国際登録出願と国際意匠登録出願の特例(60条の3〜60条の11・60条の13〜60条の22)こくさいとうろくしゅつがんとこくさいいしょうとうろくしゅつがんのとくれい
国際登録出願とは、日本国民又は日本国内に住所若しくは居所を有する外国人が、特許庁長官にするジュネーブ改正協定の国際出願です(60条の3)。国際意匠登録出願とは、日本国を指定締約国とする国際出願で国際公表がされたものを、国際登録の日にされた意匠登録出願とみなしたものです(60条の6)。
日本のメーカーが同じ意匠を日本・欧州・米国でまとめて守りたいとき、国ごとに出願する代わりに、ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく一つの国際出願で指定した締約国すべてに出願した効果を得られます。日本から出す側の手続が国際登録出願で、日本を指定して入ってくる側が国際意匠登録出願です。入ってくる出願は国際公表を経て日本の意匠登録出願とみなされ、審査は国内出願と同じ基準で行いますが、秘密意匠や登録料のように国際登録の仕組みと両立しない制度は60条の6以下の特例で置き換えています。

国際登録出願は日本国民等が特許庁長官を通じて外国語でする国際出願で、日本を指定して国際公表された国際出願は国際登録の日にされた意匠登録出願とみなされます
60条の3は、日本国民又は日本国内に住所若しくは居所(法人は営業所)を有する外国人が特許庁長官に国際出願をできるとし、願書は経済産業省令で定める外国語で作成します。協定4条(1)は国際事務局への直接出願も認めますが、日本の特許庁を通す場合が国際登録出願です。受け入れる側の60条の6第1項は、日本国を指定締約国とする国際出願で国際公表がされたものを、国際登録の日にされた意匠登録出願とみなします。二以上の意匠を包含する国際出願は意匠ごとにされた意匠登録出願とみなされるので(2項)、「国際登録の日に国際登録の対象である意匠ごとにされた意匠登録出願とみなされる」という枝は正しいです。一意匠一出願に合わせて分割の手続をする必要が無い反面、意匠ごとに分かれた出願をまとめる手続は無いので、国際公表の日後に「組物に係る1つの意匠登録出願とするための手続を行うことができる」という枝は誤りです。みなされた後は国内出願と同じ手続が使え、組物の要件を満たさないとして拒絶理由を受けた出願の一部について「分割の手続を日本国特許庁に対して行うことができる」という枝は正しいです。国際登録簿に記録された名義人・創作者・製品は願書の記載とみなされ、製品が建築物又は画像の場合は記録された事項から用途を認識できるときに限るので、画像の製品についての事項は「その事項から当該画像の用途を認識することができるときに限り」画像の用途とみなされるという枝は正しいです。

国際意匠登録出願には秘密意匠の請求ができず、新規性喪失の例外の書面は国際公表後の期間内に出し、優先期間経過後の優先権の救済は適用されません
国際出願は国際登録の後に国際事務局が国際公表するので、意匠を秘密にする14条とは両立しません。60条の9は国際意匠登録出願の出願人に14条を適用しないとしており、「秘密にすることを請求することができない」という枝は正しく、「国際登録の日から3年以内の期間を指定して」秘密にできる場合があるという枝は誤りです。新規性喪失の例外(4条2項)を受けたい旨の書面と証明書は、出願と同時・30日以内という4条3項の原則に代えて、国際公表があった日後経済産業省令で定める期間内に特許庁長官へ提出できます(60条の7第1項)。国際出願と同時に証明書を国際事務局に提出したときは国際登録の日に提出したものとみなします(2項)。パリ条約の優先権については、出願と同時の主張書面の提出(特許法43条1項)や優先期間経過後の救済(43条の2)などの15条1項の準用規定を適用せず(60条の10第1項)、協定6条(1)(a)の主張をした者に特許法43条2項以下の証明書の手続だけ準用します。「国際意匠登録出願についても準用される」という43条の2の枝は誤りです。関連意匠は本意匠と関連意匠のどちらかが国際意匠登録出願でも認められます(60条の8)。
設定登録は登録料でなく登録査定・審決によってされ、登録料に代えて個別指定手数料を国際事務局に納付し、返還請求は確定の日から6月以内です
国内出願は第1年分の登録料の納付があったときに設定登録されますが(20条2項)、国際意匠登録出願では「意匠登録をすべき旨の査定又は審決」と読み替えるので(60条の13)、登録査定か登録審決があれば設定登録されます。登録料に当たるものは、協定7条(2)の個別指定手数料として一件ごとに10万500円を超えない範囲内で政令で定める額を国際事務局に納付し、更新時は8万4500円を超えない範囲内の額です(60条の21第1項・2項)。42条から45条までの登録料の規定は適用されません(3項)。出願が取り下げられ、又は拒絶査定若しくは拒絶審決が確定したときは個別指定手数料の返還を請求できますが、「確定した日」から6月を経過した後は請求できません(60条の22)。起算点は謄本の送達日ではないので、拒絶査定又は審決の「謄本の送達がされた日から6月を経過した後は」返還を請求できないという枝は誤りです。登録査定の謄本の送達は、特許庁長官が国際事務局を経由して国際登録の名義人に通知することで代えられ、通知が国際登録簿に記録された時に送達があったものとみなします(60条の12の2)。「国際登録の名義人に発送した時に」送達があったものとみなされるという枝は誤りです。
国際登録を基礎とした意匠権は国際登録の消滅で消滅し、放棄に承諾は要らず、移転と消滅は国際登録簿、質権は意匠原簿の登録によります
60条の14は、国際意匠登録出願はその基礎とした国際登録が消滅したときに取り下げられたものとみなし(1項)、設定登録を受けた国際登録を基礎とした意匠権も消滅したものとみなします(2項)。効果は国際登録簿から消滅した日から生じます(3項)。「その基礎とした国際登録が消滅した後であっても、なお存続する」という枝は誤りです。意匠権の放棄は国内では専用実施権者・質権者等の承諾が要りますが(36条で準用する特許法97条1項)、国際登録を基礎とした意匠権はその規定を適用せず自由に放棄できます(60条の17)。「質権者の承諾を得ることなくその意匠権を放棄することができない」という枝と、「専用実施権者の承諾を得ていることが」放棄の効力発生要件になるという枝はいずれも誤りです。移転や存続期間満了以外の消滅は国際登録簿に登録されたところによる一方(60条の19第2項)、意匠原簿には設定、信託による変更、存続期間満了による消滅、処分の制限が登録されます(1項)。回復は入らないので、「いずれも特許庁に備える意匠原簿に登録される事項である」という枝は誤りです。質権は特例の対象外で意匠原簿に登録するので(61条1項3号)、質権の設定や移転が「国際登録簿に登録されたところによる」という枝は誤りです。無効審決の確定は意匠原簿に登録され、協定15条(2)により「その旨が国際事務局に通報される」という枝は正しいです。

- 意匠登録出願とみなす時点国際登録の日です(60条の6第1項)。二以上の意匠は意匠ごとの出願とみなします
- 使えない制度秘密意匠(60条の9)、優先権の主張書面の同時提出と優先期間経過後の救済(60条の10)、登録料(60条の21第3項)です
- 特例で置き換えるもの設定登録は登録査定・審決(60条の13)、登録料は個別指定手数料(60条の21)、登録査定の送達は国際事務局経由の通知(60条の12の2)です
- 意匠権の帰趨国際登録の消滅で消滅(60条の14)、承諾なしに放棄できる(60条の17)、移転と消滅は国際登録簿、質権は意匠原簿(60条の19・61条)です
意匠法60条の6第1項日本国をジュネーブ改正協定第一条(xix)に規定する指定締約国とする国際出願であつて、その国際出願に係るジュネーブ改正協定第一条(vi)に規定する国際登録(以下「国際登録」という。)についてジュネーブ改正協定第十条(3)(a)の規定による公表(以下「国際公表」という。)がされたものは、経済産業省令で定めるところにより、ジュネーブ改正協定第十条(2)に規定する国際登録の日にされた意匠登録出願とみなす。
意匠法60条の9国際意匠登録出願の出願人については、第十四条の規定は、適用しない。
意匠法60条の14第2項前条の規定により読み替えて適用する第二十条第二項の規定により設定の登録を受けた意匠権(以下「国際登録を基礎とした意匠権」という。)は、その基礎とした国際登録が消滅したときは、消滅したものとみなす。
試験ではこう問われる
- 国際登録出願は日本国民又は国内に住所等を有する外国人が特許庁長官に外国語の願書でする。日本を指定して国際公表された国際出願は国際登録の日にされた意匠登録出願とみなす(60条の6)
- 二以上の意匠を含む国際出願は意匠ごとの出願とみなされ、分割は要らないが、逆に組物に「1つの意匠登録出願とするための手続」は無い。みなされた後は10条の2の分割ができる
- 国際登録簿の記載は願書の記載とみなす。製品が建築物・画像なら用途を認識できるときに限る
- 秘密意匠は請求できない(60条の9)。新規性喪失の例外の書面は国際公表の日後の省令の期間内。優先権の救済(特43条の2)は適用されない(60条の10)
- 設定登録は登録料の納付でなく登録査定・審決による(60条の13)。登録料に代えて個別指定手数料を国際事務局に納付し、42〜45条は適用されない
- 個別指定手数料の返還は取下げ・拒絶の確定の日から6月以内。謄本の送達日が起算点ではない
- 国際登録の消滅で出願は取下げ擬制、意匠権は消滅(60条の14)。放棄に専用実施権者・質権者の承諾は要らない(60条の17)
- 移転と存続期間満了以外の消滅は国際登録簿による。質権は意匠原簿。意匠原簿の登録事項に「回復」は無い。無効審決の確定は国際事務局に通報される
この用語が問われた枝
日本国を指定締約国とする2以上の意匠を含む国際出願であって、その国際出願に係る国際登録について国際公表がされたものは、国際登録の日に国際登録の対象である意匠ごとにされた意匠登録出願とみなされる。
国際公表の日後であれば、意匠ごとにされたフォーク、スプーン及びナイフの国際意匠登録出願を、組物に係る1つの意匠登録出願とするための手続を行うことができる。
当該国際意匠登録出願に係る一組の飲食用容器セットの意匠が、組物としての登録要件を満たさないとして拒絶理由を受けた場合、当該意匠登録出願の一部について意匠法第 10 条の2に規定する分割の手続を日本国特許庁に対して行うことができる。
国際意匠登録出願に係る国際登録簿に記録された事項のうち、国際登録の対象である意匠を構成する製品が画像である場合には、当該意匠を構成する製品についての事項は、その事項から当該画像の用途を認識することができるときに限り、意匠法第6条第1項の規定により提出した願書に記載された「意匠に係る画像の用途」とみなされる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。