日本語特許出願と外国語特許出願の違い(184条の4・6〜8・12・18)にほんごとっきょしゅつがんとがいこくごとっきょしゅつがんのちがい
日本語特許出願と外国語特許出願の違いとは、日本語でされた国際特許出願では国際出願日における明細書等がそのまま願書に添付した書面とみなされ、国際段階の補正は補正書の写しの提出(送達でも足ります)で国内の補正とみなされるのに対し、外国語でされた国際特許出願では翻訳文が願書に添付した書面とみなされ、補正書も翻訳文を提出して初めて補正とみなされ、補正の時期・範囲・拒絶理由に翻訳文と原文を基準にした特例が加わる、特許法184条の4・6〜8・12・18の扱いの違いです。
同じ国際出願でも、日本語で書いたものと英語で書いたものでは、日本の特許庁に届く書面が違います。日本語特許出願なら国際段階の書面をそのまま審査に使えますが、外国語特許出願では出願人が出す翻訳文が審査の土台になり、原文との食い違いという問題が新しく生まれます。そこで特許法は、国際段階でした19条補正・34条補正をどう日本の補正として取り込むか、国内段階の補正はいつからどの範囲でできるか、翻訳文が原文からはみ出したらどうするかを、日本語特許出願と外国語特許出願で分けて定めています。

日本語特許出願では国際出願日における明細書等がそのまま願書に添付した書面とみなされますが、外国語特許出願では翻訳文がみなされ、19条補正後の請求の範囲の翻訳文を出せばそれが特許請求の範囲になります
184条の6第2項は、日本語特許出願の国際出願日における明細書・請求の範囲・図面・要約を願書に添付した明細書・特許請求の範囲・図面・要約書とみなし、外国語特許出願ではそれぞれの翻訳文(図面は図面の中の説明の翻訳文と図面そのもの)をみなします。外国語特許出願の出願人がPCT19条(1)の補正をしたときは、184条の4第2項により国際出願日における請求の範囲の翻訳文に代えて補正後の請求の範囲の翻訳文を提出でき、同条6項により国内処理基準時の属する日までに更に提出することもできます。「国際出願日における請求の範囲の翻訳文に代えて、当該補正後の請求の範囲の翻訳文を提出してもよい」という枝は正しいです。どちらの方法でも補正後の請求の範囲の翻訳文が提出されれば、184条の6第3項によりそれが願書に添付した特許請求の範囲とみなされます。両方の翻訳文を出すことは義務ではないので、「国際出願日における請求の範囲の日本語による翻訳文に加えて、当該補正後の請求の範囲の日本語による翻訳文についても提出しなければならない」という枝は誤りです。出願時の翻訳文を出した後に補正後の翻訳文を更に出した場合も基準は補正後の方に移るので、「国際出願日における請求の範囲の翻訳文と当該補正後の請求の範囲の翻訳文とが提出された場合には、国際出願日における請求の範囲の翻訳文を願書に添付して提出された特許請求の範囲とみなす」という枝は誤りです。
19条補正は日本語特許出願なら補正書の写しを国内処理基準時の属する日までに提出し、写しが提出されるか補正書が送達されれば17条の2第1項の補正とみなされます
184条の7第1項は、日本語特許出願の出願人がPCT19条(1)の補正をしたときに、国内処理基準時の属する日までに補正書の写しを特許庁長官に提出させます。「国内処理基準時の属する日までに、同条(1)の規定に基づき提出された補正書の写しを特許庁長官に提出しなければならない」という枝は正しいです。写しが提出されると、同条2項によりその写しで願書に添付した特許請求の範囲について17条の2第1項の補正がされたものとみなされます。国際事務局がPCT20条により期間内に補正書を特許庁に送達したときは、出願人が写しを出さなくても、ただし書によりその補正書で補正がされたものとみなされます。期間内に写しの提出も送達もなければ、同条3項により19条補正はされなかったものとみなされます。外国語特許出願では、19条補正は前の見出しのとおり補正後の請求の範囲の翻訳文の提出で取り込まれ、184条の7は使いません。

34条補正は日本語特許出願なら補正書の写し、外国語特許出願なら補正書の翻訳文を国内処理基準時の属する日までに提出しなければ補正はされなかったものとみなされ、送達による救済は日本語特許出願だけにあります
184条の8第1項は、PCT34条(2)(b)の補正をした国際特許出願の出願人に、国内処理基準時の属する日までに、日本語特許出願なら補正書の写しを、外国語特許出願なら補正書の日本語による翻訳文を特許庁長官に提出させます。日本語特許出願について「同条(2)(b)の規定に基づき提出された補正書の写しを特許庁長官に提出しなければならない」という枝も、外国語特許出願について「同条(2)(b)の規定に基づき提出された補正書の日本語による翻訳文を特許庁長官に提出しなければならない」という枝も正しいです。提出されれば同条2項により願書に添付した明細書・特許請求の範囲・図面について17条の2第1項の補正がされたものとみなされ、提出がなければ同条3項により34条補正はされなかったものとみなされます。ただし書の送達による救済は、PCT36条(3)(a)により国際予備審査報告の附属書類として補正書が特許庁に送達される日本語特許出願に限られます。外国語特許出願は翻訳文がなければ日本語の書面が存在しないからです。したがって外国語特許出願について翻訳文を「特許庁長官に提出しなかったときでも、特許法第 17 条の2第1項の規定による補正がされたものとみなされる場合がある」という枝は誤りです。外国語特許出願で34条補正が取り込まれたときは、同条4項によりその補正は誤訳訂正書を提出してされたものとみなされます。誤訳訂正書による補正は17条の2第3項の翻訳文等の範囲内という制限を受けず、国際出願日における明細書等の範囲内であれば足りるので、その「翻訳文による補正は、特許法第184条の12第2項に規定する翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしなければならない」という枝は誤りです。
国際段階の補正の取り込み
| 日本語特許出願 | 外国語特許出願 | |
|---|---|---|
| 19条補正 | 補正書の写しを国内処理基準時の属する日までに提出(184条の7第1項)。20条の送達があれば提出したものと同じ扱い | 出願時の請求の範囲の翻訳文に代えて補正後の翻訳文を提出できる(184条の4第2項)。国内処理基準時の属する日までに更に提出もできる(同条6項) |
| 34条補正 | 補正書の写しを国内処理基準時の属する日までに提出(184条の8第1項)。36条(3)(a)の送達があれば同じ扱い | 補正書の翻訳文を国内処理基準時の属する日までに提出(184条の8第1項)。送達による救済はない。取り込まれた補正は誤訳訂正書によるものとみなす(同条4項) |
| 提出しなかったとき | 19条補正・34条補正ともされなかったものとみなす(184条の7第3項・184条の8第3項) | 34条補正はされなかったものとみなす。19条補正の翻訳文を出さなければ出願時の請求の範囲の翻訳文が基準のまま |
国内段階の手続の補正は、日本語特許出願なら国内書面と手数料の後にできますが、外国語特許出願ではそれに加えて翻訳文の提出と国内処理基準時の経過が要り、補正できる範囲は翻訳文等が基準になります
184条の12第1項は、17条1項本文にかかわらず、日本語特許出願については184条の5第1項の国内書面を提出し手数料を納付した後、外国語特許出願については翻訳文と国内書面を提出し手数料を納付した後であって国内処理基準時を経過した後でなければ、手続の補正(184条の7第2項・184条の8第2項のみなし補正を除きます)をできないと定めます。外国語特許出願では翻訳文が確定してからでないと何を基準に補正するか決まらないため、国内処理基準時の経過まで待たせます。日本語特許出願にまで「国内処理基準時を経過した後でなければ、手続の補正」をすることができないという枝は誤りです。反対に外国語特許出願について翻訳文・国内書面・手数料の後は「拒絶理由通知を受けるか特許査定の謄本の送達があるまでは、いつでも手続の補正」ができるという枝は、国内処理基準時の経過という要件を落としているので誤りです。補正できる範囲は、同条2項が17条の2第3項を読み替え、外国語特許出願では国際出願日における明細書・図面の中の説明の翻訳文、請求の範囲の翻訳文(19条補正後の翻訳文を出したときはそれ)、図面(図面の中の説明を除きます)をあわせた「翻訳文等」に記載した事項の範囲内とします。誤訳訂正書を提出してする補正はこの制限を受けず、原文である国際出願日における明細書等の範囲内でできます。日本語特許出願は国際出願日における明細書等が願書に最初に添付した書面そのものなので、通常の17条の2第3項がそのまま働きます。

外国語特許出願で明細書等に記載した事項が国際出願日における国際出願の明細書等の範囲内にないことは、拒絶理由・特許異議の申立ての理由・無効理由のすべてになります
184条の18は、49条6号・113条5号・123条1項5号の外国語書面出願についての規定を外国語特許出願に読み替え、願書に添付した明細書・特許請求の範囲・図面に記載した事項が国際出願日における国際出願の明細書・請求の範囲・図面に記載した事項の範囲内にないことを、拒絶の査定の理由、特許異議の申立ての理由、特許無効審判の理由とします。翻訳や誤訳訂正で原文にない事項が入れば、出願人が国際出願日に開示していない発明に権利を与えることになるからで、PCT46条が翻訳の誤りで特許の範囲が原語の国際出願の範囲を超える場合の限定・無効を締約国に認めていることと対応しています。「拒絶をすべき旨の査定の理由にはならないが、特許権の設定の登録後には特許異議の申立て及び特許無効審判の」理由になるという枝は誤りです。日本語特許出願では原文と翻訳文の区別がないので、この特例は働かず、通常の新規事項の追加(17条の2第3項違反)が49条1号・113条1号・123条1項1号で問われます。国内の外国語書面出願(36条の2)でも同じ構造で、基準が外国語書面になるだけです。
特許法184条の7第2項前項の規定により補正書の写しが提出されたときは、その補正書の写しにより、願書に添付した特許請求の範囲について第十七条の二第一項の規定による補正がされたものとみなす。ただし、条約第二十条の規定に基づき前項に規定する期間内に補正書が特許庁に送達されたときは、その補正書により、補正がされたものとみなす。
特許法184条の8第1項国際特許出願の出願人は、条約第三十四条(2)(b)の規定に基づく補正をしたときは、国内処理基準時の属する日までに、日本語特許出願に係る補正にあつては同条(2)(b)の規定に基づき提出された補正書の写しを、外国語特許出願に係る補正にあつては当該補正書の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。
特許法184条の8第4項第二項の規定により外国語特許出願に係る願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について第十七条の二第一項の規定による補正がされたものとみなされたときは、その補正は同条第二項の誤訳訂正書を提出してされたものとみなす。
特許法184条の12第1項日本語特許出願については第百八十四条の五第一項の規定による手続をし、かつ、第百九十五条第二項の規定により納付すべき手数料を納付した後、外国語特許出願については第百八十四条の四第一項又は第四項及び第百八十四条の五第一項の規定による手続をし、かつ、第百九十五条第二項の規定により納付すべき手数料を納付した後であつて国内処理基準時を経過した後でなければ、第十七条第一項本文の規定にかかわらず、手続の補正(第百八十四条の七第二項及び第百八十四条の八第二項に規定する補正を除く。)をすることができない。
試験ではこう問われる
- 日本語特許出願の19条補正は補正書の写しを国内処理基準時の属する日までに提出(184条の7第1項)。20条の送達があれば補正書で補正がされたものとみなされる
- 外国語特許出願の19条補正は出願時の請求の範囲の翻訳文に「代えて」補正後の翻訳文を提出「できる」(184条の4第2項)。両方の提出を義務とする枝は誤り。補正後の翻訳文が出れば、出願時の翻訳文とともに出した場合でもそれが特許請求の範囲とみなされる(184条の6第3項)
- 34条補正は日本語なら補正書の写し、外国語なら補正書の翻訳文を国内処理基準時の属する日までに提出(184条の8第1項)。出さなければされなかったものとみなす(同条3項)
- 送達による救済(184条の8第2項ただし書)は日本語特許出願だけ。外国語特許出願で翻訳文を出さなくても補正とみなされる場合があるという枝は誤り
- 外国語特許出願の34条補正は誤訳訂正書によるものとみなされ(184条の8第4項)、翻訳文等の範囲内という制限を受けない。翻訳文等の範囲内でしなければならないという枝は誤り
- 手続の補正の時期は、日本語は国内書面と手数料の後、外国語はそれに翻訳文の提出と国内処理基準時の経過が加わる(184条の12第1項)。日本語に国内処理基準時の経過を求める枝も、外国語に「いつでも」補正できるとする枝も誤り
- 外国語特許出願の新規事項の基準は翻訳文等(19条補正後の翻訳文を出せばそれ)(184条の12第2項)
- 原文新規事項(国際出願日における明細書等の範囲内にないこと)は拒絶理由・特許異議の申立ての理由・無効理由のすべてになる(184条の18)。拒絶理由にならないという枝は誤り
この用語が問われた枝
日本語特許出願の出願人は、特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正をしたときは、国内処理基準時の属する日までに、同条(1)の規定に基づき提出された補正書の写しを特許庁長官に提出しなければならない。
外国語特許出願の出願人は、特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正をしたときは、国内書面提出期間内に、国際出願日における請求の範囲の日本語による翻訳文に加えて、当該補正後の請求の範囲の日本語による翻訳文についても提出しなければならない。
日本語特許出願の出願人は、特許協力条約第34条(2)(b)の規定に基づく補正をしたときは、国内処理基準時の属する日までに、同条(2)(b)の規定に基づき提出された補正書の写しを特許庁長官に提出しなければならない。
外国語特許出願の出願人は、特許協力条約第34条(2)(b)の規定に基づく補正をしたときは、国内処理基準時の属する日までに、同条(2)(b)の規定に基づき提出された補正書の日本語による翻訳文を特許庁長官に提出しなければならない。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。