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弁理士短答の個数問題対策|全枝を判断して落とさない解き方

学習法 読了 約8分

弁理士試験短答式の個数問題(正しいものはいくつあるか)の対策と解き方。消去法が効かない理由、枝ごとに○×を確定して数える手順、迷う枝の処理、狙われやすい論点の型、時間配分、枝単位の演習までを整理します。

弁理士試験の短答式で、最後まで苦手意識が残りやすいのが「正しいものはいくつあるか」を答える個数問題です。通常の問題なら働く消去法が、この形式では一切働きません。5つの枝のうち1つでも判断を誤れば、残り4つを正しく判断していても失点します。

結論から言うと、個数問題に特別な解法はなく、枝(イ〜ホ)ごとに根拠を挙げて○×を確定できる力が、そのまま得点になる形式です。裏を返せば、個数問題が解けないのは「個数問題が苦手」なのではなく、枝単位の正誤判断が固まっていないことの表れです。この記事では、個数問題の形式、差がつく理由、本試験での解答手順、日頃の学習法、狙われやすい論点の型、時間配分を整理します。

個数問題とは何か

短答式の1問は、5つの枝(イ・ロ・ハ・ニ・ホ)で構成されます。通常の問題は「正しいものはどれか」「誤っているものはどれか」と問い、5つの枝から1つを選ばせます。これに対して個数問題は、「正しいものはいくつあるか」と問い、1から5までの数字を答えさせます。

個数問題は正しい枝の数を答える形式で、消去法が効かず5枝すべての正誤判断が必要になる
個数問題は正しい枝の数を答える形式で、消去法が効かず5枝すべての正誤判断が必要になる
項目 通常の五肢択一 個数問題
問われること どの枝が正しいか 正しい枝が何個あるか
選ぶもの イ〜ホの1つ 1〜5の数字
必要な正誤判断 実質1〜3枝でも到達可 5枝すべて
消去法 効く 効かない
部分点 なし なし

数字を答えるという点だけを見ると形式の違いにすぎませんが、必要な判断量が変わります。通常の問題は、「イは明らかに誤り、ロも誤り、ハが条文どおりで正しい」と分かった時点で、ニとホを読まなくても正解にたどり着けます。個数問題ではニとホも読み、正誤を確定させないと答えが出ません。

もう一つ注意したいのが、設問に付く前提条件文です。短答式では「特に断りがない場合は、いずれも日本国内の事案であり、条約や外国の法令は考慮しないものとする」といった前提が設問の冒頭に置かれます。この前提を読み落とすと、5枝の判断がまとめて狂います。個数問題では枝の読み込みに意識が向きやすく、前提条件文が飛ばされがちです。

なぜ個数問題で差がつくのか

通常の五肢択一と個数問題の違い
通常の五肢択一と個数問題の違い

通常の問題では、知識の穴が結果に表れないことがあります。判断できない枝が2つ残っていても、確実に判断できた枝が正解なら得点になります。消去法という保険が働くからです。

個数問題にはこの保険がありません。判断できない枝が1つでもあれば、その枝を○とみなすか×とみなすかで答えが1つずれ、そのまま不正解になります。「なんとなく正しそう」で当たることもありますが、それは運であって実力ではありません。つまり個数問題は、曖昧な知識を曖昧なまま放置している受験生を、正確に選り分ける形式です。

出題の傾向として、個数問題は特許法・実用新案法を中心に置かれます。特許・実用新案は20問と配点が最大で、しかも合格には20問中8問未満だと総合点を満たしても不合格になる足切りがあります。個数問題を落とし続けると、総合39点に届かないという問題と、特実で足切りにかかるという問題が同時に起こります。合格基準の全体像は「弁理士短答式の合格基準は39点+科目別40%」で整理しています。

逆に言えば、個数問題を安定して取れるようになると、通常の問題は自動的に取れるようになります。5枝すべてを根拠付きで判断できる人にとって、「どれが正しいか」を1つ選ぶ問題は易しい問題だからです。個数問題への対策は、短答式全体の底上げと同じ方向を向いています。

本試験での解答手順

個数問題の解答手順
個数問題の解答手順

本試験の現場では、次の順番で処理します。

前提条件文を先に読み、問題文の余白に印を付ける

枝を読む前に、設問の前提条件文と「正しいものはいくつあるか」「誤っているものはいくつあるか」のどちらを問われているかを確認します。「誤っているもの」を問う個数問題で、正しいものの数を数えてしまう取り違えは、実力に関係なく起こります。問題文の該当箇所に線を引いてから枝に入ります。

枝ごとに○×を確定し、余白に記号で残す

イから順に読み、それぞれの枝の横に○か×を書きます。頭の中だけで数えようとすると、ニを読んでいるうちにイの判断が揺らぎます。記号として紙に残すのが前提です。

このとき、判断できなかった枝には○×ではなく「?」を書きます。自信のない枝を○や×に丸めてしまうと、後の絞り込みができなくなります。

「?」が1つなら、候補を2つに絞って条文の原則と例外から決める

たとえば○が2つ、×が2つ、?が1つなら、答えは2か3のどちらかです。ここまで絞れれば、残る1枝を落ち着いて検討できます。検討の軸は、条文の原則がどうなっていて、その枝が例外に当たるかどうかです。「原則はできる。ただし一定の場合はできない」という構造の条文なら、枝が示す事実がただし書に当たるかを見ます。それでも決まらなければ、原則どおりの処理を選びます。

「?」が2つ以上なら、いったん答えを埋めて次の問題に進む

判断できない枝が2つ以上残ると、候補が3つ以上に広がり、考える時間に対して得られるものが小さくなります。この場合は確定した○の数を基準に答えを1つ選んで記入し、印を付けて次へ進みます。全問を解き終えてから戻り、残り時間で再検討します。1問に固執して後半の科目を解き切れないことのほうが、はるかに大きな損失です。

個数問題に強くなる学習法

「根拠を言えて○」の枝を増やす

個数問題に必要なのは、正誤を当てる力ではなく、根拠を挙げて正誤を確定する力です。日頃の肢別演習で、正誤が合っていても根拠が言えなかった枝は○にせず、復習対象に残します。根拠とは、条文番号・判例・審査基準のいずれかです。「特許法121条1項で査定謄本の送達日から3月以内だから誤り」と言えて、はじめて○になります。

演習では正誤が合っていても根拠が言えなかった枝は○にせず、条文番号などの根拠を言えて初めて○にする
演習では正誤が合っていても根拠が言えなかった枝は○にせず、条文番号などの根拠を言えて初めて○にする

問題単位ではなく枝単位で正誤を記録する

問題単位の記録では、消去法で当たった問題が「できた」扱いになり、判断できていない枝が復習から漏れます。この漏れがそのまま個数問題の失点になります。記録の具体的な方法と周回の絞り込みは「弁理士短答式の過去問は「肢別」で回す」で詳しく扱っています。

通常の問題も「全枝を判断してから」答え合わせをする

演習の段階では、通常の五肢択一であっても、5枝すべてに○×を付けてから解説を読みます。正解の枝だけを確認して次に進むと、1問から1つの知識しか取れません。全枝に印を付ける習慣は、そのまま個数問題の解答手順になります。特許法は個数問題が置かれやすい科目なので、この習慣は「特許法・実用新案法の学習法」で示した単元別の演習の中に組み込んでおきます。

月1回は本試験形式で時間を計る

肢別演習だけでは、個数問題に何分かかっているかが分かりません。月に1回、60問を3時間30分で通して解き、個数問題で時間を使いすぎていないか、科目別の得点が足切りを超えているかを確認します。

狙われやすい論点の型

個数問題の枝は、正誤が一義的に決まる論点から作られます。解釈が分かれる論点は、数を確定させる形式と相性が悪いためです。結果として、次のような「型」が繰り返し現れます。

主体(誰が手続をできるか)

「〜することができる」の主語を入れ替える型です。特許無効審判は利害関係人に限り請求することができます(特許法123条2項)。商標登録の無効審判も利害関係人に限られます(商標法46条2項)。一方、商標の不使用取消審判は「何人も」請求することができます(商標法50条1項)。似た審判でも請求人適格が違うため、枝の主語だけを差し替えた出題が作りやすい箇所です。

特許無効審判と商標登録の無効審判は利害関係人に限られ、商標の不使用取消審判は何人も請求できる
特許無効審判と商標登録の無効審判は利害関係人に限られ、商標の不使用取消審判は何人も請求できる

時期と期間の起算点

「いつまでにできるか」を問う型です。拒絶査定不服審判の請求期間は、査定の謄本の送達があった日から3月以内です(特許法121条1項)。特許出願の分割は、補正をすることができる時または期間内のほか、特許をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から30日以内、最初の拒絶をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から3月以内にもできます(特許法44条1項各号)。審決取消訴訟は、審決または決定の謄本の送達があった日から30日を経過した後は提起できません(特許法178条3項)。「30日」と「3月」、「出願の日から」と「送達があった日から」を入れ替えるだけで、正誤が反転します。

拒絶査定不服審判は送達から3月、審決取消訴訟は送達から30日で、期間や起算点を入れ替えるだけで正誤が反転する
拒絶査定不服審判は送達から3月、審決取消訴訟は送達から30日で、期間や起算点を入れ替えるだけで正誤が反転する

手続の要否

「その手続が必要か不要か」を問う型です。発明の新規性喪失の例外のうち、特許を受ける権利を有する者の行為に起因する公知(特許法30条2項)では、その旨を記載した書面を特許出願と同時に、証明する書面を特許出願の日から30日以内に提出する必要があります(同条3項)。これに対し、意に反する公知(同条1項)にはこの手続は要りません。同じ条文の中に、手続が要る場合と要らない場合が並んでいます。

準用の有無と読み替え

意匠法・商標法は特許法の規定を多く準用していますが、準用されていない制度もあります。出願審査請求や出願公開のように特許法にしかない制度を、意匠法の枝に混ぜる出題は定番です。四法対照の条文集で、準用されている条文と準用されていない条文に印を付けておくと、この型に強くなります。

本試験での時間配分

60問を3時間30分(210分)で解くので、1問あたり平均3.5分です。ただし個数問題は5枝すべてを読んで判断するため、平均を超えます。時間配分の全体像は「弁理士短答式の合格基準は39点+科目別40%」で示したとおり、特許・実用新案に80分(1問4分)を割り当てるのが基本ですが、この80分の中に個数問題の超過分を吸収させる必要があります。

実務的には、次の2つで調整します。

特許・実用新案の80分の中で、通常の問題を先に片づけて時間を作り、個数問題は1問の上限を決めて解く
特許・実用新案の80分の中で、通常の問題を先に片づけて時間を作り、個数問題は1問の上限を決めて解く

通常の問題を先に片づける。特許法の20問を順に解くとき、個数問題に当たったら印を付けて飛ばし、通常の問題を先に処理します。通常の問題は消去法が効く分だけ早く終わるので、ここで時間を作り、残った時間を個数問題に回します。

1問にかける上限を決めておく。個数問題1問に7分も8分もかけると、後半の科目を解く時間がなくなります。条約や著作権法・不正競争防止法で足切りにかかる原因の多くは、知識不足ではなく時間切れです。上限を超えたら、確定した枝の数から答えを選んで次に進みます。

よくある失敗

5枝の○×は頭の中で数えず、問題用紙に記号で残し、問われている向きも確かめてから数える
5枝の○×は頭の中で数えず、問題用紙に記号で残し、問われている向きも確かめてから数える

頭の中だけで数えて、数え間違える。5枝の○×を記憶したまま数えると、1つずれます。正誤判断は合っていたのに答えが違う、という失点が最も惜しい失点です。必ず紙に記号を残します。

「誤っているものはいくつあるか」を「正しいもの」で数える。問われている方向を取り違える失敗です。設問の該当部分に線を引く、○×を付けた後にもう一度設問を読む、という2段構えで防ぎます。

迷う枝を○×に丸めてしまう。自信のない枝を○か×かに決めてしまうと、候補を絞る材料が失われます。「?」として残せば、少なくとも答えの候補が2つに絞れます。

個数問題だけを集めて演習する。個数問題は形式であって論点ではありません。形式だけを集めて解いても、判断できない枝が減るわけではありません。鍛えるべきは枝単位の正誤判断で、その練習は通常の問題でもできます。

まとめ

  • 個数問題は「正しいものはいくつあるか」を答える形式。消去法が効かず、5枝すべての正誤判断が必要で、1枝でも誤れば失点する
  • 本試験では、前提条件文と問われている方向を確認し、枝ごとに○×または「?」を紙に残してから数える
  • 「?」が1つなら候補2つに絞り、条文の原則と例外から決める。2つ以上なら答えを埋めて次へ進む
  • 狙われるのは主体・時期と起算点・手続の要否・準用の有無という型。条文の文言を正確に押さえる
  • 日頃の演習では、通常の問題でも5枝すべてに○×を付け、根拠を言えた枝だけを○にする
  • 特許・実用新案は配点が最大で足切りもあるため、個数問題の失点は総合点と足切りの両方に効く

枝単位の記録と周回の方法は「弁理士短答式の過去問は「肢別」で回す」、科目別の目標点と足切り回避の戦略は「弁理士短答式の合格基準は39点+科目別40%」で続けて確認してください。

読んだあとに、今日の1問を

過去問ベースの肢別演習で、読んだ内容をそのまま演習に移せます。

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