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弁理士の特許法勉強法|短答20問を手続の流れと条文で固める

特許法・実用新案法 読了 約11分

弁理士試験の特許法・実用新案法(短答20問・足切り8点)の勉強法。手続の時系列で条文を配置する方法、狙われる論点の表、期間の数字、枝イ〜ホの例題、実用新案法の独自制度、条文と逐条解説の使い方、よくある誤り、目標15点への学習順序を整理します。

特許法は弁理士試験の中心科目です。短答式では60問中20問を占め、意匠法と商標法は特許法の規定を大量に準用しているため、特許法の理解が浅いと3科目まとめて崩れます。論文式でも特許・実用新案は2時間の最重量科目です。

結論から言うと、特許法は「条文番号順」ではなく「手続の時系列」で組み立てて学ぶのが定石です。出願から審査、登録、権利行使、審判、訴訟までの流れの上に条文を置いていくと、条文相互の関係が見え、意匠法・商標法の準用も追えるようになります。この記事では、その組み立て方と頻出論点、実用新案法の扱い、目標15点への手順を整理します。

あわせて、短答で狙われる論点を条文つきの表にし、覚えるべき期間の数字、枝(イ〜ホ)の形の例題、条文と逐条解説の使い方、よくある誤りを扱います。条文はe-Gov法令検索の原文で確認しています。

手続の時系列で条文を配置する

特許法を手続の時系列で配置した全体図
特許法を手続の時系列で配置した全体図

特許法の条文を、出願人の視点で時系列に並べると次のようになります。

段階 主な条文 短答式で問われること
発明の成立と特許要件 2条、29条、29条の2、30条、32条、39条 新規性・進歩性・拡大先願・新規性喪失の例外・先願
出願 36条、36条の2、37条、38条 明細書の記載要件・外国語書面出願・単一性・共同出願
出願後の手続 17条〜17条の5、41条〜43条、44条、46条 補正・国内優先権・パリ優先権・分割・変更
審査 47条〜54条、64条〜65条 審査請求・拒絶理由通知・出願公開・補償金請求権
登録と特許権 66条〜99条 存続期間・延長登録・効力・実施権・共有
権利行使 100条〜106条 差止・損害賠償の推定・過失の推定
審判 121条〜170条 拒絶査定不服・無効・訂正・審判手続
再審・訴訟 171条〜184条 審決取消訴訟・出訴期間
国際出願 184条の3〜184条の20 PCT出願の国内移行・翻訳文・特例

この表の上から順にテキストを読み、各段階の過去問を解きます。「補正はいつまでできるか」「分割は審査のどの段階で可能か」といった問いは、手続の時系列が頭に入っていないと答えられません。

頻出論点

過去問で繰り返し問われている論点を、段階別に挙げます。

特許要件(29条・29条の2・30条・39条)

新規性喪失の例外で書面と証明書が要るのは自分の行為で公知になった30条2項の場合で、意に反する1項には要らない
新規性喪失の例外で書面と証明書が要るのは自分の行為で公知になった30条2項の場合で、意に反する1項には要らない
  • 新規性喪失の例外(30条)の適用要件と手続。出願から30日以内の証明書提出、1年の猶予期間
  • 拡大先願(29条の2)の適用範囲。同一出願人・同一発明者の除外、先願が後願の出願後に公開(出願公開・特許掲載公報の発行など)されていること
  • 先願主義(39条)における同日出願の協議、取り下げられた出願の扱い

30条の手続(書面と証明書)が必要なのは、特許を受ける権利を有する者の行為に起因して公知になった場合(2項)です。意に反して公知になった場合(1項)には、3項の書面・証明書の提出は求められていません。1項と2項の手続を入れ替えた枝は定番です。新規性喪失の例外の全体は「新規性喪失の例外(30条)の要件と手続」で扱っています。

29条の2は、先願が後願の出願「後」に公開された場合の規定です。出願前に公開されていれば29条1項の新規性の問題になります。同一出願人の除外は後願の出願の時点で判断します(29条の2ただし書)。

39条は、同日出願で協議が成立しないときは「いずれも」特許を受けられないと定め(2項)、放棄・取下げ・却下や拒絶の確定した出願は先願の地位を失います(5項。協議不成立による拒絶の確定を除く)。

補正・分割・優先権(17条の2・44条・41条)

  • 補正の時期的制限と内容的制限。最後の拒絶理由通知後の補正が目的外か否か
  • 分割出願の要件。原出願の明細書に記載された範囲、分割できる時期
  • 国内優先権の効果と、先の出願の取り下げ擬制(1年4か月経過時)

分割は「分割出願の要件(44条)」、国内優先権とパリ優先権の違いは「国内優先権とパリ優先権の違い」で、それぞれ単元ごとに掘り下げています。

審判(121条〜)

  • 拒絶査定不服審判の請求期間(3か月)と前置審査
  • 無効審判の請求人適格、一事不再理(167条)の範囲
  • 訂正審判と訂正の請求の関係、訂正の要件(減縮・誤記又は誤訳の訂正・明瞭でない記載の釈明・他の請求項の引用の解消)

無効審判は原則として利害関係人に限り請求でき(123条2項)、冒認・共同出願違反を理由とする場合は特許を受ける権利を有する者に限られます。特許権の消滅後でも請求できる点(123条3項)もよく問われます。これに対して特許異議の申立ては、何人も、特許掲載公報の発行の日から6月以内に限りできます(113条)。審判の種類ごとの比較は「特許法の審判の種類」で整理しています。

特許異議は何人も公報発行から6月以内、無効審判は原則として利害関係人に限られ、権利の消滅後も請求できる
特許異議は何人も公報発行から6月以内、無効審判は原則として利害関係人に限られ、権利の消滅後も請求できる

特許権の効力と制限(68条〜79条)

  • 特許権の効力が及ばない範囲(69条)。試験研究、通過船舶、調剤
  • 先使用権(79条)の成立要件
  • 専用実施権は設定の登録が効力発生要件(98条1項2号)、通常実施権は登録なしで、その後に特許権や専用実施権を取得した者に対抗できる(99条)

これらの論点は、単に条文を暗記するだけでなく、「なぜその制度があるのか」という趣旨とセットで理解すると、正誤判断が安定します。趣旨は論文式でも直接問われます。

試験研究・通過船舶・調剤には特許権の効力が及ばず、こうした制限は制度の趣旨とセットで理解する
試験研究・通過船舶・調剤には特許権の効力が及ばず、こうした制限は制度の趣旨とセットで理解する

短答で狙われる論点の表

特許・実用新案20問の枝が、どの条文のどの要素から作られるかをまとめます。

条文 論点 枝の作られ方
29条の2 拡大先願 先願が後願の出願前に公開された場合に適用するとする
30条 新規性喪失の例外 1項(意に反する公知)にも書面の提出が必要とする
39条 先願 同日出願の協議不成立で「くじ」とする(くじは商標法)
41条・42条 国内優先権 先の出願が分割出願でも基礎にできるとする
44条 分割 特許査定後30日と拒絶査定後3月を入れ替える
48条の3 審査請求 請求の取下げができるとする、分割出願は3年経過後は請求不可とする
64条・65条 出願公開と補償金 補償金請求権を設定登録前に行使できるとする
69条 効力の制限 出願時から国内にある物に効力が及ぶとする
73条 共有 同意なく通常実施権を許諾できるとする
79条 先使用権 出願の際に事業の準備もしていなかった者にも認める
113条・123条 特許異議と無効審判 請求人・期間・消滅後の可否を入れ替える

覚える期間の数字

特許法・実用新案法で覚える期間
特許法・実用新案法で覚える期間

特許法の枝の多くは、期間の数字と起点の入れ替えで作られます。起点とセットで覚えます。

期間 起点 条文
1年 公知になった日から出願まで 30条1項・2項
30日 出願の日から証明書の提出まで 30条3項
1年 先の出願の日から優先権主張出願まで 41条1項1号
3年 特許出願の日から審査請求まで 48条の3第1項
30日 分割・変更の日から審査請求まで 48条の3第2項
1年6月 特許出願の日から出願公開まで 64条1項
20年 特許出願の日から存続期間の終了まで 67条1項
6月 特許掲載公報の発行の日から特許異議の申立てまで 113条
3月 拒絶査定の謄本の送達から拒絶査定不服審判まで 121条1項
30日 審決・決定の謄本の送達から出訴まで 178条3項

存続期間の延長(67条2項・4項)は、どちらも延長登録の出願が必要で、自動的には延びません。医薬品などの許可を理由とする延長は5年が限度です。

実用新案法の扱い

特許法と実用新案法の違い
特許法と実用新案法の違い

実用新案法は特許法とセットで20問の中に含まれ、実用新案法固有の論点は毎年少数ながら出題されます。特許法との違いに絞って押さえます。

項目 特許法 実用新案法
保護対象 発明(物・方法) 考案(物品の形状・構造・組合せ)
審査 実体審査あり 無審査登録(基礎的要件のみ)
存続期間 出願から20年 出願から10年
権利行使 制限なし 技術評価書の提示が必要(29条の2)
出願の変更 実用新案登録出願への変更可 特許出願への変更可(登録後は一定の要件下)
訂正 訂正審判 訂正は1回のみ(14条の2)

無審査登録であるがゆえに設けられている制度(技術評価書、権利行使した後に無効審決が確定した場合の賠償責任)は、実用新案法の頻出論点です。

実用新案法の独自制度の細部

  • 技術評価(12条):何人も請求でき、実用新案権の消滅後も請求できる(無効審判で無効にされた後は不可)。請求は取り下げられない
  • 権利行使の制限(29条の2):技術評価書を提示して警告した後でなければ、侵害者等に権利を行使できない
  • 権利者の責任(29条の3):権利行使や警告をした後に無効審決が確定すると、相手方に与えた損害の賠償責任を負う。ただし、技術評価書の評価に基づくなど相当の注意をもって行使したときは責任を負わない
  • 訂正(14条の2):減縮などを目的とする訂正は1回に限る。請求項の削除を目的とする訂正は、この回数制限とは別にできる(7項)
  • 実用新案登録に基づく特許出願(特許法46条の2):実用新案登録出願の日から3年を経過したとき、出願人・権利者が技術評価を請求したときなどはできない。実用新案権は放棄しなければならない
  • 特許出願から実用新案登録出願への変更(実用新案法10条1項):最初の拒絶査定の謄本送達から3月、または特許出願の日から9年6月を経過した後はできない

特許と実用新案の制度差は「実用新案と特許の違い」で一覧にしています。

短答の枝ではこう問われる

本試験と同じ形の枝を、条文から書き起こしました(過去問そのものではありません)。

例題1 特許法に関し、正しいものの数はいくつか。

  • イ 30条2項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を特許出願と同時に提出し、かつ、証明書を特許出願の日から30日以内に提出しなければならない。
  • ロ 特許を受ける権利を有する者の意に反して公知となった発明について30条1項の規定の適用を受けるためにも、その旨を記載した書面を特許出願と同時に提出しなければならない。
  • ハ 29条の2の規定は、他の特許出願が、当該特許出願の日前に出願公開されていた場合に適用される。
  • ニ 出願審査の請求は、取り下げることができない。
  • ホ 特許無効審判は、特許権の消滅後においては、請求することができない。

正しいのはイ・ニの2つです。ロは30条3項が「前項の規定の適用を受けようとする者」に限っているので誤り、ハは先願が後願の出願後に公開された場合の規定なので誤り、ホは123条3項が消滅後の請求を認めているので誤りです。

例題2 実用新案法に関し、誤っているものはどれか。

  • イ 実用新案権者は、その登録実用新案に係る実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ、侵害者等に対し、その権利を行使することができない。
  • ロ 実用新案登録に基づく特許出願は、その実用新案登録に係る実用新案登録出願の日から3年を経過したときは、することができない。
  • ハ 実用新案技術評価の請求は、実用新案権者に限りすることができる。
  • ニ 実用新案権者は、請求項の削除を目的とする訂正を、14条の2第1項の訂正とは別にすることができる。
  • ホ 実用新案権の存続期間は、実用新案登録出願の日から10年をもって終了する。

誤っているのはハです。12条1項は「何人も」請求できると定めています。

目標15点への到達手順

特許・実用新案20問で15点(75%)を目標にする場合の手順です。

第1段階(正答率50%まで):テキスト一周と単元別過去問

テキストを手続の時系列で一周し、各単元の過去問を肢別で解きます。この段階の目的は「特許法の全体像を持つ」ことなので、正答率が低くても止まらず進めます。目安は3か月です。

第2段階(正答率70%まで):条文の素読と準用の把握

テキストではなく条文集を読みます。特に、補正・分割・審判の時期的制限は、条文の文言(「〜までに」「〜以内に」「〜後は」)を正確に押さえないと判断できません。また、意匠法・商標法で準用される特許法の条文に印をつけておくと、後の科目で効率が上がります。

補正・分割・審判の時期的制限は、条文の文言の「までに」「以内に」「後は」を正確に押さえないと判断できない
補正・分割・審判の時期的制限は、条文の文言の「までに」「以内に」「後は」を正確に押さえないと判断できない

第3段階(正答率85%まで):×の枝の個別対策と個数問題

肢別演習で×になった枝を、条文・趣旨・関連論点の対比で個別に潰します。個数問題は特許法で最も多く出るので、5枝すべてを判断する練習を意識的に入れます。

学習順序の具体例

時系列の表をそのまま学習順序にすると、1周目は次の順になります。

  1. 特許要件(29条・29条の2・30条・32条・39条)
  2. 出願と補正・分割・変更(36条〜38条、17条の2、44条、46条、46条の2)
  3. 優先権(41条〜43条の3)
  4. 審査と出願公開(47条〜54条、64条〜65条)
  5. 特許権・実施権・侵害(66条〜106条)
  6. 特許異議・審判・訴訟(113条〜184条)
  7. 実用新案法(特許法との差分だけ)
  8. 国際出願の特例(184条の3以下。条約のPCTと同時に)

国際出願の特例は条約の10問にも効くので、条約のPCTと並行して進めると二重に得点になります。

条文と逐条解説の使い方

短答の枝は条文の文言から作られるので、判断の拠り所は条文です。

短答の枝は条文の文言から作られるので、柱書・各号・ただし書・括弧書きのどこに要件と例外があるかを見る
短答の枝は条文の文言から作られるので、柱書・各号・ただし書・括弧書きのどこに要件と例外があるかを見る
  • 条文の構造を見る:柱書、各号、ただし書、括弧書きのどこに要件と例外があるかを確認する。括弧書きの中の除外(例えば44条1項2号の前置審査後の特許査定の除外)は枝の材料になりやすい
  • 準用と読み替えを追う:意匠法・商標法・実用新案法で特許法を準用している条文は、準用していない項こそ枝になる
  • 逐条解説で趣旨を確認する:特許庁が公表している『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説』(いわゆる青本)で、規定が置かれた理由と改正の経緯を確認する

条文を覚える具体的な方法は「弁理士試験の条文の覚え方」で扱っています。

よくあるつまずき

補正は出願中の手続、訂正は登録後の手続で、時期も要件も違う
補正は出願中の手続、訂正は登録後の手続で、時期も要件も違う

「補正」と「訂正」の混同。補正は出願中(特許査定前・拒絶査定不服審判中)の手続、訂正は登録後の手続です。時期と要件が異なります。

優先権の複数種類。パリ条約による優先権(43条)、国内優先権(41条)、PCTにおける優先権主張は、それぞれ効果と手続が違います。条約の学習と合わせて整理します。

審判と審決取消訴訟の管轄。審決取消訴訟は東京高等裁判所(知的財産高等裁判所)の専属管轄で、出訴期間は審決謄本送達から30日です。特許法178条の数字は頻出です。

特許異議と無効審判の混同。特許異議は何人も・特許掲載公報の発行から6月以内(113条)、無効審判は原則として利害関係人・申立期間の定めなし・権利の消滅後も請求可(123条2項・3項)です。

先使用権の要件を商標法と混同する。特許法79条は、出願の際に現に事業の実施または準備をしていれば足り、周知性は不要です。商標法32条の先使用権は周知性が必要です。

実施権の登録の意味。専用実施権の設定は登録しなければ効力を生じません(98条1項2号)。通常実施権は登録制度がなく、当然に対抗できます(99条)。対抗に登録が必要とする枝は誤りです。

まとめ

  • 特許法は条文番号順ではなく、出願〜審査〜登録〜権利行使〜審判の時系列で組み立てる
  • 頻出論点は特許要件、補正・分割・優先権、審判、特許権の効力と制限
  • 実用新案法は特許法との違い(無審査・10年・技術評価書・訂正1回)に絞る
  • 目標15点への手順は、テキスト一周→条文素読と準用把握→×の枝の個別対策
  • 補正と訂正、優先権の種類、審決取消訴訟の管轄と期間は混同しやすい
  • 29条の2は先願が後願の出願後に公開された場合。30条の手続は2項だけに必要
  • 期間は起点とセットで覚える(30日・1年・3年・1年6月・6月・3月・30日)
  • 特許異議と無効審判、特許法と商標法の先使用権、専用実施権と通常実施権の登録の意味は入れ替えの枝になる

意匠法・商標法は特許法の準用が土台になります。「意匠法の短答対策」「商標法の短答対策」に進む前に、特許法の審査・審判の流れを固めておいてください。

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