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公益的不登録事由(4条1項1号〜7号・9号、4条2項)こうえきてきふとうろくじゆう

商標 第2章 登録要件(識別力・不登録事由) 短答で11枝

公益的不登録事由とは、商標法4条1項のうち、国旗・菊花紋章・外国の紋章・国際機関や赤十字の標章・政府等の監督用の印章・公益団体の著名な標章・公序良俗・博覧会の賞のように、公益を守るために誰が出願しても商標登録を受けることができないと定めた1号から7号と9号の事由です。4条2項は、そのうち6号についてだけ、その団体自身が出願するときは適用しないとしています。

日の丸や菊花紋章、赤十字のマークを一つの会社が商標として独占できたら、国や公的な団体の信用がその会社の商売に使われてしまいます。商標法4条1項は、3条の識別力があっても登録を受けることができない商標を並べており、そのうち1号から7号と9号は、私人の利益ではなく国や公益団体の尊厳、国際的な信義、公の秩序を守るための事由です。誰が出願しても拒まれるのが原則ですが、6号だけは4条2項により、その団体自身が出願するときは適用されません。

特許庁の審査室の場面。先生が審査官役(札「審査官」)で机に座り、「商標登録願:図形商標(商標の隅に小さな菊花紋章、中央に大きな独自の図形) 指定商品 菓子」と書かれた願書を見ている。向かいに菓子メーカーの男性(札「出願人」)が立ち、吹き出し

1号から4号までは国旗・紋章・国際機関・赤十字の標章と「同一又は類似の商標」を拒むので、一部に含むだけで全体として類似しなければ登録を受けることができます

1号は、国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗と同一又は類似の商標です。5号や9号のように標章を「有する商標」とは書かれていないので、商標全体で同一又は類似かを判断します。したがって、「菊花紋章を一部に含む図形商標であっても、商標登録を受けることができる場合がある」という枝は正しく、「菊花紋章が商標の一部を構成していても商標の全体からみて菊花紋章と類似でなければ」登録を受けることができる場合があるという枝も正しいです。もっとも、商標の一部に外国の国旗の図形を有する場合は、商標全体としてはその国旗に類似しないときでも、国旗の尊厳を害するとして7号などにより拒絶されることがあります。外国の国旗は条約の加盟国かどうかを問わず対象です(1号は「外国の国旗」と定めるだけで、2号のような加盟国の限定がないからです)。4号は赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律1条の標章若しくは名称などと同一又は類似の商標です。これらを登録しないのは、法律で使用を禁止しているものに商標権を設定することが妥当でなく、同時に「赤十字社等の権威を傷つけるおそれがあるからである」という枝は正しいです。

教室の黒板の前の場面。先生が先生役(札「先生」)で黒板の横に立ち、指し棒で黒板を示している。黒板は左右2列に分かれ、左列の見出しは「〜と同一又は類似の商標」でその下に「1号 国旗・菊花紋章・外国の国旗」「2号 条約加盟国の紋章(経済産業大臣

「同一又は類似の商標」と「標章を有する商標」の違い

対象になる号一部に含むだけの商標
〜と同一又は類似の商標1号・2号・3号・4号・6号商標全体として類似しなければ当たりません
〜と同一又は類似の標章を有する商標5号・9号一部に含むだけで当たります(9号は受賞者が一部として使用するものを除きます)

2号と3号は経済産業大臣の指定を要件にし、2号は世界貿易機関の加盟国の紋章も対象で、3号にはイ・ロの除外があります

2号は、パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国の紋章その他の記章(国旗を除きます)であって経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標です。三つの条約・協定のいずれかに入っていればよいので、「パリ条約の同盟国又は商標法条約の締約国のいずれでもない国の紋章その他の記章であっても」経済産業大臣が指定するものと同一又は類似なら登録を受けることができない場合があるという枝は正しいです(世界貿易機関の加盟国でありうるからです)。2号は4条3項の対象でないので査定時に判断し、出願時に指定された紋章と類似でも「査定時に当該紋章が経済産業大臣の指定するものでなくなった場合でも、商標登録を受けることはできない」という枝は誤りです。3号は、国際連合その他の国際機関を表示する標章であって経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標ですが、イ(自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似するものを、その商品役務又は類似の商品役務に使用するもの)とロ(国際機関の略称と同一又は類似の標章からなり、その国際機関と関係があるとの誤認を生ずるおそれがない商品又は役務に使用するもの)を除いています。そのため、「国際連合その他の国際機関を表示する標章であって経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標であっても」登録を受けることができる場合があるという枝は正しいです。

5号と9号は標章を「有する商標」を拒み、5号は同一又は類似の商品役務に使用するものに限られ、出願人がその団体自身でも例外はありません

5号は、日本国又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有する商標であって、その印章又は記号が用いられている商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用をするものです。対象は経済産業大臣が指定する印章又は記号なので、「地方公共団体の監督用の記号のうち著名なものと同一又は類似の標章を有する商標」は登録される場合はないという枝は誤りです(著名かどうかではなく指定の有無で決まるからです)。また同一又は類似の商品役務に使用するものに限られるので、指定された印章と同一の標章を有すれば「いかなるときであっても、商標登録を受けることはできない」という枝は誤りです。4条2項が出願人による例外を定めるのは6号だけで、5号には及びません。したがって、地方公共団体の監督用の印章と同一の標章を有し同一又は類似の役務に使用する商標について、「その商標登録出願人が当該地方公共団体自身であれば商標登録を受けることができる場合がある」という枝は誤りで、甲の監督用の記号と同一の標章を有する商標を同一の役務について「甲が商標登録出願を行う場合は、甲は商標登録を受けることができる」という枝も誤りです。9号は、政府等が開設する博覧会、政府等以外の者が開設する博覧会であって特許庁長官の定める基準に適合するもの、又は外国でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会の賞と同一又は類似の標章を有する商標です。ただし、その賞を受けた者が商標の一部としてその標章の使用をするものは除くので、外国の国際的な博覧会の賞について「その賞を受けた者が商標の一部としてその標章の使用をするものを除いて、商標登録を受けることができない」という枝は正しいです。なお、「政府等以外の者が開設する博覧会であって特許庁長官が指定する博覧会の賞」と書く枝は誤りです(平成23年改正で「特許庁長官の定める基準に適合するもの」に改められ、個別の指定を要しなくなったからです)。

特許庁の窓口の場面。先生が審査官役(札「審査官」)でカウンターの内側に座り、「商標登録願:市の監督用の印章と同一の標章を有する商標 指定役務 市の印章が用いられている役務と同一」と書かれた願書を見ている。カウンターの外に市役所の職員の男性(

6号だけは4条2項の例外があり、その商標権は譲渡と専用使用権の設定ができませんが、通常使用権の許諾は令和元年改正でできるようになりました

6号は、国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標です。これらの団体や事業を行っている者が自ら6号の商標を出願するときは、4条2項により6号を適用しません。公益団体自身が自分の標章を登録することは公益に反しないからです。その代わり、この登録で生じた商標権は公益団体の手元にとどめる必要があるので、24条の2第2項で譲渡することができず、30条1項ただし書で専用使用権を設定することができません。公益に関する事業を行っている者の出願に係る商標権は、24条の2第3項により、その事業とともにする場合を除いて移転することができません。団体商標に係る商標権でも4条2項の出願に係るものであれば「専用使用権を設定することができない」という枝は正しいです。通常使用権については、以前は31条1項ただし書で許諾できないとされていましたが、令和元年改正でただし書が削除され、許諾できるようになりました。したがって、4条2項の出願に係る商標権は「譲渡することができず、他人に通常使用権を許諾することもできない」という枝は誤りです。禁じられているのは譲渡なので、相続その他の一般承継による移転までは禁じられておらず、地方公共団体の4条2項の出願に「係る商標権は、移転することができる場合はない」という枝は誤りです。

市役所の会議室の場面。先生が先生役(札「先生」)で机の横に立ち、机の上の「商標登録証:市の著名な標章(4条2項の出願に係る商標権)」と書かれた証書を指し棒で示している。向かいに市の職員の男性(札「商標権者(市)」)が座り、吹き出し「この商標

7号の公序良俗を害するおそれは商標の構成自体に限られず、登録後に該当したときは後発的無効理由になります

7号は公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標です。商標の構成自体がきょう激・卑猥・差別的であるものに限らず、他の法律で使用が禁止されているもの、国際信義に反するもの、その登録の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものも含まれます。1号から3号まで、5号、7号は、登録後に登録商標がこれらに該当するものとなったときも46条1項6号の後発的無効理由になります。ただし商標登録の無効審判は46条2項により利害関係人に限り請求できるので、登録後に7号に該当するに至ったときに「何人も、そのことを理由として当該商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる」という枝は誤りです。公益的な事由であっても、無効審判の請求人適格は変わりません。

商標法4条1項1号

国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗と同一又は類似の商標

商標法4条1項5号

日本国又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有する商標であつて、その印章又は記号が用いられている商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用をするもの

商標法4条2項

国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者が前項第六号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない。

商標法24条の2第2項

国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関又は公益に関する団体であつて営利を目的としないものの商標登録出願であつて、第四条第二項に規定するものに係る商標権は、譲渡することができない。

試験ではこう問われる

  1. 1号は菊花紋章などと「同一又は類似の商標」。「菊花紋章を一部に含む図形商標であっても、商標登録を受けることができる場合がある」という枝は正しい
  2. 外国の国旗は条約の加盟国かどうかを問わない。パリ条約・世界貿易機関・商標法条約のいずれにも入っていない国の国旗でも1号の対象になる
  3. 2号は世界貿易機関の加盟国の紋章も対象。パリ条約の同盟国でも商標法条約の締約国でもない国の紋章でも、経済産業大臣が指定するものなら登録を受けることができない場合がある
  4. 3号の国際機関の標章にはイ(自己の周知商標)・ロ(略称で誤認のおそれがない商品役務)の除外があり、登録を受けることができる場合がある
  5. 5号は「標章を有する商標」で、同一又は類似の商品役務に使用するものに限る。対象は経済産業大臣が指定する印章・記号で「著名なもの」ではない
  6. 4条2項の例外は6号だけ。5号の監督用の印章は出願人がその地方公共団体自身でも登録を受けることができない
  7. 4条2項の出願に係る商標権は譲渡と専用使用権の設定ができないが、通常使用権の許諾は令和元年改正でできる。一般承継による移転は禁じられていない
  8. 9号の博覧会の賞は受賞者が商標の一部として使用するものを除く。「特許庁長官が指定する博覧会」は旧法の文言で、現行法は「特許庁長官の定める基準に適合するもの」

この用語が問われた枝

令和8年度 問33 枝ホ正しい

国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗と同一又は類似の商標については商標登録を受けることができないが、菊花紋章が商標の一部を構成していても商標の全体からみて菊花紋章と類似でなければ、その商標について商標登録を受けることができる場合がある。

平成30年度 問39 枝イ正しい

菊花紋章を一部に含む図形商標であっても、商標登録を受けることができる場合がある。

令和3年度 問33 枝イ正しい

パリ条約の同盟国又は商標法条約の締約国のいずれでもない国の紋章その他の記章であっても、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標は、そのことを理由として商標登録を受けることができない場合がある。

平成30年度 問39 枝ロ正しい

国際連合その他の国際機関を表示する標章であって経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標であっても、商標登録を受けることができる場合がある。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

商標を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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