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弁理士短答の過去問は肢別で回す|何年分・何周・記録の付け方

学習法 読了 約10分

弁理士短答の過去問は何年分を何周するか。特許庁公表の過去問の入手と法改正への対応、枝単位の肢別演習の回し方、法域別の周回の重み、○△×の記録テンプレート、個数問題への対応まで整理します。

弁理士試験の短答式は、過去問演習が合否を分ける試験です。ただし「過去問を解く」のやり方によって、同じ時間で得られる効果は大きく変わります。

結論から言うと、過去問は問題単位ではなく枝(イ〜ホ)単位で正誤を記録し、判断できなかった枝だけを繰り返すのが最も効率的です。この記事では、なぜ枝単位なのか、何年分をどの順で解くか、記録の方法、周回ごとの絞り込み方、本試験形式との併用を整理します。

あわせて、特許庁が公表している過去問の入手先と法改正への対応、法域別の周回の重み、記録表の作り方、個数問題の枝の扱いも取り上げます。

なぜ「問題単位」ではなく「枝単位」なのか

問題単位と枝単位の記録の違い
問題単位と枝単位の記録の違い

短答式の1問は、5つの枝(イ〜ホ)で構成されます。「正しいものはどれか」という問題で正解の枝を選べたとしても、残りの4つの枝の正誤を判断できているとは限りません。

問題単位で正誤を記録すると、次のことが起こります。

  • 消去法でたまたま正解した問題が「できた」扱いになり、判断できていない枝が復習対象から漏れる
  • 個数問題(正しいものはいくつあるか)では、5枝すべての判断が必要なため、問題単位の学習では対応できない
  • 本試験では過去問の枝が組み替えられて出題されるため、「枝ごとの知識」でないと転用が効かない

枝単位で記録すれば、1問から5つの知識を得られます。20年分の過去問は約1,200問ですが、枝で数えると約6,000枝です。この6,000枝の正誤判断を個別に積み上げることが、短答式合格の実体です。

過去問の入手と改正への対応

特許庁が公表している過去問

短答式の過去問は、特許庁のウェブサイトの「過去の試験問題」のページで公開されています。この記事の確認時点(令和8年9月)で、一覧には平成14年度から令和7年度までの各年度が並び、年度ごとに「短答式筆記試験問題及び解答」が掲載されています。平成14年度から平成30年度までの17年度分と、令和元年度から令和7年度までの7年度分を合わせて、24年度分です。確認時点の一覧で最も新しい年度は令和7年度でした。

各年度のページに置かれているのは、問題冊子のPDFと、解答(正解の番号)のPDFの2つです。各枝がなぜ正しいのか、なぜ誤りなのかという解説は付いていません。ページには「試験問題及び解答について、試験委員及び事務局への個々の問い合わせには一切応じません」とも書かれています。

出典:特許庁「過去の試験問題」(https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-mondai/index.html)、「令和7年度弁理士試験短答式筆記試験問題及び解答」

公表されているのは問題単位の正解番号だけなので、残り4つの枝がどの条文のどの要件で誤りになるのかは、自分で条文に当たって確定させる必要があります。市販の肢別過去問集や演習アプリはこの「枝ごとの正誤と根拠」を補うものですが、どれを使うにしても根拠条文を自分で開いて確認する手間は省かないようにします。

法改正で結論が変わった枝の扱い

公表されている解答は、出題された年度の時点の法令を前提にしています。その後の法改正で、同じ枝の正誤が逆になったり、枝の前提になっている制度そのものが変わったりすることがあります。古い年度ほど、この影響を受ける枝が混ざります。

公表解答は出題年度の法令が前提なので、改正で結論が変わった枝は現行の条文で解き直して正誤を付け直す
公表解答は出題年度の法令が前提なので、改正で結論が変わった枝は現行の条文で解き直して正誤を付け直す

改正の影響がある枝は、次の3つに分けて扱います。

  • 結論は変わらない枝:条文番号や文言が変わっても正誤が同じなら、現行の条文番号で根拠を書き直してそのまま使う
  • 結論が変わった枝:現行の条文で解き直し、現行法での正誤に付け直す。記録には「改正で結論変更」と、改正の年(令和○年改正のように)を残す
  • 前提の制度が変わった枝:現行法では成り立たない問いになっている枝は、演習対象から外す。ただし「改正前はこうだった」という知識が混乱の元になりそうなら、外した理由をメモしておく

改正の有無は現行条文を e-Gov 法令検索で確認し、附則や特許庁の法令改正の案内で改正の年を確かめます。改正年を記録しておけば、古い教材で正誤が逆に書かれている枝にも後で気づけます。

教材と記録の著作権上の注意

特許庁の過去問ページにも著作権表示があります。市販の過去問集や予備校の教材は解説も含めて著作物なので、写真に撮ってSNSに投稿したり、共有フォルダで配ったりしないでください。記録表には解説を書き写さず、根拠条文の番号と自分の言葉で書いた一行の理由を残します。

何年分を、どの順で解くか

何年分を解くか

特許庁が公開している短答式の過去問は、平成14年度以降で20年分以上あります。すべてを解く必要はありませんが、最低でも直近10年分、できれば15年分以上を肢別で回すのが目安です。

年数を増やす理由は、出題論点の網羅性です。短答式の出題論点は年度ごとに散らばっており、直近5年分だけでは主要論点の6〜7割しかカバーできません。10年分で8割、15年分で9割程度に達します。この割合は論点の散らばり方を示すための目安で、特許庁が公表している統計ではありません。

ただし、古い年度の問題には法改正で正誤が変わったものや、現行法では出題されない論点が含まれます。法改正で正誤が変わった枝は、現行法での正誤に修正されている教材やアプリを使うことが重要です。改正前の正誤のまま覚えると、本試験で失点します。

何周するかは、後の「周回ごとの絞り込み」のとおり、全枝を解くのは1周目だけで、2周目以降は△と×に絞ります。周回の数より、○の枝を増やすことが目的です。

解く順序

過去問は「年度順」ではなく「科目・単元順」に解きます。

過去問は年度順ではなく科目・単元順に解くと、同じ論点が年度を変えて何度も出ていることが分かる
過去問は年度順ではなく科目・単元順に解くと、同じ論点が年度を変えて何度も出ていることが分かる
  1. 特許法の単元別:総則→特許要件→出願→審査→特許権→侵害→審判→再審・訴訟の順で、各単元の過去問をまとめて解く
  2. 実用新案法:特許法との違いに絞って解く
  3. 意匠法:特許法との対比で解く。準用されていない独自制度を意識する
  4. 商標法:同様に特許法との対比。商標法独自の制度(登録要件、不使用取消審判、防護標章など)を重点的に
  5. 条約:パリ条約→PCT→TRIPS→マドリッド協定議定書の順
  6. 著作権法・不正競争防止法:著作物・権利制限・保護期間、不競法2条1項各号に絞る

単元別に解くと、同じ論点が年度を変えて何度も出ていることが分かります。「この論点は10年で6回出ている」という頻度の感覚が、学習の優先順位になります。

正誤の記録方法

枝ごとに、次の3つの状態を記録します。

丸を付けるのは根拠を挙げて正誤を判断できた枝だけで、なんとなく正解した枝は三角にする
丸を付けるのは根拠を挙げて正誤を判断できた枝だけで、なんとなく正解した枝は三角にする
状態 意味 次の周回での扱い
○ 根拠を挙げて正誤を判断できた 3周目以降は飛ばす
△ 正誤は合っていたが根拠が曖昧 2周目で再度解く
× 正誤を誤った 2周目・3周目で再度解く

重要なのは、「○」の基準を「根拠を挙げて判断できた」に置くことです。「なんとなく正しい気がして正解だった」は△です。根拠とは、条文番号か判例か審査基準のいずれかで、「特許法29条1項3号の頒布された刊行物に該当するから誤り」と言えて初めて○になります。

紙の過去問集で管理する場合は、枝の横に日付と状態を書き込みます。肢別演習アプリを使う場合は、枝ごとの正誤履歴が自動で残るので、△と×だけを抽出して繰り返せます。

記録テンプレートの例

表計算ソフトやノートで自分で管理する場合は、1行に1枝を書きます。必要な情報は、枝ID・年度・法域・○△×の履歴・根拠条文・改正メモの6つですが、年度と法域は枝IDの中に入れてしまうと、列が4つで収まり、並べ替えもしやすくなります。枝IDは「年度-法域-問題番号-枝」の順にし、たとえば令和5年度の特実の12番の枝ハなら「R5-特実-12-ハ」とします。

枝ID(年度-法域-問-枝) ○△×の履歴 根拠条文 改正メモ
R5-特実-12-ハ ×→△→○ 特29条1項3号 なし
R4-意匠-3-ロ △→○ 意10条1項 なし
R3-商標-7-ニ ×→× 商50条1項 なし
R2-条約-2-イ ○ パリ4条C(1) なし
H28-特実-5-ホ ×→○ 現行条文で確認 令和○年改正で結論変更、現行法で付け直し
R1-著不-9-ロ △→△ 不競2条1項1号 なし

上の表の枝IDは記入例として作った架空のもので、実際の出題と対応するものではありません。

○△×は上書きせず「×→△→○」のように履歴で残します。×が2回続いている行(表の R3-商標-7-ニ)が、個別対策の必要な枝です。根拠条文の列が空欄なら、正誤が合っていても○は付けず△にします。改正メモが埋まっている枝は、本試験2か月前の見直しで必ず現行条文と照らします。

枝IDの法域で絞り込めば、法域ごとの△×の残り数が分かり、後で述べる法域別の周回配分の材料になります。

周回ごとの絞り込み

周回ごとに△×だけを絞り込む
周回ごとに△×だけを絞り込む

1周目:全枝を解く

すべての枝を解き、○△×を記録します。この段階では正答率が50〜60%でも問題ありません。目的は「どの論点が判断できないか」を洗い出すことです。

2周目:△と×だけを解く

1周目で○だった枝は飛ばし、△と×だけを解きます。全体の4〜5割に絞られるので、1周目の半分の時間で回せます。ここで○になった枝は3周目から外します。

3周目以降:×だけを解く

2周目でも△か×だった枝だけを繰り返します。この段階で残る枝は「何度やっても迷う論点」で、全体の1〜2割です。この枝には、条文を読み直す・図解する・類似論点と対比するといった個別対策が必要です。

本試験2か月前:○の枝も1回だけ解き直す

長期間解いていない○の枝は忘れている可能性があります。本試験2か月前に、全枝を1回だけ通しで解き、○が維持されているかを確認します。

法域別に周回の重みを変える

法域別の周回の重み
法域別の周回の重み

短答式は全60問で、特許・実用新案が20問、意匠・商標・条約・著作権法及び不正競争防止法が各10問です。合格には総合39点以上が必要で、そのうえで1法域でも得点率が4割未満なら不合格になります。特実は8問未満、ほかの4法域は4問未満で足切りです。この配点と足切りの形が違う以上、5つの法域を同じ回し方で周回する理由はありません。

法域(問数・足切り) 優先する枝 周回の設計
特許・実用新案(20問・8問未満) 条文の要件と、意匠・商標に準用される規定の枝 △×を最後まで追い、○の枝を最も厚く積む
意匠(10問・4問未満) 意匠法にしかない制度の枝 準用部分は特実の周回で兼ね、独自制度を重点的に
商標(10問・4問未満) 登録要件や不使用取消など商標法独自の枝 独自制度の×を先に潰し、準用部分は特実と対比
条約(10問・4問未満) 頻出条約の基本的な手続の枝 ×を残さないことを優先し、広く浅く回す
著作権・不正競争防止法(10問・4問未満) 頻出論点の定義と類型の枝 ×を残さないことを優先し、広く浅く回す

特許・実用新案は、配点が全体の3分の1を占めるうえ、意匠法・商標法の多くの手続規定が特許法を準用しているため、特実の枝の○は他の法域にも効きます。周回では、条文の要件そのものを問う枝と、準用の有無や読み替えを問う枝を優先し、2周目・3周目でも△×が残る限り追い続けます。条文を手続の時系列で整理する方法は「特許法・実用新案法の学習法」で詳しく扱っています。

意匠は、準用されている部分は特実の周回で力が付くので、意匠法にしかない制度の枝に周回を寄せます。関連意匠や部分意匠、秘密意匠のように特許法に対応する制度がないものは、特実の知識から推測が効かず、枝ごとに覚えるしかありません。独自制度の整理は「意匠法の短答対策」を参照してください。

商標も同じ考え方で、登録要件、不使用取消審判、防護標章など商標法独自の制度の枝を先に回し、特許法と似て要件が違う規定は特実の枝と対比して解きます。

条約と著作権法・不正競争防止法は、どちらも10問で4問未満だと足切りです。この2法域は高得点を狙うより、「頻出論点に×の枝を残さない」ことを周回の目的にします。1周目の×は2周目で必ず解き直し、特定の論点を深追いするより、頻出論点を一通り×なしで回せる状態を先に作ります。条約を国内法と結びつけて回す方法は「条約の短答対策」で整理しています。

配分は記録表の法域別の△×の残り数で調整し、×が固まっている法域から先に手当てします。

本試験形式との併用

肢別演習だけでは、60問を3時間30分で解く時間感覚と、科目別の足切りの危険が見えません。月に1回は、直近の本試験問題を1年分、時間を計って通しで解くことを併用します。

月に1回は直近の本試験1年分を時間を計って通しで解き、総合点・法域別の足切り・時間を確かめる
月に1回は直近の本試験1年分を時間を計って通しで解き、総合点・法域別の足切り・時間を確かめる

本試験形式で確認することは次の3点です。

  • 総合点が39点に届いているか
  • 5科目それぞれで40%以上(特実8点以上、他4点以上)を取れているか
  • 時間内に60問解き切れたか

肢別演習で正答率80%に達していても、本試験形式で時間切れになるなら、解く速度に問題があります。逆に時間は余るが特定科目が足切りにかかるなら、その科目の肢別演習を増やします。肢別演習と本試験形式は、互いの弱点を補い合う関係です。

個数問題(いくつあるか)の枝の扱い

本試験形式で解くと、「正しいものはいくつあるか」を1〜5の数で答える個数問題が混ざります。個数問題は5つの枝すべての正誤を確定しないと答えが出ず、消去法が効きません。1枝でも判断を誤れば数が1つずれ、そのまま失点します。

個数問題は5つの枝すべての正誤を確定しないと答えが出ず、1枝の誤りで数がずれて失点する
個数問題は5つの枝すべての正誤を確定しないと答えが出ず、1枝の誤りで数がずれて失点する

個数問題の5枝も、通常の問題と同じく1枝ずつ記録表に載せます。本試験形式で個数問題を落としたら、数がずれた原因の枝を特定して記録表の×に加えます。「個数問題を落とした」とだけ記録すると、原因の枝が復習から漏れます。

日頃の肢別演習でも、通常の問題を「正解の枝を見つけたら終わり」にせず、5枝すべてに○か×を付けてから答え合わせをすると、個数問題に必要な判断の習慣が付きます。本試験での解答手順や迷う枝の処理は「弁理士短答の個数問題対策」で詳しく扱っています。

よくある失敗

解説を読んで分かった気になるのではなく、翌日に同じ枝を解き直して根拠を自分で言えるか確かめる
解説を読んで分かった気になるのではなく、翌日に同じ枝を解き直して根拠を自分で言えるか確かめる

過去問を「解説を読む教材」にしてしまう。解いた直後に解説を読み、理解した気になって次に進む。これでは枝の正誤判断力がつきません。解説を読んだ後、同じ枝を翌日にもう一度解いて、根拠を自分で言えるか確認します。

新しい年度の過去問を「模試」として温存しすぎる。直近2〜3年分を本試験形式用に残すのは有効ですが、5年分も温存すると、肢別演習でカバーできる論点が減ります。温存は直近2年分までにします。

正答率90%を目指して同じ枝を回し続ける。3周目で○になった枝を何度も解いても、得点は伸びません。○の枝は放置し、×の枝と本試験形式に時間を移します。

古い年度の解答をそのまま信じる。特許庁の公表解答は出題当時の法令が前提です。古い年度の枝は、現行条文で確認してから○を付けます。

まとめ

  • 過去問は問題単位ではなく枝単位で正誤を記録する。1問5枝で約6,000枝が対象
  • 最低10年分、できれば15年分以上。法改正で正誤が変わった枝は現行法に修正されたものを使う
  • 年度順ではなく科目・単元順に解き、論点の出題頻度を把握する
  • ○の基準は「根拠(条文番号・判例)を挙げて判断できた」。△×だけを周回で絞り込む
  • 月1回は本試験形式で60問を通しで解き、総合点・科目別足切り・時間を確認する
  • 特許庁の過去問(平成14年度〜令和7年度)は解答のみ。改正で結論が変わった枝は現行条文で付け直し、周回は特実を厚く、条約・著不は×を残さない

科目別の足切りの仕組みと目標点は「短答式の合格基準と科目別足切りの攻略法」で、学習時間の配分は「弁理士試験に必要な勉強時間」で整理しています。

読んだあとに、今日の1問を

過去問ベースの肢別演習で、読んだ内容をそのまま演習に移せます。

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