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内国民待遇と準同盟国民(2条・3条)ないこくみんたいぐうとじゅんどうめいこくみん

条約 第1章 パリ条約 短答で8枝

内国民待遇とは、各同盟国の国民が、工業所有権の保護に関し、他のすべての同盟国において、内国民に課される条件及び手続に従う限り、内国民と同一の保護と同一の法律上の救済を受けるというパリ条約2条の原則です。準同盟国民とは、同盟に属しない国の国民でも、いずれかの同盟国の領域内に住所又は現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有すれば同盟国の国民とみなすという3条の扱いです。

フランスの会社が日本で特許を取ろうとするとき、日本の会社より厳しい条件を課されたら、国境を越えた保護は絵に描いた餅になります。パリ条約2条は、同盟国の国民が他の同盟国で内国民と同じ保護と救済を受けると定め、その国に住所や営業所を持つことを条件にしてはならないと念を押します。3条は、同盟国でない国の国民でも、同盟国に住所か本物の営業所があれば同盟国民とみなして同じ扱いに乗せます。外国人を差別しないことを同盟全体の約束にした、パリ条約の土台の原則です。

日本の特許庁の出願窓口の場面。先生が窓口の職員役(札「特許庁」)でカウンターの内側に座っている。カウンターの外にスーツの男性(札「フランス(同盟国)の出願人」)が願書を差し出し、吹き出し「私は日本に住所も営業所もありません。日本の出願人より

内国民待遇は、保護が請求される国の内国民に課される条件及び手続に従う限り、内国民と同一の保護と救済を与える原則です

2条(1)は、各同盟国の国民が、この条約で特に定める権利を害されることなく、他のすべての同盟国において、その国の法令が内国民に対し現在与えており又は将来与えることがある利益を享受すると定め、内国民に課される条件及び手続に従う限り、内国民と同一の保護と、自己の権利の侵害に対する同一の法律上の救済を受けると続けます。従うべき条件と手続は保護を求める相手の国の内国民のものなので、同盟国の国民が「その同盟国の国民に課される条件及び手続に従う限り」同一の保護を受けるという枝は誤りです。この原則は相手国が自国民をどう扱うかを問わず、1条(2)の工業所有権の全般に及びます。したがって、原産地表示又は原産地名称及び不正競争の防止について、同盟国は「他の同盟国が自国民に対してそれらの保護を与えている場合においてのみ、他の同盟国の国民に対して自国民と同一の保護を与える」という枝は誤りです。同一の保護を与える原則ですから、実用新案登録制度を有しない同盟国が他の同盟国の国民にその制度による保護を与えなくても、この原則には違反しません。一方、条約が特に定める権利(4条の優先権など)は内国民より有利な扱いになり得るものですし、2条は最低限の扱いを定めるだけで外国人を有利に扱うことを禁じてはいません。したがって、2条は他の同盟国の国民を内国民より有利に取り扱うことまで禁じてはいません。

保護が請求される国に住所又は営業所を有することを、工業所有権を享有する条件にはできません

2条(2)は、各同盟国の国民が工業所有権を享有するために、保護が請求される国に住所又は営業所を有することが条件とされることはないと定めます。外国に住む者が出願や権利の行使のたびにその国へ拠点を持たなければならないとすると、内国民待遇の意味がなくなるからです。国籍を条件にできないのは2条(1)の内国民待遇そのものなので、「保護が請求される国の国籍、住所又は営業所を有することが条件となる」という枝は誤りで、保護が請求される国に「住所又は営業所を有することが条件とされることはない」という枝は正しいです。

特許庁の手続相談の窓口の場面。先生が職員役(札「特許庁」)でカウンターの内側に立ち、手に「特許管理人の選任」と書かれた用紙を持っている。カウンターの外に男性(札「外国の出願人」)が立ち、吹き出し「日本の出願人には要らない代理人を私だけに求め

司法上及び行政上の手続、裁判管轄権、住所の選定又は代理人の選任は、各同盟国の法令に留保されています

2条(3)は、司法上及び行政上の手続並びに裁判管轄権については、並びに工業所有権に関する法令上必要とされる住所の選定又は代理人の選任については、各同盟国の法令の定めるところによると定めます。外国に住む出願人に国内の代理人を立てさせるような手続上の定め(日本の特許法8条の特許管理人がこれにあたります)は、内国民と違う扱いでも条約違反にならないという趣旨です。したがって、「住所の選定又は代理人の選任について、パリ条約におけるいわゆる内国民待遇の原則による利益を享受する」という枝も、「司法上及び行政上の手続並びに裁判管轄権について、パリ条約におけるいわゆる内国民待遇の原則による利益を享受する」という枝も誤りです。留保されるのは各同盟国、つまり保護が請求される国の法令であって、保護を求める者が住所を有する同盟国の法令ではありません。この項は各国の法令に委ねるだけで、住所の選定や代理人の選任を義務づけるよう求めてはいないので、「各同盟国の法令において義務付けなければならない」という枝も誤りです。

  • 内国民待遇(2条(1))他のすべての同盟国で、内国民に課される条件及び手続に従う限り、内国民と同一の保護と同一の法律上の救済を受けます。将来与えることがある利益も含み、相互主義は要りません
  • 住所・営業所(2条(2))保護が請求される国に住所又は営業所を有することを享有の条件にできません
  • 留保(2条(3))司法上及び行政上の手続、裁判管轄権、住所の選定又は代理人の選任は各同盟国の法令によります
  • 準同盟国民(3条)同盟に属しない国の国民でも、いずれかの同盟国の領域内に住所又は現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有すれば同盟国の国民とみなします

同盟に属しない国の国民でも、いずれかの同盟国に住所又は現実かつ真正の営業所を有すれば同盟国の国民とみなします

3条は、同盟に属しない国の国民であっても、いずれかの同盟国の領域内に住所又は現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有するものは同盟国の国民とみなすと定めます。同盟国で実際に事業をしている者を国籍だけで締め出すと、同盟国の経済とのつながりが切れてしまうからです。要件は「いずれかの」同盟国で足り、保護が請求される同盟国である必要はないので、非同盟国民は「保護が請求される同盟国に住所又は現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有する場合に限り」利益を享受できるという枝は誤りです。住所と営業所はどちらか一方でよいので、「住所を有するものに限り、同盟国の国民とみなす」という枝は誤りです。反対に、同盟国民との共同出願や同盟国との漠然とした関係では足りないので、「いずれかの同盟国に対して何らかの関与があれば足りる」という枝は誤りです。

港町の工場の前の場面。先生が先生役(札「先生」)で地図を広げて立ち、地図には「同盟国Y」「同盟国Z」「同盟に属しない国X」の三つの国が描かれている。工場の看板「X国民 甲の営業所(同盟国Yの領域内)」。向かいに作業着の男性(札「甲(同盟に属

パリ条約には最恵国待遇の定めがなく、TRIPS協定が内国民待遇に加えて最恵国待遇を定めています

パリ条約2条は内国民との比較だけを定め、ある同盟国の国民に与えた利益を他の同盟国の国民にも与える最恵国待遇は定めていません。これに対してTRIPS協定は、3条で内国民待遇を、4条で最恵国待遇を定めています。日本の特許法25条は、日本に住所も営業所もない外国人の権利の享有を、相互主義か条約に別段の定めがある場合に限っており、パリ条約・TRIPS協定の内国民待遇はこの条約の定めにあたります。

パリ条約2条

各同盟国の国民は,工業所有権の保護に関し,この条約で特に定める権利を害されることなく,他のすべての同盟国において,当該他の同盟国の法令が内国民に対し現在与えており又は将来与えることがある利益を享受する。すなわち,同盟国の国民は,内国民に課される条件及び手続に従う限り,内国民と同一の保護を受け,かつ,自己の権利の侵害に対し内国民と同一の法律上の救済を与えられる。
もつとも,各同盟国の国民が工業所有権を亨有するためには,保護が請求される国に住所又は営業所を有することが条件とされることはない。
司法上及び行政上の手続並びに裁判管轄権については,並びに工業所有権に関する法令上必要とされる住所の選定又は代理人の選任については,各同盟国の法令の定めるところによる。

パリ条約3条

同盟に属しない国の国民であつて,いずれかの同盟国の領域内に住所又は現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有するものは,同盟国の国民とみなす。

試験ではこう問われる

  1. 従うのは保護が請求される国の内国民に課される条件及び手続。「その同盟国の国民に課される条件及び手続に従う限り」という枝は誤り
  2. 将来与えることがある利益も含み、相互主義を要しない。原産地表示や不正競争の防止について相手国が保護を与えている場合「においてのみ」同一の保護を与えるという枝は誤り
  3. 同一の保護を与える原則で、制度を持たない国が保護を与えなくても違反しない。外国人を内国民より有利に扱うことを禁じてはいない
  4. 保護が請求される国の住所・営業所を条件にできない(2条(2))。「国籍、住所又は営業所を有することが条件となる」は誤り
  5. 司法・行政上の手続、裁判管轄権、住所の選定又は代理人の選任は各同盟国の法令に留保される(2条(3))。これらについて内国民待遇の利益を享受するという枝は誤り
  6. 非同盟国民は「いずれかの」同盟国の住所「又は」現実かつ真正の営業所で同盟国民とみなす(3条)。保護請求国に限る、住所に限る、共同出願で足りる、「何らかの関与があれば足りる」はいずれも誤り
  7. パリ条約に最恵国待遇の定めはなく、TRIPS協定3条・4条が内国民待遇と最恵国待遇を定める

この用語が問われた枝

令和5年度 問47 枝ニ正しい

各同盟国の国民が工業所有権を亨有するためには、保護が請求される国に住所又は営業所を有することが条件とされることはない。

令和2年度 問47 枝イ誤り

各同盟国の国民が工業所有権を享有するためには、保護が請求される国の国籍、住所又は営業所を有することが条件となる。

令和4年度 問47 枝ロ誤り

各同盟国の国民は、他のすべての同盟国において、工業所有権に関する法令上必要とされる住所の選定又は代理人の選任について、パリ条約におけるいわゆる内国民待遇の原則による利益を享受する。

令和8年度 問47 枝ホ誤り

各同盟国の国民は、他のすべての同盟国において、司法上及び行政上の手続並びに裁判管轄権について、パリ条約におけるいわゆる内国民待遇の原則による利益を享受する。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

条約を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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