに国際公開を行うと定めます。(b)により、出願人はこの期間の満了前のいずれの時においても国際公開を行うことを国際事務局に請求することができます。18月経過後に公開するが「出願人は上記期間の満了前であっても国際出願の国際公開を行うことを国際事務局に請求することができる」という枝は正しいです。もう一つの例外が64条(3)で、自国に関する限り国際公開を行う必要がないことを宣言した国のみの指定が優先日から18月を経過した時に含まれている場合には、21条(2)の国際公開は行いません。したがって、出願人が「国際事務局に請求する場合以外は」必ず18月後に公開するという枝は誤りです(留保国のみを指定する出願という例外があるからです)。また21条(5)により、「国際公開の技術的な準備が完了する前に国際出願が取り下げられ又は取り下げられたものとみなされる場合には、国際公開は行わない」という枝は正しいです。早期公開の請求の時に国際調査報告がまだ利用できないときは、特別の手数料がかかります(規則48.4)。

国際公開には明細書・請求の範囲・図面・要約と国際調査報告又は17条(2)(a)の宣言、19条補正後の請求の範囲を含めますが、見解書と34条補正は含めません
公開の内容は規則48.2が定めます。表紙、明細書、請求の範囲、図面、国際調査報告又は17条(2)(a)の宣言、19条(1)の説明書などが含まれ、表紙には願書の事項、図、要約が載ります。19条補正がされた場合には、国際公開に「出願時における請求の範囲の全文及び補正後の請求の範囲の全文を含める」という枝は正しいです(規則48.2(f))。国際公開の技術的な準備の完了の時に国際調査報告をまだ利用できない場合には、表紙にその旨と、報告が「改訂された表紙とともに別個に公開される旨を掲載する」という枝は正しいです(規則48.2(g))。国際事務局は、情報を利用する優先的な公共の利益がないことなどを認めるときは、技術的な準備の完了前に受理した出願人の理由を示した請求により「当該情報を公開の対象から省略する」という枝も正しいです(規則48.2(l))。善良の風俗や公の秩序に反する表現や誹謗の記載は国際事務局が省略できます(21条(6))。国際調査機関の書面による見解と34条補正は国際公開の内容に入りませんが、見解書は国際公開の後はいかなる者の請求にも応じて写しが提供されます(規則94.1(b))。
- 含まれるもの表紙(願書の事項・図・要約)、明細書、請求の範囲、図面、国際調査報告又は17条(2)(a)の宣言、19条補正後の請求の範囲の全文と説明書です(規則48.2)
- 含まれないもの国際調査機関の書面による見解、34条補正、国際予備審査報告です。見解書は公開後に一件書類として写しを請求できます(規則94.1)
- 表紙の扱い国際調査報告が間に合わなければその旨を載せて別個に公開し、19条補正の期間が満了していなければその事実を載せて補正後に改訂された表紙を公開します(規則48.2(g)(h))
国際公開の言語は10の言語で、英語以外で公開されるときは発明の名称・要約・国際調査報告を英語でも公開し、その翻訳は国際事務局の責任で作成します
国際出願がアラビア語、英語、スペイン語、中国語、ドイツ語、日本語、韓国語、ポルトガル語、フランス語又はロシア語でされた場合には、その言語で国際公開を行います(規則48.3(a))。これ以外の言語でされた出願は、規則12.3又は12.4により提出された国際公開の言語による翻訳文の言語で公開されます(規則48.3(b))。国際公開が英語以外の言語で行われる場合には、国際調査報告又は17条(2)(a)の宣言、発明の名称、要約及び要約に添付する図に係る文言は、その言語と英語の双方で公開され、英語による翻訳文は出願人が規則12.3により提出しない場合には国際事務局の責任において作成します(規則48.3(c))。英語以外で公開される場合に「出願人は必ずその責任で英語による翻訳文を作成し、提出しなければならない」という枝は誤りです(翻訳は国際事務局の責任だからです)。
国際公開の指定国における効果は審査を経ていない国内出願の強制的な国内公開と同一ですが、翻訳文と早期公開について国内法令で留保できます
29条(1)は、指定国における出願人の権利の保護に関する限り、国際公開の効果を、審査を経ていない国内出願の強制的な国内公開について指定国の国内法令が定める効果と同一とします。日本でいえば出願公開の効果、つまり補償金請求権です。ただし指定国の国内法令は、国内公開の言語と異なる言語で国際公開が行われた場合に、その効果を翻訳文が公表された時などからのみ生ずると定めることができ(29条(2))、出願人の請求により優先日から18月を経過する前に国際公開が行われた場合には、18月を経過した時からのみ生ずると定めることができます(29条(3))。日本の特許法184条の10が外国語特許出願の補償金請求権を国内公表の後に生じさせているのは、この29条(2)の留保を使ったものです。
国際公開前の秘密保持は国際事務局と国際調査機関に課され、調査機関への送付・13条の送付・20条の送達は例外になり、国際予備審査の一件書類は報告の作成後の選択官庁を除いて秘密です
30条(1)(a)により、国際事務局及び国際調査機関は、国際公開が行われる前に、出願人の請求又は承諾がある場合を除き、いかなる者又は当局に対しても国際出願が知得されるようにしてはなりません。ただし(b)により、管轄国際調査機関への送付、13条の送付(指定官庁への国際出願の写しの送付)及び20条の送達には適用されません。この三つの送付・送達「をも含めて国際出願が知得されるようにしてはならない」という枝は誤りです(手続に必要な送付は秘密保持の例外だからです)。国内官庁も、国際公開の日、20条の送達の受理の日、22条の写しの受理の日のうち最も早い日前には第三者に知得されるようにしてはなりませんが、指定官庁とされた事実の公表と司法当局への開示は妨げられません(30条(2))。国際予備審査については38条(1)が、国際事務局及び国際予備審査機関はいかなる時においても国際予備審査の一件書類を知得されるようにしてはならないと定めつつ、国際予備審査報告の作成の後は選択官庁を除くとしています。「いかなる時においても、いかなる者又は当局に対しても、国際予備審査の一件書類につき」知得されるようにしてはならないという枝は誤りです(報告作成後の選択官庁という例外があるからです)。国際予備審査報告は出願人と国際事務局に送付され選択官庁に送達されるだけで、国際予備審査報告は「規則の定めるところによって、国際公開される」という枝は誤りです。一方、国際予備審査の請求がされた事実は秘密ではなく、国際事務局は請求書の提出後で国際公開の後速やかに「国際予備審査の請求書及び選択国に関する情報を公報に掲載する」という枝は正しいです(規則61.4)。

特許協力条約21条(1)国際事務局は、国際出願の国際公開を行う。
試験ではこう問われる
- 国際公開は国際事務局が優先日から18月経過後速やかに行う。出願人は期間満了前でも早期公開を請求できる(21条(2)(b))
- 例外は早期公開請求だけではない。64条(3)の留保国のみを指定する出願は18月後も公開されないので、「請求する場合以外は」必ず18月後という枝は誤り
- 技術的な準備の完了前に取り下げられ又は取り下げられたものとみなされれば公開しない(21条(5))
- 公開内容は明細書・請求の範囲・図面・要約・国際調査報告又は17条(2)(a)の宣言・19条補正(出願時と補正後の請求の範囲の全文)。見解書と34条補正は入らない。調査報告が間に合わなければ表紙にその旨を載せ別個に公開(規則48.2)
- 英語以外で公開されるときは名称・要約・調査報告を英語でも公開し、翻訳は国際事務局の責任(規則48.3(c))。出願人が必ず作成するという枝は誤り
- 公開前の秘密保持(30条)の例外は、管轄国際調査機関への送付・13条の送付・20条の送達。これらも含めて禁止という枝は誤り
- 国際予備審査の一件書類は38条でいつでも秘密だが、報告作成後の選択官庁は例外。国際予備審査報告は国際公開されない。請求書と選択国の情報は公報に掲載される(規則61.4)
この用語が問われた枝
国際事務局は、所定の場合を除くほか、国際出願の優先日から18月を経過した後速やかに国際出願の国際公開を行うが、出願人は上記期間の満了前であっても国際出願の国際公開を行うことを国際事務局に請求することができる。
国際出願の国際公開は、出願人が、期間の満了前に国際出願の国際公開を行うことを国際事務局に請求する場合以外は、必ず国際出願の優先日から 18 月を経過した後速やかに行う。
国際公開の技術的な準備が完了する前に国際出願が取り下げられ又は取り下げられたものとみなされる場合には、国際公開は行わない。
国際公開の技術的な準備の完了の時に国際調査報告をまだ利用することができない場合には、表紙には、国際調査報告を利用することができなかった旨、及び国際調査報告が(利用することができるようになったときに)改訂された表紙とともに別個に公開される旨を掲載する。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。