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商標に関するその他の規定(5条C・D、6条、6条の4、6条の6、7条、7条の2、8条)しょうひょうにかんするそのたのきてい

条約 第1章 パリ条約 短答で14枝

商標に関するその他の規定とは、パリ条約が商標について置いている、不使用による登録の失効の条件(5条C)、登録の条件は国内法令で定め各国の登録は独立とする原則(6条)、商標の譲渡(6条の4)、サービス・マーク(6条の6)、商品の性質(7条)、団体商標(7条の2)、商号(8条)の各規定です。いずれも、各同盟国が自国の法令で商標を扱う自由を認めつつ、他の同盟国の国民の商標が不当に扱われないよう最低限の線を引いています。

日本の会社が外国で商標を登録したあと、その国でしばらく商標を使わなかったり、ロゴを少し変えて使ったり、商標だけを他社に売ったりする場面を考えてみます。商標の出願や登録の条件は国ごとに違うので、パリ条約はそれを各国の法令に委ねたうえで、不使用でいきなり登録を失わせない、本国の登録が無いことを理由に拒絶しない、商品の性質を理由に登録を拒まない、商号は登記が無くても守る、といった最低限の線を引いています。各国の自由と、外国の商標権者が不当に扱われないことの両方を守るためです。

外国の商標庁の窓口の場面。先生が審査官役(札「審査官」)でカウンターの内側に座り、「商標登録 不使用による失効の通知」と書かれた書類を手にしている。カウンターの外に男性(札「商標の所有者」)が立ち、吹き出し「登録してまだ日が浅く、工場の火災

登録商標の使用を義務づける同盟国でも、相当の猶予期間が経過し、かつ当事者が不作為の正当な理由を明らかにしない場合にのみ登録の効力を失わせることができます

5条C(1)は、登録商標について使用を義務づけている同盟国においては、相当の猶予期間が経過しており、かつ、当事者がその不作為につきそれが正当であることを明らかにしない場合にのみ、その商標の登録の効力を失わせることができると定めます。使用を義務づけること自体は各国の自由ですが、登録してすぐに不使用を理由に失わせたり、正当な理由を聞かずに失わせたりすることは許されません。「正当であることを明らかにしない場合のみである」という枝は正しく、当事者が正当であることを明らかにしない場合には「いつでも、当該商標の登録の効力を失わせることができる」という枝は誤りです。条約は猶予期間の長さを数字で定めておらず、「3年」のような数字は日本の商標法50条の不使用取消審判の要件です。TRIPS協定19条1項は不使用による取消しについて少なくとも3年の不使用を要件としています。5条C(2)は、商標の所有者が登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えることなく構成部分に変更を加えて使用する場合には、登録の効力は失われず、保護も縮減されないと定めます。「その商標の登録の効力は、失われ、また、その商標に対して与えられる保護は縮減される」という枝は誤りです。5条C(3)は、保護が要求される国の国内法令により商標の共有者と認められる2以上の営業所が同一又は類似の商品について同一の商標を同時に使用しても、登録が拒絶されたり保護が縮減されたりすることはないとしますが、その使用の結果として公衆を誤らせることとならず、かつ、その使用が公共の利益に反しないことが条件です。公共の利益の条件だけを書いて「その使用が公共の利益に反しない限り」とする枝は誤りです。

  • 不使用による失効の条件相当の猶予期間が経過しており、かつ、当事者が不作為の正当な理由を明らかにしない場合にのみ失わせることができます(5条C(1))
  • 構成部分を変えた使用登録された際の形態における識別性に影響を与えない変更なら、登録の効力は失われず保護も縮減されません(5条C(2))
  • 共有者の同時使用公衆を誤らせず、かつ、公共の利益に反しないことを条件に、拒絶も保護の縮減もされません(5条C(3))
  • 記号・表示権利の存在を認めさせるために登録の記号・表示を産品に付することを要求できません(5条D)

商標の登録出願と登録の条件は各同盟国の国内法令で定め、本国での出願・登録・更新が無いことを理由に拒絶や無効にはできず、各国の登録は本国を含む他の国の登録から独立しています

6条(1)は、商標の登録出願及び登録の条件は各同盟国において国内法令で定めると規定し、登録要件は各国に委ねています。しかし6条(2)は、同盟国の国民がいずれかの同盟国において登録出願をした商標については、本国において登録出願、登録又は存続期間の更新がされていないことを理由として登録が拒絶され又は無効とされることはないと定め、6条(3)は、いずれかの同盟国において正規に登録された商標は、他の同盟国(本国を含む)において登録された商標から独立したものとすると定めます。本国の登録を前提にせずに各国で保護を受けられ、本国の登録が消滅しても他の国の登録は影響を受けないという、商標独立の原則です。「本国において登録出願、登録又は存続期間の更新がされていないことを理由として登録が拒絶され又は無効とされることはなく」という枝は正しく、「において登録された商標から独立したものとする」という枝は正しいです。特許についての4条の2の特許独立の原則と同じ発想で、6条の5のテル・ケル条項は本国登録を前提に「そのまま」の登録を認める別の仕組みです。

世界地図を背にした会議室の場面。先生が先生役(札「先生」)で地図の前に立ち、指し棒で示している。地図の上に三つの札「本国A:登録なし」「同盟国B:登録」「同盟国C:登録」が立ち、BとCの札は互いに線で結ばれておらず、Aの札からBとCへ向かう

商標の譲渡を営業の移転と同時にのみ有効とする同盟国でも、その国に存在する営業の構成部分を排他的権利とともに移転すれば足り、サービス・マークは保護を約束しつつ登録の規定は要りません

6条の4(1)は、商標の譲渡が同盟国の法令によりその商標が属する企業又は営業の移転と同時に行われるときにのみ有効とされている場合に、譲渡された商標を付した商品をその同盟国において製造し又は販売する排他的権利とともに、企業又は営業の構成部分であってその同盟国に存在するものを譲受人に移転すれば足りると定めます。世界中の営業をまとめて移さなければならないとすると国ごとの譲渡ができなくなるので、その国にある部分で足りるとしたものです。「当該同盟国に存在するものを譲受人に移転すれば足りる」という枝は正しいです。同条(2)は、譲受人の使用が商品の原産地、性質、品位等について事実上公衆を誤らせるような場合にまで譲渡を有効と認める義務を課すものではないとします。したがって、その同盟国に存在する構成部分が排他的権利とともに移転されたときは「いかなる場合にも、その商標の譲渡を有効と認めなければならない」という枝は誤りです。日本の商標法24条の2は営業と切り離した商標権の移転を認めているので、この条の制限を受けません。6条の6は、同盟国がサービス・マークを保護することを約束し、その登録について規定を設けることは要しないと定めます。「サービス・マークの登録について規定を設けることを要しない」という枝は正しいです。パリ条約自体はサービス・マークに4条の優先権を認めることを義務づけていませんが、TRIPS協定62条3項が4条の規定をサービス・マークに準用しています。

商品の性質はいかなる場合にも商標の登録の妨げにならず、団体商標は本国の法令に反しない団体なら営業所が無くても保護され、商号は登記が無くても商標の一部でなくても保護されます

7条は、いかなる場合にも、商品の性質はその商品について使用される商標が登録されることについて妨げとはならないと定めます。商品の販売が国内法令で制限されていても、商標の登録は別の問題だからです。「その商品の性質は妨げとはならない」という枝は正しく、「商品の性質が道徳又は公の秩序に反する商品について使用される商標は登録されることはない」という枝は誤りです。7条の2(1)は、その存在が本国の法令に反しない団体に属する団体商標の登録を認めかつ保護することを約束し、団体が工業上又は商業上の営業所を有しない場合も同様とします。同条(2)は、各同盟国が団体商標の保護について特別の条件を定めることができ、公共の利益に反する団体商標の保護を拒絶できるとし、同条(3)は、保護が要求される国で設立されていないことやその国の法令に適合して構成されていないことを理由に拒絶することはできないとします。「その団体が工業上又は商業上の営業所を有しない場合も、同様とする」という枝は正しく、「公共の利益に反する団体商標についてその保護を拒絶することができる」という枝は正しいです。8条は、商号は商標の一部であるか否かを問わずすべての同盟国において保護され、そのためには登記の申請又は登記が行われていることを必要としないと定めます。「商標の一部でない商号は、同盟国において保護されない」という枝は誤りです。日本では商標法4条1項8号の他人の名称や不正競争防止法2条1項1号の商品等表示がこの保護を担っています。

商店街の店先の場面。先生が先生役(札「先生」)で店の前に立ち、店の看板「〇〇商会」を指している。看板の脇に札「商号:登記なし」。向かいに男性(札「店主」)が立ち、吹き出し「商標登録も商号の登記もしていないこの店名は、外国では守られないのです
パリ条約6条

商標の登録出願及び登録の条件は,各同盟国において国内法令で定める。
もつとも,同盟国の国民がいずれかの同盟国において登録出願をした商標については,本国において登録出願,登録又は存続期間の更新がされていないことを理由として登録が拒絶され又は無効とされることはない。
いずれかの同盟国において正規に登録された商標は,他の同盟国(本国を含む。)において登録された商標から独立したものとする。

試験ではこう問われる

  1. 不使用による失効は「相当の猶予期間が経過しており、かつ、正当であることを明らかにしない場合にのみ」。正当な理由を明らかにしなければ「いつでも」失わせることができるという枝は誤り。条約に「3年」の数字は無い
  2. 識別性に影響を与えない構成部分の変更使用で登録の効力は失われず保護も縮減されない。失われるという枝は誤り
  3. 共有者の同時使用は「公衆を誤らせず、かつ、公共の利益に反しない」の両方が条件。片方だけ書いた枝は誤り
  4. 本国での出願・登録・更新が無いことを理由に拒絶・無効にはできず、正規に登録された商標は本国を含む他の国の登録から独立する(6条(2)(3))
  5. 営業の移転と同時の譲渡のみ有効とする国でも、当該同盟国に存在する構成部分を排他的権利とともに移転すれば足りる(6条の4(1))
  6. サービス・マークは保護を約束するが登録の規定は要しない(6条の6)。商品の性質はいかなる場合にも登録の妨げにならない(7条)
  7. 団体商標は本国の法令に反しない団体なら営業所が無くても保護され、特別の条件を定めることができ、公共の利益に反すれば拒絶できる(7条の2)
  8. 商号は登記の申請・登記が無くても、商標の一部でなくても保護される(8条)。「商標の一部でない商号は、同盟国において保護されない」という枝は誤り

この用語が問われた枝

令和4年度 問48 枝ロ正しい

登録商標について使用を義務づけている同盟国において、当該商標の登録の効力を失わせることができるのは、相当の猶予期間が経過しており、かつ、当事者がその不作為につきそれが正当であることを明らかにしない場合のみである。

令和5年度 問48 枝イ誤り

商標の所有者が1の同盟国において登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えることなく構成部分に変更を加えてその商標を使用する場合、その商標の登録の効力は、失われ、また、その商標に対して与えられる保護は縮減される。

令和4年度 問48 枝イ誤り

保護が要求される国の国内法令により商標の共有者と認められる2以上の工業上又は商業上の営業所が同一又は類似の商品について同一の商標を同時に使用しても、その使用が公共の利益に反しない限り、いずれかの同盟国において、その商標の登録が拒絶され、又はその商標に対して与えられる保護が縮減されることはない。

平成29年度 問48 枝ロ正しい

同盟国の国民がいずれかの同盟国において登録出願した商標については、本国において登録出願、登録又は存続期間の更新がされていないことを理由として登録が拒絶され又は無効とされることはなく、いずれかの同盟国において正規に登録された商標は、他の同盟国(本国を含む。)において登録された商標から独立したものとされる。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

条約を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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