商標・標章の定義と商標の種類(2条1項・2項・6項、5条2項)しょうひょうひょうしょうのていぎとしょうひょうのしゅるい
標章とは、人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるものです(2条1項)。商標とは、その標章のうち、業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするものと、業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするものです。
菓子の箱に印刷された店名の文字、看板の図形、ボトルの独特な形、店に入ると流れる短い音楽は、どれも「うちの商品です」と客に伝える目印です。商標法はこの目印をまず「標章」と呼び、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるものと定めます(2条1項)。そのうえで、業として商品や役務を扱う者がその商品や役務について使用をする標章を「商標」と呼びます。目印は業として使われて初めて信用の器になるので、定義は標章と使い手の二段で組まれています。

2条1項に個別に書かれた構成要素は文字、図形、記号、立体的形状、色彩、これらの結合と音までで、動き・ホログラム・位置は5条2項と経済産業省令の出願の類型として定まります
2条1項が標章として並べる語は「文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」です。平成26年改正で色彩が独立の構成要素になり、音が加わり、あわせて「人の知覚によって認識することができるもののうち」という限定が置かれました。改正前は色彩は文字や図形と結合して初めて標章になり、商標は視覚に訴えるものに限られていたので、平成24年度以前の枝はその前提で読みます。動きの商標、ホログラムの商標、位置の商標は2条1項に名前が出てこず、5条2項が願書にその旨を記載すべき商標として1号(変化する商標)、2号(立体的形状)、3号(色彩のみ)、4号(音)、5号(経済産業省令で定める商標)を掲げ、位置商標は5号の省令で定まります。したがって、定義規定に「動きの商標及び位置の商標が、個別に明記されている」という枝は誤りです(2条1項に書かれているのは音までで、残りは「その他政令で定めるもの」に委ねられているからです)。願書にその旨の記載を要する商標が「立体商標、動き商標、ホログラム商標、音商標及び位置商標の5つに限られない」という枝は正しいです(5条2項3号の色彩のみからなる商標も、その旨の記載を要するからです)。

- 2条1項に個別に書かれた構成要素文字、図形、記号、立体的形状、色彩、これらの結合、音です。平成26年改正で色彩の単独使用と音が加わりました
- 政令で定めるもの2条1項の末尾が新しい種類の標章のために委ねる受け皿です。動き・ホログラム・位置は文字、図形、記号、立体的形状、色彩の結合でできているので、ここではなく5条2項と経済産業省令の類型として定まります
- 5条2項が願書への記載を求める商標1号 変化する商標(動き・ホログラム)、2号 立体的形状からなる商標、3号 色彩のみからなる商標、4号 音からなる商標、5号 経済産業省令で定める商標(位置商標)です
色彩のみからなる商標は単色でもよく、色彩と、それを付する位置を特定した標章も商標になります
2条1項は「色彩」を単独の構成要素として掲げ、5条2項3号が「色彩のみからなる商標」を出願の類型として認めているので、色彩だけの標章も商標になります。条文は色彩の数を限っていないので、色彩のみからなる標章は「2以上の色彩を組み合わせてなるものである場合に限り、商標法上の商標として認められる」という枝は誤りです(2条1項にも5条2項3号にも組合せの限定が無く、単色でも標章になるからです)。色彩を商品のどこに付けるかまで決めた標章も、色彩のみからなる商標として扱われます。「色彩のみからなり、当該色彩及びそれを付する位置を特定した標章は、商標法上の商標として認められる」という枝は正しいです。色彩のみからなる商標が実際に登録されるかどうかは、3条1項各号の識別力や3条2項の使用による識別力で決まり、定義の段階では問われません。
商標になるのは、業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者と、業として役務を提供し、又は証明する者が使用をする標章で、1号に「加工」の語はありません
2条1項1号は商品に係る商標の使用主体を「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者」とし、2号は役務に係る商標の使用主体を「業として役務を提供し、又は証明する者」とします。1号にかつてあった「加工」の語は平成3年改正で削られたので、2条1項に「業として商品を加工」する者が規定されているという枝は誤りです。ただし語が消えただけで、加工した商品を譲渡する者は「譲渡する者」に含めて読みます。したがって「業として商品を加工する者がその商品について使用をする文字からなる標章は、商標法上の商標とは認められない」という枝は誤りです(加工業者も完成品を業として譲渡する者だからです)。同じ理由で、「第三者から購入した半製品を加工して完成品として販売する者」が完成品に付した標章は1号の標章に該当するという枝は正しいです。「証明する者」は商品や役務の質を保証する者を指し、フランチャイズの加盟者が提供する役務の質を保証する本部は「業として役務を証明する者に該当する」という枝は正しいです。なお、定義は標章を業として使用をすることだけを求め、自他商品・役務の識別力を要件にしていません。識別力は3条で登録の要件として問われます。
小売等役務は2条2項で役務に含まれ、実店舗の有無や製造小売であることを問わず、商品と役務は互いに類似することがあります
2条2項は、1号の役務に「小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が含まれると定めます。これが小売等役務で、平成18年改正で加わりました。改正前は小売そのものを指定役務にできなかったので、平成16年度の枝はその前提で読みます。小売等役務の中身は、商品の品揃え、陳列、接客といった、客の来店から購入までの総合的な活動です。「最終的に商品の販売により収益をあげる総合的なサービス活動が該当する」という枝は正しいです。条文は店の形を限っていないので、通信販売だけの小売業者について「当該小売業者が実店舗を有さないため、いわゆる小売等役務に係る商標として商標登録される場合はない」という枝は誤りです(品揃えや商品情報の提供は実店舗が無くても行われるからです)。自分で作った商品を売る製造小売業者も同じで、「自己の製造した商品を販売する製造小売業者が使用する商標であっても、小売等役務に係る商標として商標登録することができる場合がある」という枝は正しいです。さらに2条6項は、商品に類似するものの範囲に役務が、役務に類似するものの範囲に商品が含まれることがあると定めるので、小売等役務に類似するものの範囲に「その小売等役務において販売される商品と類似する商品が含まれる場合はない」という枝は誤りです(小売等役務とそこで売られる商品は類似し得るからです)。

立体商標は三次元の物の形状を標章とする商標で、識別力のない形状と識別力のある文字の結合でも登録され得て、店舗の内装も立体商標になります
2条1項の「立体的形状」は三次元の物の形状を指し、「立体的形状」とは三次元の物の「形状」をいい、その語は3条1項3号の「形状」と同義であるという枝は正しいです。立体商標として登録を受けるには5条2項2号によりその旨を願書に記載しますが、商標の中身は立体的形状だけでなく、文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含みます。そのため、指定商品との関係で識別力を持たない立体的形状に識別力のある文字を結合した商標は、全体として識別力があれば「立体商標として登録することができる場合がある」という枝は正しいです。商標法には特定の部分について権利を求めない旨を申し出る制度が無いので、そのような商標は「当該立体的形状の部分について権利不要求の手続をしない限り、商標登録を受けることができる場合はない」という枝は誤りです(権利不要求の手続そのものが商標法に存在しないからです)。立体的形状は商品の形に限らず、店舗の外観や内装のような空間の形も含みます。したがって「店舗の内装については、立体商標として登録することができる場合はない」という枝は誤りです。

商標法2条1項この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
商標法2条2項前項第二号の役務には、小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれるものとする。
商標法2条6項この法律において、商品に類似するものの範囲には役務が含まれることがあるものとし、役務に類似するものの範囲には商品が含まれることがあるものとする。
試験ではこう問われる
- 2条1項に個別に書かれているのは文字・図形・記号・立体的形状・色彩・これらの結合・音まで。「動きの商標及び位置の商標が、個別に明記されている」という枝は誤りで、動き・ホログラム・位置は5条2項と経済産業省令の類型で定まる
- 願書にその旨の記載を要する商標は5条2項の1号〜5号で、色彩のみからなる商標も含む。「立体商標、動き商標、ホログラム商標、音商標及び位置商標の5つに限られない」という枝は正しい
- 色彩のみからなる商標は単色でもよい。「2以上の色彩を組み合わせてなるものである場合に限り、商標法上の商標として認められる」という枝は誤りで、色彩と位置を特定した標章は商標として認められる
- 1号の使用主体は生産・証明・譲渡で「加工」は平成3年改正で削られたが、加工業者は譲渡する者として商標を持てる。「商標法上の商標とは認められない」とする枝は誤り
- 役務の質を保証するフランチャイズ本部は「業として役務を証明する者に該当する」(2号)
- 小売等役務(2条2項)は実店舗が無い通信販売でも、製造小売でも登録できる。「商標登録される場合はない」とする枝は誤り
- 2条6項により小売等役務とそこで売られる商品は類似し得る。「類似する商品が含まれる場合はない」という枝は誤り
- 識別力のない立体的形状と識別力のある文字の結合は立体商標として登録され得て、権利不要求の制度は無い。店舗の内装も立体商標になり得る
この用語が問われた枝
商標法第2条第1項には、「商品」に係る「商標」について、「標章」であって「業として商品を加工」する者がその商品について使用するものが規定されている。
レストランのフランチャイズ・システムにおいて、当該レストランの顧客に対してフランチャイジー(加盟者)が提供するサービス(役務)の質を保証するフランチャイザー(本部)は、商標法第2条第1項第2号における業として役務を証明する者に該当する。
通信販売のみを行う小売業者が使用する商標は、当該小売業者が実店舗を有さないため、いわゆる小売等役務に係る商標として商標登録される場合はない。
商標法第2条第2項に規定する「小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、小売又は卸売の業務において行われる商品の品揃え、陳列、接客サービス等といった最終的に商品の販売により収益をあげる総合的なサービス活動が該当する。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。