弁理士試験の選択科目免除|対象資格の一覧と学位による免除の申請
弁理士試験の論文式(選択科目)を免除できる資格と学位を一覧で整理。技術士・一級建築士・電気主任技術者・薬剤師・情報処理技術者・司法試験・司法書士・行政書士の対応科目と証明書面、修士・博士による免除認定の要件と申請期限、令和9年度改正の影響まで確認します。
弁理士試験の論文式には、特許・実用新案、意匠、商標の必須科目のほかに、理工系または法律の選択科目が1つあります。この選択科目は、受験生によっては1年分の学習時間を左右するほど重い科目ですが、同時に、試験を受けずに免除を得る道が最も広く開かれている科目でもあります。
結論から言うと、選択科目の免除は「公的資格」と「学位」の2ルートがあり、どちらも一度得れば期限なく続きます。公的資格のルートは、対象の資格を持っていれば受験願書に証明書面を添付するだけで使えます。学位のルートは、願書より前に工業所有権審議会の認定を受ける必要があり、例年2月末が申請の期限です。自分がどちらに当たるかを早めに確かめることが、受験計画の第一歩になります。
この記事では、条文を e-Gov 法令検索の弁理士法・弁理士法施行規則で、資格ごとの対応科目と手続を特許庁の案内・令和8年度の試験公告・令和9年度制度改正のリーフレットで確認しています。短答式や必須科目を含む免除の全体像は「弁理士試験の免除一覧」で整理しています。
選択科目の免除は2つのルート
弁理士法11条6号は、選択科目について筆記試験に合格した者と同等以上の学識を有する者として経済産業省令で定める者に、その科目の論文式試験を免除するとしています。省令にあたる弁理士法施行規則6条は、対象者を1号から12号まで列挙しています。

| 号 | 対象者 | 免除される科目 |
|---|---|---|
| 1号 | 選択科目に関する研究で修士・博士の学位を得て、論文の審査に合格した人 | その科目 |
| 2号 | 選択科目に関する研究で専門職学位を得て、修了要件の単位と論文審査を満たした人 | その科目 |
| 3号 | 技術士で、経済産業大臣が同等以上の学識を認める人 | 理工Ⅰ〜Ⅴのいずれか |
| 4号 | 一級建築士 | 理工Ⅰ(機械・応用力学) |
| 5号 | 第一種・第二種電気主任技術者 | 理工Ⅱ(数学・物理) |
| 6号 | 薬剤師 | 理工Ⅲ(化学) |
| 7号 | 電気通信主任技術者 | 理工Ⅴ(情報) |
| 8号 | 情報処理安全確保支援士試験の合格者 | 理工Ⅴ(情報) |
| 9号 | 情報処理技術者試験の合格者で、経済産業大臣が同等以上の学識を認める人 | 理工Ⅴ(情報) |
| 10号 | 司法試験の合格者 | 法律(弁理士の業務に関する法律) |
| 11号 | 司法書士 | 法律(弁理士の業務に関する法律) |
| 12号 | 行政書士 | 法律(弁理士の業務に関する法律) |
出典:弁理士法施行規則6条
1号・2号が学位のルート、3号から12号が公的資格のルートです。どちらも、特許庁の案内では「永久に同試験が免除」と説明されています。論文式(選択科目)に合格した人の免除(弁理士法11条3号)と同じく、期限はありません。
公的資格による免除の一覧
公的資格のルートでは、工業所有権審議会の事前の認定は要りません。受験願書に免除を受ける旨を書き、資格を証する書面を添付します(施行規則8条3項)。令和8年度の試験公告で指定された書面は次のとおりです。
| 資格 | 免除される科目 | 願書に添付する書面 |
|---|---|---|
| 技術士 | 技術部門と合格した選択科目で決まる | 技術士登録証明書 |
| 一級建築士 | 理工Ⅰ | 一級建築士免許証の写し(建築士会で原本照合を受けたもの)または一級建築士登録証明書 |
| 第一種・第二種電気主任技術者 | 理工Ⅱ | 免状の写し |
| 薬剤師 | 理工Ⅲ | 薬剤師免許証の写し |
| 電気通信主任技術者 | 理工Ⅴ | 資格者証の写し |
| 情報処理安全確保支援士試験の合格者 | 理工Ⅴ | 合格証明書 |
| 情報処理技術者試験の合格者(対象区分のみ) | 理工Ⅴ | 合格証明書 |
| 司法試験の合格者 | 法律 | 司法試験合格証明書 |
| 司法書士 | 法律 | 登録事項証明書 |
| 行政書士 | 法律 | 登録事項証明書 |
出典:工業所有権審議会「令和8年度弁理士試験公告」(令和8年1月14日)
令和8年度の公告では、技術士・一級建築士・電気主任技術者・情報処理技術者・司法試験・司法書士・行政書士などの証明書面は、試験公告の日から願書受付の最終日までに発行されたものに限るとされていました。前の年に取った証明書は使えないことがあるので、受験する年度の公告を見てから取り寄せます。
司法書士と行政書士は、令和8年度の試験公告・受験案内のどちらでも、願書に添付する書面が「登録事項証明書」に限られています。合格証書や合格証明書は挙げられていません。登録事項証明書は登録簿に記載された事項を証明する書面で、登録していなければ取得できないので、試験に合格しただけで登録していない段階では、この免除は使えません。技術士も同じで、別表の対象は「本表の技術部門に係る登録を受けている技術士」とされ、添付書面は技術士登録証明書です。これに対して、司法試験と情報処理系の試験は合格証明書で足ります。
出典:工業所有権審議会「令和8年度弁理士試験公告」(令和8年1月14日)、特許庁「令和8年度弁理士試験受験案内」(別表2・別表2-1)
技術士は技術部門と選択科目の組み合わせで決まる
技術士は、どの技術部門で登録し、第二次試験(または本試験)でどの選択科目に合格したかによって、免除される科目が変わります。特許庁は「技術士資格による選択科目免除一覧」を公表しており(弁理士試験のページでは別表1、令和8年度受験案内では別表2-1)、その要点は次のとおりです。

- 対象は、表の技術部門に係る登録を受けている技術士で、いずれかの選択科目について第二次試験または本試験を受けて合格した人
- 選択科目「工場計画」「品質管理」は対象外
- 1つの選択科目に複数の科目が対応している場合は、そのうち1つを選んで願書に書く
たとえば令和8年度受験案内の別表2-1では、化学部門の選択科目は理工Ⅲ(化学)に、電気電子部門の「情報通信」は理工Ⅴ(情報)に、機械部門の「熱工学」「流体工学」は理工Ⅰ(機械・応用力学)または理工Ⅲ(化学)に対応しています。技術士の選択科目は改廃の歴史が長く、旧名称の科目も別表に並んでいるので、自分の合格科目の名称で必ず表を引いてください。
情報処理技術者試験は対象区分が限られる
情報処理の資格は3つの号に分かれています。情報処理安全確保支援士試験の合格者(8号)は、そのまま理工Ⅴ(情報)の免除対象です。情報処理技術者試験の合格者(9号)は、経済産業大臣が認める試験区分に合格した人に限られ、特許庁の別表(弁理士試験のページでは別表2、令和8年度受験案内では別表2-2)が区分を列挙しています。

| 扱い | 主な試験区分 |
|---|---|
| 免除の対象 | 応用情報技術者、ITストラテジスト、システムアーキテクト、プロジェクトマネージャ、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、エンベデッドシステムスペシャリスト、ITサービスマネージャ、システム監査技術者、旧区分の情報セキュリティスペシャリストなど |
| 対象外 | ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、基本情報技術者、初級システムアドミニストレータ、第二種情報処理技術者など |
出典:特許庁「令和8年度弁理士試験受験案内」別表2-2「弁理士試験の選択科目が免除される情報処理技術者試験合格者の試験区分」
基本情報技術者試験は対象外で、応用情報技術者試験から対象になる、という線引きを覚えておくと迷いません。
電気・建築・薬学・法律の資格
電気主任技術者は、第一種または第二種の免状の交付を受けていることが要件です(5号)。施行規則は第三種を挙げていません。一級建築士は理工Ⅰ(機械・応用力学)、薬剤師は理工Ⅲ(化学)、電気通信主任技術者は理工Ⅴ(情報)が免除されます。
法律(弁理士の業務に関する法律)の免除は、司法試験の合格者・司法書士・行政書士の3つです。法律の選択科目の選択問題は民法で、特許庁の案内では総則・物権・債権から出題されます。司法試験については、旧司法試験の第二次試験の合格者も対象になると公告に明記されています。
学位による免除の要件
学位のルートは、修士・博士(1号)と専門職学位(2号)の2つです。要件を分解すると次のようになります。

| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 学位の種類 | 学校教育法104条に規定する修士・博士、または同条3項の専門職学位 |
| 研究の内容 | 選択科目(理工Ⅰ〜Ⅴ・法律)のいずれかに関する研究 |
| 論文 | 学位の授与に係る論文の審査に合格したこと(専門職は修了要件として定める論文の審査) |
| 手続 | 工業所有権審議会の免除資格の認定を事前に受けること |
注意点が3つあります。
1つ目は、法律の科目で免除を受ける研究から、工業所有権に関する法令の研究が除かれていることです(施行規則6条1号括弧書)。特許法や商標法の研究で法学修士を得ても、法律の選択科目の免除にはなりません。令和9年度改正のリーフレットは、法律の対象分野の例として民事訴訟法、著作権法、不正競争防止法、独占禁止法、行政法などを挙げ、工業所有権に関する法令以外を対象とすると書いています。
2つ目は、海外の大学院の学位は対象外だということです。特許庁のQ&Aは、学校教育法104条による学位が対象なので、海外の大学院で授与された修士の学位は免除の対象にならないと答えています。
3つ目は、専門職学位は論文審査が修了要件でなければ対象外だということです。専門職大学院で論文を書いていても、それが修了要件として定められていなければ、2号の要件を満たしません。
研究分野と科目の対応
どの研究分野がどの科目に当たるかは、特許庁の「学位論文に基づく選択科目免除認定の対象分野」に例示があります。令和9年度改正のリーフレットに載った例示から一部を抜き出すと次のとおりです。
| 科目 | 対象分野の例 |
|---|---|
| 理工Ⅰ(機械・応用力学) | 材料力学、熱力学、流体力学、制御工学、構造力学、建築構造など |
| 理工Ⅱ(数学・物理) | 基礎物理学、電磁気学、回路理論、量子力学、物性物理学、電子デバイス工学、数学など |
| 理工Ⅲ(化学) | 物理化学・有機化学・無機化学、高分子化学、化学工学、分析化学など |
| 理工Ⅳ(生物) | 生物学一般、生物化学、生命工学など |
| 理工Ⅴ(情報) | 情報理論・計算機工学・通信工学、ソフトウェア工学、人工知能工学、信号処理工学など |
| 法律 | 民法、民事訴訟法、著作権法、不正競争防止法、独占禁止法、行政法など |
出典:工業所有権審議会「令和9年度から弁理士試験制度が変わります」
申請者は学位論文の内容から該当しそうな科目を1つ選んで申請しますが、審議会が別の科目に当たると判断した場合は、その科目に適合するものとして結果が通知されます。
学位による免除の申請手続
特許庁の案内に沿って、手続を順に整理します。
| 提出書類 | 博士 | 修士 | 専門職 |
|---|---|---|---|
| 選択科目免除資格認定申請書 | 要 | 要 | 要 |
| 学位取得証明書または大学院修了(見込)証明書 | 要 | 要 | 要 |
| 大学院成績証明書 | 不要 | 要 | 要 |
| 学位論文概要証明書(指導教授等の証明付き) | 要 | 要 | 要 |
| 修了要件証明書 | 不要 | 不要 | 要 |
出典:特許庁「修士・博士等の学位に基づく論文式筆記試験(選択科目)の免除について」
提出書類はすべて原本です。学位論文概要証明書は、学位論文全体を1,000字程度にまとめ、構成や目次ではなく研究・分析の内容が分かるように要約します。大学のリポジトリで論文の全文と学位論文である旨が確認できる場合は、申請書にそのURLを書くことで概要証明書を省略できます。
受付と期限。申請は通年で受け付けていますが、その年の試験で免除を使うための期限は試験公告で指定され、例年2月末日です。令和8年度は2月27日(消印有効)でした。期限を過ぎると審査が願書の提出期間に間に合わず、翌年の試験からの免除になる場合があります。
提出方法と審査。郵送で特許庁内の工業所有権審議会会長あてに送ります。申請書だけは電子データでメール提出もできますが、証明書類は郵送のみです。審査は例年7月・11月・2月・3月ごろの年4回で、追加資料を求められると次の回に回ります。
修了見込みの人。大学院を修了する前に申請した人は、条件付の認定(仮認定)になります。仮認定を受けた次年度の受験願書に大学院修了証明書を添付しないと、仮認定の効力は失われます。
認定の効力。一度認定を受ければ効力は永続し、翌年以降の試験のために改めて申請する必要はありません。受験願書には、そのたびに選択科目免除資格認定通知書の写しを添付します。
令和9年度の制度改正との関係
令和9年度の弁理士試験から、選択科目の選択問題が15から9に再編されます。免除との関係で押さえておきたいのは次の3点です。

- 工業所有権審議会のリーフレットは、今回の改正による免除対象分野の変更はないと明記している。ただし分野の例示は、分かりやすさの観点から追加や整理を行うとしている
- 施行規則6条は、免除を理工Ⅰ〜Ⅴ・法律という「科目」の単位で定めている。再編されるのは科目の下の「選択問題」なので、資格による免除の対応関係はこの仕組みの上では変わらない
- 選択科目の免除は永続するため、すでに認定や合格で免除を得ている人は、改正後もそのまま免除が続く
再編の内訳と、免除を持たずに受験する人の対応は「令和9年度からの弁理士試験制度改正」で詳しく扱っています。
免除を持っていない人の選び方
免除の資格を持っていない人は、選択科目を受験して合格するか、資格や学位を取って免除を得るかのどちらかになります。選択科目の合格基準は、科目の得点(素点)が満点の60%以上で、合格すれば以後は免除です。短答式に合格した年の論文式で必須科目と同時に受けることも、別の年に分けて受けることもできます。

資格による免除を目指すなら、自分の専門に近い資格が施行規則6条のどれに当たるかを最初に確認します。たとえば情報系の人なら応用情報技術者試験以上の区分、電気系の人なら第二種以上の電気主任技術者が候補になります。資格の取得にかかる時間と、選択科目の試験対策にかかる時間を比べて、早く確実な方を選びます。自分のバックグラウンドから学習の重心をどう置くかは「理系・文系で変わる弁理士試験の進め方」でも扱います。
免除を使う場合も受ける場合も、手続は受験願書で完結します。願書の入手・提出の期間と受験手数料は「受験資格と受験料、願書の出し方」で確認してください。
まとめ
- 選択科目の免除は、公的資格(施行規則6条3号〜12号)と学位(1号・2号)の2ルート。どちらも期限なく続く
- 公的資格は事前の認定が不要。願書に登録証明書・免許証の写しなどを添付する。証明書には発行日の条件がある
- 技術士は技術部門と合格した選択科目で対応科目が決まる。情報処理技術者試験は応用情報技術者以上の区分が対象で、基本情報技術者は対象外
- 学位は工業所有権審議会の事前の認定が必要。期限は例年2月末で、審査は年4回。法律の免除に工業所有権法の研究は使えず、海外の学位も対象外
- 令和9年度の選択問題の再編で、免除の対象分野は変わらない
過去問ベースの肢別演習で、読んだ内容をそのまま演習に移せます。