特許庁長官は、審査官に商標登録出願を審査させなければならない。
審査官は、商標登録出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
1 その商標登録出願に係る商標が第三条、第四条第一項、第七条の二第一項、第八条第二項若しくは第五項、第五十一条第二項(第五十二条の二第二項において準用する場合を含む。)、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条の規定により商標登録をすることができないものであるとき。
2 その商標登録出願に係る商標が条約の規定により商標登録をすることができないものであるとき。
3 その商標登録出願が第五条第五項又は第六条第一項若しくは第二項に規定する要件を満たしていないとき。
この条文が問われた枝 5問
誤り。違うのは「拒絶理由だけではなく、無効理由にも該当する」の部分である。区分に従って指定していないこと(6条2項違反)は15条3号の拒絶理由であるが、46条1項の無効理由には挙げられていない。
6条2項は、指定商品又は指定役務の指定は政令で定める商品及び役務の区分に従ってしなければならないと定め、15条3号は、出願が5条5項又は6条1項若しくは2項に規定する要件を満たしていないときを拒絶理由とする。一方、46条1項は無効理由を各号に列挙するが、出願の要件に関するものは5条5項の要件を満たしていない出願に対して登録がされたとき(3号)だけで、6条1項の一商標一出願と6条2項の区分に従った指定の違反は置かれていない。商品及び役務の区分は審査と登録料の算定のための事務上の整理であって、登録後の商標権の範囲は指定商品又は指定役務そのもので決まり、区分の誤りが第三者の利益を害するものではないから、審査で直させれば足り、登録後に遡って無効にするまでの瑕疵とはされていない。これに対し5条5項違反は商標が特定されていないという権利の内容に関わる瑕疵であるため無効理由に入っている。枝は6条2項違反を無効理由にも該当するとしており、46条1項の列挙と食い違う。

その商標登録が第五条第五項に規定する要件を満たしていない商標登録出願に対してされたとき。
- 三つすべてに入るもの:3条・4条1項・7条の2第1項・8条2項5項・51条2項・53条2項・特許法25条の違反、条約違反、5条5項違反
- 拒絶理由に無く、異議・無効にあるもの:8条1項違反
- 拒絶理由にだけあるもの:6条1項・2項違反
- 無効理由にだけあるもの:冒認(46条1項4号)と、登録後に生じた後発的な無効理由(46条1項5号〜7号)
正しい。68条の34第2項が旧国際登録に係る商標権の再出願に適用しないとするのは15条1号・2号だけで、5条5項の要件を欠くときの3号は適用されるから、音の商標の詳細な説明が商標を特定しないときは拒絶される。
68条の34第2項は、国際登録に係る商標権であったものについての68条の32第1項の商標登録出願、すなわち旧国際登録に係る商標権の再出願については、15条のうち1号及び2号に係る部分の規定は適用しないと定める。既に日本で商標権が設定されていた商標は登録要件と条約の規定の実体審査を済ませているから、再出願で同じ審査を繰り返さない趣旨である。しかし5条5項が求める、商標の詳細な説明や物件が商標登録を受けようとする商標を特定するものであることは、再出願の願書そのものが備えるべき形式であり、国際登録の段階で確認されたものではないため、15条3号は除外されていない。したがって音の商標について5条4項の詳細な説明が音の商標の内容を特定するものでないときは、5条5項の要件を満たさないとして15条3号により拒絶される。

国際登録に係る商標権であつたものについての第六十八条の三十二第一項又は前条第一項の規定による商標登録出願(第六十八条の三十七及び第六十八条の三十九において「旧国際登録に係る商標権の再出願」という。)については、第十五条(第一号及び第二号に係る部分に限る。)の規定は、適用しない。
誤り。違うのは「それを理由として当該出願は拒絶される」の部分である。68条の34第2項により、旧国際登録に係る商標権の再出願には15条2号の条約違反を理由とする拒絶は適用されない。
68条の34第2項は、国際登録に係る商標権であったものについての68条の32第1項又は68条の33第1項の規定による商標登録出願について、15条の1号及び2号に係る部分の規定は適用しないと定める。15条1号は3条、4条1項などの登録要件違反、2号は条約の規定により商標登録をすることができないときをそれぞれ拒絶理由とするが、国際登録に係る商標権であったものは既にこれらの点の審査を経て設定の登録まで達しており、基礎出願や基礎登録の消滅という商標の実体と関係のない事情で取り消された後の再出願について、同じ審査をやり直す理由がない。そこで法は再出願を審査する際に1号と2号の拒絶理由を外し、5条5項や6条の出願の形式に関する3号と、68条の34第1項が加える再出願の要件だけを審査の対象とした。したがって条約の規定により商標登録をすることができないものであることを理由に拒絶されることはない。

その商標登録出願に係る商標が条約の規定により商標登録をすることができないものであるとき。
| 項目 | 通常の商標登録出願 | 旧国際登録に係る商標権の再出願 |
|---|---|---|
| 15条1号・2号(登録要件・条約) | 適用する | 適用しない(68条の34第2項) |
| 15条3号(5条5項・6条) | 適用する | 適用する |
| 設定の登録 | 登録料の納付があったとき(18条2項) | 国際登録の日から10年以内に査定又は審決があれば登録料なしでされる(68条の35) |
| 存続期間 | 設定の登録の日から10年(19条1項) | 国際登録の日(更新があれば直近の更新の日)から10年(68条の36) |
| 登録異議の申立て | 商標掲載公報の発行の日から2月以内 | もとの登録について申立てなく期間が過ぎていれば対象にならない(68条の37) |
| 無効審判の除斥期間 | 設定の登録の日から5年 | もとの登録について請求できなくなっていれば請求できない(68条の39) |
正しい。6条1項・2項の要件を満たさない出願は15条3号の拒絶理由になるが、43条の2第1項と46条1項は6条を挙げていないので、登録異議の申立ての理由にも無効理由にもならない。
6条1項は、商標登録出願は商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務を指定して商標ごとにしなければならないと定め、2項はその指定を政令で定める商品及び役務の区分に従ってすることを求める。15条3号は、商標登録出願が5条5項又は6条1項若しくは2項に規定する要件を満たしていないときを拒絶理由とするので、一商標一出願の原則に違反する出願は審査で拒絶される。しかし43条の2第1項が列挙する登録異議の申立ての理由と46条1項が列挙する無効理由は、1号の3条・4条1項などの違反、2号の条約違反、3号の5条5項の要件を満たしていない出願に対する登録であり、6条は含まれていない。一商標一出願は審査と権利の範囲を整理するための出願の形式に関する要件であり、違反したまま登録されても第三者の利益を直接害するものではないので、登録後に蒸し返す理由としては残さない趣旨である。同じ15条3号でも5条5項の違反は異議理由にも無効理由にもなる点が対比になる。

その商標登録出願が第五条第五項又は第六条第一項若しくは第二項に規定する要件を満たしていないとき。
| 違反 | 拒絶理由(15条) | 登録異議の申立ての理由(43条の2) | 無効理由(46条) |
|---|---|---|---|
| 3条・4条1項・条約違反 | なる | なる | なる |
| 5条5項(商標の特定) | なる | なる | なる |
| 6条1項・2項(一商標一出願・区分) | なる | ならない | ならない |
| 8条1項(先願) | ならない | なる | なる |
| 冒認(46条1項4号) | ならない | ならない | なる |
正しい。15条1号が拒絶理由として挙げる先願の規定は8条2項と5項だけで8条1項は含まれないが、43条の2第1号と46条1項1号は8条1項違反を登録異議の申立ての理由と無効理由に挙げている。
15条1号は、商標登録出願に係る商標が3条、4条1項、7条の2第1項、8条2項若しくは5項などの規定により商標登録をすることができないものであるときを拒絶の査定をすべき場合として挙げ、異なった日の先願について定める8条1項を含めていない。異なった日に出願があれば先の出願が先に登録され、後の出願は4条1項11号の先願登録商標との抵触で拒絶できるので、審査の段階で8条1項を別に拒絶理由にする必要がないからである。これに対し、43条の2第1号と46条1項1号は、商標登録が8条1項、2項若しくは5項の規定に違反してされたことを登録異議の申立ての理由と無効理由に挙げる。先の出願の登録前に後の出願が誤って先に登録された場合、登録後の是正は11号では捉えられず、8条1項違反として取り消し、又は無効にする道が要るからである。したがって、8条1項違反は異議の理由と無効理由になるが拒絶理由にはならないとする枝は正しい。同日出願について定める8条2項・5項は三つすべてに入る。

その商標登録出願に係る商標が第三条、第四条第一項、第七条の二第一項、第八条第二項若しくは第五項、第五十一条第二項(第五十二条の二第二項において準用する場合を含む。)、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条の規定により商標登録をすることができないものであるとき。
- 三つすべてに入るもの:3条・4条1項・7条の2第1項・8条2項5項・51条2項・53条2項・特許法25条の違反、条約違反、5条5項違反である
- 拒絶理由に無く、異議・無効にあるもの:8条1項違反である
- 拒絶理由にだけあるもの:6条1項・2項違反である
- 無効理由にだけあるもの:冒認(46条1項4号)と、登録後に生じた後発的な無効理由(46条1項5号〜7号)である
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、商標登録出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。
この条文が問われた枝 3問
誤り。違うのは「事件が審査に係属している場合には、いつでも、願書に記載した指定商品又は指定役務について補正をすることができる」の部分である。68条の28第1項により、国際商標登録出願の指定商品又は指定役務の補正は、拒絶理由の通知を受けた後に限られる。
68条の28第1項は、国際商標登録出願については、15条の2又は15条の3の規定による通知を受けた後は、事件が審査、審判又は再審に係属している場合に限り、願書に記載した指定商品又は指定役務について補正をすることができると定める。国際商標登録出願は、国際登録簿に記録された事項が願書の記載とみなされる出願であり、出願人が日本の特許庁で自由に内容を直すことは予定されていない。指定商品又は指定役務の減縮は国際事務局への限定の申請で行うのが本来の手続であるが、拒絶理由を解消するために日本の審査の中で削る必要もあるので、拒絶理由の通知を受けた後に限って補正を認めたものである。したがって審査に係属していても、拒絶理由の通知を受ける前は指定商品又は指定役務の補正ができず、いつでもできるという枝は誤りである。国内の商標登録出願が68条の40第1項により審査に係属していればいつでも補正できるのと対比される。商標そのものについては、国際商標登録出願ではいかなる補正もできない。

国際商標登録出願については、第十五条の二(第五十五条の二第一項(第六十条の二第二項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)又は第十五条の三(第五十五条の二第一項(第六十条の二第二項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定による通知を受けた後は、事件が審査、審判又は再審に係属している場合に限り、願書に記載した指定商品又は指定役務について補正をすることができる。
| 商標登録出願 | 国際商標登録出願 | |
|---|---|---|
| 出願の日 | 願書の提出日(5条の2) | 国際登録の日、事後指定なら事後指定の日(68条の9第1項) |
| 分割・変更 | 10条・11条・65条でできる | どちらもできない(68条の12・68条の13) |
| 指定商品又は指定役務の補正 | 審査等に係属していればできる(68条の40) | 拒絶理由の通知を受けた後に限る(68条の28第1項) |
誤り。違うのは「改めて、商標法第15条の2における拒絶理由の通知をしなければならない」の部分である。15条の3第1項の通知が既にされていれば、先願の商標が登録されたときに15条の2の通知をすることを要しない。
15条の3第1項は、商標登録出願に係る商標が、その出願の日前の商標登録出願に係る他人の商標又はこれに類似する商標であって、同一又は類似の商品若しくは役務について使用をするものであるときは、審査官は出願人に対し、当該他人の商標が商標登録されることにより当該出願が15条1号に該当することとなる旨を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えることができると定める。先願が未登録の段階では4条1項11号の拒絶理由はまだ成立しておらず通常の拒絶理由の通知ができないため、先回りして応答の機会を与えるのがこの通知である。そして同条2項は、この通知が既にされている場合であって当該他人の商標が商標登録されたときは、前条の通知をすることを要しないと定める。すでに同じ内容について意見を述べる機会を得ているからである。枝の前段は正しいが、登録後に改めて拒絶理由の通知をしなければならないとする後段がこの2項とずれている。

前項の通知が既にされている場合であつて、当該他人の商標が商標登録されたときは、前条の通知をすることを要しない。
誤り。違うのは「第14条(審査官による審査)及び同法第15条の2(拒絶理由の通知)の規定が準用されていない」の部分である。65条の5は、14条と15条の2を防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願の審査に準用している。
65条の5は、14条及び15条の2並びに特許法48条(審査官の除斥)及び52条(査定の方式)の規定を、防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願の審査に準用すると定める。商標権の存続期間の更新が登録料の納付を伴う申請で済むのに対し、防護標章登録に基づく権利の更新が出願とされているのは、65条の2第2項ただし書のとおり、登録防護標章が64条の要件、すなわち登録商標の周知性と混同のおそれを依然として満たしているかを更新の時点で改めて審査官が審査するからである。審査がある以上、審査官による審査を定める14条と、拒絶の査定をする前に理由を通知して意見書の機会を与える15条の2が働く必要があり、65条の5がそれを準用している。したがって、これらの規定が準用されていないとする枝は条文とずれている。防護標章登録出願そのものの審査には、68条2項が14条から17条の2までを準用する。

第十四条及び第十五条の二並びに特許法第四十八条(審査官の除斥)及び第五十二条(査定の方式)の規定は、防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願の審査に準用する。
1審査官は、商標登録出願に係る商標が、当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の商標又はこれに類似する商標であつて、その商標に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするものであるときは、商標登録出願人に対し、当該他人の商標が商標登録されることにより当該商標登録出願が第十五条第一号に該当することとなる旨を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えることができる。
2前項の通知が既にされている場合であつて、当該他人の商標が商標登録されたときは、前条の通知をすることを要しない。
この条文が問われた枝 1問
誤り。違うのは「改めて、商標法第15条の2における拒絶理由の通知をしなければならない」の部分である。15条の3第1項の通知が既にされていれば、先願の商標が登録されたときに15条の2の通知をすることを要しない。
15条の3第1項は、商標登録出願に係る商標が、その出願の日前の商標登録出願に係る他人の商標又はこれに類似する商標であって、同一又は類似の商品若しくは役務について使用をするものであるときは、審査官は出願人に対し、当該他人の商標が商標登録されることにより当該出願が15条1号に該当することとなる旨を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えることができると定める。先願が未登録の段階では4条1項11号の拒絶理由はまだ成立しておらず通常の拒絶理由の通知ができないため、先回りして応答の機会を与えるのがこの通知である。そして同条2項は、この通知が既にされている場合であって当該他人の商標が商標登録されたときは、前条の通知をすることを要しないと定める。すでに同じ内容について意見を述べる機会を得ているからである。枝の前段は正しいが、登録後に改めて拒絶理由の通知をしなければならないとする後段がこの2項とずれている。

前項の通知が既にされている場合であつて、当該他人の商標が商標登録されたときは、前条の通知をすることを要しない。
審査官は、政令で定める期間内に商標登録出願について拒絶の理由を発見しないときは、商標登録をすべき旨の査定をしなければならない。
この条文が問われた枝 2問
正しい。国際商標登録出願についての16条の政令で定める期間は、領域指定の通報が行われた日から1年6月であり(商標法施行令3条2項)、その期間内に拒絶の理由を発見しないときは商標登録をすべき旨の査定をしなければならない。
16条は、審査官は政令で定める期間内に拒絶の理由を発見しないときは商標登録をすべき旨の査定をしなければならないと定め、その期間は商標法施行令3条が定める。通常の商標登録出願では出願の日から1年6月であるが、同条2項は、68条の9第1項により商標登録出願とみなされた領域指定については、領域指定の通報が行われた日から1年6月とする。議定書5条(2)で日本が宣言した拒絶の通報の期限(通報の日から18月)に国内の査定の期間を合わせたものである。かっこ書は、国際事務局から国際登録簿に登録された事項についての更正の通報で経済産業省令で定めるものが行われ、その事項について拒絶の理由を通知するときに限り、起算日を更正の通報の日に置き直す。更正の通報がない枝では、起算日は領域指定の通報の日であり、1年6月の期間内に拒絶の理由を発見しないときは商標登録をすべき旨の査定をしなければならない。

前項の規定にかかわらず、商標法第六十八条の九第一項の規定により商標登録出願とみなされた領域指定に係る同法第十六条の政令で定める期間は、標章の国際登録に関するマドリッド協定の千九百八十九年六月二十七日にマドリッドで採択された議定書第三条の三に規定する領域指定の通報が行われた日(商標法第六十八条の二第五項に規定する国際事務局から同法第六十八条の九第一項に規定する国際登録簿に登録された事項についての更正の通報で経済産業省令で定めるものが行われた場合であつて、当該更正の通報に係る事項について拒絶の理由を審査官が通知するときは、当該更正の通報が行われた日)から一年六月とする。
正しい。55条の2第2項は、拒絶査定不服審判の請求を理由があるとする場合に16条を準用して登録審決を求めつつ、ただし書で特許法160条1項によりさらに審査に付すべき旨の審決をするときを除いている。
55条の2第2項は、16条の規定を44条1項の審判の請求を理由があるとする場合に準用し、ただし書で、56条1項において準用する特許法160条1項の規定によりさらに審査に付すべき旨の審決をするときはこの限りでないと定める。16条は、政令で定める期間内に拒絶の理由を発見しないときは登録査定をしなければならないと定める規定であり、審判に準用されると、請求に理由がある場合に、審判官が政令で定める期間内に原査定の理由と異なる拒絶の理由を発見しないときは、商標登録をすべき旨の審決をしなければならないことになる。もっとも特許法160条1項は、拒絶査定不服審判において査定を取り消すときはさらに審査に付すべき旨の審決をすることができると定めており、審判で審理を尽くすより審査官に差し戻す方が適切な場合には登録審決ではなく差戻しの審決ができる。本枝はこの原則とただし書をそのまま述べており、正しい。

第十六条の規定は、第四十四条第一項の審判の請求を理由があるとする場合に準用する。ただし、第五十六条第一項において準用する特許法第百六十条第一項の規定によりさらに審査に付すべき旨の審決をするときは、この限りでない。
1願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものであるときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。
2前項の規定による却下の決定は、文書をもつて行い、かつ、理由を付さなければならない。
3第一項の規定による却下の決定があつたときは、決定の謄本の送達があつた日から三月を経過するまでは、当該商標登録出願について査定をしてはならない。
4審査官は、商標登録出願人が第一項の規定による却下の決定に対し第四十五条第一項の審判を請求したときは、その審判の審決が確定するまでその商標登録出願の審査を中止しなければならない。
この条文が問われた枝 3問
誤り。違うのは「要旨を変更するものとして却下されることはない」の部分である。第35類の小売等役務を第3類の商品「化粧品」に変更する補正は要旨の変更であり、16条の2第1項により決定をもって却下される。
16条の2第1項は、願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものであるときは、審査官は決定をもってその補正を却下しなければならないと定める。要旨の変更を認めないのは、出願日を基準に先後願や権利範囲が定まる仕組みの中で、出願後に保護の対象をすり替えることを許すと第三者が出願時の願書を信頼できなくなるからである。2条2項は小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供を役務に含めるものとし、小売等役務は商品とは別の保護対象である。したがって第35類の小売等役務を第3類の「化粧品」に変えることは役務を商品に置き換える指定の実質的な変更であり、商標審査基準も小売等役務と商品との間の変更を要旨の変更として扱う。却下されることはないとする枝は、役務と商品を同じ指定の範囲内の言い換えと見た点が誤りである。

願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものであるときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。
- 補正できる時期(68条の40第1項):事件が審査、登録異議の申立てについての審理、審判又は再審に係属している場合に限る。審決取消訴訟の係属中はできない
- 登録料の納付と同時の補正(68条の40第2項):区分の数を減ずる補正だけは、登録料の納付と同時にできる
- 要旨を変更する補正(16条の2第1項):審査官が決定をもって却下する。指定商品を広げる変更、商品と小売等役務の間の変更はいずれも要旨の変更である
- 却下後の扱い(16条の2第3項・4項):決定の謄本の送達の日から3月を経過するまで査定をしない。45条1項の審判を請求したときは審決が確定するまで審査を中止する
誤り。違うのは「その決定の謄本の送達があった日から3月以内に審判を請求することができる」の部分である。拒絶査定不服審判の中でされた補正の却下の決定に対する不服は、45条1項の審判ではなく、63条1項の東京高等裁判所への訴えであり、期間も30日である。
55条の2第3項は、16条の2を44条1項の拒絶査定不服審判に準用し、その際、16条の2第3項の「三月」を「三十日」と、同条4項の「第四十五条第一項の審判を請求したとき」を「第六十三条第一項の訴えを提起したとき」と読み替える。63条1項も、55条の2第3項において準用する16条の2第1項の規定による却下の決定に対する訴えを東京高等裁判所の専属管轄として掲げる。審査官の補正の却下の決定には45条1項の審判で争う道があるが、審判官の合議体がした却下の決定を再び特許庁の審判で争わせる意味はなく、審決と同様に裁判所で争わせるのが筋であるから、審判係属中の補正の却下については裁判所への出訴に置き換えたものである。出訴期間は63条2項で準用する特許法178条3項により決定の謄本の送達があった日から30日である。したがって請求人は審判を請求することはできず、東京高等裁判所に訴えを提起することになる。

第十六条の二及び意匠法第十七条の三の規定は、第四十四条第一項の審判に準用する。この場合において、第十六条の二第三項及び同法第十七条の三第一項中「三月」とあるのは「三十日」と、第十六条の二第四項中「第四十五条第一項の審判を請求したとき」とあるのは「第六十三条第一項の訴えを提起したとき」と読み替えるものとする。
| 却下の場面 | 不服の手段 | 期間 |
|---|---|---|
| 審査(16条の2) | 45条1項の審判 | 謄本送達から3月。補正後の商標について新出願をすれば審判は請求できない(意匠法17条の3の準用) |
| 拒絶査定不服審判(55条の2第3項) | 63条1項の東京高等裁判所への訴え | 謄本送達から30日に読み替える |
誤り。違うのは「3月を経過しなくても、当該商標登録出願について査定を行うことができる」の部分である。補正の却下の決定があったときは、決定の謄本の送達があった日から3月を経過するまでは査定をしてはならない(16条の2第3項)。
16条の2第3項は、1項の規定による却下の決定があったときは、決定の謄本の送達があった日から3月を経過するまでは、当該商標登録出願について査定をしてはならないと定める。3月は、却下の決定を受けた出願人が45条1項の補正却下決定不服審判を請求するか、17条の2第1項で準用する意匠法17条の3第1項の新たな商標登録出願をするかを選ぶために与えられた期間であり、その間に査定がされてしまえば、審判や新たな出願によって補正の内容を生かす道が閉ざされるおそれがあるため、審査官の査定を一律に待たせている。条文は、出願人がその後に要旨を変更しない適切な補正をしたかどうかで区別しておらず、新たな補正があっても、出願人が却下の決定を争う可能性は残っている以上、3月の経過を待たずに査定をすることはできない。出願人が審判を請求すれば、さらに同条4項によりその審決が確定するまで審査は中止される。

第一項の規定による却下の決定があつたときは、決定の謄本の送達があつた日から三月を経過するまでは、当該商標登録出願について査定をしてはならない。
特許法第四十七条第二項(審査官の資格)、第四十八条(審査官の除斥)、第五十二条(査定の方式)及び第五十四条(訴訟との関係)の規定は、商標登録出願の審査に準用する。
1意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)第十七条の三(補正後の意匠についての新出願)の規定は、第十六条の二第一項の規定により、決定をもつて補正が却下された場合に準用する。
2意匠法第十七条の四の規定は、前項又は第五十五条の二第三項(第六十条の二第二項において準用する場合を含む。)において準用する同法第十七条の三第一項に規定する期間を延長する場合に準用する。
この条文が問われた枝 3問
誤り。違うのは「常に商標法第8条第1項の無効理由を有する」の部分である。新たな出願は手続補正書を提出した時にしたものとみなされて後願になるが、先願が8条3項で初めからなかったものとみなされる場合や、1項ただし書の承諾があり混同のおそれがない場合には同項に違反しない。
17条の2第1項で準用する意匠法17条の3第1項により、補正の却下の決定の謄本の送達があった日から3月以内に補正後の商標について新たな商標登録出願をしたときは、その出願は手続補正書を提出した時にしたものとみなされる。同日に出願された他方の出願との関係では、新たな出願の日は手続補正書の提出時まで繰り下がるので、8条2項の同日出願ではなく8条1項の異なった日の出願となり、最先の出願人である他方のみが登録を受けられるのが原則である。しかし8条3項は、出願が放棄され取り下げられ若しくは却下されたとき、又は査定若しくは審決が確定したときは、その出願を8条1項・2項の適用については初めからなかったものとみなすので、他方の出願が拒絶査定の確定などで消えていれば8条1項に違反することは無い。さらに8条1項ただし書により、先出願人の承諾を得ており混同を生ずるおそれがなければ後出願人も登録を受けられる。したがって、常に8条1項の無効理由(46条1項1号)を有するとは言えない。

意匠登録出願人が前条第一項の規定による却下の決定の謄本の送達があつた日から三月以内にその補正後の意匠について新たな意匠登録出願をしたときは、その意匠登録出願は、その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす。
| 項目 | 補正却下決定不服審判(45条1項) | 補正後の商標についての新出願(17条の2・意匠法17条の3) |
|---|---|---|
| 期間 | 謄本の送達の日から3月以内 | 謄本の送達の日から3月以内(審判段階の却下では30日) |
| 出願日 | もとの出願のままで、審決の確定まで審査を中止する(16条の2第4項) | 手続補正書を提出した時にしたものとみなされ、もとの出願は取り下げたものとみなされる |
| 両者の関係 | 新たな出願をしたときは請求できない(45条1項ただし書) | 新たな出願をしたときは、もとの出願は取り下げたものとみなされ、審判は請求できない |
正しい。17条の2第1項で準用する意匠法17条の3第1項により、補正の却下の決定の謄本の送達の日から3月以内にした補正後の商標についての新たな商標登録出願は、その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなされる。
16条の2第1項は、願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものであるときは、審査官は決定をもってその補正を却下しなければならないと定める。却下の決定を受けた出願人の一つの道は45条1項の補正却下決定不服審判であり、もう一つが17条の2第1項で準用する意匠法17条の3による補正後の商標についての新たな商標登録出願である。同条1項は、却下の決定の謄本の送達があった日から3月以内に補正後の商標について新たな出願をしたときは、その出願は、その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなすと定める。要旨を変更する補正は本来なら新たな出願としてやり直すべき内容なので、もとの出願の時までは遡らせず、補正の内容を特許庁に示した手続補正書の提出時を出願日にして、その分の利益だけを与える仕組みである。同条2項によりもとの出願は取り下げたものとみなされ、45条1項ただし書により新たな出願をしたときは審判を請求できない。

意匠登録出願人が前条第一項の規定による却下の決定の謄本の送達があつた日から三月以内にその補正後の意匠について新たな意匠登録出願をしたときは、その意匠登録出願は、その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす。
| 項目 | 補正却下決定不服審判(45条1項) | 補正後の商標についての新出願(17条の2・意匠法17条の3) |
|---|---|---|
| 期間 | 謄本の送達の日から3月以内 | 謄本の送達の日から3月以内(審判段階の却下では30日) |
| 出願日 | もとの出願のままで、審決の確定まで審査を中止する(16条の2第4項) | 手続補正書を提出した時にしたものとみなされ、もとの出願は取り下げたものとみなされる |
| 両者の関係 | 新たな出願をしたときは請求できない(45条1項ただし書) | 新たな出願をしたときは審判を請求できない |
正しい。45条1項ただし書は、17条の2第1項で準用する意匠法17条の3第1項の新たな商標登録出願をしたときは補正の却下の決定に対する審判を請求できないと定め、その新出願は却下決定の謄本の送達から3月以内に補正後の商標についてするものである。
16条の2第1項の決定で補正が却下された出願人には二つの道がある。一つは45条1項本文の、決定の謄本の送達があった日から三月以内に審判を請求して補正の適否を争う道である。もう一つは17条の2第1項が準用する意匠法17条の3第1項の、却下の決定の謄本の送達があった日から三月以内にその補正後の商標について新たな商標登録出願をする道で、この場合、新たな出願は手続補正書を提出した時にしたものとみなされ、もとの出願は取り下げたものとみなされる。そして45条1項ただし書は、この新たな商標登録出願をしたときは審判を請求できないと定める。新出願をした以上、もとの出願は取り下げられて存在しなくなり、補正の適否を争う実益がないうえ、同じ補正を二つの手続で争わせる必要もないからである。枝は補正後の指定商品について新たな出願をした場合を挙げているが、指定商品の補正が却下された場合の新出願はまさにこれに当たる。したがって、審判を請求できないとする枝は正しい。

第十六条の二第一項の規定による却下の決定を受けた者は、その決定に不服があるときは、その決定の謄本の送達があつた日から三月以内に審判を請求することができる。ただし、第十七条の二第一項において準用する意匠法第十七条の三第一項に規定する新たな商標登録出願をしたときは、この限りでない。
| 項目 | 補正却下決定不服審判(45条1項) | 補正後の商標についての新出願(17条の2・意匠法17条の3) |
|---|---|---|
| 期間 | 謄本の送達の日から3月以内 | 謄本の送達の日から3月以内(審判段階の却下では30日) |
| 出願日 | もとの出願のままで、審決の確定まで審査を中止する(16条の2第4項) | 手続補正書を提出した時にしたものとみなし、もとの出願は取り下げたものとみなす |
| 両者の関係 | 新たな出願をしたときは請求できない(45条1項ただし書) | 新たな出願をしたときは、審判は請求できない(45条1項ただし書) |