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弁理士短答の条約対策|パリ条約とPCTの頻出論点と足切り回避

条約 読了 約10分

弁理士短答の条約(10問・足切り4点)の対策。パリ条約の優先権(4条)の細部、PCTの国際出願日・国際公開・国内移行、TRIPS協定とマドプロの数字を、短答で狙われる論点の表と枝イ〜ホの例題、国内法との対応、よくある誤り、学習順序で整理します。

条約は短答式で10問出題され、足切りラインは4点です。範囲が広く後回しにされやすいうえ、国内法の知識だけでは点が取れないため、足切りを心配する受験生が多い科目です。

結論から言うと、条約は「暗記科目」として最後にまとめてやるのではなく、特許法・商標法の国内法と結びつけて学ぶのが最も効率的です。パリ条約の優先権は特許法43条、PCTは特許法184条の3以下、マドリッド協定議定書は商標法68条の2以下と、それぞれ国内法に「受け皿」があります。この記事では、出題比率、条約ごとの頻出論点、国内法との結びつけ方、目標6点への手順を整理します。

あわせて、短答で狙われる論点の表、枝(イ〜ホ)の形の例題、よくある誤りを扱います。条約は特許庁公表の和文、PCTの規則はWIPOの資料、国内法はe-Gov法令検索の原文で確認しています。

出題比率

条約10問の出題比率の目安。パリ条約とPCTで7問前後
条約10問の出題比率の目安。パリ条約とPCTで7問前後

条約10問の内訳は年度によって変動しますが、おおむね次の比率です。

条約 出題数の目安 性格
パリ条約 3〜4問 三大原則と優先権。最重要
PCT(特許協力条約) 3〜4問 国際出願の手続。規則まで問われる
TRIPS協定 1〜2問 最低保護基準。他条約との関係
マドリッド協定議定書 1〜2問 商標の国際登録。商標法と重複
その他(ハーグ協定、商標法条約、特許法条約など) 0〜1問 深追い不要

パリ条約とPCTで7問前後を占めます。この2つを確実に押さえれば、足切りの4点は超えられます。TRIPSとマドプロは、頻出論点だけを拾って1〜2点を上乗せします。

なお、PCTの問題には日本への国内移行後の手続(特許法184条の3以下)を問う枝も混ざり、年度によってはPCT関連の比重が大きくなります。比率は固定の配分ではなく、パリ条約とPCTに時間の大半を割くという方針の目安として使ってください。

パリ条約

三大原則

パリ条約の骨格は、内国民待遇(2条)、優先権(4条)、各国特許独立(4条の2)の三大原則です。

パリ条約の骨格は内国民待遇・優先権・各国特許独立の三大原則
パリ条約の骨格は内国民待遇・優先権・各国特許独立の三大原則
  • 内国民待遇:同盟国の国民に、自国民と同一の保護を与える。同盟国内に住所または営業所を持つ非同盟国民も同盟国民とみなされる(3条)
  • 優先権:第一国出願から一定期間(特許・実用新案は12か月、意匠・商標は6か月)内に他の同盟国に出願すれば、第一国出願の日に出願したものとして扱われる
  • 各国特許独立:ある同盟国で取得した特許は、他の同盟国で取得した特許から独立している

内国民待遇では、保護を受ける条件として保護が請求される国に住所・営業所を求めてはならない(2条(2))一方、手続上の住所の選定や代理人の選任は各国の法令による(2条(3))という区別が枝になります。

優先権の細部

優先権は短答式で最も繰り返し問われます。押さえるべき細部は次のとおりです。

優先期間は特許・実用新案が12か月、意匠・商標が6か月で、第一国出願の日は期間に算入しない
優先期間は特許・実用新案が12か月、意匠・商標が6か月で、第一国出願の日は期間に算入しない
  • 優先期間の起算日は第一国出願の日で、その日は期間に算入しない(4条C(2))
  • 優先期間の末日が休日等の場合は翌開庁日まで延長される(4条C(3))
  • 最初の出願が取り下げられ、公衆の閲覧に付されず、権利を残さず、優先権の基礎とされていない場合、同一の同盟国でされた同一対象の後の出願を最初の出願とみなせる(4条C(4))
  • 複数優先・部分優先(4条F):複数の第一国出願を基礎に1つの出願で優先権を主張できる
  • 優先権の主張には、第一国出願の日付と国名の申立てが必要(4条D)

優先権の効果と手続(4条B・D・E・F)

  • 効果(4条B):優先期間内の後の出願は、その間の他の出願、発明の公表・実施、商標の使用などによって不利な取扱いを受けず、これらの行為は第三者の権利を生じさせない
  • 謄本(4条D(3)):認証された謄本は公証不要で、後の出願の日から3か月以内はいつでも無料で提出できる。手続を怠った効果は優先権の喪失が限度(4条D(4))
  • 実用新案を基礎にした意匠(4条E(1)):優先期間は意匠の6か月になる。特許と実用新案の間は相互に優先権を主張できる(4条E(2))
  • 複数優先・部分優先(4条F):発明の単一性がある場合に限り、これを理由に優先権を否認・拒絶できない

国内法では、特許法43条がパリ条約による優先権主張の手続を、43条の2が故意でなく優先期間内に出願できなかった場合の救済を定めています。

その他の頻出論点

  • 特許独立の原則の適用範囲(4条の2)
  • 発明者掲載権(4条の3)
  • 不実施の場合の強制実施権(5条A)。特許出願から4年または特許付与から3年のいずれか遅い方の期間が経過するまでは請求できない
  • 商標の「テルケル」保護(6条の5)。本国で正規に登録された商標は、他の同盟国でもそのままの形で登録される
  • 周知商標の保護(6条の2)。無効の請求には登録から少なくとも5年を認め、悪意の登録には期間を定めない
  • 料金納付の猶予期間(5条の2)は少なくとも6か月、船舶・航空機・車両の一時的な進入時の使用は侵害とならない(5条の3)
  • 代理人・代表者が無断でした商標の登録出願への異議・無効・移転請求(6条の7。商標法53条の2が対応)

PCT(特許協力条約)

PCTは、1つの国際出願で複数の国に出願した効果を得られる手続の条約です。実体的な特許要件は各国が判断し、PCTは手続を統一するだけです。

国際段階の手続

PCT 国際段階の流れ
PCT 国際段階の流れ
段階 内容 頻出論点
国際出願 受理官庁に出願。国際出願日の認定 国際出願日の要件(11条)、欠陥の補完
国際調査 国際調査機関が先行技術を調査 国際調査報告と見解書
国際公開 優先日から18か月で公開 早期公開の請求、公開の効果
国際予備審査 出願人の請求により実施(任意) 請求期限、19条補正と34条補正の違い
国内移行 優先日から30か月以内に各国へ 翻訳文の提出、国内手数料

頻出論点

  • 国際出願日の認定要件(11条):出願人が締約国の国民または居住者であること、所定の言語であること、国際出願をする意思の表示、締約国の指定、出願人の氏名、明細書と請求の範囲があること
  • 19条補正と34条補正:19条は国際調査報告の受領後に請求の範囲のみを国際事務局に対して補正。34条は国際予備審査の段階で明細書・請求の範囲・図面を補正
  • 国内移行期限:優先日から30か月。日本では特許法184条の4で規定
  • みなし取下げ:国内移行期限内に翻訳文を提出しないと、その国での国際出願はみなし取下げ

日本の国内法との接続は、特許法184条の3〜184条の20の「特許協力条約に基づく国際出願に係る特例」です。国際出願を国内出願とみなす規定、翻訳文の提出、国内処理基準時、補正の特例などが、PCTの問題としても特許法の問題としても出題されます。

19条補正は請求の範囲のみを国際事務局に対して、34条補正は国際予備審査の段階で明細書・請求の範囲・図面を補正する
19条補正は請求の範囲のみを国際事務局に対して、34条補正は国際予備審査の段階で明細書・請求の範囲・図面を補正する

数字と要件の細部

  • 要約と図面は国際出願日の認定要件ではない(11条(1)(iii))。国際出願日が認められると、各指定国で国際出願日から正規の国内出願の効果を持つ(11条(3)、特許法184条の3第1項)
  • 国際公開(21条(2)):優先日から18か月経過後速やかに。出願人はその前でも公開を請求できる
  • 優先権書類(規則17.1):優先日から16か月以内
  • 優先権主張の補充・訂正(規則26の2.1):優先日から16か月以内(国際出願日から4か月を経過するまでは可)
  • 国際予備審査の請求(規則54の2.1):国際調査報告等の送付から3か月または優先日から22か月のいずれか遅い方

16か月・18か月・22か月・30か月は、起点がすべて優先日です。起点を国際出願日に替えた枝は誤りです。19条補正と34条補正の比較は「PCT19条補正と34条補正の違い」で詳しく整理しています。

TRIPS協定

TRIPS協定は、WTO協定の一部として知的財産権の最低保護基準を定めた協定です。出題は1〜2問で、次の論点に絞ります。

TRIPS協定の最低保護期間は特許が出願日から20年、意匠が10年、商標が7年
TRIPS協定の最低保護期間は特許が出願日から20年、意匠が10年、商標が7年
  • パリ条約プラス・ベルヌ条約プラスの構造。パリ条約・ベルヌ条約の実体規定を遵守した上で追加的保護を定める
  • 最恵国待遇(4条)。パリ条約にはない原則で、ある加盟国の国民に与えた利益は他のすべての加盟国の国民にも与える
  • 特許の保護期間(33条)。出願日から計算して20年が経過する前に終了してはならない(最低20年)
  • 特許の対象(27条)。すべての技術分野の発明を対象とし、差別を禁止
  • 紛争解決手続。WTOの紛争解決機関で処理される

最低保護期間の入れ替えは定番です。特許は出願日から20年(33条)、意匠は10年(26条(3))、商標は最初の登録・更新とも7年(18条)。このほか、商標の不使用取消は少なくとも3年継続した不使用の後に限ること(19条(1))、商標の強制使用許諾は認められないこと(21条)、ベルヌ条約6条の2(著作者人格権)の権利義務は負わないこと(9条(1))が枝になります。

マドリッド協定議定書

商標の国際登録に関する条約です。商標法68条の2以下と重複するため、商標法の学習と合わせて押さえます。

マドリッド協定議定書の国際登録は、国際登録の日から5年間は基礎出願・基礎登録に従属する
マドリッド協定議定書の国際登録は、国際登録の日から5年間は基礎出願・基礎登録に従属する
  • 本国官庁への基礎出願または基礎登録が必要
  • 国際登録の日から5年間は基礎出願・基礎登録に従属(セントラルアタック)
  • 事後指定により、後から指定国を追加できる
  • 指定国官庁の拒絶通報の期限(原則12か月、宣言により18か月)
  • 存続期間は国際登録の日から10年、更新可

細部として、本国官庁の締約国は指定できないこと(3条の2)、国際登録が基礎の消滅で取り消された場合は取消しの日から3か月以内に指定国で国内出願をすれば国際登録の日にされたものとみなされること(9条の5。商標法68条の32)を押さえます。

国内法と結びつけて学ぶ

条約を効率的に学ぶには、次の順で国内法と往復します。

  1. 特許法43条(パリ条約による優先権主張の手続)を読むときに、パリ条約4条を一緒に読む
  2. 特許法184条の3以下(PCTの特例)を読むときに、PCT11条・19条・22条・34条を一緒に読む
  3. 商標法68条の2以下(国際登録出願の特例)を読むときに、マドリッド協定議定書を一緒に読む

この方法なら、特許法・商標法の学習中に条約の主要部分が終わります。「条約は最後にまとめて」と後回しにすると、本試験直前に10問分の範囲を詰め込むことになり、足切りの危険が高まります。

条約の規定と、国内法の受け皿の対応
条約の規定と、国内法の受け皿の対応

図の対応を、条約の条文の余白に国内法の条文番号として書き込んでおくと、特許法・商標法の過去問を解くときに条約の知識が呼び出されるようになります。パリ優先権と国内優先権の違いは「国内優先権とパリ優先権の違い」、マドプロと商標法の接続は「商標法の短答対策」で扱っています。

短答で狙われる論点の表

条約・条文 論点 枝の作られ方
パリ4条C 優先期間と起算 意匠・商標を12か月にする、出願日を算入する
パリ4条C(4) 最初の出願とみなす要件 「他の同盟国」の出願に替える
パリ4条D(3) 謄本の提出 3か月を6か月に替える
パリ4条E 実用新案を基礎とする意匠 優先期間を12か月とする
パリ5条A 強制実施権 4年と3年の「早い方」とする
PCT11条 国際出願日の認定 要約や図面を要件に入れる
PCT21条・規則17.1 国際公開・優先権書類 起点を国際出願日にする
TRIPS18条・26条・33条 最低保護期間 7年・10年・20年を入れ替える
マドプロ6条・9条の5 従属期間と変更 5年を3年に、3か月を6か月に替える

短答の枝ではこう問われる

本試験と同じ形の枝を、条文から書き起こしました(過去問そのものではありません)。

例題1 パリ条約に関し、正しいものはどれか。

  • イ 優先期間は最初の出願の日から開始し、出願の日は期間に算入する。
  • ロ 実用新案登録出願に基づく優先権を主張して意匠登録出願をする場合、優先期間は12か月である。
  • ハ 同盟国は、発明の単一性がある場合、優先権を主張した特許出願が基礎出願に含まれていなかった構成部分を含むことを理由として、当該優先権を否認することができない。
  • ニ 認証された謄本は、後の出願の日から6か月の期間内においてはいつでも、無料で提出することができる。
  • ホ 同盟国の国民が工業所有権を享有するためには、保護が請求される国に住所又は営業所を有することが条件とされる。

正解はハです。イは4条C(2)、ロは4条E(1)(6か月)、ニは4条D(3)(3か月)、ホは2条(2)に反します。

例題2 PCTに関し、正しいものの数はいくつか。

  • イ 国際公開は、原則として優先日から18か月を経過した後速やかに行われる。
  • ロ 優先権書類は、優先日から16か月以内に国際事務局又は受理官庁に提出する。
  • ハ 19条の補正は、国際予備審査機関に対して行う。
  • ニ 要約が含まれていない国際出願には、国際出願日が認められない。
  • ホ 国際出願日が認められた国際出願は、各指定国において国際出願日から正規の国内出願の効果を有する。

正しいのはイ・ロ・ホの3つです。ハの提出先は国際事務局、ニは11条(1)(iii)に要約が含まれていないので誤りです。個数問題は「個数問題の解き方」の手順で枝ごとに根拠を確定させます。

よくある誤り

PCTは優先日、パリ条約の優先期間は最初の出願の日、マドプロの従属期間は国際登録の日が起点
PCTは優先日、パリ条約の優先期間は最初の出願の日、マドプロの従属期間は国際登録の日が起点

起点の取り違え。PCTは優先日、パリ条約の優先期間は最初の出願の日、マドプロの従属期間は国際登録の日が起点です。

「できる」と「しなければならない」の混同。パリ条約4条D(3)の謄本は同盟国が要求「できる」もので、TRIPS27条(3)の治療方法などの除外も加盟国が除外「できる」ものです。

条約と国内法の混同。日本の特許法は条約より手厚い救済(43条の2など)を置いていることがあります。柱書で条約の問題か国内法の問題かを確認してから枝を読みます。

TRIPSとパリ条約の原則の混同。最恵国待遇はTRIPSにだけあり、内国民待遇は両方にあります。

目標6点への手順

条約で覚える期間の数字
条約で覚える期間の数字

第1段階:パリ条約の優先権とPCTの手続の流れ(2週間)

パリ条約4条とPCTの国際段階の流れを、図にして覚えます。ここで4点分の土台ができます。

第2段階:パリ条約とPCTの過去問を肢別で解く(3週間)

条約ごとに過去問をまとめて解き、×の枝を潰します。数字(12か月・6か月・18か月・30か月・5年)は表にして暗記します。

第3段階:TRIPSとマドプロの頻出論点だけ(1週間)

上に挙げた論点に絞って過去問を解きます。深追いはしません。

第4段階:本試験形式で足切りを確認(継続)

月1回の本試験形式で、条約の得点が安定して5点以上あるかを確認します。4点を割る月があれば、パリ条約とPCTの肢別演習に戻ります。

学習順序の考え方

順序は「パリ条約 → PCT → マドプロ → TRIPS」を勧めます。PCTは優先権の概念をパリ条約から借りているので、4条を先に固めると理解が早くなります。本試験で条約を最後に回すと時間切れで判断が雑になりやすいので、解く順番は「短答式の時間配分」、4点を割ったときの影響は「短答の合格基準と足切り」で確認してください。

まとめ

  • 条約10問のうちパリ条約とPCTで7問前後。この2つで足切りを超える
  • パリ条約は三大原則と優先権の細部(期間・起算日・複数優先・最初の出願の要件)
  • PCTは国際出願日の認定要件、19条補正と34条補正、30か月の国内移行期限
  • TRIPSは最恵国待遇と20年の保護期間、マドプロはセントラルアタックと5年の従属
  • 条約は後回しにせず、特許法43条・184条の3以下、商標法68条の2以下と一緒に学ぶ
  • 謄本の3か月(4条D(3))、実用新案を基礎とする意匠の6か月(4条E)、PCTの優先日起点の数字は枝の定番

条約と同じく「深追い厳禁」の科目である「著作権法・不正競争防止法の短答対策」も、頻出論点への絞り込みが鍵になります。

条約の論点を、そのまま問題で確かめる

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