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著作権法の権利制限規定一覧|30条〜47条の7を要件で比較

著作権法・不正競争防止法 読了 約12分

弁理士試験短答式の著作権法・権利制限規定の一覧。私的複製30条、付随対象著作物、検討過程、非享受利用30条の4、図書館、引用32条、教育35条、試験問題36条、非営利上演38条、公開の美術、出所明示48条、目的外使用49条を、公表の要否・営利・補償金の違いで比較します。

著作権法の権利制限規定(30条〜47条の7)は、短答式の著作権・不正競争防止法10問のなかで最も出題が集中する分野です。一方で、条文の数が多く、しかも近年の改正で条文が増え、要件の書き方も細かくなりました。1条ずつ覚えようとすると、似た言い回しが混ざって区別がつかなくなります。

結論から言うと、権利制限規定の枝は「対象は公表された著作物に限るか」「営利目的でも使えるか」「補償金が必要か」「できる行為は複製だけか、利用全般か」「出所の明示が必要か」の5つの物差しで比べると整理できます。条文ごとにこの5つの答えが違い、短答はその違いを入れ替えて枝を作ります。

この記事では、主要な権利制限規定をグループに分けて要件を確認し、最後に出所の明示(48条)と目的外使用(49条)、短答で狙われる型をまとめます。条文はe-Gov法令検索の著作権法原文(令和8年6月24日施行分までを反映した現行条文)で確認しています。科目全体の優先順位は「著作権法・不正競争防止法の短答対策」で扱っています。

権利制限規定の全体像

著作権法は、複製権(21条)や公衆送信権(23条)などの支分権を定めたうえで、第2章第3節第5款「著作権の制限」に、著作権者の許諾がなくても著作物を利用できる場合を列挙しています。これが権利制限規定です。

各規定は、おおむね次の形をとっています。

  • 要件:誰が、どんな目的で、どの著作物を、どの範囲で
  • できる行為:複製だけか、公衆送信や上演までか、「いずれの方法によるかを問わず」利用全般か
  • ただし書:「著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」
  • 補償金:必要なものと不要なもの

30条の2〜30条の4は、「いずれの方法によるかを問わず、利用することができる」とし、ただし書で著作権者の利益を不当に害する場合を除く柔軟な書き方になっています。

権利制限規定を比べる5つの物差し
権利制限規定を比べる5つの物差し

私的使用と、いわゆる柔軟な権利制限

30条:私的使用のための複製

30条1項は、著作物を「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」(私的使用)を目的とするときは、その使用する者が複製できるとします。対象は「著作権の目的となつている著作物」で、公表されたものに限るという要件はありません。

ただし、次の場合は除かれます。

私的使用のための複製は使用する本人がするもので、公衆用の自動複製機器を使う場合などは除かれる
私的使用のための複製は使用する本人がするもので、公衆用の自動複製機器を使う場合などは除かれる
号 除外される場合
1号 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製する場合
2号 技術的保護手段の回避により可能となった複製を、その事実を知りながら行う場合
3号 著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音・録画を、そのことを知りながら行う場合
4号 著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製(録音・録画を除く)を、そのことを知りながら行う場合(軽微なもの等を除く)

3号・4号は「知りながら」行う場合に限られ、2項は、これらを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならないと定めています。4号には、軽微なものを除く括弧書きと、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く括弧書きがあり、3号(録音・録画)より適用範囲が絞られています。

3項は、政令で定めるデジタル方式の録音・録画機器と記録媒体を用いて私的使用目的で録音・録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならないとします。

30条の2:付随対象著作物の利用

写真の撮影、録音、録画、放送などで、対象に付随して写り込む著作物(付随対象著作物)は、正当な範囲内で、いずれの方法によるかを問わず利用できます。付随対象著作物は、作成伝達物の中で「軽微な構成部分となる場合」に限られます。

30条の3:検討の過程における利用

著作権者の許諾を得て、または裁定を受けて著作物を利用しようとする者は、その利用についての検討の過程(許諾を得る過程などを含む)での利用に供する目的であれば、必要と認められる限度で、いずれの方法によるかを問わず利用できます。企画書に候補の作品を載せて社内で検討する、といった場面です。

30条の4:享受を目的としない利用

作品を味わうためではない情報解析などの利用は、必要な限度でいずれの方法でもできる
作品を味わうためではない情報解析などの利用は、必要な限度でいずれの方法でもできる

30条の4は、著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、必要と認められる限度で、いずれの方法によるかを問わず利用できるとします。例示として、次の3つが挙げられています。

  • 1号:録音・録画その他の利用に係る技術の開発・実用化のための試験の用に供する場合
  • 2号:情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から要素に係る情報を抽出し、比較・分類その他の解析を行うこと)の用に供する場合
  • 3号:人の知覚による認識を伴うことなく電子計算機による情報処理の過程で利用する場合など(プログラムの著作物の実行を除く)

30条の4には、公表の要件も、営利・非営利の区別もありません。その代わり、ただし書で「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は除かれます。また、49条1項2号により、30条の4の適用を受けて作成された複製物を用いて、享受させる目的で利用した者は、複製を行ったものとみなされます。

図書館・引用・教育・試験

31条:図書館等における複製等

31条1項は、国立国会図書館と政令で定める図書館等が、営利を目的としない事業として、図書館資料を用いて著作物を複製できる場合を3つ挙げています。

号 場合 押さえどころ
1号 利用者の求めに応じ、調査研究の用に供するため、公表された著作物の一部分の複製物を一人につき一部提供する場合 原則「一部分」。国等の周知目的資料など政令で定めるものは全部
2号 図書館資料の保存のため必要がある場合
3号 他の図書館等の求めに応じ、絶版等資料の複製物を提供する場合

2項以下には、特定図書館等による公衆送信(設置者が補償金を支払う)や国立国会図書館による絶版等資料の自動公衆送信の規定があります。1項1号の主体は図書館等で、利用者自身が複製する規定ではありません。

32条:引用

32条1項は、公表された著作物は引用して利用できるとし、その引用は「公正な慣行に合致するもの」であり、かつ「報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で」行われなければならないとします。営利目的かどうかは問われていません。補償金も不要です。

2項は、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料などの「国等の周知目的資料」は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載できるとし、ただし書で転載を禁止する旨の表示がある場合を除いています。

35条:学校その他の教育機関における複製等

35条1項は、学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、授業の過程における利用に供することを目的とする場合、必要と認められる限度で、公表された著作物を複製し、公衆送信を行い、公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達できるとします。ただし、著作物の種類・用途、複製の部数、態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は除かれます。

2項は、公衆送信を行う場合には、教育機関を設置する者が相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならないとします。ただし3項により、授業を直接受ける者に対して提供・提示している著作物を、その授業が行われる場所以外で同時に授業を受ける者に公衆送信するとき(いわゆる同時中継)は、2項は適用されません。

行為 補償金
授業の過程での複製 不要
公衆送信(原則) 必要(設置者が支払う。35条2項)
対面授業の同時中継としての公衆送信 不要(35条3項)

36条:試験問題としての複製等

35条は営利目的で設置された教育機関を対象外にし、36条は営利目的の試験でも補償金を払えば使える
35条は営利目的で設置された教育機関を対象外にし、36条は営利目的の試験でも補償金を払えば使える

36条1項は、公表された著作物について、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度で、試験・検定の問題として複製し、公衆送信(放送・有線放送を除く)を行うことができるとします。2項は、営利を目的として複製・公衆送信を行う者は、通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わなければならないとします。

36条は営利目的の試験でも使えますが、その場合は補償金が必要です。35条が営利目的で設置された教育機関をそもそも対象外にしているのとは、組立てが違います。この違いは短答でそのまま問われます。

非営利上演と時事・公的な利用

38条:営利を目的としない上演等

非営利上演の38条1項は、営利目的でない・料金を取らない・出演者に報酬なしの3つがそろって初めて使える
非営利上演の38条1項は、営利目的でない・料金を取らない・出演者に報酬なしの3つがそろって初めて使える

38条1項は、公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述できるとします。ただし、実演家又は口述を行う者に報酬が支払われる場合は除かれます。非営利・無料・無報酬の3つがそろって初めて使えます。

38条4項は映画以外の著作物の複製物の非営利・無料の貸与を認め、映画の著作物は5項の政令で定める視聴覚教育施設等だけが、補償金を支払って貸与できます。「非営利・無料であれば、映画のDVDを誰でも公衆に貸与できる」という枝は誤りです。

39条〜42条

条文 内容 押さえどころ
39条 時事問題に関する論説の転載等 新聞紙・雑誌に掲載された政治上・経済上・社会上の時事問題の論説。学術的な性質を有するものを除く。禁止する旨の表示があれば不可
40条 公開の演説等の利用 公開の政治上の演説・陳述、裁判手続等における公開の陳述。同一の著作者のものを編集して利用する場合を除く
41条 時事の事件の報道のための利用 事件を構成し、又は事件の過程で見聞される著作物を、報道の目的上正当な範囲内で
41条の2 裁判手続等における複製等 裁判手続・行政審判手続のために必要と認められる限度
42条 立法又は行政の目的のための内部資料としての複製等 内部資料として必要と認められる限度

45条・46条:美術の著作物の展示と公開の美術

45条1項は、美術・写真の著作物の原作品の所有者又はその同意を得た者は、原作品により公に展示できるとし、2項は、美術の著作物の原作品を街路、公園など一般公衆に開放されている屋外の場所に恒常的に設置する場合を除いています。

46条は、こうした屋外の場所に原作品が恒常的に設置されている美術の著作物と、建築の著作物は、いずれの方法によるかを問わず利用できるとしたうえで、次の4つを除いています。

  • 1号:彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
  • 2号:建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
  • 3号:屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
  • 4号:専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合

5つの物差しで比較する

主要な規定を、冒頭の物差しで並べると次のとおりです。

条文 公表された著作物に限るか 営利目的での利用 補償金 出所の明示(48条)
30条1項 私的使用 限らない 私的使用目的に限る 政令指定のデジタル録音録画は必要(3項) 不要(48条に掲げられていない)
30条の4 非享受 限らない 区別なし 不要 不要(同上)
31条1項 図書館 1号は公表された著作物の一部分 営利を目的としない事業として 1項は不要 不要(31条は48条に掲げられていない)
32条 引用 限る 区別なし 不要 必要(48条1項1号・3号)
35条 教育機関 限る 営利目的で設置された機関は対象外 公衆送信は必要(2項) 慣行があるとき(48条1項3号)
36条 試験問題 限る 可。ただし営利目的は補償金 営利目的なら必要(2項) 慣行があるとき(48条1項3号)
38条1項 非営利上演 限る 不可 不要 慣行があるとき(48条1項3号)
46条 公開の美術 公表の要件はなく、屋外に恒常設置された美術の著作物と建築の著作物が対象 4号の販売目的の複製は除外 不要 慣行があるとき(48条1項3号)
主な権利制限規定の要件の比較
主な権利制限規定の要件の比較

出所の明示(48条)と目的外使用(49条)

48条:出所の明示

48条1項は、出所を「その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により」明示しなければならない場合を3つの号に分けています。

  • 1号(複製する場合に必ず明示):32条、33条1項、33条の2第1項、33条の3第1項、37条1項、41条の2第1項、42条、42条の2第1項、47条1項
  • 2号(利用する場合に必ず明示):34条1項、37条3項、37条の2、39条1項、40条1項・2項、47条2項・3項、47条の2
  • 3号(出所を明示する慣行があるときに明示):32条・42条による複製以外の方法での利用、35条1項、36条1項、38条1項、41条、41条の2第2項、42条の2第2項、46条、47条の5第1項

30条(私的使用)と30条の4は48条に掲げられていないので、出所の明示は求められていません。引用(32条)は1号に入っており、複製する場合は慣行の有無にかかわらず出所の明示が必要です。35条・36条・38条1項は3号で、「出所を明示する慣行があるとき」に限られます。短答では「35条により複製する場合は、常に出所を明示しなければならない」のような枝が作られるので、どの号に入っているかを確認します。

2項は、出所の明示に当たっては、これに伴い著作者名が明らかになる場合と、著作物が無名のものである場合を除き、表示されている著作者名を示さなければならないとします。

引用は複製すれば常に出所の明示が必要で、35条・36条・38条1項は明示の慣行があるときだけ必要
引用は複製すれば常に出所の明示が必要で、35条・36条・38条1項は明示の慣行があるときだけ必要

49条:複製物の目的外使用

権利制限規定によって作成した複製物を、その規定が定める目的以外の目的で頒布したり、公衆に提示したりすると、49条により21条の複製を行ったものとみなされます。

49条1項1号は、30条1項、30条の3、31条1項1号、35条1項、41条、42条などに定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された複製物を頒布し、又は公衆への提示を行った者を挙げています。私的使用目的で作った複製物を後から販売すれば、その時点で複製を行ったものとみなされ、複製権侵害の問題になります。

2号は、30条の4の適用を受けて作成された複製物を用いて、著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させる目的のために利用した者を挙げています。

50条:著作者人格権との関係

権利制限規定で著作権の侵害にならない利用でも、著作者人格権の侵害は別に問題になり得る
権利制限規定で著作権の侵害にならない利用でも、著作者人格権の侵害は別に問題になり得る

50条は、この款の規定(権利制限規定)は、著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならないとします。権利制限規定で著作権の侵害にならない利用でも、公表権・氏名表示権・同一性保持権の侵害が別に問題になり得ます。「32条の要件を満たす引用であれば、著作者人格権の侵害になることはない」という枝は誤りです。

短答で狙われる型

第1の型:公表要件の付け外し。32条・35条・36条・38条1項は「公表された著作物」に限られますが、30条1項・30条の4には公表要件がありません。「未公表の著作物であっても引用できる」は誤りです。

第2の型:営利の扱いの入替え。35条は営利目的で設置された教育機関を対象外にし、36条は営利目的でも使えるが補償金が必要、38条1項は営利を目的としないことが要件です。3つの規定で営利の扱いがすべて違います。

第3の型:補償金の要否。35条は公衆送信のときだけ補償金が必要(同時中継を除く。支払うのは設置者)、36条は営利目的のときだけ必要です。

第4の型:38条の3要件。非営利・無料・無報酬のどれか1つを欠く事例を示し、38条1項で利用できるかを問います。入場無料でも出演者に報酬を支払えば、ただし書で使えません。

第5の型:48条の号の入替え。「出所の明示が常に必要な規定」と「慣行があるときだけ必要な規定」を入れ替えます。30条による複製に出所の明示を求める枝も誤りです。

学習の進め方

権利制限規定は、5つの物差しの表を空欄で用意し、条文を読みながら埋めていくと定着します。他と違う答えになっている欄が、短答でそのまま枝になる部分です。

範囲が広いので、深追いの基準も決めておきます。30条、30条の4、32条、35条、36条、38条、46条、48条、49条を優先し、31条2項以下、33条の2・33条の3、37条・37条の2、42条の2以下、47条の2以下は条文を一読して見出しと主体を確認する程度で構いません。どこまでやるかの判断基準は「著作権法・不正競争防止法の短答対策」に書いています。条文の要件を表で覚える方法は「弁理士試験の条文の覚え方」も参考になります。

不正競争防止法側の頻出論点である営業秘密は「営業秘密の3要件と不正競争の類型」で整理しています。

まとめ

  • 権利制限規定は「公表の要否」「営利の扱い」「補償金」「できる行為の範囲」「出所の明示」の5つの物差しで比べる
  • 30条1項は私的使用目的で使用する者が複製。公衆用自動複製機器、技術的保護手段の回避、侵害コンテンツと知りながらのダウンロードは除外
  • 30条の2〜30条の4は「必要と認められる限度で、いずれの方法によるかを問わず」利用でき、「著作権者の利益を不当に害する場合」を除く柔軟な規定
  • 32条(引用)・35条(教育機関)・36条(試験問題)・38条1項(非営利上演)は公表された著作物に限る。営利の扱いと補償金の要否はそれぞれ違う
  • 48条の出所明示は、1号・2号は常に必要、3号は慣行があるときだけ。30条・30条の4は対象外
  • 49条:目的外で頒布・提示すると複製とみなされる。50条:権利制限規定は著作者人格権に影響しない

法域別の足切りと、この科目の目標点の考え方は「短答式の合格基準と科目別足切り」で確認してください。

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