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教育・試験のための利用(33条・35条・36条・47条の6)きょういくしけんのためのりよう

著作権・不正競争防止法 第4章 権利制限 短答で7枝

教育・試験のための利用とは、公表された著作物を、学校教育の目的上必要と認められる限度で教科用図書に掲載すること(33条)、営利を目的としない学校その他の教育機関の授業の過程で必要と認められる限度で複製・公衆送信すること(35条)、入学試験その他の試験又は検定の問題として複製・公衆送信すること(36条)を認める権利制限です。33条の掲載と35条の公衆送信、営利目的の36条の利用には補償金の支払が必要です。

国語の教科書には小説や随筆が載り、学校の授業ではプリントに新聞記事が刷られ、入学試験の問題文には随筆の一節が使われます。これらに一つずつ著作権者の許諾を求めると、教育も試験も成り立ちません。入学試験に至っては、事前に許諾を求めれば問題が漏れてしまいます。そこで33条・35条・36条は、それぞれ教科用図書への掲載、教育機関の授業の過程での複製・公衆送信、試験の問題としての複製・公衆送信を、必要と認められる限度で認めました。ただし著作権者の損失が大きい場面には、補償金の支払で釣り合いを取っています。

学校の職員室の場面。先生が先生役(札「先生」)で机の上に三つの冊子を並べている。左の冊子「教科用図書(33条)」、真ん中の冊子「授業のプリント(35条)」、右の冊子「入学試験の問題(36条)」。それぞれの冊子の上に札が立ち、左「補償金:常に

33条の教科用図書への掲載は、著作者への通知と著作権者への補償金の支払を条件に、翻訳・翻案して掲載することもできます

33条1項は、公表された著作物を、学校教育の目的上必要と認められる限度において、学校教育法に規定する教科用図書に掲載することを認めます。掲載する者は、その旨を著作者に通知するとともに、文化庁長官が定める算出方法による額の補償金を著作権者に支払わなければなりません(2項)。小説を教科用図書に掲載する場合に「当該小説の著作者にその旨を通知するとともに、当該小説の著作権者に補償金を支払う必要がある」という枝は正しいです。33条1項により利用できる場合には、47条の6第1項1号で翻訳、編曲、変形又は翻案による利用もできます。公表された論説を高等学校の教科書に「翻訳して掲載する行為は、翻訳権の侵害となる」という枝は誤りで、小説の一部を「翻案して、小学校の教科用図書に掲載する行為は」翻案権の侵害とならないという枝は正しいです。教科用図書は学校教育法の検定を経た教科書等に限られるので、市の教育委員会が作成して児童に配布する教材のように教科用図書に該当しないものへの転載は、出所を明示しても33条では許されず、32条の引用の範囲を超えれば許諾が要ります。

  • 対象公表された著作物です。学校教育の目的上必要と認められる限度に限ります
  • 掲載先学校教育法に規定する教科用図書です。高等学校の通信教育用学習図書と教科用図書の教師用指導書にも準用されます(4項)
  • 手続著作者への通知と、文化庁長官が定める算出方法による補償金の著作権者への支払です(2項)
  • 二次的利用翻訳、編曲、変形又は翻案ができます(47条の6第1項1号)

教科用図書への掲載に伴う学校教育の目的上やむを得ない用字又は用語の変更は、同一性保持権の侵害になりません

権利制限の規定は著作者人格権に影響しませんが(50条)、20条2項1号は、33条1項等により著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるものを、同一性保持権の対象から外しています。児童の学年に合わせた表記の変更まで著作者の同意に係らせると教科書が作れないからです。小説を教科用図書に掲載する際に不適切な差別用語を直すことは、「学校教育の目的上やむを得ない場合であっても」同一性保持権の侵害となるという枝は誤りです。小説を小学校の教科書に掲載する際に難解な漢字をひらがな表記に変更する行為は、「学校教育の目的上やむを得ないとしても」作家の心情を害する以上同一性保持権の侵害となるという枝も誤りです。

教科書会社の編集室の場面。先生が編集長役(札「編集長」)で「小学校 国語 教科用図書」と書かれたゲラを広げている。ゲラの中に「難解な漢字 → ひらがな表記」と書き込みがある。向かいに編集者の男性(札「編集者」)が吹き出し「作家の文章を勝手に

35条は営利を目的としない教育機関の授業の過程における利用に限られ、公衆送信は設置者が補償金を支払えばできます

35条1項は、学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く)において教育を担任する者及び授業を受ける者が、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合に、必要と認められる限度で、公表された著作物を複製し、公衆送信し、又は公衆送信される著作物を受信装置を用いて公に伝達することを認めます。著作物の種類・用途、複製の部数、態様に照らして著作権者の利益を不当に害する場合は除かれます。授業の過程での利用に限られるので、大学の授業に関連するというだけでは、教員が他人の著作物を複製して学生に頒布することはできません。公衆送信を行う場合には、教育機関を設置する者が相当な額の補償金を著作権者に支払います(2項)。ただし、対面の授業を同時に受ける者に対する公衆送信は、3項により補償金の対象から外れます。大学教授が受講生のみがアクセスできる学習管理システムのサーバーに「授業で使用する論文を、その授業の過程に必要な限度でアップロードする行為」について、公衆送信権を有する者の許諾は必要ではないという枝は正しいです。以前の35条は授業のための複製と、対面授業を同時に受ける遠隔地の者への公衆送信しか認めていなかったので、学内サーバに保存した論文を「学生が自宅でダウンロードできるようにする行為」が公衆送信権の侵害となるという平成28年度の枝は出題当時は正しいとされましたが、平成30年改正で公衆送信が補償金を条件に広く認められ、現行法では補償金を支払えば許されます。

大学の講義室の場面。先生が教授役(札「教授」)で教卓のパソコンを操作し、画面に「学習管理システム:受講生のみアクセス可/授業で使う論文をアップロード」と表示されている。教室の後ろに学生の男性(札「受講生」)がノートパソコンを開き、吹き出し「

36条の試験問題としての複製等は営利目的でも許諾が要らず補償金で足り、翻訳はできますが翻案はできません

36条1項は、公表された著作物を、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題として複製し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除く)することを認めます。高等学校の入学試験問題で「公表された随筆の一部を含む問題文を出題する場合には」許諾を得る必要はないという枝は正しく、大学の入学試験問題について「インターネットを用いた入学試験で公衆送信を行うことはできない」という枝は誤りです。営利を目的として複製又は公衆送信を行う者は、通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わなければなりませんが(2項)、許諾は要りません。「営利企業の入社試験問題として必要な範囲で複製して使用する場合」に許諾を得る必要があるという枝は誤りです。36条1項により利用できる場合の二次的利用は翻訳だけで(47条の6第1項2号)、翻案は認められていません。海外の小説の一部を「翻訳及び翻案の上、高校の入学試験問題として必要な範囲で使用する場合」に著作権の侵害とならず同一性保持権の侵害にもならないという枝は誤りです。また、認められるのは試験又は検定の問題としての複製なので、教科書の小説を複製して試験問題を作り、授業中に行う試験用の問題として学校に販売する行為は36条1項の対象にならず、複製権の侵害になります。

高校の入試問題作成室の場面。先生が出題責任者役(札「出題責任者」)で机に座り、「入学試験問題 国語」と書かれた原稿を手にしている。原稿の横に二つの札。左の札「海外の小説を翻訳して出題 → 36条・47条の6第1項2号でできる」、右の札「翻案

33条・35条・36条の違い

規定主体・場面補償金翻訳等
33条 教科用図書への掲載教科用図書に掲載する者常に必要です(著作者への通知も要ります)翻訳・編曲・変形・翻案ができます
35条 教育機関の授業営利を目的としない教育機関の教育を担任する者と授業を受ける者公衆送信のときだけ設置者が支払います(同時授業の公衆送信は除きます)翻訳・編曲・変形・翻案ができます
36条 試験の問題入学試験その他の試験・検定の問題を作る者営利目的のときだけ支払います翻訳だけができます
著作権法35条1項

学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

著作権法36条1項

公表された著作物については、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題として複製し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。次項において同じ。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

著作権法20条2項1号

第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項、第三十三条の三第一項又は第三十四条第一項の規定により著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの

試験ではこう問われる

  1. 33条の掲載は著作者への通知と著作権者への補償金が要る。「著作者にその旨を通知するとともに、当該小説の著作権者に補償金を支払う必要がある」という枝は正しい
  2. 33条では翻訳・翻案もできる(47条の6第1項1号)。「翻訳して掲載する行為は、翻訳権の侵害となる」という枝は誤り、翻案して小学校の教科用図書に掲載しても翻案権の侵害とならないという枝は正しい
  3. 教科用図書は学校教育法の教科書等に限る。市の教育委員会が作って児童に配布する教材への転載は出所を明示しても許諾が要る
  4. 学校教育の目的上やむを得ない用字用語の変更は同一性保持権の例外(20条2項1号)。差別用語を直す、難解な漢字をひらがなにする行為が侵害になるという枝は誤り
  5. 35条は授業の過程に限る。授業に関連するというだけでは複製して頒布できない。営利目的の教育機関は除かれる
  6. 35条の公衆送信は設置者が補償金を払えばできる(2項)。受講生限定のサーバーへの論文のアップロードに許諾は不要。自宅でのダウンロードを侵害とした平成28年度の枝は旧法のもので、現行法では補償金を払えば許される
  7. 36条は営利目的でも許諾不要で補償金のみ(2項)。「営利企業の入社試験問題として」複製するのに許諾が要るという枝は誤り。インターネットを用いた入学試験での公衆送信もできる
  8. 36条の二次的利用は翻訳だけ(47条の6第1項2号)。「翻訳及び翻案の上」入学試験問題に使って侵害にならないという枝は誤り。試験問題集として学校に販売する複製は36条の対象外

この用語が問われた枝

令和8年度 問54 枝イ誤り

海外で出版されている小説の一部を翻訳及び翻案の上、高校の入学試験問題として必要な範囲で使用する場合、当該小説に係る著作権の侵害とはならず、同一性保持権の侵害となることもない。

令和8年度 問54 枝ロ誤り

新聞連載されていたエッセイの一部を、営利企業の入社試験問題として必要な範囲で複製して使用する場合、当該エッセイの著作権者の許諾を得る必要がある。

令和4年度 問53 枝ハ正しい

大学の授業を担当する教授が、当該授業の受講生のみがアクセスできる学習管理システムのサーバーに、授業で使用する論文を、その授業の過程に必要な限度でアップロードする行為について、それにより著作権者の利益を不当に害することにならないのであれば、当該論文の公衆送信権を有する者の許諾は必要ではない。

令和元年度 問53 枝イ正しい

高等学校の入学試験問題において、公表された随筆の一部を含む問題文を出題する場合には、当該随筆の著作権者の許諾を得る必要はない。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

著作権・不正競争防止法を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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