弁理士短答の時間配分と解く順番|210分を2周で使う当日の手順
弁理士短答式の本試験当日の時間の使い方。60問3時間30分(1問3.5分)を1周目と2周目に分ける手順、法域ごとの解く順番の決め方、通過時刻のチェックポイント、個数問題と長文事例を後回しにする基準、マークのタイミング、見直しと足切り回避の最終確認までを整理します。
弁理士試験の短答式は、60問を3時間30分で解く試験です。1問あたりにすると3.5分ですが、問題の長さも難しさも問題ごとに大きく違うので、平均どおりに進めることはできません。知識が十分でも、時間の使い方を誤ると、最後に解く科目で足切りにかかります。
結論から言うと、本試験の210分は「1周目で全60問に仮の答えを付ける時間」と「2周目で保留した問題を詰める時間」に分け、解く順番と通過時刻を事前に決めて当日はそのとおりに動くのが基本です。迷う問題は印を付けて仮にマークし、先に進みます。この記事では、試験の形式の確認、2周方式の手順、解く順番の決め方、後回しにする基準、マークと見直しの方法、足切りを避ける最終確認を、本試験当日の流れに沿って整理します。
本試験の形式を確認する
まず、時間の使い方の前提になる形式を確認します。特許庁の受験案内と工業所有権審議会の実施方法では、短答式は次のように定められています。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題数 | 60題(特許・実用新案20、意匠10、商標10、条約10、著作権法及び不正競争防止法10) |
| 試験時間 | 3.5時間 |
| 出題形式 | 五肢択一、マークシート方式 |
| ゼロ解答 | 採用しない(「いずれにも該当しない」という選択肢はない) |
| 科目の明示 | 各問題にどの科目の問題かを明示する |
| 令和8年度の時間 | 着席12時00分、試験時間12時30分〜16時00分(令和7年度も同じ) |
出典:特許庁「令和8年度弁理士試験受験案内」(令和8年1月)・「令和7年度弁理士試験受験案内」、工業所有権審議会弁理士審査分科会試験部会「弁理士試験の具体的実施方法について」
ゼロ解答が採用されていないので、どの問題にも1〜5のいずれかに正解があります。空欄のまま時間切れになれば、その問題は確実に0点です。どんなに迷った問題でも、何かをマークして終えることが、当日の時間の使い方の大前提になります。
問題の形と長さは科目で違う
令和8年度の問題冊子を見ると、問題の形は科目ごとにかなり違います。当サイトで問題冊子の問い方を数えた結果は次のとおりです。
| 科目 | 問数 | 「いくつあるか」の問題 | 組合せの問題 | 「どれか」の問題 |
|---|---|---|---|---|
| 特許・実用新案 | 20 | 13 | 1 | 6 |
| 意匠 | 10 | 3 | 0 | 7 |
| 商標 | 10 | 4 | 0 | 6 |
| 条約 | 10 | 4 | 0 | 6 |
| 著作権法・不正競争防止法 | 10 | 0 | 0 | 10 |
出典:特許庁「令和8年度弁理士試験短答式筆記試験問題」から当サイトで集計
特許・実用新案は20問中13問が個数問題(正しいもの、または誤っているものがいくつあるかを答える問題)で、事例形式の長い問題も含まれます。同じ科目の中でも問題文の長さの差は大きく、令和8年度の特許・実用新案では、最も長い問題の文字数が最も短い問題の3倍を超えていました。一方、著作権法・不正競争防止法は、10問すべてが「最も適切なもの(不適切なもの)はどれか」という形でした。出題の形は年度によって変わりますが、特許・実用新案が最も時間を食い、著作権法・不正競争防止法は比較的速く進むという傾向を前提に計画を立てます。
210分を2周に分ける
本試験の時間は、次の3つに分けて使います。
| 区分 | 時間の目安 | やること |
|---|---|---|
| 1周目 | 約160分 | 全60問を一通り解き、すべてに仮の答えをマークする。迷った問題には印を付けて先に進む |
| 2周目 | 約35分 | 印を付けた問題だけに戻り、答えを詰める |
| 最終確認 | 約15分 | マークの漏れとずれ、問われている方向の確認 |
1周目の160分は、60問で割ると1問あたり約2分40秒です。これは平均3.5分より短いのですが、1周目で完全に解き切る必要はありません。確実に判断できる問題はそのまま確定し、4分近く考えても決まらない問題は仮の答えを付けて2周目に回します。1周目の目的は、全60問に目を通し、取れる問題を取り切ることです。
この方式の利点は、時間切れになったときの被害が小さいことです。出題順に1問ずつ完全に解いていくと、時間が足りなくなったとき、最後の科目の数問が手付かずで残ります。2周方式なら、時間切れになっても残るのは「仮の答えが付いた保留の問題」だけで、仮の答えが当たる可能性も残ります。
通過時刻を決めておく
2周方式を当日に崩さないために、何時何分までにどこまで進んでいるかという通過時刻を事前に決め、問題冊子の表紙などに書いておきます。解く順番を出題順(特許・実用新案から)にする場合の例です。試験時間が12時30分〜16時00分の年を前提にしています。

| 通過時刻 | 1周目の到達点 |
|---|---|
| 13時40分 | 特許・実用新案20問を終える |
| 14時05分 | 意匠10問を終える |
| 14時30分 | 商標10問を終える |
| 14時55分 | 条約10問を終える |
| 15時10分 | 著作権法・不正競争防止法10問を終える(1周目終了) |
| 15時45分 | 2周目終了 |
| 16時00分 | 最終確認終了 |
着席から開始までの30分
令和8年度は着席が12時00分、試験開始が12時30分で、令和7年度と同じでした。開始前の30分は、問題を解く時間ではありませんが、当日の動きを確認する時間として使えます。解く順番、各科目の通過時刻、保留の基準(4分で決まらなければ保留)を頭の中でもう一度確認し、開始の合図から迷わず最初の科目に入れる状態にしておきます。
試験は午後の3時間30分なので、昼食は着席時刻から逆算して済ませておきます。3時間30分続けて集中できるよう、前日までの本試験形式の演習も、できるだけ同じ時間帯に行って体を慣らしておくと、当日の集中が保ちやすくなります。
通過時刻に遅れていたら、その時点で保留の基準を厳しくします。「4分で決まらなければ保留」を「3分で保留」に切り替え、次の通過時刻までに取り戻します。法域ごとの配分の考え方と足切りラインとの関係は「短答式の合格基準と科目別足切り」で整理しています。
解く順番の決め方
問題冊子は特許・実用新案、意匠、商標、条約、著作権法・不正競争防止法の順に並んでいますが、どの順に解いてもかまいません。解く順番には、大きく3つの型があります。
| 型 | 順番 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 出題順 | 特実→意匠→商標→条約→著不 | 5科目に大きな苦手がない人 | 最後の著不が時間切れの影響を受ける |
| 苦手科目を先に | 足切りが心配な10問科目→特実→残り | 条約や著不で4点を割る心配がある人 | 苦手科目で時間を使いすぎないよう、上限を決める |
| 速い科目を先に | 著不→条約→商標→意匠→特実 | 最後に時間のかかる特実をまとめて解きたい人 | 特実で足切り(8点)にかからないよう、特実に入る時刻を決める |
どの型が正解ということはありません。大事なのは、本試験形式の演習で自分の型を決め、当日は変えないことです。当日の緊張の中で順番を変えると、通過時刻の感覚が合わなくなります。
出題順の型を選ぶ場合も、特許・実用新案の20問の中で順番を入れ替える工夫はできます。「どれか」を問う問題は消去法が効くので、個数問題より短い時間で済むことが多く、先に片づけると時間の余裕が生まれます。
苦手科目を先に解く型は、足切りの不安を早めに消せるのが利点です。足切りにかかる典型的な原因の一つが、最後に回した科目の時間切れです。10問科目のうち最も不安な科目を最初に解き、4点を確保してから残りに進めば、その科目が時間切れで崩れることはありません。
後回しにする基準
1周目で保留にするかどうかは、その場で考えると迷いが増えます。事前に基準を決めておきます。
保留にする問題
- 4分考えても答えが1つに絞れない問題:候補が2つまで絞れていれば、そのうちの1つを仮にマークして印を付ける
- 個数問題で「?」の枝が2つ以上残った問題:確定した○の数を基準に仮の答えをマークし、印を付けて進む
- 長文の事例問題で、事例の整理に時間がかかりそうな問題:問いの文を先に読み、事例を図にする必要がありそうなら、仮の答えを付けて2周目に回す
個数問題の枝の処理と、「?」が1つだけ残ったときの詰め方は「弁理士短答の個数問題対策」で詳しく扱っています。

長文の事例問題の読み方
事例形式の問題は、上から順に読むと時間がかかります。次の順で読みます。
- 最後の問いの文を読み、「正しいもの」か「誤っているもの」か、「どれか」か「いくつあるか」かを確認する
- 前提条件文(「ただし、特に文中に示した場合を除いて〜」)を読み、除外されている事情を確認する
- 事例の本文を読み、登場人物と日付を余白に時系列で書き出す
- 枝を読み、事例のどの事実についての判断かを対応させる
日付が複数出てくる事例では、出願日、公開日、送達日などを時系列の線に並べるだけで判断が速くなります。
保留にしない問題
一方で、次のような問題は保留にせず、1周目で確定させます。
- 知っている論点で、根拠の条文が思い浮かぶ問題
- 「どれか」を問う問題で、正解の枝に根拠を持って○を付けられた問題
予定が大きく崩れたときの立て直し
通過時刻より10分以上遅れたときは、保留の基準を厳しくするだけでは取り戻せません。たとえば出題順で解いていて、13時40分の時点で特許・実用新案がまだ15問しか終わっていない場合は、残りの5問は問いの形だけを見て、「どれか」を問う問題だけを解き、個数問題と長文の事例問題は仮の答えを付けて次の科目に移ります。

特許・実用新案は20問のうち8問を下回ると足切りですが、10問科目の時間を削って特許・実用新案に使うと、今度は10問科目の4点が危うくなります。遅れを1つの科目の中で取り戻そうとせず、遅れた科目の残りを2周目に送り、次の科目は予定どおりの時刻で始めるのが原則です。
保留にした問題が多すぎると、2周目の35分で回りきれません。保留は1周目で多くても10問程度に収まるのが目安で、それを超えるようなら、1周目の保留の基準が甘くなっています。
マークのタイミング
マークシートへの転記のタイミングにも、事前の決め事が必要です。

| 方法 | 利点 | 危険 |
|---|---|---|
| 1問ごとにマーク | マーク漏れが起きにくい | 問題冊子とマークシートの往復で時間がかかる |
| 科目ごとにまとめてマーク | 転記の時間が短い | まとめて転記するときに1問ずれる |
| 最後にまとめてマーク | 解く時間が最大になる | 時間切れで転記が間に合わない危険が大きい |
おすすめは科目ごとにまとめてマークする方法です。問題冊子の余白に答えの番号を大きく書き、1科目を解き終えるたびにマークシートへ転記します。保留の問題も仮の答えでマークしておき、2周目で答えが変わったら塗り直します。
最後にまとめてマークする方法は、時間切れのときに0点の問題が大量に出るので避けます。
見直しと最終確認
最後の15分は、新しい問題を考える時間ではありません。次の順で確認します。

- マークの漏れ:60問すべてにマークがあるか。空欄が1つでもあれば、その場で仮の答えをマークする
- マークのずれ:科目の区切りの番号(特許・実用新案の20番、各10問科目の10番)で、問題冊子の答えとマークシートが一致しているか
- 問われている方向:「誤っているもの」を問う問題に、正しいものの番号や数をマークしていないか。問題冊子で「誤っている」に線を引いた問題を中心に見る
- 科目ごとの答えの数:10問科目ごとに、マークが10個あるか
この段階で答えを変えるのは、明らかな読み違いや転記の誤りに気づいたときだけにします。根拠のないまま答えを変えると、正解を不正解に変えることがあります。
足切りを避けるための当日の考え方
短答式は、総合39点以上に加えて、特許・実用新案で8点、他の4科目で各4点を下回らないことが合格の条件です。当日の時間の使い方も、この足切りを前提に考えます。
10問科目は1問の重みが大きい。10問科目で4点を下回ると、総合点に関係なく不合格です。時間切れで10問科目の数問を手付かずにするのは、特許・実用新案で数問を落とすよりはるかに危険です。10問科目を最後にまとめて解く順番にする場合は、その科目に入る通過時刻を必ず守ります。
2周目は足切りに近い科目から。2周目で保留の問題に戻るときは、出題順ではなく、1周目の手応えで最も足切りに近いと感じた科目から戻ります。
最後の5分でまだ空欄があるなら、考えずに埋める。ゼロ解答がない以上、空欄は確実に0点です。
当日のために練習で決めておくこと
当日の時間の使い方は、当日に考えるものではなく、練習で決めて体に入れておくものです。本試験形式の演習では、次の点を記録します。
- 1周目の終了時刻と、保留にした問題の数
- 科目ごとにかかった時間
- 保留にした問題のうち、2周目で正解に変わった数
- マークのずれや漏れの有無
これを月1回の本試験形式の演習で繰り返し、通過時刻と解く順番を調整します。演習の素材として過去問を本試験形式で使う方法は「短答過去問は肢別で回す」で整理しています。
まとめ
- 短答式は60題・3.5時間の五肢択一で、ゼロ解答はない。空欄は確実に0点なので、何かをマークして終える
- 210分は、1周目約160分・2周目約35分・最終確認約15分に分ける
- 通過時刻を事前に決め、遅れたら保留の基準を厳しくする
- 解く順番は出題順・苦手科目先・速い科目先の3つの型から、練習で自分の型を決め、当日は変えない
- 4分で決まらない問題、「?」が2つ以上残る個数問題、整理に時間のかかる長文事例は、仮にマークして2周目へ
- マークは科目ごとにまとめて転記し、最後の15分で漏れ・ずれ・問われている方向を確認する
科目別の目標点と足切りの仕組みは「短答式の合格基準と科目別足切り」で、試験全体の流れは「弁理士試験とは」で確認してください。
過去問ベースの肢別演習で、読んだ内容をそのまま演習に移せます。