著作権の譲渡・相続・消滅(61条・62条・66条・77条)ちょさくけんのじょうとそうぞくしょうめつ
著作権の譲渡とは、著作権者が著作権の全部又は一部を契約で他人に移転することで、27条・28条の権利は譲渡の目的として特掲されていないと譲渡した者に留保されたものと推定されます(61条)。著作権は相続の対象になる財産権ですが、相続人の不存在や法人の解散で国庫に帰属すべきこととなるときは消滅します(62条)。
小説家が出版社に「この小説の著作権を譲ります」と契約したとします。出版社は本を刷って売れますが、その小説を映画にする権利まで手に入れたかは別の話です。著作権は財産権なので全部でも一部でも譲渡でき、相続もされます。ただ、翻案のように作品の使い道を大きく広げる権利は著作者が気づかないうちに手放しやすいので、法律は「はっきり書いていなければ著作者の手元に残ったと推定する」という安全装置を置きました。また、著作権者が亡くなって相続人がいないときは、国が引き継ぐのではなく権利そのものが消えて誰でも使えるようになります。

著作権は全部でも一部でも譲渡でき、相続の対象にもなり、質権や譲渡担保の目的にもできます
61条1項は、著作権はその全部又は一部を譲渡することができると定めます。「一部」には複製権や上演権のような支分権ごとの譲渡のほか、複製権のうち録画する権利だけというように利用の態様で区分した譲渡も含まれると解されています。著作権のうち「複製権に含まれる録画権のみを譲渡することは認められない」という枝は誤りです。実演家の録画権のみの譲渡も103条で61条1項が準用されるので同じです。著作権は財産権なので相続の対象になり、62条1項1号が相続人の不存在で国庫に帰属すべきときに限って消滅を定めているのも、相続による承継が前提です。著作権は「その全部又は一部を譲渡することができるが、相続の対象にはならない」という枝は誤りです。66条は著作権を目的として質権を設定した場合の権利行使を定め、77条2号は質権の設定を登録事項にしているので質権は設定できますし、譲渡できる以上は担保の目的で譲渡する譲渡担保もできます。著作権者は「著作権を目的とした質権や譲渡担保を設定することはできない」という枝は誤りです。質権を設定しても、設定行為に別段の定めがない限り著作権は著作権者が行使します(66条1項)。これに対して著作者人格権は著作者の一身に専属するので、譲渡できず相続もされません。著作者人格権が「相続によって、被相続人である著作者から相続人に移転する」という枝は誤りです。
27条・28条の権利は譲渡の目的として特掲されていなければ譲渡した者に留保されたものと推定され、包括的な文言では特掲になりません
61条2項は、著作権を譲渡する契約において27条(翻訳権・翻案権等)又は28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)の権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定すると定めます。翻案や二次的著作物の利用は著作者の作品が別の形で広がる場面で、著作者にとって重い権利なので、明示の合意を求める趣旨です。「著作権等一切の権利を譲渡する」との条項だけでは翻案権を特掲したとは認められず、「翻案権は譲渡した者に留保されたものと推定される」という枝は正しいです。ただし推定にとどまるので、契約の趣旨などから27条の権利も譲渡する合意があったと認められれば推定は覆り、譲受人が翻案権を取得することもあります。翻案権が特掲されていない場合に「その譲受人乙が翻案権を取得することはない」という枝は誤りです。

相続人の不存在や法人の解散で国庫に帰属すべきこととなるときは、著作権は国庫に帰属するのではなく消滅します
62条1項は、著作権者が死亡して相続人がなく民法959条で著作権が国庫に帰属すべきこととなるとき(1号)と、著作権者である法人が解散して残余財産として国庫に帰属すべきこととなるとき(2号)に、著作権は消滅すると定めます。引き継ぐ人がいない著作物を国が独占するより、誰でも自由に使える状態にする方が文化の発展に沿うからです。相続人のいない著作権者が死亡した場合に「その著作権は国庫に帰属する」という枝は誤りです。存続期間の満了のほかにこの消滅事由があるので、著作権は「存続期間の満了以外で消滅することはない」という枝は誤りです。映画の著作物の著作権が62条1項で消滅した場合には54条2項が準用され、映画の利用に関する原著作物の著作権もともに消滅します(62条2項)。一方、著作権は無体物である著作物を対象とする権利なので、絵画や書の原作品が滅失しても消滅事由には当たりません。原作品が消滅した場合に「著作権の存続期間が満了していなくても、当該美術の著作物の著作権は消滅する」という枝は誤りです。
- 存続期間の満了51条から54条までの期間が満了したときに消滅します(57条で翌年から起算します)
- 相続人の不存在(62条1項1号)著作権者が死亡し、民法959条で国庫に帰属すべきこととなるときに消滅します
- 法人の解散(62条1項2号)著作権者である法人が解散し、残余財産として国庫に帰属すべきこととなるときに消滅します
- 消滅しない場合原作品の滅失、著作者人格権の消滅、質権の設定では著作権は消滅しません
著作権の移転と質権の設定は登録しなければ第三者に対抗できませんが、登録は効力要件ではありません
77条は、著作権の移転若しくは信託による変更又は処分の制限(1号)と、著作権を目的とする質権の設定・移転・変更・消滅又は処分の制限(2号)を、登録しなければ第三者に対抗することができない事項と定めます。譲渡そのものは当事者の合意で効力を生じ、登録は二重譲渡などで第三者と争うときの対抗要件にすぎません。著作権の譲渡は「その登録をしなければ、その効力を生じない」という枝は誤りです。特許権の移転(特許法98条1項1号)が登録を効力発生要件とするのと違う点です。なお、著作権者から利用の許諾を得た者の利用権は、63条の2により登録がなくても著作権を取得した者その他の第三者に対抗できます。著作権の移転は登録しなければ第三者に対抗できないが、利用許諾を得た者は「その登録をしなくても対抗することができる」という枝は正しいです。

著作権法61条2項著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。
著作権法62条1項1号著作権者が死亡した場合において、その著作権が民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百五十九条(残余財産の国庫への帰属)の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。
著作権法77条柱書次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
試験ではこう問われる
- 著作権は全部又は一部を譲渡でき、録画権だけの譲渡もできる。「録画権のみを譲渡することは認められない」という枝は誤り
- 著作権は相続の対象になる。「相続の対象にはならない」という枝は誤りで、質権・譲渡担保も設定できる
- 27条・28条の権利は特掲がなければ譲渡した者に留保と推定。「著作権等一切の権利を譲渡する」の包括文言では特掲にならない
- 留保は推定なので契約の趣旨で覆り得る。「譲受人乙が翻案権を取得することはない」という枝は誤り
- 相続人がいなければ著作権は消滅する。「その著作権は国庫に帰属する」という枝は誤りで、法人の解散も同じ
- 存続期間の満了以外にも消滅事由がある。原作品の滅失では消滅しない
- 移転・質権設定の登録は対抗要件。「その登録をしなければ、その効力を生じない」という枝は誤りで、利用権は登録なしで対抗できる(63条の2)
- 著作者人格権は一身専属で譲渡も相続もされない
この用語が問われた枝
著作権は、その全部又は一部を譲渡することができるが、相続の対象にはならない。
著作権のうち、複製権に含まれる録画権のみを譲渡することは認められない。
著作権譲渡契約において、「著作権等一切の権利を譲渡する」との条項が規定されているだけでは、翻案権が特掲されていたとは認められず、翻案権は譲渡した者に留保されたものと推定される。
作家甲の執筆した小説Aの著作権の譲渡契約において、翻案権が譲渡の目的として特掲されていない場合には、その譲受人乙が翻案権を取得することはない。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。