特許独立の原則(4条の2)と発明者掲載権・販売制限(4条の3・4条の4)とっきょどくりつのげんそくとはつめいしゃけいさいけんはんばいせいげん
特許独立の原則とは、同盟国の国民が各同盟国において出願した特許は、他の国(同盟国であるか否かを問わない。)において同一の発明について取得した特許から独立したものとするというパリ条約4条の2の定めです。発明者掲載権とは発明者が特許証に発明者として記載される権利(4条の3)で、販売制限とは特許の対象である物の販売が国内法令上の制限を受けることを理由に特許を拒絶し又は無効とすることができないという定め(4条の4)です。
日本とアメリカで同じ発明の特許を持っている人がアメリカの特許を無効にされても、日本の特許は消えません。パリ条約4条の2は、各国の特許はそれぞれ独立で、他の国の特許の無効や消滅、存続期間に引きずられないと定めています。特許は国ごとの審査で与えられる国ごとの権利だからです。4条の2(5)は優先権を使って取った特許の存続期間を優先権なしの場合と同じにすると定め、4条の3と4条の4は、発明者の名前を特許証に載せる権利と、販売が規制される物でも特許を拒めないことを定めています。

各同盟国で出願した特許は、同盟国であるか否かを問わず他の国で同一の発明について取得した特許から独立し、登録の有無も問いません
4条の2(1)は、同盟国の国民が各同盟国において出願した特許が、他の国(同盟国であるか否かを問わない。)において同一の発明について取得した特許から独立したものとすると定めます。独立の相手は同盟国の特許に限られないので、「同盟国でない国において同一の発明について取得した特許からも独立したものとされる」という枝は正しく、同盟国でない国の特許から独立したものとすることは「求められていない」という枝は誤りです。条文は「出願した特許」と書いており、特許権として登録されたことを条件にしていません。したがって、「特許権として登録されない限り」独立したものとされないという枝と、「いずれかの同盟国において特許が取得されることを条件に」独立するという枝はどちらも誤りです。4条の2(3)と(4)は、この原則がその効力の発生の際に存するすべての特許と、新たに加入する国がある場合にその加入の際に加入国又は他の国に存する特許にも適用されると定めるので、「加入国又は他の国に存する特許についても、同様に適用される」という枝は正しいです。
優先期間中に出願した特許は、無効又は消滅の理由についても、通常の存続期間についても独立です
4条の2(2)は、(1)の規定を絶対的な意味に、特に、優先期間中に出願された特許が、無効又は消滅の理由についても、また、通常の存続期間についても独立のものであるという意味に解釈しなければならないと定めます。優先権でつながった特許は同じ最初の出願から生まれた兄弟のようなものですが、それでも一方の無効や消滅、存続期間の満了が他方に及ぶことはありません。「優先期間中に出願された特許は、無効又は消滅の理由について独立のものとされる」という枝と、「通常の存続期間についても、同盟国であるか否かを問わず他の国において」取得した特許から独立するという枝は正しく、無効又は消滅の理由については独立と解釈しなければならないが「通常の存続期間についてまで、独立のものであるという意味に解釈する必要はない」という枝は誤りです。独立の原則が及ぶのは特許権自体の存立です。自国の特許権の行使を他国で生じた事情で制限できるかは別の問題で、日本の最高裁は平成9年7月1日の判決で、特許権者が国外で譲渡した製品の並行輸入について、4条の2はこの問題を直接規律するものではないとしました。独立の原則を、特許権の行使を他国で生じた事情に基づいて制限することまで禁じるものと読むのは誤りです。

優先権の利益によって取得した特許の存続期間は、優先権の利益なしに出願し又は特許を受けた場合と同一です
4条の2(5)は、優先権の利益によって取得された特許について、各同盟国において、優先権の利益なしに特許出願がされ又は特許が与えられた場合に認められる存続期間と同一の存続期間が認められると定めます。優先権を主張した出願は最初の出願の日に出願したものとして扱われますが、存続期間の計算まで最初の出願の日に遡らせると他の出願人より期間が短くなり、反対に優先期間分を上乗せすると長くなるので、どちらもしないという意味です。日本では特許法67条1項により、優先権の有無にかかわらず日本の出願日から20年です。「優先権の利益なしに特許出願がされ又は特許が与えられた場合に認められる存続期間と同一の存続期間が認められる」という枝は正しく、「存続期間に優先期間を加えた存続期間が認められる」という枝は誤りです。基準になるのは保護を求める国で優先権なしに出願した場合の期間であって、基礎の出願をした国で認められる存続期間ではありません。

- 独立の相手((1))他の国の同一の発明の特許です。同盟国であるか否かを問わず、登録の有無も問いません
- 独立の内容((2))無効又は消滅の理由と通常の存続期間について絶対的です
- 適用の時期((3)(4))効力発生の際に存する特許と、新規加入の際に加入国又は他の国に存する特許にも適用されます
- 存続期間((5))優先権の利益なしに出願し又は特許を受けた場合と同一です
発明者は特許証に発明者として記載される権利を有し、販売が国内法令上の制限を受けることは特許の拒絶や無効の理由になりません
4条の3は、発明者が特許証に発明者として記載される権利を有すると定めます。出願人が会社であっても発明をした個人の名誉を守るための人格的な権利で、日本では願書に発明者の氏名を記載させること(特許法36条1項2号)がこれにあたります。「発明者は、特許証に発明者として記載される権利を有する」という枝は正しいです。4条の4は、特許の対象である物の販売又は特許の対象である方法によって生産される物の販売が国内法令上の制限を受けることを理由としては、特許を拒絶し又は無効とすることができないと定めます。医薬品や危険物のように販売に許可が要る物でも、発明の保護とその物の流通の規制は別だからです。したがって、販売が国内法令上の制限を受けることを理由として特許を拒絶し又は無効とすることを「各同盟国の法令において定めることができる」という枝は誤りです。
パリ条約4条の2同盟国の国民が各同盟国において出願した特許は,他の国(同盟国であるか否かを問わない。)において同一の発明について取得した特許から独立したものとする。
(1)の規定は,絶対的な意味に,特に,優先期間中に出願された特許が,無効又は消滅の理由についても,また,通常の存続期間についても,独立のものであるという意味に解釈しなければならない。
(1)の規定は,その効力の発生の際に存するすべての特許について適用する。
(1)の規定は,新たに加入する国がある場合には,その加入の際に加入国又は他の国に存する特許についても,同様に適用する。
優先権の利益によつて取得された特許については,各同盟国において,優先権の利益なしに特許出願がされ又は特許が与えられた場合に認められる存続期間と同一の存続期間が認められる。
パリ条約4条の3発明者は,特許証に発明者として記載される権利を有する。
パリ条約4条の4特許の対象である物の販売又は特許の対象である方法によつて生産される物の販売が国内法令上の制限を受けることを理由としては,特許を拒絶し又は無効とすることができない。
試験ではこう問われる
- 独立の相手は同盟国でない国の特許も含む。同盟国でない国の特許からの独立は「求められていない」は誤り
- 「出願した特許」が対象で、登録の有無や「いずれかの同盟国において特許が取得されることを条件に」は問わない
- 優先期間中に出願した特許は無効・消滅の理由についても通常の存続期間についても独立((2))。存続期間についてまで独立と解釈する必要はない、は誤り
- 新規加入の際に加入国又は他の国に存する特許にも適用される((4))
- 独立の原則は特許権自体の存立の問題で、行使を他国の事情で制限することまで禁じない(並行輸入の判決)
- 優先権で取得した特許の存続期間は優先権なしの場合と同一((5))。優先期間を加える、基礎出願の国の期間に合わせる、はどちらも誤り
- 発明者は特許証に発明者として記載される権利を有する(4条の3)。販売の国内法令上の制限を理由に拒絶・無効にはできない(4条の4)
この用語が問われた枝
同盟国の国民が各同盟国において出願した特許は、同盟国でない国において同一の発明について取得した特許からも独立したものとされる。
同盟国の国民が同盟国において出願した特許は、他の同盟国でない国において同一の発明について取得した特許から独立したものとすることは求められていない。
同盟国の国民が各同盟国において出願した特許は、その特許が特許権として登録されない限り、他の国において同一の発明について取得した特許から独立したものとされない。
同盟国の国民が各同盟国において出願した特許は、同盟国であるか否かを問わず、他の国において同一の発明について取得した特許から独立したものとされ、優先期間中に出願された特許は、無効又は消滅の理由について独立のものとされる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。