編集著作物とデータベースの著作物(12条・12条の2)へんしゅうちょさくぶつとでーたべーすのちょさくぶつ
編集著作物とは、編集物(データベースに該当するものを除く)でその素材の選択又は配列によって創作性を有するもの(12条1項)、データベースの著作物とは、データベースでその情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するもの(12条の2第1項)で、どちらも著作物として保護されます。
百人一首は、昔の和歌を一人が百首選んで並べたものです。一首ごとの作者はとっくに亡くなっていますが、どの歌をどう並べるかという編集には選んだ人の個性が表れます。著作権法はこの「選択と配列」そのものを編集著作物として守ります。コンピュータで検索できるように情報を体系的に組んだデータベースも、同じ考え方で「情報の選択と体系的な構成」が守られます。守られるのは並べ方の工夫であって中身の一つ一つではないので、素材を一つ抜き出して使う行為には権利が及びません。

編集著作物は素材の選択又は配列に創作性があれば成立し、素材は著作物でなくてもよく、網羅的な収集や労力の大きさでは創作性になりません
12条1項は、編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものを著作物として保護すると定めます。素材が著作物であることは要件ではなく、事実やデータを編集したものでも編集著作物になり得るので、「編集著作物に該当するためには、著作物をその素材とするものでなければならない」という枝は誤りです。素材の保護期間が満了していても差し支えなく、万葉集の「4500首以上の和歌から名作を百首選んで配列した編集物は、編集著作物として保護される」という枝は正しいです。反対に、ありふれた項目を選んで封切年の順に並べただけのリストは、「事実情報の選択・配列に創作性を認められないから著作物に該当せず」、収集に労力をかけ情報に価値があっても著作権による保護を受けられないという枝は正しいです。創作性は選択・配列に表れた編集者の個性であり、労力や価値は要件ではないからです。

データベースの著作物は情報の選択又は体系的な構成に創作性があるものに限られ、網羅的に入力して全文検索できるだけでは保護されません
データベースは、論文、数値、図形その他の情報の集合物で、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものです(2条1項10号の3)。12条の2第1項は、そのうち情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものを著作物として保護します。交通標語を網羅的に入力しただけでは情報の選択に創作性がなく、全文検索ができることは体系的な構成の創作性を基礎づけないので、「全文検索が可能であれば、データベースの著作物として保護される」という枝は誤りです。13条4号で権利の目的とならない「編集物」は12条1項の定義でデータベースを除くので、県庁が作成した条例のデータベースは13条4号に当たらず、「情報の選択又は体系的構成に創作性があれば、著作物として保護される」という枝は正しいです。
保護は選択・配列と体系的構成に及ぶだけなので、素材を1点だけ使う行為やデータを1つ複製する行為は編集著作物・データベースの著作物の利用になりません
12条2項と12条の2第2項は、編集著作物やデータベースの著作物の保護がその部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさないと定めます。編集著作物の権利は選択・配列の創作的表現に及ぶだけで、素材そのものには及びません。版画集の中から「1点を選んでポスターを作成する場合、乙のみから許諾を得ることで足りる」という枝は正しく、編集した出版社甲の許諾は要りません。データベースも同じで、「1 つのデータのみを複製することは、データベースの著作物の複製に該当しない」という枝は正しいです。データを1つ取り出すだけでは情報の選択や体系的な構成を再製したことにならないからです。なお、商品として販売されているデータベースを丸ごとコピーして販売する行為は、データの内容が商品の形態ではないので不正競争防止法2条1項3号の商品形態模倣には当たらず、「商品形態の模倣に係る不正競争にあたるとして、その販売の差止めを請求することができる」という枝は誤りです。平成30年度の枝で「同一のデータベースを販売する行為は、不正競争とならない」という枝が正しいとされたのは当時の法によるもので、現行法では限定提供データの規律(不正競争防止法2条1項11号〜16号)で受け止められます。

編集著作物の著作者は自ら選択・配列をした者であり、編集方針に意見を述べただけの者やレイアウト用紙には権利が生じません
編集著作物の著作者は、素材の選択又は配列という創作行為を自ら行った者です。判例は、収録候補を集めて提案した程度の関与は企画案ないし構想の域にとどまるとしました(智恵子抄事件)。「編集方針について相談を受けて意見を述べただけの者は、編集著作物である当該雑誌の著作者とはならない」という枝は正しいです。また、紙面の割付けのために作ったレイアウト・フォーマット用紙は編集過程の割付け方針を示すにとどまり、編集過程を離れた独自の創作的表現と認めるべき特段の事情がない限り、それ自体には著作物性が認められません(知恵蔵事件)。「レイアウト・フォーマット用紙自体が著作物となる」という枝は誤りです。
著作権法12条編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。
2 前項の規定は、同項の編集物の部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。
著作権法12条の2データベースでその情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。
2 前項の規定は、同項のデータベースの部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。
試験ではこう問われる
- 素材は著作物でなくてよい。「著作物をその素材とするものでなければならない」という枝は誤り。保護期間の満了した和歌を百首選んで配列した編集物は編集著作物
- 労力や情報の価値は要件でない。ありふれた項目を封切年順に並べたリストは創作性がなく著作物に該当しない
- 網羅的な入力+全文検索はデータベースの著作物にならない。「全文検索が可能であれば」保護されるという枝は誤り
- 13条4号の編集物はデータベースを除く。県庁が作った条例のデータベースは創作性があれば保護される
- 保護は選択・配列だけ。版画集から1点を使うなら版画家の許諾だけで足り、データベースから1つのデータを複製してもデータベースの著作物の複製でない(12条2項・12条の2第2項)
- 編集方針に意見を述べただけでは著作者でない(智恵子抄事件)。レイアウト・フォーマット用紙は別個独立の著作物にならない(知恵蔵事件)
- 販売中のデータベースの丸ごとコピーは商品形態模倣に当たらない。平成30年度の枝は当時の法で不正競争にならないとしたが、現行法は限定提供データで受ける
この用語が問われた枝
万葉集に収められた4500首以上の和歌から名作を百首選んで配列した編集物は、編集著作物として保護される。
編集著作物に該当するためには、著作物をその素材とするものでなければならない。
小説の映画化に関する事項に関し、題名、封切年、製作会社名、監督名、脚本作成者名、主な出演者名を項目として選択し、封切年の順序に従って配列して整理・編集したリストは、事実情報の選択・配列に創作性を認められないから著作物に該当せず、事実情報の収集に相当の労を費やし、その情報に高い価値があったとしても、著作権による保護を受けることはできない。
交通標語を網羅的に入力しただけのデータベースであっても、全文検索が可能であれば、データベースの著作物として保護される。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。