国際登録の取消し後・議定書廃棄後の商標登録出願(68条の32〜68条の39)こくさいとうろくのとりけしごぎていしょはいきごのしょうひょうとうろくしゅつがん
国際登録の取消し後・議定書廃棄後の商標登録出願とは、議定書6条(4)のセントラルアタックにより日本国を指定する国際登録が取り消されたとき、又は議定書の廃棄により名義人が国際出願をする資格を失ったときに、その国際登録の名義人であった者が、指定されていた商品又は役務について国内でする商標登録出願です(68条の32第1項・68条の33第1項)。取消しの日から3月以内(廃棄後は廃棄の効力が生じた日から2年以内)に同一の商標を範囲内の商品又は役務について出願すれば、国際登録の日にされたものとみなされます。
外国の会社が本国の出願を基礎に国際登録を受け、日本でも商標権を得ていたとします。ところが国際登録の日から5年以内に本国の基礎出願が拒絶されると、議定書6条(4)のセントラルアタックで国際登録が取り消され、日本の商標権も消えてしまいます。本国の事情だけで日本での保護まで失うのは酷なので、議定書9条の5は国内出願への変更を認め、商標法68条の32はその受け皿として、名義人であった者が取消しの日から3月以内に出願すれば国際登録の日にしたものとみなすと定めます。

出願できるのは国際登録の名義人であった者に限られ、取り消された日から3月以内に同一の商標を範囲内の商品又は役務について出願すれば国際登録の日にしたものとみなされます
68条の32第1項は、議定書6条(4)により日本国を指定する国際登録が指定されていた商品又は役務の全部又は一部について取り消されたとき、「当該国際登録の名義人であつた者」がその商品又は役務について商標登録出願をすることができると定めます。出願が国際登録の日(事後指定に係るものなら事後指定の日)にされたものとみなされるには、同条2項の三つの要件、すなわち国際登録が取り消された日から3月以内の出願であること、商標が国際登録の対象であった商標と同一であること、指定商品又は指定役務が国際登録において指定されていた商品又は役務の範囲に含まれていることのすべてを満たす必要があります。「国際登録が取り消された日から3月以内に商標登録出願をしなければならない」という枝は正しいです。名義人であった者でない者の出願や2項の要件を欠く出願は、68条の34第1項で読み替えた15条の拒絶理由に当たるので、「当該国際登録の名義人であった者と同一人ではない場合は、当該出願人に拒絶の理由が通知される」という枝は正しいです。責めに帰することができない理由で3月以内に出願できなかったときは、理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内でその期間の経過後6月以内に出願でき、その出願は3月の期間が満了する時にされたものとみなされます(同条6項・7項)。出願の分割(10条1項)はできますが、分割後の出願の指定商品又は指定役務は国際登録で指定されていた範囲に限られます(同条5項)。

- 出願人取り消された国際登録の名義人であった者です
- 期間国際登録が取り消された日から3月以内です(責めに帰することができない理由があれば、理由がなくなった日から14日、在外者は2月以内で、かつ期間経過後6月以内)
- 商標国際登録の対象であった商標と同一であることです
- 商品又は役務国際登録において指定されていた商品又は役務の範囲に含まれていることです
- 効果国際登録の日(事後指定に係るものは事後指定の日)にされたものとみなされます
議定書の廃棄により国際出願をする資格を失った名義人も同じ出願ができ、期間は廃棄の効力が生じた日から2年以内に読み替えられます
締約国が議定書を廃棄すると、その国の国民や居住者は議定書15条(5)(b)により国際出願をする資格を失い、既にある国際登録も効力を失います。68条の33第1項は、このとき日本国を指定する国際登録の名義人であった者が、指定されていた商品又は役務について商標登録出願をすることができると定め、同条2項が68条の32第2項から7項までを準用します。その際、期間の要件は「議定書第十五条(3)の規定による廃棄の効力が生じた日から二年以内」に読み替えられます。廃棄は国の行為で名義人には予測しにくく、影響を受ける国際登録も多いので、セントラルアタックの3月より長い期間が置かれています。セントラルアタック後の出願は3月以内、廃棄後の出願について「廃棄の効力が生じた日から2年以内に商標登録出願をしなければならない」という枝は正しいです。
優先権は改めて主張の手続をしなくても再出願に認められます
取り消された国際登録に係る国際商標登録出願についてパリ条約4条の優先権が認められていたときは、68条の32第3項により、取消し後の商標登録出願にもその優先権が認められます。9条の3の優先権や、13条1項で準用する特許法43条の3第2項の優先権が認められていたときも同じです(同条4項)。国際商標登録出願では優先権主張の書面を提出しない(68条の15)のと同じく、国際登録の段階で認められていた優先権をそのまま引き継ぐ仕組みなので、出願人が改めて主張する必要はありません。したがって、「出願人は、その旨並びに第一国出願をしたパリ条約の同盟国の国名及び出願の年月日を記載した書面を特許庁長官に提出する必要はない」という枝は正しく、「当該商標登録出願と同時に優先権主張の手続を行わなければならない」という枝は誤りです。
旧国際登録に係る商標権の再出願には15条1号・2号を適用せず、国際登録の日から10年以内に登録査定があれば登録料なしで設定の登録がされ、存続期間は国際登録の日から10年です
取消し後・廃棄後の出願のうち、国際登録に係る商標権であったものについての出願を「旧国際登録に係る商標権の再出願」と呼びます(68条の34第2項)。日本で一度実体審査を通って商標権になっていたものなので、再出願には15条のうち1号(3条・4条1項などの登録要件)と2号(条約の規定)を適用しません。「条約の規定により商標登録をすることができないものであるときは、それを理由として当該出願は拒絶される」という枝は誤りで、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ(4条1項7号)を理由に「それを理由に拒絶される」という枝も誤りです。一方、3号(5条5項・6条1項2項の方式要件)は適用されるので、音の商標の詳細な説明が「商標登録を受けようとする音の商標の内容を特定するものでないときは、それを理由として当該出願は拒絶される」という枝は正しいです。設定の登録は、出願に係る国際登録の日(更新されているときは直近の更新の日)から10年以内に商標登録をすべき旨の査定又は審決があったときは、18条2項にかかわらずされます(68条の35)。国際登録に基づく商標権として個別手数料を既に納付しているからで、「登録料が納付されない限り、商標権の設定登録を受けることができない」という枝は誤りです。その商標権の存続期間は国際登録の日(更新されているときは直近の更新の日)から10年で終了し、19条1項は適用されません(68条の36)。「当該商標権の存続期間は、当該出願に係る国際登録の国際登録の日」から10年で終了するという枝は正しいです。

旧国際登録に係る商標権の再出願と通常の商標登録出願
| 通常の商標登録出願 | 旧国際登録に係る商標権の再出願 | |
| 15条1号・2号(登録要件・条約) | 適用します | 適用しません(68条の34第2項) |
| 15条3号(5条5項・6条) | 適用します | 適用します |
| 設定の登録 | 登録料の納付があったとき(18条2項) | 国際登録の日から10年以内に査定又は審決があれば登録料なしでされます(68条の35) |
| 存続期間 | 設定の登録の日から10年(19条1項) | 国際登録の日(更新があれば直近の更新の日)から10年(68条の36) |
| 登録異議の申立て | 商標掲載公報の発行の日から2月以内 | もとの登録について申立てなく期間が過ぎていれば対象になりません(68条の37) |
| 無効審判の除斥期間 | 設定の登録の日から5年 | もとの登録について請求できなくなっていれば請求できません(68条の39) |
登録異議の申立てと無効審判の除斥期間はもとの国際登録に係る商標登録から数えるので、再出願の設定の登録の日から5年を経過する前でも請求できない場合があります
再出願に係る商標登録は、もとの国際登録に係る商標登録について登録異議の申立てがされることなく43条の2の2月の期間を経過したものであれば、登録異議の申立ての対象から除かれます(68条の37)。無効審判についても、68条の39が47条を読み替えて、もとの国際登録に係る商標登録について47条の除斥期間により46条1項の審判を請求できなくなっているときは、再出願に係る商標権の設定の登録の日から5年を経過する前であっても請求できないとします。再出願で登録の日が新しくなっても、争う機会をもう一度与える理由はないからです。慣用商標(3条1項2号)の登録のように除斥期間のある無効理由について、「再出願に係る商標権の設定の登録の日から5年を経過する前であっても、商標登録の無効の審判を請求することができない場合がある」という枝は正しく、「当該再出願の商標権の設定の登録の日から5年を経過するまでは、商標登録の無効の審判を常に請求することができる」という枝は誤りです。なお、68条の38は、68条の32第1項・68条の33第1項の要件や68条の32第2項各号に違反してされた商標登録を無効理由に加えています。

商標法68条の32第1項議定書第六条(4)の規定により日本国を指定する国際登録の対象であつた商標について、当該国際登録において指定されていた商品又は役務の全部又は一部について当該国際登録が取り消されたときは、当該国際登録の名義人であつた者は、当該商品又は役務の全部又は一部について商標登録出願をすることができる。
商標法68条の32第2項前項の規定による商標登録出願は、次の各号のいずれにも該当するときは、同項の国際登録の国際登録の日(同項の国際登録が事後指定に係るものである場合は当該国際登録に係る事後指定の日)にされたものとみなす。
一 前項の商標登録出願が同項の国際登録が取り消された日から三月以内にされたものであること。
二 商標登録を受けようとする商標が前項の国際登録の対象であつた商標と同一であること。
三 前項の商標登録出願に係る指定商品又は指定役務が同項の国際登録において指定されていた商品又は役務の範囲に含まれていること。
商標法68条の35第六十八条の三十二第一項又は第六十八条の三十三第一項の規定による商標登録出願については、当該出願に係る国際登録の国際登録の日(国際登録の存続期間の更新がされているときは、直近の更新の日)から十年以内に商標登録をすべき旨の査定又は審決があつたときは、第十八条第二項の規定にかかわらず、商標権の設定の登録をする。
試験ではこう問われる
- 出願人は国際登録の名義人であった者だけ。別人の出願は「当該出願人に拒絶の理由が通知される」という枝は正しい(68条の32第1項・68条の34第1項)
- 国際登録の日にしたものとみなされるのは、取り消された日から3月以内で、同一の商標、指定されていた商品又は役務の範囲内の出願(68条の32第2項)。廃棄後は「廃棄の効力が生じた日から2年以内」(68条の33第2項)
- 優先権は改めて主張しなくても認められる(68条の32第3項・4項)。「当該商標登録出願と同時に優先権主張の手続を行わなければならない」という枝は誤り
- 旧国際登録に係る商標権の再出願には15条1号・2号を適用しない(68条の34第2項)。条約違反や公序良俗を理由に拒絶されるという枝は誤り。3号の5条5項・6条違反は適用される
- 国際登録の日から10年以内に登録査定があれば登録料なしで設定の登録(68条の35)。「登録料が納付されない限り、商標権の設定登録を受けることができない」という枝は誤り
- 存続期間は国際登録の日(更新があれば直近の更新の日)から10年で、19条1項は適用しない(68条の36)
- 異議申立てはもとの登録で期間が過ぎていれば対象外(68条の37)。除斥期間はもとの登録から数え、再出願の設定の登録の日から5年前でも「請求することができない場合がある」という枝は正しい(68条の39)
- 分割(10条)はできるが、指定商品又は指定役務は国際登録で指定されていた範囲に限る(68条の32第5項)
この用語が問われた枝
マドリッド協定の議定書第6条(4)に規定する、いわゆる「セントラルアタック」により国際登録が取り消された後の再出願については、当該国際登録の国際登録の日から10年以内に商標登録をすべき旨の査定があった場合であっても、登録料が納付されない限り、商標権の設定登録を受けることができない。
マドリッド協定の議定書第6条(4)に規定する、いわゆる「セントラルアタック」により国際登録が取り消された後の再出願に係る商標登録については、当該再出願の商標権の設定の登録の日から5年を経過するまでは、商標登録の無効の審判を常に請求することができる。
マドリッド協定の議定書第6条(4)に規定するいわゆる「セントラルアタック」により、国際登録が取り消された後の商標登録出願については、当該商標登録出願の出願人が、当該国際登録の名義人であった者と同一人ではない場合は、当該出願人に拒絶の理由が通知される。
当該商標登録出願が、国際登録に係る商標権であったものについての音の商標に係る商標登録出願であって、商標法第5条第4項に規定するその商標の詳細な説明が、商標登録を受けようとする音の商標の内容を特定するものでないときは、それを理由として当該出願は拒絶される。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。