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弁理士短答の合格基準と足切り|39点・科目別40%の得点戦略

試験情報 読了 約11分

弁理士短答の合格基準は総合39点以上かつ科目別40%の足切り(特実8点・他4科目4点)。令和8年度の合格発表、免除者の合格点7点、足切りの典型パターン、10問科目で4点を確保する論点の選び方、自己採点での判定手順、直前期の底上げ計画を整理します。

弁理士試験の短答式筆記試験には、他の資格試験にはあまり見られない「科目別の足切り」があります。総合点が合格ラインを超えていても、1科目でも基準を割れば不合格です。

結論から言うと、短答式の得点戦略は「総合39点を狙う」のではなく「5科目すべてで足切りを確実に超えた上で、特許法で貯金を作る」です。この記事では、合格基準の正確な内容、科目別の目標点、本試験での時間配分、個数問題への向き合い方を整理します。

あわせて、令和8年度の合格発表で確認できる実際の合格基準、免除者に適用される合格点、足切りにかかる典型的なパターン、本試験後の自己採点で足切りを判定する手順、直前期の科目別の底上げ計画までを扱います。

合格基準の正確な内容

短答式の合格基準は、特許庁の受験案内で次のように定められています。

短答式は総合39点以上に加えて、各科目で満点の40%以上を取る必要がある
短答式は総合39点以上に加えて、各科目で満点の40%以上を取る必要がある
  • 総合得点が満点(60点)の65%以上、すなわち39点以上
  • かつ、各科目の得点が満点の40%以上

科目別の足切りラインは次のとおりです。

科目 問題数 足切りライン(40%) 足切りにかかる正答数
特許・実用新案 20問 8点 7点以下
意匠 10問 4点 3点以下
商標 10問 4点 3点以下
条約 10問 4点 3点以下
著作権法・不正競争防止法 10問 4点 3点以下

10問科目で4点というラインは、一見すると低く感じます。しかし条約や著作権法・不競法は学習が後回しになりやすく、本試験で「4問中3問が個数問題で判断できない」といった事態が実際に起こります。総合で45点取れていても条約が3点なら不合格です。この理不尽さが、短答式の怖さです。

なお、総合得点の基準は「65%以上」を原則としつつ、工業所有権審議会が試験の難易度を考慮して調整することがあります。ただし近年は39点で安定しており、39点を目標に置いて問題ありません。

令和8年度の合格発表で確認する

この基準が実際にどう運用されたかは、特許庁が短答式の合格発表で公表する「合格点」と「科目別合格基準点」で確認できます。令和8年度の発表は次のとおりです。

項目 令和8年度の発表
合格点(総合) 39点
特許・実用新案に関する法令 8点
意匠に関する法令/商標に関する法令 各4点
工業所有権に関する条約 4点
著作権法及び不正競争防止法 4点
合格者数 459名
工業所有権法科目及び条約科目の免除者の合格点 7点

出典:特許庁「令和8年度弁理士試験短答式筆記試験合格発表」(令和8年6月9日)

合格点39点と科目別の基準点8点・4点・4点・4点・4点は、「総合65%以上、かつ各科目40%以上」をそのまま点数にしたものと一致しています。「免除者の合格点7点」は5科目を受ける人とは別の基準で、次の「免除者の合格基準」で扱います。

免除者の合格基準

短答式の免除には、短答式をまったく受けない全部免除と、一部の科目だけを受ける免除があります。特許庁の案内とQ&Aで確認できる範囲で整理します。

受験の区分 受ける科目 合否の基準
免除なし 5科目・60問 総合39点以上かつ科目別の基準点以上
短答式の合格者 受けない(全部免除) 短答式の合否判定はない
工業所有権に関する科目の免除者 著作権法及び不正競争防止法のみ 免除者用の合格点(令和8年度は7点)

出典:特許庁「令和8年度弁理士試験短答式筆記試験合格発表」、特許庁「弁理士試験の免除関係に関するQ&A」、特許庁「短答式筆記試験の一部科目免除について」

短答式合格者の全部免除

短答式に合格すると、合格発表の日から2年間、短答式筆記試験が免除されます。免除期間が終わった後に改めて短答式に合格すれば、そこから再び2年間の免除が適用されます。免除期間中は短答式を受けないので、この記事で扱う合格点や足切りは関係しません。

工業所有権に関する科目の免除(一部免除)

もう一つが、大学院で工業所有権に関する科目の単位を修得して修了し、工業所有権審議会の認定を受けた人の免除です。特許庁の案内では、平成20年1月以降に大学院の課程に進学した人が対象で、必要な単位は28単位以上とされています。免除されるのは特許・実用新案、意匠、商標、条約の4科目で、著作権法及び不正競争防止法の科目だけを、短答式の実施日に35分の試験時間で受験します。免除を受けられるのは、大学院の課程を修了した日から2年を経過するまでに行われる試験に限られます。

工業所有権に関する科目の免除者は著作権法・不正競争防止法だけを35分で受け、免除者用の合格点で判定される
工業所有権に関する科目の免除者は著作権法・不正競争防止法だけを35分で受け、免除者用の合格点で判定される

この免除者に適用されるのが、合格発表の「工業所有権法科目及び条約科目の免除者の合格点」です。令和8年度は7点でした。

出典:特許庁「令和8年度弁理士試験短答式筆記試験合格発表」(令和8年6月9日)

注意したいのは、5科目を受ける人にとっての著作権法・不競法の「4点」は足切りの下限にすぎないのに対し、免除者にとっては10問で7点がそのまま合格点になることです。免除者の合格点は年度ごとの合格発表で示され、認定の手続など細かな要件は特許庁の案内が正本です。

受験案内では、特許庁で審判または審査の事務に5年以上従事した人も、工業所有権に関する法令と条約の科目が免除され、著作権法及び不正競争防止法の科目だけを35分で受験するとされています。短答式以外の免除も含めた全体像は「弁理士試験の免除制度一覧」で整理しています。

出典:特許庁「令和8年度弁理士試験受験案内」

科目別の目標点

科目別の足切りラインと目標点。目標点の合計は41点
科目別の足切りラインと目標点。目標点の合計は41点

足切りを確実に避け、総合39点に余裕を持たせる目標点の例です。

科目 目標点 足切りとの余裕
特許・実用新案 15点 / 20問 +7
意匠 7点 / 10問 +3
商標 7点 / 10問 +3
条約 6点 / 10問 +2
著作権法・不正競争防止法 6点 / 10問 +2
合計 41点 総合基準+2

この配分の考え方は次のとおりです。

特許法で貯金を作る。20問と配点が最大で、学習時間を最も投じる科目です。15点(75%)を取れれば、他の科目が目標を1〜2点下回っても総合39点を維持できます。

意匠法・商標法は7点を狙う。特許法の準用が多く、特許法の理解があれば正答率を上げやすい科目です。独自制度(意匠の関連意匠・秘密意匠、商標の不使用取消・防護標章など)を押さえれば7点は現実的です。

条約と著不は「足切り回避+2点」で十分。範囲が広い割に配点が少ないため、深追いせず、過去問で繰り返し問われる論点だけを確実に取ります。

本試験の時間配分

本試験210分の配分の例。特許法に80分
本試験210分の配分の例。特許法に80分

60問を3時間30分(210分)で解くので、1問あたり3.5分です。ただし科目によって問題の重さが違います。

科目 問題数 配分時間 1問あたり
特許・実用新案 20問 80分 4分
意匠 10問 30分 3分
商標 10問 35分 3.5分
条約 10問 30分 3分
著作権法・不正競争防止法 10問 25分 2.5分
見直し ― 10分 ―

特許法は事例形式の長文問題や個数問題が多く、1問4分でも足りないことがあります。逆に著作権法・不競法は知識の有無で即断できる問題が多く、時間はかかりません。

重要なのは、足切りが心配な科目を先に片づけることです。出題順は特許・意匠・商標・条約・著不ですが、解く順番は自由です。条約が苦手なら、特許法で時間を使い切る前に条約の10問を先に解き、4点を確保してから特許法に戻る方法があります。

解く順番を変えるときは、マークのずれに注意が必要です。科目ごとの時間の割り方と、解く順番を変える場合の注意点は「弁理士短答の時間配分」で詳しく扱っています。

個数問題との向き合い方

「正しいものはいくつあるか」を答える個数問題は、5つの枝すべての正誤を判断しないと正解できません。1つでも判断を誤ると不正解になるため、通常の問題より正答率が下がります。

個数問題は5つの枝すべての正誤判断が必要なので、日頃から枝単位で判断する練習をする
個数問題は5つの枝すべての正誤判断が必要なので、日頃から枝単位で判断する練習をする

個数問題への対策は次の2点です。

  1. 枝ごとの正誤判断を鍛える。個数問題は「消去法が効かない」だけで、問われている知識自体は通常の問題と同じです。日頃から問題単位ではなく枝単位で正誤を判断する練習をしていれば、個数問題も同じように解けます
  2. 本試験では時間をかけすぎない。5枝すべてに自信がない個数問題は、判断できる枝から個数を絞り込み、最も可能性の高い選択肢にマークして次に進みます。1問に7〜8分かけると、後の科目で足切りの危険が高まります

足切りに引っかかる典型パターン

足切りは、総合点が合格ラインを超えていても得点の偏り方次第でかかります。問数と足切り点の関係から、典型的なパターンを4つに整理します。

総合39点を超えているのに、条約か著不が3点以下

条約と著作権法・不競法はどちらも10問で、足切り点は4点です。10問のうち7問を落とせば3点になり、特許法・意匠法・商標法でどれだけ得点していても不合格です。たとえば特実16点・意匠8点・商標8点・条約3点・著不8点なら総合43点ですが、条約で足切りにかかります。

総合43点を取っても、条約が3点なら足切りで不合格になる
総合43点を取っても、条約が3点なら足切りで不合格になる

特実が7点以下

特許・実用新案は20問で足切り点が8点です。配点が大きく「得点源」として扱われる科目ですが、20問のうち13問を落とせば7点で足切りです。事例形式の長文問題や個数問題が多く、1問あたりの時間がかかる科目なので、時間を使い切って後半を解ききれない、という形で失点が重なることがあります。

時間切れで最後の科目を塗り絵

特許法で時間を使いすぎると、最後に回した科目を読まずにマークすることになり足切りにつながる
特許法で時間を使いすぎると、最後に回した科目を読まずにマークすることになり足切りにつながる

210分で60問を解くとき、特許法で時間を使いすぎると、最後に回した科目を読まずにマークする「塗り絵」になります。最後の科目が10問科目なら、塗り絵で4点に届くかどうかは運次第です。出題順どおりに解くと最後は著作権法・不競法になるので、時間切れはそのまま著不の足切りにつながります。前述の時間配分を守ることと、足切りが心配な科目を先に解くことが対策です。

個数問題で失点が集中

個数問題は5つの枝すべての正誤判断が必要で、1枝でも誤れば得点になりません。10問科目で個数問題が続いた場合、判断できない枝が各問に1つずつあるだけで、その科目の得点が一気に下がります。通常の五肢択一なら消去法で拾えた問題を落とすため、足切りに近づきます。枝単位の判断を鍛える方法は「個数問題の対策」で詳しく扱っています。

10問科目で4点を確保する論点の選び方

足切りにかかりやすいのは、学習が後回しになりやすい10問科目です。4点を割らないためには、範囲を広く薄く回すより、出題の多い制度を数本、要件と数字まで正確に押さえる方が確実です。科目ごとに、足切り回避の軸にしやすい論点を挙げます。

科目 軸にしやすい論点 押さえる要件・数字
意匠 関連意匠、秘密意匠 関連意匠は本意匠の出願日から10年を経過する日前まで、秘密意匠は設定登録日から3年以内の期間を指定
商標 不使用取消審判 継続して3年以上の不使用、請求は誰でも可、取消の効果は審判請求の登録日に遡る
条約 パリ条約の優先権と国内優先権 パリ優先権は特許・実用新案が12か月、意匠・商標が6か月。国内優先権は1年
著作権法・不競法 権利制限規定、営業秘密 私的使用・引用などの要件の違い、営業秘密の3要件(秘密管理性・有用性・非公知性)

これらの論点は、特許法や他の科目との比較で問われることが多いのが共通点です。たとえば条約の優先権は、パリ条約の優先権と特許法41条の国内優先権を並べて覚えると、条約と特実の両方の得点につながります。比較のしかたは「国内優先権とパリ優先権の違い」で整理しています。

商標の不使用取消は、請求前3か月以内の駆け込み使用の扱いや、取消の効果が遡る時点など、数字と時点を入れ替えた枝が作りやすい論点です。「商標法の不使用取消審判」で要件を一つずつ確認できます。

著作権法・不競法は範囲が広いので、著作権法は権利制限規定を要件で比較し、不競法は営業秘密の3要件と侵害類型に絞ると効率が上がります。それぞれ「著作権法の権利制限規定一覧」と「営業秘密の3要件と侵害類型」で扱っています。

自己採点で足切りを判定する手順

自己採点で足切りを判定する手順。科目ごとに数え、足切り点と比べてから総合点を見る
自己採点で足切りを判定する手順。科目ごとに数え、足切り点と比べてから総合点を見る

自己採点に使う正解は、特許庁が公表します。特許庁の案内では、短答式の問題と解答は試験終了後にできるだけ速やかに特許庁ホームページで公表するとされています。予備校の解答速報と特許庁の公表解答が食い違う問題が出ることもあるので、最終的な判定は特許庁の解答で行ってください。

出典:特許庁「弁理士試験の案内」

自己採点では、総合点から見ないことが大切です。判定は次の順番で行います。

手順 やること 判定
1 5科目それぞれの正答数を数える 科目ごとに点数を書き出す
2 特実の点数を8点と比べる 7点以下なら不合格
3 意匠・商標・条約・著不を各4点と比べる 1科目でも3点以下なら不合格
4 5科目の合計を39点と比べる 手順2・3を通過し、39点以上なら合格ライン

この表の要点は、手順2・3で1科目でも足切り点を下回れば、手順4の総合点が何点でも不合格だということです。総合点は、足切りをすべて通過した人だけが見る数字です。

日頃の本試験形式の演習でも、同じ手順で記録を残します。「総合44点」とだけ書くのではなく、「特実14・意匠8・商標8・条約5・著不9」のように科目別に書けば、足切りに近い科目がすぐに見えます。

足切りを避けるための学習上の原則

苦手科目を作らない

短答式の科目別足切りは「苦手科目を放置した人」を確実に落とす仕組みです。5科目のうち1科目でも「本試験までに一周できなかった」状態で臨むと、その科目で足切りにかかる確率が跳ね上がります。学習計画では、特許法に時間を集中しつつも、条約と著不を本試験3か月前までに必ず一周しておきます。

本試験形式で足切りを事前に発見する

肢別演習だけを続けていると、科目別の得点分布が見えません。月1回、60問を時間を計って解き、科目別に点数を出します。「総合45点だが条約が3点」というパターンは、本試験前に発見できれば修正できます。

直前期は「足切り科目の底上げ」を優先する

本試験1か月前の学習は、得意科目を伸ばすより、足切りにかかりそうな科目を4点から6点に上げる方が合格確率を上げます。特許法を15点から17点に上げても総合点は2点しか増えませんが、条約を3点から5点に上げれば「不合格」が「合格」に変わります。

直前期は得意科目を伸ばすより、足切りにかかりそうな科目を引き上げる方が合格に近づく
直前期は得意科目を伸ばすより、足切りにかかりそうな科目を引き上げる方が合格に近づく

直前期の4週間を科目別の底上げに使う場合の配分例です。どの科目を「底上げ科目」にするかは、直前の本試験形式の演習で、足切り点との差が最も小さかった科目で決めます。

時期 底上げ科目(足切り点との差が小さい科目) その他の科目
1週目 60問を解いて科目別の点数を出し、底上げ科目を決める 特実は8点、他は4点を割っていないかだけ確認
2週目 落とした論点の条文を読み直し、過去問の枝を集中して回す。10問科目なら4点の確保を最優先に 間違えた枝だけを短時間で回す
3週目 底上げ科目の過去問を本試験形式で10問ずつ解き、足切り点を安定して超えるかを確かめる 特許法の個数問題を中心に維持
4週目 新しい論点には手を広げず、まとめた論点を見直す 60問を通しで解き、時間配分と解く順番を最終確認

この配分の考え方は3つです。

1つ目は、底上げ科目の目標を「足切り点を安定して超える」ことに置くことです。

2つ目は、底上げに使う素材を過去問の枝に絞ることです。過去問で落とした枝を条文に戻って確認し、同じ論点の別の枝で正誤を判断できるかを確かめる方が、限られた時間で点数に結びつきます。枝単位で過去問を回す方法は「短答過去問は肢別で回す」で具体的に解説しています。

3つ目は、得意科目を放置しないことです。特許法は20問・足切り8点の科目なので、直前期に手を離すと、事例問題や個数問題の感覚が鈍って失点が重なります。底上げ科目に時間を寄せつつ、特許法は間違えた枝の見直しと個数問題の演習で水準を保ちます。

まとめ

  • 合格基準は総合39点以上、かつ各科目40%以上(特実8点・他4科目4点)
  • 目標点は特実15・意匠7・商標7・条約6・著不6の合計41点。特許法で貯金を作る
  • 時間配分は特許法に80分。足切りが心配な科目は先に解いて確保する
  • 個数問題は枝単位の正誤判断で解く。時間をかけすぎない
  • 月1回の本試験形式で科目別得点を出し、足切り科目を事前に発見する
  • 自己採点は科目別の足切り判定を先に、総合39点は最後に見る。工業所有権法科目・条約科目の免除者は別の合格点(令和8年度は7点)

科目別の対策は「特許法・実用新案法の学習法」「意匠法の短答対策」「商標法の短答対策」「条約の短答対策」「著作権法・不正競争防止法の短答対策」でそれぞれ扱っています。

読んだあとに、今日の1問を

過去問ベースの肢別演習で、読んだ内容をそのまま演習に移せます。

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