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損害賠償と損害額の推定・信用回復措置(4条・5条・5条の2・9条・14条)そんがいばいしょうとそんがいがくのすいていしんようかいふくそち

著作権・不正競争防止法 第9章 不正競争の救済・適用除外・罰則 短答で12枝

損害賠償とは、故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者が、これによって生じた損害を賠償する不正競争防止法4条の責任です。損害額の推定とは、その損害の額の立証を助けるために、譲渡数量に単位数量当たりの利益の額を乗じた額(5条1項)、侵害者の利益の額(5条2項)、使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額(5条3項)を損害の額とする仕組みで、信用回復措置とは、営業上の信用を害された者の請求により裁判所が損害の賠償に代え又はとともに命ずる信用回復に必要な措置(14条)です。

乙が甲の周知のロゴを付けた商品を1万個売ったとき、甲は「売上が減った」と感じても、その減少額を証拠で示すのは難しいものです。不正競争による損害は、侵害がなければどれだけ売れたかという仮定の話だからです。そこで4条で故意又は過失による不正競争の賠償責任を定めたうえで、5条に三つの計算の助けを置きました。乙の譲渡数量に甲の単位数量当たりの利益を掛ける方法(1項)、乙の利益の額を甲の損害と推定する方法(2項)、使用料相当額を最低限の損害とする方法(3項)です。ただし1項と3項は使える不正競争の号が限られています。

裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で法壇に座り、手元に「5条」と書かれた3枚の計算用紙を広げている。1枚目に「1項:譲渡数量×単位数量当たりの利益」、2枚目に「2項:侵害者の利益の額=損害の額と推定」、3枚目に「3項:使用料

損害賠償は故意又は過失による不正競争が要件で、5条の三つの計算方法は使える不正競争の号がそれぞれ違います

4条は「故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者」に賠償責任を負わせます。差止請求(3条)と違い、故意又は過失が要件です。5条はこの損害の額の計算を助ける規定で、1項・2項・3項の三つの方法を置いていますが、対象となる不正競争の号がそれぞれ異なります。1項は2条1項1号から16号まで又は22号、3項は1号から9号まで・11号から16号まで・19号・22号に限られ、2項だけは号の限定がありません。誤認惹起(20号)と信用毀損(21号)は1項にも3項にも入っておらず、ドメイン名(19号)は3項には入りますが1項には入りません。どの方法がどの号に使えるかを、まとめて押さえておきます。

5条の三つの計算方法と対象の号

1項(譲渡数量×単位利益)2項(侵害者の利益の推定)3項(使用料相当額)
対象の号1号〜16号・22号限定なし(全類型)1号〜9号・11号〜16号・19号・22号
ドメイン名(19号)使えない使える使える
誤認惹起(20号)・信用毀損(21号)使えない使える使えない
効果合計額を損害の額とすることができる損害の額と推定する(反証で覆る)損害の額として請求できる最低限の額(減額されない)

5条1項の譲渡数量に単位数量当たりの利益を乗じる計算は1号〜16号・22号の不正競争に限られ、令和5年改正で技術上の秘密の限定が削られました

5条1項は、侵害者が侵害の行為を組成した物を譲渡したとき、被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額に譲渡等数量を乗じた額(販売等能力相応数量を超える部分と特定数量は、2号で使用料相当額に置き換えます)を損害の額とすることができると定めています。対象は2条1項1号から16号まで又は22号の不正競争です。ドメイン名に係る不正競争(19号)は対象に入っていないので、ドメイン名の使用者がウェブサイトで商品を譲渡したときに譲渡数量に単位利益を乗じた額を「原則として損害の額とすることができるとする規定がある」という枝は誤りです。原産地の誤認惹起(20号)も対象に入っていないので、「不正な表示を付した商品の譲渡数量に、単位数量当たりの利益額を乗じて得られた額が、損害額とみなされることはない」という枝は正しいです。この枝が出た令和元年度の当時は対象が1号から10号まで・16号で、営業秘密については技術上の秘密に関するものに限られていました。令和5年改正(令和6年4月1日施行)でこの限定が削られ、顧客名簿のような営業上の秘密にも1項が使えるようになりました。現行法では、営業秘密が「技術上の秘密」ではなく「営業上の秘密」であったことは5条の適用の有無に「影響する」という枝は誤りです。一方、令和4年度の「技術上の秘密の場合とそうでない秘密の場合とで、適用できる不正競争防止法第5条の損害の額の算定に係る規定に違いはない」という枝は、出題当時は1項に技術上の秘密の限定があったため誤りとされました。現行法ではこの違いがなくなっているので、旧法の枝として読んでください。

裁判所の受付窓口の場面。先生が受付係役(札「受付」)でカウンターの内側に立ち、「5条1項:譲渡数量×単位利益 対象は1号〜16号・22号」と書かれた掲示板を指している。カウンターの外に2人の男性が並ぶ。左の男性(札「甲(ドメイン名の不正使用

5条2項の侵害者の利益の額を損害の額とする規定は不正競争の類型を限定せず、「推定」なので反証で覆せます

5条2項は「不正競争によって営業上の利益を侵害された者」が賠償を請求する場合に、侵害者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額を被侵害者が受けた損害の額と推定します。1項や3項のように号を列挙していないので、「この推定規定は不正競争防止法に規定される全ての不正競争の類型に適用される」という枝は正しいです。品質誤認(20号)にも使えるので、国産と偽った牛肉の販売について利益の額を損害の額と推定する規定は「適用の対象ではない」という枝は誤りです。効果は「推定」であって「みなし」ではないので、侵害者は実際の損害がそれより少ないことを立証して覆すことができます。営業秘密の使用について製品の販売で得た利益が「損害額とみなされる」という枝は誤りです。なお5条の2は、技術上の秘密について不正取得などの不正競争があった場合に、その者が生産等をしたときは営業秘密を使用する行為として生産等をしたものと「推定」する規定で、損害額ではなく使用の事実を推定します。

5条3項の使用料相当額は1号〜9号・11号〜16号・19号・22号で請求でき、誤認惹起と信用毀損にはなく、最低限の額なので減額されません

5条3項は、各号に定める行為(商品等表示の使用、商品の形態の使用、営業秘密の使用、限定提供データの使用、ドメイン名の使用、商標の使用)に対し受けるべき金銭の額に相当する額を、自己が受けた損害の額として請求できると定めています。ドメイン名(19号)は3項5号にあるので、「いわゆるライセンス料相当額(当該ドメイン名の使用に対し受けるべき金銭に相当する額)の金銭を損害額として賠償請求することができる」という枝は正しいです。信用毀損(21号)と誤認惹起(20号)は列挙されていないので、信用の利用に対し受けるべき金銭の額を損害の額として「請求することができるとする規定はない」という枝は正しいです。4項は、裁判所がこの額を認定するに当たり、不正競争があったことを前提として合意するとしたならば得ることとなる対価を考慮できると定めており、ドメイン名の取得時に「高値で売却する目的を有していたときに限り」考慮され得るという枝は誤りです(4項にそのような限定はないからです)。5項は3項の額を超える賠償の請求を妨げないとしており、3項は最低限の賠償額を保障する規定です。2項の推定と違って、侵害者が「現実の損害額がこれより少なかったことを立証して賠償額を減額することができる」という枝は誤りです。

裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で法壇に座る。原告席に事業者の男性(札「甲(著名表示の持ち主)」)が「使用料相当額 100万円」と書かれた請求書を掲げている。被告席に男性(札「乙(侵害者)」)が立ち、吹き出し「実際の損害は

9条は損害額の立証に必要な事実の立証が極めて困難なときに相当な損害額の認定を認め、民事訴訟法248条より要件が緩やかです

9条は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合に、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所が口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて相当な損害額を認定できると定めています。民事訴訟法248条は「損害の性質上その額を立証することが極めて困難」な場合を対象にしますが、9条は損害額の立証に必要な「事実」の立証が困難であれば足りるので、要件が緩やかです。相当な損害額を認定できるのは「当該損害の性質上その額を立証することが極めて困難な場合に限られる」という枝は誤りです。

信用回復措置は故意又は過失で足り、信用を害された者の請求により、不正競争の類型を限定せずに命じられます

虚偽の事実を流布された場合、金銭だけでは落ちた信用は戻りません。そこで14条は、故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の信用を害した者に対し、裁判所が、信用を害された者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、信用を回復するのに必要な措置を命ずることができると定めています。要件は故意又は過失で、信用を害する目的は要りません。「信用回復措置として新聞等への謝罪広告が認められる場合がある」という枝は正しいです。対象となる不正競争に類型の限定はないので、信用回復の措置の対象に「技術的制限手段に係る不正競争は含まれていない」という枝は誤りです。命ずるのは「請求により」なので、損害賠償のみを請求した訴訟で裁判所が「その裁量により、当該他人に対し、損害賠償に代えて謝罪広告の掲載を命じることができる」という枝は誤りです(民事訴訟法246条により、裁判所は当事者が申し立てていない事項について判決できないからです)。

裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で法壇に座る。原告席に店主の男性(札「甲(信用を害された者)」)が「損害賠償請求のみ」と書かれた訴状を手に立ち、吹き出し「乙に虚偽の事実を流布されました。損害賠償を請求します」。被告席に男性
不正競争防止法4条

故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、第十五条の規定により同条に規定する権利が消滅した後にその営業秘密又は限定提供データを使用する行為によって生じた損害については、この限りでない。

不正競争防止法5条2項

不正競争によって営業上の利益を侵害された者が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、その営業上の利益を侵害された者が受けた損害の額と推定する。

不正競争防止法9条

不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。

不正競争防止法14条

故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の信用を害した者に対しては、裁判所は、その営業上の信用を害された者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、その者の営業上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。

試験ではこう問われる

  1. 5条1項(譲渡数量×単位利益)は1号〜16号・22号だけ。ドメイン名(19号)について「原則として損害の額とすることができるとする規定がある」という枝は誤り。原産地の誤認惹起(20号)に「みなされることはない」という枝は正しい
  2. 令和5年改正で5条1項の「技術上の秘密に限る」限定は削除。営業上の秘密であったことが5条の適用に「影響する」という枝は誤り。令和4年度以前の「違いはない」を誤りとする枝は旧法
  3. 5条2項(侵害者の利益)は「全ての不正競争の類型に適用される」。品質誤認に「適用の対象ではない」という枝は誤り。効果は推定で、「損害額とみなされる」という枝は誤り
  4. 5条3項(使用料相当額)はドメイン名(19号)・代理人等(22号)にはあるが、誤認惹起(20号)・信用毀損(21号)にはない
  5. 5条4項の対価の考慮に「高値で売却する目的を有していたときに限り」という限定はない。3項は最低限の額で、侵害者が現実の損害額の少なさを立証して減額することはできない
  6. 9条は損害額の立証に必要な事実の立証が極めて困難なとき。「損害の性質上その額を立証することが極めて困難な場合に限られる」という枝は誤り(民事訴訟法248条より緩い)
  7. 信用回復措置(14条)は故意又は過失で足り、類型の限定なし。「技術的制限手段に係る不正競争は含まれていない」という枝は誤り。謝罪広告が認められる場合がある
  8. 信用回復措置は被害者の請求により命ずる。損害賠償のみを請求した訴訟で裁判所が「その裁量により」謝罪広告を命じられるという枝は誤り(民事訴訟法246条)

この用語が問われた枝

令和5年度 問57 枝イ誤り

不正の利益を得る目的で、他人の特定商品等表示と類似のドメイン名を使用したことについて、当該他人がドメイン名に係る不正競争を理由としてその営業上の利益の侵害により受けた損害の賠償を請求する場合において、当該使用者がそのドメイン名により表示されるウェブサイトで商品を譲渡したときは、その譲渡した商品の数量に、当該他人がその侵害行為がなければ販売することができた商品の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、原則として損害の額とすることができるとする規定がある。

令和元年度 問58 枝イ正しい

不正な原産地の表示に関する不正競争については、不正な表示を付した商品の譲渡数量に、単位数量当たりの利益額を乗じて得られた額が、損害額とみなされることはない。

令和6年度 問56 枝ニ誤り

甲の営業秘密を不正に使用して製造した商品を譲渡した乙に対して、甲が損害賠償を請求するにあたって、当該営業秘密が「技術上の秘密」ではなく「営業上の秘密」であったことは、不正競争防止法第5条の損害の額の算定に係る規定の適用の有無に影響する。

令和7年度 問57 枝ハ正しい

侵害者が不正競争により利益を受けている場合、その利益の額は被侵害者が受けた損害の額と推定する規定があるが、この推定規定は不正競争防止法に規定される全ての不正競争の類型に適用される。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

著作権・不正競争防止法を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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