国際登録出願(本国官庁としての特許庁。68条の2〜68条の8)こくさいとうろくしゅつがん
国際登録出願とは、日本国民又は日本国内に住所若しくは居所(法人にあっては営業所)を有する外国人が、特許庁に係属している自己の商標登録出願若しくは防護標章登録出願、又は自己の商標登録若しくは防護標章登録を基礎として、マドリッド協定の議定書による国際登録を受けるために本国官庁である特許庁の長官にする出願です(68条の2第1項)。特許庁長官は願書を国際事務局に送付し、国際登録の後は事後指定・存続期間の更新の申請・名義人の変更の記録の請求も特許庁長官を通じてできます。
日本で商標登録を持つ会社が、フランスと中国でも同じ商標を守りたいとします。国ごとに出願すると言語も手数料も代理人も別々になります。マドリッド協定の議定書は、本国の出願や登録を土台に、国際事務局に一つの国際登録をしてもらい、そこから保護を求める締約国を指定する仕組みです。日本の特許庁はこのとき本国官庁になり、商標法68条の2からの規定が、誰がどんな基礎で特許庁長官に国際登録出願をできるのか、国際登録の後の手続のどこまでを特許庁長官を通じてできるのかを定めます。

国際登録出願ができるのは日本国民又は日本国内に住所若しくは居所を有する外国人で、基礎は特許庁に係属している自己の商標登録出願等か自己の商標登録等です
68条の2第1項は、出願人を「日本国民又は日本国内に住所若しくは居所(法人にあつては、営業所)を有する外国人」とし、基礎を「特許庁に係属している自己の商標登録出願又は防護標章登録出願」(1号)と「自己の商標登録又は防護標章登録」(2号)に限ります。本国官庁は、その国に根拠のある者の、その国の出願又は登録を土台にして国際事務局へ取り次ぐ役割だからです。防護標章登録出願も防護標章登録も条文に明記されているので、「自己の防護標章登録を基礎として国際登録出願をすることはできない」という枝も、「自己の防護標章登録出願を基礎として国際登録出願をすることはできない」という枝も誤りです。二人以上が共同して国際登録出願をすることは経済産業省令で定める要件に該当するときにできますが、各出願人がこの資格を満たしていなければなりません。日本法人と日本国内に営業所を有しない外国法人が商標登録を共有しているとき、その外国法人は資格を欠くので、「共同して当該商標登録を基礎として国際登録出願をすることができる」という枝は誤りです。名義人の変更で新たに複数の者が名義人になる場合も同じで、「複数の者が新たな名義人となるためには、全ての者が国際登録出願をする資格を有することが必要である」という枝は正しいです。願書は経済産業省令で定めるところにより外国語で作成し(同条2項)、保護を求める議定書の締約国の国名と、保護を求める商品又は役務並びに6条2項の政令で定める商品及び役務の区分を記載します(同条3項)。

- 出願人日本国民、又は日本国内に住所若しくは居所(法人は営業所)を有する外国人です。共同出願は全員にこの資格が要ります
- 基礎特許庁に係属している自己の商標登録出願・防護標章登録出願(1号)、又は自己の商標登録・防護標章登録(2号)です
- 願書外国語で作成し、保護を求める締約国の国名と、保護を求める商品又は役務並びに区分を記載します
- 提出先特許庁長官です。特許庁は本国官庁として願書を国際事務局に送付します
特許庁長官は願書を国際事務局に送付し、受理の日から2月以内に国際事務局が受け取れば特許庁が受理した日が国際登録の日になります
特許庁長官は国際登録出願の願書及び必要な書面を国際事務局に送付しなければなりません(68条の3第1項)。その際、願書の記載事項と基礎とした商標登録出願等又は商標登録等の記載事項が一致するときは、その旨と国際登録出願の受理の日を願書に記載し(同条2項)、送付した願書の写しを出願人に送付します(同条3項)。本国官庁が一致を確かめて受理の日を証明するのは、議定書3条(4)が、本国官庁の受理の日から2月以内に国際事務局が国際出願を受理したときはその受理の日を国際登録の日とするからです。したがって、「その国際登録出願が2月以内に国際事務局に送付されたときは、特許庁が当該国際登録出願を受理した日が国際登録の日として国際登録簿に記録される」という枝は正しいです。国際登録の日は、日本を指定した領域指定が商標登録出願とみなされる日にもなるので(68条の9第1項)、この2月の意味は大きいです。

事後指定、国際登録の存続期間の更新の申請、国際登録の名義人の変更の記録の請求は、特許庁長官にすることも国際事務局に直接することもできます
国際登録の後の手続のうち、商標法は三つを特許庁長官を通じてできるものとして置きます。国際登録の名義人は、国際登録後の領域指定である事後指定を特許庁長官にすることができ(68条の4)、国際登録の存続期間の更新の申請を特許庁長官にすることができ(68条の5)、名義人又はその譲受人は国際登録の名義人の変更の記録の請求を特許庁長官にすることができます(68条の6第1項)。いずれも「することができる」であって、国際事務局に直接することを妨げません。三つのうち名義人の変更だけを除く理由はないので、「国際登録の名義人の変更の記録の請求については国際事務局に対してのみ行うことができる」という枝は誤りです。名義人の変更の記録の請求は、国際登録において指定された商品若しくは役務ごと、又は国際登録が効力を有する締約国ごとにすることができます(68条の6第2項)。議定書9条も商品及びサービスの一部についての名義人の変更を認めるので、「指定された商品及びサービスの一部についてすることはできない」という枝は誤りです。特許庁長官を経由した事後指定は、共通規則により原則として特許庁長官が受理した日が事後指定の記録日になるので、「原則として、特許庁長官がその受理をした日が事後指定の記録日となる」という枝は正しいです。

更新の申請は特許庁長官にできますが、期間を過ぎた更新を国内法で救う規定はなく、満了6月前の非公式の通報をするのは本国官庁ではなく国際事務局です
国際登録の存続期間は議定書7条(1)により満了の時から10年ごとに更新しますが、更新そのものは国際登録簿で行われるものなので、商標法は特許庁長官を窓口にする68条の5を置くだけで、国内の更新登録の規定(19条から22条まで)は国際登録に基づく商標権に適用しません(68条の22第1項)。国際登録の存続期間の更新がなかったときは、国際登録に基づく商標権は満了の時にさかのぼって消滅したものとみなされます(68条の21第4項)。期間内に更新の申請をしなかった場合に「経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、当該更新の申請をすることができる」という枝は、消滅したものとみなされた商標権の回復(21条1項)を国際登録に当てはめたもので、誤りです。存続期間が満了する6月前に、名義人と代理人に満了の正確な日付を非公式に通報するのは議定書7条(3)により国際事務局の仕事です。「本国官庁は、国際登録の名義人及びその代理人がある場合には当該代理人に対し、国際登録の存続期間が満了する6月前に非公式の通報を行う」という枝は、主体を本国官庁に置き換えているので誤りです。
国際登録出願等をする者は手数料を納付しなければならず、納付しないときは補正を命じ、補正がなければ特許庁長官は手続を却下できます
特許庁長官に国際登録出願をする者、事後指定をする者、国際登録の存続期間の更新の申請をする者、国際登録の名義人の変更の記録の請求をする者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納付しなければなりません(76条1項3号から6号まで)。68条の7は、77条2項で準用する特許法17条3項(3号に係る部分に限ります)と18条1項をこれら四つの手続に準用するので、手数料を納付しないときは特許庁長官が補正を命じ、指定した期間内に補正をしないときはその手続を却下することができます。「指定した期間内にその補正をしない場合には、当該手続を却下することができる」という枝は正しいです。手続の中身は議定書と議定書に基づく規則で動くので、商標法が定めるのはこの方式面と、細目を経済産業省令に委ねること(68条の8)までです。議定書の側の要件、すなわち国際出願の資格、国際登録の日、領域指定の効果、セントラルアタックとトランスフォーメーションは、条約の用語集で扱います。
商標法68条の2第1項日本国民又は日本国内に住所若しくは居所(法人にあつては、営業所)を有する外国人であつて標章の国際登録に関するマドリッド協定の千九百八十九年六月二十七日にマドリッドで採択された議定書(以下「議定書」という。)第二条(1)に規定する国際登録(以下「国際登録」という。)を受けようとする者は、特許庁長官に次の各号のいずれかを基礎とした議定書第二条(2)に規定する出願(以下「国際登録出願」という。)をしなければならない。この場合において、経済産業省令で定める要件に該当するときには、二人以上が共同して国際登録出願をすることができる。
一 特許庁に係属している自己の商標登録出願又は防護標章登録出願(以下「商標登録出願等」という。)
二 自己の商標登録又は防護標章登録(以下「商標登録等」という。)
商標法68条の4国際登録の名義人は、経済産業省令で定めるところにより、議定書第三条の三に規定する領域指定(以下「領域指定」という。)であつて国際登録後のもの(以下「事後指定」という。)を特許庁長官にすることができる。
商標法68条の6第2項前項に規定する請求は、国際登録において指定された商品若しくは役務ごと又は国際登録が効力を有する締約国ごとにすることができる。
試験ではこう問われる
- 基礎には防護標章登録出願・防護標章登録も入る。「自己の防護標章登録を基礎として国際登録出願をすることはできない」という枝は誤り(68条の2第1項1号・2号)
- 共同出願は全員に資格が要る。日本法人と国内に営業所のない外国法人が「共同して当該商標登録を基礎として国際登録出願をすることができる」という枝は誤り
- 名義人の変更で複数の者が名義人になるときも全員に資格が要る。「全ての者が国際登録出願をする資格を有することが必要である」という枝は正しい
- 特許庁の受理の日から2月以内に国際事務局が受理すれば、特許庁が受理した日が国際登録の日(議定書3条(4))。「特許庁が当該国際登録出願を受理した日が国際登録の日として国際登録簿に記録される」という枝は正しい
- 事後指定・更新の申請・名義人の変更の記録の請求はどれも特許庁長官にできる(68条の4〜68条の6)。「国際登録の名義人の変更の記録の請求については国際事務局に対してのみ行うことができる」という枝は誤り
- 名義人の変更は商品若しくは役務ごと、締約国ごとにできる(68条の6第2項・議定書9条)。「指定された商品及びサービスの一部についてすることはできない」という枝は誤り
- 更新を徒過した国際登録に国内法の救済はない(68条の22第1項が19条〜22条を適用しない)。満了6月前の非公式の通報は国際事務局がする(議定書7条(3))
- 手数料不納は補正命令の後に却下(68条の7、77条2項→特許法17条3項3号・18条1項)。「当該手続を却下することができる」という枝は正しい
この用語が問われた枝
日本国民は、日本国特許庁に係属している自己の商標登録出願を基礎として国際登録出願をすることができるが、自己の防護標章登録を基礎として国際登録出願をすることはできない。
国際登録の名義人は、経済産業省令で定めるところにより国際登録の存続期間の更新の申請を特許庁長官にすることができるが、当該更新の申請をすることができる期間内にその申請をしなかったため国際登録に基づく商標権が消滅したものとみなされた場合であっても、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、当該更新の申請をすることができる。
日本国の商標登録が日本法人と日本国内に営業所を有しない外国法人の共有に係るものであった場合、当該日本法人及び当該外国法人は、共同して当該商標登録を基礎として国際登録出願をすることができる。
国際登録の名義人の変更は、国際登録が領域内で効力を有する締約国の一部についてすることはできるが、指定された商品及びサービスの一部についてすることはできない。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。