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国内優先権とパリ優先権の違い|41条・43条を短答用に整理

特許法・実用新案法 読了 約11分

弁理士試験短答式の特許法41条・42条・43条・43条の2とパリ条約4条。国内優先権とパリ条約の優先権を、優先期間(1年・12箇月)と回復、基礎にできる出願、効果、先の出願のみなし取下げ、優先権主張書面の提出・補正と主張の取下げの期限、優先権証明書類等の提出期限に分けて比較します。

優先権は、特許・実用新案の20問でも条約の10問でも問われる論点です。国内優先権(41条)とパリ条約による優先権(43条)は、どちらも「先の出願を基礎にして、後の出願に有利な扱いを与える」制度なので、枝を読むと似た言葉が並びます。ところが条文の組み立ては別物で、片方の規定をもう片方に持ち込んだ枝が典型的な誤りになります。

結論から言うと、2つの優先権は「期間」「基礎にできる出願」「効果」「先の出願の運命」「手続の期限」の5項目で並べて比べると整理がつきます。期間はどちらも1年(12箇月)で、経過後2月の回復の道があることも共通です。違いが出るのは残りの4項目で、特に「先の出願が1年4月でみなし取下げになるのは国内優先権だけ」「優先権証明書類等の提出が要るのはパリ優先権だけ」の2点は、毎年のように枝の材料になります。

条文はe-Gov法令検索の特許法・特許法施行規則の原文で、パリ条約は特許庁が公表している和文で確認しています。

2つの優先権の全体像

国内優先権とパリ条約による優先権の比較
国内優先権とパリ条約による優先権の比較

まず、根拠条文と中身を1枚の表にします。

項目 国内優先権 パリ条約による優先権
根拠 特許法41条・42条 パリ条約4条、特許法43条(手続)
基礎にできる出願 自己の日本の特許出願・実用新案登録出願 同盟国での正規の最初の出願
優先期間 先の出願の日から1年以内(41条1項1号) 最初の出願の日から12箇月(4条C(1))
期間経過後の救済 41条1項1号括弧書き(経過後2月) 43条の2(優先期間の経過後2月)
効果の根拠 41条2項の限定列挙、3項 4条B(不利な取扱いを受けない)
先の出願 1年4月経過時にみなし取下げ(42条1項) 取り下げられない
証明書類 不要 優先権証明書類等を1年4月以内に提出(43条2項)

国内優先権は特許法が自前で作った制度で、条文の中に効果まで書き込まれています。パリ条約による優先権は、権利そのものはパリ条約4条が与え、特許法43条は日本で主張するための手続だけを定めています。43条の見出しが「パリ条約による優先権主張の手続」となっているのはそのためです。この役割分担を押さえておくと、「43条は優先権の効果を定める」といった枝にすぐ気づけます。

優先期間は1年と12箇月

国内優先権は「先の出願の日から1年以内」

41条1項1号は、後の特許出願が先の出願の日から1年以内にされたものでない場合を、優先権を主張できない場合として挙げています。条文は「1年以内に出願したときは主張できる」ではなく、「次に掲げる場合を除き」主張できるという除外列挙の形です。

パリ条約は12箇月、起算日は算入しない

パリ条約4条C(1)は、優先期間を特許及び実用新案については12箇月、意匠及び商標については6箇月と定めています。C(2)は、優先期間は最初の出願の日から開始し、出願の日は期間に算入しないとし、C(3)は、末日が保護の請求される国の法定の休日等に当たるときは、その後の最初の就業日まで延長されるとしています。

C(4)は、同じ同盟国で同一の対象について後にされた出願を、一定の条件で「最初の出願」とみなす規定です。先の出願が、公衆の閲覧に付されないで、いかなる権利も存続させないで、後の出願の日までに取り下げられ、放棄され又は拒絶の処分を受け、かつ優先権の主張の基礎とされていないことが条件です。この場合、先の出願はもう優先権の主張の基礎にできません。

期間経過後の回復は「経過後2月」

どちらの優先権にも、優先期間を過ぎてしまった場合の救済があります。

優先期間を過ぎても、故意によるものでなければ経過後2月以内に限り優先権を主張できる
優先期間を過ぎても、故意によるものでなければ経過後2月以内に限り優先権を主張できる
  • 国内優先権 41条1項1号の括弧書き。後の出願が故意に1年以内にされなかったものでないと認められ、かつ経済産業省令で定める期間内にされた場合は、除外の対象から外れる。期間は、施行規則27条の4の2第1項で「優先権の主張を伴う特許出願をすることができる期間の経過後二月」
  • パリ条約による優先権 43条の2第1項。優先期間内に優先権の主張を伴う特許出願をすることができなかった者は、経済産業省令で定める期間内に出願すれば、優先期間の経過後であってもパリ条約4条の例により優先権を主張できる。ただし、故意に優先期間内に出願しなかったと認められる場合は除かれる。期間は施行規則27条の4の2第2項で「優先期間の経過後二月」

回復の要件は「故意によるものでないこと」です。特許庁によれば、期間徒過後の救済規定の回復要件は、令和3年の特許法等改正により「正当な理由があること」から「故意によるものでないこと」に緩和され、令和5年4月1日以降に期間を徒過した手続が対象です。あわせて回復手数料の納付が必要になりました。回復で優先権を主張する者は、施行規則27条の4の2第4項により回復理由書を提出します。

出典:特許庁「『故意によるものでないこと』による期間徒過後の救済について」(令和8年9月17日更新)

短答では、「優先期間の経過後であっても、正当な理由があれば主張できる」と旧要件を書いた枝や、「経過後6月」と他の救済規定の数字を混ぜた枝に注意します。

基礎にできる出願の違い

国内優先権は「自己の」「生きている」日本の出願

41条1項柱書は、基礎を「その者が特許又は実用新案登録を受ける権利を有する特許出願又は実用新案登録出願であつて先にされたもの」としています。自分が権利を持つ日本の出願であれば、特許出願だけでなく実用新案登録出願も基礎にできます。先の出願に仮専用実施権者がいるときは、その承諾が必要です(柱書ただし書)。

1項2号から5号は、基礎にできない先の出願を挙げています。

国内優先権の基礎にできるのは自己の日本の出願で、分割出願や、査定確定・設定登録済みのものは使えない
国内優先権の基礎にできるのは自己の日本の出願で、分割出願や、査定確定・設定登録済みのものは使えない
号 基礎にできない先の出願
2号 分割出願・変更出願・実用新案登録に基づく特許出願(実用新案の分割・変更出願を含む)
3号 後の出願の際に、放棄され、取り下げられ、又は却下されているもの
4号 後の出願の際に、査定又は審決が確定しているもの
5号 後の出願の際に、実用新案権の設定の登録がされているもの

3号から5号の基準時は、いずれも「その特許出願の際」です。先の出願が特許査定を受けて確定していれば4号で基礎にできません。実用新案登録出願は無審査ですぐに設定登録されるため、5号により、登録後の実用新案を基礎にすることはできません。

パリ条約は「正規の国内出願」であればよい

パリ条約4条A(1)は、いずれかの同盟国において正規に出願をした者又はその承継人が優先権を有するとし、A(2)は各同盟国の国内法令等により正規の国内出願とされるすべての出願が優先権を生じさせると定めます。A(3)によれば、正規の国内出願とは、結果のいかんを問わず、出願の日付を確定するために十分なすべての出願です。第一国出願がその後に取り下げられても、優先権は消えません。

パリ条約の優先権は出願の日付を確定できる正規の国内出願から生じ、第一国出願が後で取り下げられても消えない
パリ条約の優先権は出願の日付を確定できる正規の国内出願から生じ、第一国出願が後で取り下げられても消えない

パリ条約の同盟国ではなくWTO加盟国でした出願や、特許庁長官が指定する国での出願に基づく優先権は、43条の3がパリ条約4条の例により主張できるとしています。

効果の違い

国内優先権は41条2項の限定列挙

41条2項は、後の出願に係る発明のうち、先の出願の願書に最初に添付した明細書等に記載された発明について、列挙した規定の適用については、後の出願が先の出願の時にされたものとみなすと定めます。列挙されているのは、29条、29条の2本文、30条1項・2項、39条1項から4項まで、69条2項2号、72条、79条、81条、82条1項、104条、126条7項などです。新規性・進歩性・先願の判断だけでなく、先使用権(79条)や利用・抵触(72条)の基準時も先の出願の時になります。

一方、列挙されていない規定の基準時は、後の出願の日のままです。たとえば存続期間(67条1項)は特許出願の日から起算するので、国内優先権を主張しても先の出願の日には遡りません。

国内優先権で先の出願の時が基準になるのは41条2項に列挙された規定だけで、存続期間は遡らない
国内優先権で先の出願の時が基準になるのは41条2項に列挙された規定だけで、存続期間は遡らない

2項の括弧書きは、先の出願自体が優先権の主張を伴う出願である場合に、その先の出願の基礎とされた出願に記載された発明を効果の対象から除いています。優先権を重ねて主張しても、最初の出願の日まで何重にも遡ることはできません。

41条3項は、後の出願について特許掲載公報の発行又は出願公開がされた時に、先の出願について出願公開等がされたものとみなして、29条の2本文を適用すると定めます。先の出願は42条1項でみなし取下げになり、通常は出願公開されないまま終わるため、先の出願に書かれた発明を他人の後願に対する拡大先願として使えるようにする規定です。

パリ条約は「不利な取扱いを受けない」

パリ条約4条Bは、優先期間の満了前に他の同盟国においてされた後の出願は、その間に行われた行為、例えば他の出願、発明の公表又は実施などによって不利な取扱いを受けないとし、これらの行為は第三者のいかなる権利も生じさせないと定めます。「出願日が遡る」という書き方ではない点が、国内優先権の41条2項との表現上の違いです。

4条Fは、2以上の優先権を主張すること(複合優先)や、優先権の基礎となる出願に含まれていなかった構成部分を含むこと(部分優先)を理由に、優先権を否認し又は拒絶することはできないとしています(その国の法令上発明の単一性がある場合に限る)。4条Hは、優先権の主張に係る構成部分が最初の出願の請求の範囲に記載されていなくても、出願書類の全体により明らかにされていれば、優先権を否認できないとしています。

30条の1年はどこまで遡るか

新規性喪失の例外(30条)の「公開から1年以内」を判断するときの出願日は、2つの優先権で扱いが分かれます。審査基準は、国内優先権の主張を伴う出願で、発明が先の出願の当初明細書等に記載されている場合は優先日(ただし先の出願で証明する書面が提出されていない場合は後の出願の日)とし、パリ条約による優先権の主張を伴う出願の場合は我が国への出願日としています。

出典:特許庁「特許・実用新案審査基準」第Ⅲ部第2章第5節

30条そのものの要件は「新規性喪失の例外(特許法30条)」で整理しています。

先の出願のみなし取下げ(42条)

国内優先権に固有の規定が42条です。

国内優先権の基礎にした先の出願は先の出願の日から1年4月で取り下げたものとみなされ、パリ優先権にはこの規定がない
国内優先権の基礎にした先の出願は先の出願の日から1年4月で取り下げたものとみなされ、パリ優先権にはこの規定がない
  • 1項 優先権の主張の基礎とされた先の出願は、その出願の日から経済産業省令で定める期間を経過した時に取り下げたものとみなす
  • 2項 優先権の主張を伴う特許出願の出願人は、先の出願の日から経済産業省令で定める期間を経過した後は、その主張を取り下げることができない
  • 3項 優先権の主張を伴う特許出願が先の出願の日から経済産業省令で定める期間内に取り下げられたときは、同時に優先権の主張も取り下げられたものとみなす

3つの期間は、施行規則28条の4第2項でいずれも1年4月とされています。起算点が「後の出願の日」ではなく「先の出願の日」である点を押さえます。

1項ただし書は、みなし取下げにならない場合を挙げています。先の出願がすでに放棄・取下げ・却下されている場合、査定又は審決が確定している場合、実用新案権の設定の登録がされている場合、そして先の出願に基づく全ての優先権の主張が取り下げられている場合です。1年4月が来る前に優先権の主張をすべて取り下げれば、先の出願は生き残ります。

パリ条約による優先権には、このような規定はありません。第一国出願は第一国の法律に従って独立に扱われ、日本での優先権の主張によって取り下げられることはありません。

主張・補正・取下げの期限

国内優先権の期間の流れ
国内優先権の期間の流れ

手続の期限は、条文が「経済産業省令で定める期間」に委ねているものが多く、施行規則まで読まないと数字が出てきません。

手続 根拠 期限
優先権主張書面の提出(国内・パリ共通) 41条4項・43条1項、施行規則27条の4の2第3項1号 優先日から1年4月又は後の出願の日から4月のいずれか遅い日まで(出願審査の請求又は出願公開の請求があった後を除く)
優先権主張書面の補正 17条の4、施行規則11条の2の3 上と同じ
優先権証明書類等の提出(パリのみ) 43条2項 最先の日から1年4月以内
証明書類等の不提出の通知後 43条6項・7項、施行規則27条の3の3第5項 通知の日から2月
優先権の主張の取下げ(国内) 42条2項、施行規則28条の4第2項 先の出願の日から1年4月まで

優先権主張書面は、願書に必要な事項を記載すれば提出を省略できます(施行規則27条の4第3項)。パリ条約4条D(1)は、優先権の申立てを遅くともいつまでにしなければならないかを各同盟国が定めるとしており、日本ではこの表の期間がそれに当たります。後の出願と同時でなくても、期間内であれば優先権の主張を追加できます。

パリ条約による優先権では、43条2項の期間内に優先権証明書類等を提出しないと、4項により優先権の主張は効力を失います。ただし、6項により特許庁長官は提出がなかった旨を通知しなければならず、通知を受けた者は7項の期間内に提出できます。電磁的方法で優先権書類を交換できる場合に番号等を記載した書面を出したときは、5項により証明書類等を提出したものとみなされます。

分割出願について優先権を主張する場合は、44条3項で43条2項が「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」と読み替えられます。この点は「特許法の分割出願の要件」で扱っています。

短答で狙われる型

国内優先権の規定をパリ優先権に持ち込んだ枝や、パリ優先権の規定を国内優先権に持ち込んだ枝は誤り
国内優先権の規定をパリ優先権に持ち込んだ枝や、パリ優先権の規定を国内優先権に持ち込んだ枝は誤り

期間の起算点の入れ替え。42条の1年4月は「先の出願の日」から、優先権主張書面の期限は「優先日から1年4月又は後の出願の日から4月」です。「後の出願の日から1年4月を経過した時に先の出願は取り下げたものとみなす」とする枝は誤りです。

国内優先権の規定をパリに持ち込む。「パリ条約による優先権の主張の基礎とした第一国出願は、1年4月を経過した時に取り下げたものとみなされる」は誤りです。逆に「国内優先権の主張には優先権証明書類等の提出が必要」も誤りです。

基礎にできない先の出願。分割出願・変更出願を先の出願にする枝、後の出願の時点で特許査定が確定している出願や設定登録済みの実用新案登録出願を基礎にする枝は、41条1項2号・4号・5号で誤りです。一方、実用新案登録出願を基礎に特許出願で国内優先権を主張すること自体はできます。

効果の範囲。41条2項に列挙された規定だけが先の出願の時を基準にします。「国内優先権を主張すると、存続期間も先の出願の日から起算する」は誤りです。

回復の要件と期間。回復は優先期間の経過後2月以内で、要件は「故意によるものでないこと」です。

取下げのタイミング。1年4月を過ぎた後は、国内優先権の主張を取り下げることはできません(42条2項)。1年4月以内に後の出願を取り下げれば、主張も同時に取り下げたものとみなされます(42条3項)。

学習の進め方

2つの優先権は、条文を並べて読むのが近道です。41条・42条と43条を左右に置き、この記事の最初の表の7項目を自分で埋めてみてください。43条を読むときは、パリ条約4条A〜Fを隣に置き、43条が4条Dの手続の受け皿であることを確認します。パリ条約の優先権を条約科目の側から整理した記事は「条約の短答対策」、優先日を起算点に期限が並ぶPCTの国際段階は「PCT19条補正と34条補正の違い」で扱っています。

期間の数字は、施行規則の条文番号とセットで覚える必要はありませんが、「1年」「1年4月」「4月」「2月」の4つが、それぞれどの手続のどの起算点に付くかは表で押さえます。特許法全体の中で優先権をどこに置くかは「特許法・実用新案法の学習法」の時系列の表を参照してください。

まとめ

  • 国内優先権(41条・42条)は効果まで特許法が定め、パリ条約による優先権は権利をパリ条約4条が与え、43条は手続だけを定める
  • 優先期間はどちらも1年(12箇月)。経過後2月以内なら、故意によるものでない場合に回復できる(41条1項1号括弧書き・43条の2)
  • 国内優先権の基礎は自己の日本の特許出願・実用新案登録出願で、分割・変更出願や、後の出願の際に取下げ・査定確定・設定登録済みのものは除かれる
  • 国内優先権の効果は41条2項の列挙規定に限られ、存続期間は遡らない。パリ条約は4条Bで不利な取扱いを受けない
  • 国内優先権の先の出願は先の出願の日から1年4月でみなし取下げ、主張の取下げも1年4月まで(42条)。パリにはこの規定がない
  • 優先権主張書面の提出・補正は優先日から1年4月又は出願から4月の遅い方まで。優先権証明書類等はパリだけで、最先の日から1年4月以内
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