1特許庁長官は、審査官に特許出願を審査させなければならない。
2審査官の資格は、政令で定める。
1特許庁長官は、審査官に特許出願を審査させなければならない。
2審査官の資格は、政令で定める。
第百三十九条(第六号及び第七号を除く。)の規定は、審査官について準用する。
誤り。違うのは「改めて拒絶の理由を通知することなく拒絶をすべき旨の査定をすることができる」の部分である。除斥の原因のある審査官甲がした拒絶理由通知は効力を持たず、丙は改めて拒絶の理由を通知しなければならない。
48条は139条(6号及び7号を除く)を審査官に準用し、139条2号は、当事者の四親等内の血族であるときはその職務の執行から除斥されると定める。叔父は三親等の血族であるから、審査官甲は出願Aの審査から除斥される。除斥は審査の公正を担保するために法律上当然に職務の執行から排除する制度であり、除斥の原因のある者がした職務行為は、本人がそれに気づいていたかどうかにかかわらず効力を持たない。したがって甲がした拒絶理由通知も出願Aの審査手続としては存在しなかったことになる。一方で50条は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し拒絶の理由を通知し、意見書を提出する機会を与えなければならないと定める。除斥の原因のない審査官丙が査定をするには、自ら拒絶の理由を通知して乙に意見書を出す機会を与えるほかなく、通知なしに拒絶査定をすることはできない。

審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
正しい。審査官の除斥を定める48条は、163条1項により前置審査に準用されている。
48条は、審判官の除斥を定める139条(6号及び7号を除く)を審査官について準用する規定である。162条は、拒絶査定不服審判の請求と同時に明細書、特許請求の範囲又は図面について補正があったときは、特許庁長官は審査官にその請求を審査させなければならないと定め、これが前置審査である。163条1項は、48条、53条及び54条の規定を162条の審査に準用すると定めており、審査官の除斥はこの明文で前置審査に及ぶ。前置審査は審判の請求を審査官が審査する手続であって、通常の審査とは根拠条文が違うため、審査の章の規定をそのまま適用できるかが条文上はっきりしない。そこで必要な規定を163条で個別に準用したのであり、事件の当事者や代理人と一定の関係にある審査官を職務から外す除斥の仕組みは、公正な判断を担保するために前置審査でも欠かせないから準用の対象に入れられた。拒絶査定不服審判の方では審判官の除斥として139条が直接働く。したがって48条は前置審査において準用されている規定に当たる。

第四十八条、第五十三条及び第五十四条の規定は、前条の規定による審査に準用する。この場合において、第五十三条第一項中「第十七条の二第一項第一号又は第三号」とあるのは「第十七条の二第一項第一号、第三号又は第四号」と、「補正が」とあるのは「補正(同項第一号又は第三号に掲げる場合にあつては、拒絶査定不服審判の請求前にしたものを除く。)が」と読み替えるものとする。
| 規定 | 拒絶査定不服審判 | 前置審査(162条) |
|---|---|---|
| 48条(審査官の除斥) | 審判官には139条が直接働く | 163条1項で準用 |
| 50条・50条の2(拒絶理由通知等) | 159条2項で準用 | 163条2項で準用 |
| 51条(特許査定) | 159条3項で準用 | 163条3項で準用 |
| 52条(査定の方式) | 準用なし(審決は157条) | 163条3項で準用 |
| 53条(補正の却下) | 159条1項で準用 | 163条1項で準用。特許査定をする場合を除き却下の決定はしない(164条2項) |
| 54条(訴訟との関係) | 168条が直接働く | 163条1項で準用 |
誤り。違うのは「これを忌避することができる」の部分である。忌避は141条が審判官について定める制度であり、審査官には48条が139条の除斥を準用するだけで、忌避の規定は準用されていない。
141条1項は、審判官について審判の公正を妨げるべき事情があるときは、当事者又は参加人はこれを忌避することができると定める。一方、審査官については48条が139条の除斥の規定を準用するにとどまり、141条の忌避は準用されていない。前置審査には163条1項により48条が準用されるから、前置審査をする審査官にも除斥の事由があれば職務の執行から外れるが、忌避の申立ては認められない。審判は当事者の対立構造を持つ準司法的な手続であり、合議体の構成員の公正さを当事者が争う手段として忌避が置かれているのに対し、審査は査定に向けた一方的な手続であり、審査官の公正に疑いがあっても、その結果には拒絶査定不服審判という是正の道が用意されている。そのため審査官については、法定の事由で当然に外れる除斥だけで足りるとされている。本枝は、審判官の忌避の制度を前置審査の審査官に及ぼしている点が条文と食い違う。

第百三十九条(第六号及び第七号を除く。)の規定は、審査官について準用する。
| 除斥 | 忌避 | |
|---|---|---|
| 審判官 | 139条 | 141条(当事者又は参加人が申立て) |
| 審査官(前置審査を含む) | 48条が139条を準用(6号・7号を除く) | 規定なし |
誤り。違うのは「特許出願Aの審査の職務の執行から除斥される」の部分である。48条が準用する139条の除斥事由は配偶者・親族・後見人・証人・代理人・直接の利害関係などに限られ、代理人の親友であることは含まれない。
48条は、139条(6号及び7号を除く)の規定を審査官について準用する。139条1項は、審判官又はその配偶者が事件の当事者であるとき(1号)、当事者の四親等内の血族、三親等内の姻族若しくは同居の親族であるとき(2号)、後見人等であるとき(3号)、証人又は鑑定人となったとき(4号)、当事者の代理人であるとき又はあったとき(5号)、事件について直接の利害関係を有するとき(8号)に職務の執行から除斥されると定める。除斥は、公正な判断が期待できない類型的な事情を法が限定して列挙し、該当すれば当然に職務から外す制度であるから、各号は限定列挙であり、審査官自身が代理人であるときは5号に当たるが、代理人と親しい間柄にあることはどの号にも当たらない。個別の事情で公正を疑わせる場合に備えた忌避の制度(141条)は審判官についてのもので、審査官には準用されていない。枝は除斥事由に無い事情を挙げている。

第百三十九条(第六号及び第七号を除く。)の規定は、審査官について準用する。
誤り。違うのは「出願人乙は審査官甲の忌避を申し立てることができる」の部分である。48条が審査官に準用するのは139条の除斥だけで、141条の忌避は準用されていないから、審査官に対する忌避の申立てはできない。
48条は、139条(6号及び7号を除く)の規定を審査官について準用すると定める。これにより、審査官が事件の当事者の四親等内の血族、三親等内の姻族又は同居の親族であるときは139条2号の除斥事由に当たり、審査官は法律上当然にその事件の職務から外れる。配偶者の伯父は配偶者の三親等の血族であるから、乙にとっては三親等の姻族に当たり、審査官甲には除斥の事由がある。しかし141条の忌避、すなわち公正を妨げるべき事情を当事者が申し立てて職務から外す制度は、48条で準用されておらず、審査官については置かれていない。審査は審判と違って対立する当事者がいない行政の手続で、査定に不服があれば拒絶査定不服審判で審査の結果そのものを争えるため、当事者の申立てで審査官を交代させる仕組みまでは要らないと考えられたからである。乙にできるのは除斥の事由の指摘であって、忌避の申立てではない。

第百三十九条(第六号及び第七号を除く。)の規定は、審査官について準用する。
誤り。違うのは「当該査定に関与したことを原因として、前置審査の職務の執行から除斥される場合がある」の部分である。48条は139条を審査官に準用するが6号・7号を除いており、査定に関与した審査官は前置審査から除斥されない。
139条6号は、審判官が事件について不服を申し立てられた査定に審査官として関与したときにその職務の執行から除斥されると定めるが、48条は139条を審査官に準用するにあたり第6号及び第7号を除いている。前置審査は、拒絶査定不服審判の請求と同時に補正があったときに、審査官に補正後の出願を審査させて特許にできるかを見直させる手続である。もとの査定をした審査官は出願の内容と拒絶の理由を最もよく知っており、その審査官に補正後の内容を見直させることが前置審査の効率の源であるから、査定への関与を除斥の原因にすると制度が成り立たない。審判官については、審査官として自ら関与した査定の当否を判断することになり公正を疑われるため6号で除斥されるが、前置審査にはこの理屈が当てはまらない。枝は審判官の除斥事由を前置審査の審査官に及ぼしている点がずれている。

第百三十九条(第六号及び第七号を除く。)の規定は、審査官について準用する。
誤り。違うのは「審査官は、請求人に対し、相当の期間を指定して、その審判請求書について補正をすべきことを命じなければならない」の部分である。審判請求書の方式違反について補正を命ずるのは133条1項の審判長であり、前置審査の審査官にその権限は準用されていない。
133条1項は、審判長は、請求書が131条の規定に違反しているときは、請求人に対し相当の期間を指定して請求書について補正をすべきことを命じなければならないと定める。請求の趣旨及びその理由は131条1項3号の必要的記載事項なので、その記載が無い請求書は補正命令の対象になるが、命ずる主体は審判長である。前置審査の審査官に準用されるのは、163条1項の48条、53条、54条、同条2項の50条、50条の2、同条3項の51条、52条に限られ、審判請求書の方式を扱う133条は含まれていない。前置審査は審判の請求に係る特許出願の内容を審査官に見させる手続であり、審判の請求そのものが適式かどうかは審判手続の問題として審判長が扱うという役割分担である。審判請求書の不備は、前置審査に付される前後を問わず審判長が補正を命じ、補正が無ければ133条3項により決定で請求書を却下する。

審判長は、請求書が第百三十一条の規定に違反しているときは、請求人に対し、相当の期間を指定して、請求書について補正をすべきことを命じなければならない。
正しい。163条1項が前置審査に準用する48条は、139条(6号及び7号を除く)を審査官について準用しており、事件について直接の利害関係を有するときは139条8号の除斥事由に当たる。
48条は、139条(6号及び7号を除く)の規定を審査官について準用すると定め、163条1項は48条を前置審査に準用する。139条は審判官の除斥事由を列挙し、8号で審判官が事件について直接の利害関係を有するときを挙げる。48条が除くのは6号の不服を申し立てられた査定に審査官として関与したときと、7号の延長登録の出願に係る事件でその特許出願の査定に審査官として関与したときであり、いずれも審査官であれば当然に関与しうる事由だから除かれている。事件について直接の利害関係を有することは、判断の公正を保つために審査官でも審判官でも等しく除斥事由にする必要があり、8号はそのまま準用される。前置審査は拒絶査定をした審査官が担当するのが通例であり、6号が除かれているからこそ原査定に関与した審査官が前置審査に当たれるが、直接の利害関係を有する審査官はその職務の執行から除斥される。

第百三十九条(第六号及び第七号を除く。)の規定は、審査官について準用する。
誤り。違うのは「これを忌避することができる」の部分である。前置審査に準用される48条は審査官について除斥の139条だけを準用しており、忌避の141条は準用されていない。
163条1項は、前置審査に48条、53条及び54条を準用すると定め、48条は、139条(6号及び7号を除く)の規定を審査官について準用すると定める。139条は審判官の除斥、すなわち当事者との身分関係や事件への関与など定型的な事情がある場合に法律上当然に職務の執行から外れる仕組みであり、141条の忌避、すなわち当事者の申立てによって審判の公正を妨げるべき事情を個別に判断して外す仕組みとは別である。審査官については除斥の規定だけが準用され、忌避の規定は審査にも前置審査にも準用されていない。したがって、前置審査をする審査官について審査の公正を妨げるべき事情があっても、請求人がこれを忌避することはできず、枝は審判官の忌避を審査官に広げている。

第百三十九条(第六号及び第七号を除く。)の規定は、審査官について準用する。
| 除斥(139条) | 忌避(141条) | |
|---|---|---|
| 仕組み | 法定の事由があれば当然に職務の執行から外れる | 当事者又は参加人の申立てで、公正を妨げるべき事情を個別に判断する |
| 審判官 | 139条 | 141条。陳述の後は原則として申し立てられない(2項) |
| 審査官 | 48条で139条(6号・7号を除く)を準用 | 準用なし。前置審査の審査官も同じ(163条1項) |
特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまつて行なう。
正しい。同日の出願の協議命令は各出願の審査を前提とし、審査は出願審査の請求をまって行うから、出願A又はBのいずれかに出願審査の請求がない間は、長官は協議を命ずることができない。
39条2項は、同一の発明について同日に二以上の特許出願があったときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができると定め、同条6項は、特許庁長官はこの場合に相当の期間を指定して協議をしてその結果を届け出るべき旨を出願人に命じなければならないと定める。しかし48条の2は、特許出願の審査はその特許出願についての出願審査の請求をまって行うと定める。同日の出願の協議は、両出願が特許を受けられる状態にあることを前提にどちらに特許を与えるかを決める手続であり、審査の請求がない出願は審査の対象になっておらず、そのまま取り下げたものとみなされる可能性もあるため、協議を命ずる前提が整っていない。特許庁の審査基準でも、同日出願の全てについて出願審査の請求がされた後に協議を命ずる扱いである。したがって出願A又はBのいずれかに出願審査の請求がないときは、長官は甲及び乙に協議を命ずることができない。

特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまつて行なう。
1特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。
2第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であつても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。
3出願審査の請求は、取り下げることができない。
4第一項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかつたときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。
5前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、出願審査の請求をすることができる。ただし、故意に、第一項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をしなかつたと認められる場合は、この限りでない。
6前項の規定によりされた出願審査の請求は、第一項に規定する期間が満了する時に特許庁長官にされたものとみなす。
7前三項の規定は、第二項に規定する期間内に出願審査の請求がなかつた場合に準用する。
8第五項(前項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により特許出願について出願審査の請求をした場合において、その特許出願について特許権の設定の登録があつたときは、その特許出願が第四項(前項において準用する場合を含む。)の規定により取り下げられたものとみなされた旨が掲載された特許公報の発行後その特許出願について第五項の規定による出願審査の請求があつた旨が掲載された特許公報の発行前に善意に日本国内において当該発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。
誤り。違うのは「分割の日から 30日を経過した後には、出願審査の請求をすることができる場合はない」の部分である。分割出願はもとの出願の時にしたものとみなされ、もとの出願の日から3年以内であれば分割の日から30日を過ぎても請求できる。
48条の3第1項は、特許出願があったときは何人もその日から3年以内に出願審査の請求をすることができると定める。44条2項により分割に係る新たな特許出願はもとの特許出願の時にしたものとみなされるから、3年の起算点もとの出願の日であり、分割出願でも原則はこの3年である。同条2項は、分割に係る新たな特許出願については前項の期間の経過後であってもその分割の日から30日以内に限り出願審査の請求をすることができると定めるが、これはもとの出願の日から3年を過ぎた後に分割した場合に請求の機会を確保する特則にすぎない。分割がもとの出願の日から3年以内であれば1項の期間が残っており、分割の日から30日を経過しても3年の満了まで請求できる。したがって、30日経過後に請求できる場合はないとする枝はずれている。

第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であつても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。
誤り。違うのは「故意に出願審査の請求の期限までに出願審査の請求の手続をしなかった場合であっても」の部分である。48条の3第5項の救済は、故意に請求しなかったと認められる場合には及ばない。
48条の3第4項は、出願の日から3年以内に出願審査の請求がなかったときはその特許出願を取り下げたものとみなすと定め、同条5項は、取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は経済産業省令で定める期間内に限り出願審査の請求をすることができると定めつつ、ただし書で、故意に期間内に出願審査の請求をしなかったと認められる場合はこの限りでないとする。令和3年改正で回復の要件は正当な理由から故意によるものでないことへ緩められたが、自ら審査を求めないと決めた出願人まで救う必要はなく、そのような出願を後から復活させれば、取下げ擬制の公報を見た第三者の信頼を害するからである。本枝の出願人は、請求は不要であると判断して故意に手続をしなかったのであるから、ただし書に当たり、期間の経過後に請求できる余地はない。

前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、出願審査の請求をすることができる。ただし、故意に、第一項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をしなかつたと認められる場合は、この限りでない。
誤り。違うのは「出願審査の請求を取り下げなければならない」の部分である。出願審査の請求は取り下げることができず(48条の3第3項)、手数料の返還は特許出願が放棄され又は取り下げられたときに請求する(195条9項)。
48条の3第3項は、出願審査の請求は取り下げることができないと定める。審査請求は何人もでき、請求により審査が始まる以上、取下げを許すと審査の着手や第三者の予測が不安定になるからである。一方で195条9項は、出願審査の請求をした後に、39条6項の命令、50条の拒絶理由通知、51条の特許査定の謄本の送達のいずれかがあるまでの間にその特許出願が放棄され又は取り下げられたときは、手数料を納付した者の請求により政令で定める額を返還すると定め、10項でその請求は放棄又は取下げの日から6月を経過した後はできないとする。返還の引き金は特許出願そのものの放棄又は取下げであって、審査請求の取下げではない。枝は、取り下げることができない審査請求の取下げを返還の要件に置いている点で条文とずれる。

出願審査の請求をした後において、次に掲げる命令、通知又は査定の謄本の送達のいずれかがあるまでの間にその特許出願が放棄され、又は取り下げられたときは、第二項の規定により納付すべき出願審査の請求の手数料を納付した者の請求により政令で定める額を返還する。
正しい。先の出願は、その出願の日から経済産業省令で定める期間を経過するまでは取り下げたものとみなされず特許庁に係属しているから、その間は48条の3第1項により何人も出願審査の請求をすることができる。
42条1項は、国内優先権の主張の基礎とされた先の出願は、その出願の日から経済産業省令で定める期間を経過した時に取り下げたものとみなすと定める。取下げ擬制はこの期間が経過した時に初めて生じるから、それまでの間、先の出願は通常の特許出願として特許庁に係属している。そして48条の3第1項は、特許出願があったときは、何人もその日から3年以内に出願審査の請求をすることができると定めており、先の出願についても請求を妨げる規定はない。したがって、後の出願がされてから先の出願の日から1年4月が経過するまでの間に、出願人自身や第三者が先の出願について出願審査の請求をすることはできる。請求があれば審査が始まり、先の出願について査定が確定すれば42条1項ただし書により取り下げたものとみなされなくなる。本枝は、請求をすることができる場合があるとしており、条文のとおりである。

特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。
正しい。48条の3第8項は、取り下げられたものとみなされた旨の特許公報の発行後、5項の出願審査の請求があった旨の特許公報の発行前に善意に国内で実施である事業をしている者に通常実施権を与える。出題当時は5項の要件が「正当な理由があるとき」であった(令和3年改正前)。
48条の3第5項は、出願審査の請求がなく取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り出願審査の請求をすることができると定め、ただし書で故意に請求をしなかったと認められる場合を除く。出題当時は請求できなかったことについて正当な理由があることが要件であり、枝はその文言で出ている。8項は、5項の請求により特許権の設定の登録があったときは、取り下げられたものとみなされた旨が掲載された特許公報の発行後、5項の出願審査の請求があった旨が掲載された特許公報の発行前に、善意に日本国内において当該発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において通常実施権を有すると定める。公報で出願が消えたと公示されたことを信じて事業を始めた者を、後から回復した特許権で止めるのは酷だからである。

第五項(前項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により特許出願について出願審査の請求をした場合において、その特許出願について特許権の設定の登録があつたときは、その特許出願が第四項(前項において準用する場合を含む。)の規定により取り下げられたものとみなされた旨が掲載された特許公報の発行後その特許出願について第五項の規定による出願審査の請求があつた旨が掲載された特許公報の発行前に善意に日本国内において当該発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。
誤り。違うのは「特許出願について出願審査の請求をすることができる期間を延長することができる」の部分である。4条で延長できる期間は46条の2第1項3号、108条1項、121条1項、173条1項の期間に限られ、48条の3の出願審査の請求の期間は含まれない。
4条は、特許庁長官は遠隔又は交通不便の地にある者のため、請求により又は職権で、46条の2第1項3号、108条1項、121条1項又は173条1項に規定する期間を延長することができると定める。列挙されているのは、実用新案登録に基づく特許出願の期間のうち他人の技術評価の請求に係る最初の通知から30日の期間、特許料の納付期間、拒絶査定不服審判の請求期間、再審の請求期間の四つであり、いずれも短い法定期間で、遠隔地の者が期間内に手続を整えることが難しい場合に備えたものである。出願審査の請求の期間は48条の3第1項により出願の日から3年と長く、延長を認める必要がないうえ、請求がなければ出願が取り下げられたものとみなされる第三者との関係で期限を動かすべきでないので、4条の対象に入れられていない。したがって、出願審査の請求の期間を4条で延長できるとする枝は誤りである。5条の指定期間の延長とも別の規定である。

特許庁長官は、遠隔又は交通不便の地にある者のため、請求により又は職権で、第四十六条の二第一項第三号、第百八条第一項、第百二十一条第一項又は第百七十三条第一項に規定する期間を延長することができる。
誤り。違うのは「出願審査の請求をすることができる場合はない」の部分である。30日の期間内に請求がなく取り下げたものとみなされた出願でも、48条の3第5項により故意でなければ経済産業省令で定める期間内に請求できる。
48条の3第1項は、何人も特許出願の日から3年以内に出願審査の請求をすることができると定め、同条2項は、分割に係る新たな特許出願については3年の経過後であっても分割の日から30日以内に限り請求できるとする。同条4項により期間内に請求がなければ出願は取り下げたものとみなされるが、同条5項は、取り下げたものとみなされた特許出願の出願人は経済産業省令で定める期間内に限り出願審査の請求をすることができると定め、ただし書で、故意に期間内に請求しなかったと認められる場合だけを除く。したがって、出願Bの分割の日から30日を経過した後も請求できる場合があり、枝はこれを一切ないとしている点でずれている。出題当時は、その責めに帰することができない理由があることが要件であった(令和3年改正前)。

前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、出願審査の請求をすることができる。ただし、故意に、第一項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をしなかつたと認められる場合は、この限りでない。
誤り。違うのは「翻訳文の提出をしなければ、当該外国語書面出願について出願審査の請求をすることはできない」の部分である。48条の3第1項は特許出願があったときは何人も出願の日から3年以内に出願審査の請求ができると定め、外国語書面出願について翻訳文の提出を請求の前提とする規定はない。
48条の3第1項は、特許出願があったときは、何人も、その日から3年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができると定める。出願審査の請求は審査を始める引き金であり、請求の時点で明細書等が日本語で揃っていることは条件でない。外国語書面出願は36条の2第2項により出願の日から1年4月以内に翻訳文を提出すればよく、翻訳文が提出されれば8項でそれが明細書等とみなされるから、請求が先でも審査はその後に翻訳文を基礎として行えばよい。翻訳文の提出を審査請求の前提としているのは国際特許出願についての184条の17であり、国際出願は翻訳文と国内書面の提出と手数料の納付を済ませるまで日本の出願として扱えないという事情によるもので、出願の時から日本の出願である外国語書面出願には同じ制限が置かれていない。枝は、国際特許出願の制限を外国語書面出願に持ち込んでいる点が条文と違う。

特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。
正しい。48条の3第2項は、分割に係る新たな特許出願、変更に係る特許出願、実用新案登録に基づく特許出願について、出願の日から3年の経過後であってもその分割・変更・実用新案登録に基づく特許出願の日から30日以内に限り出願審査の請求を認める。
48条の3第1項は出願審査の請求を特許出願の日から3年以内に限るが、同条2項は、44条1項の分割に係る新たな特許出願、46条1項若しくは2項の変更に係る特許出願又は46条の2第1項の実用新案登録に基づく特許出願については、1項の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から30日以内に限り、出願審査の請求をすることができると定める。これらの出願は44条2項や46条の2第2項によりもとの出願の時にしたものとみなされるため、出願の日から3年という期間がみなし出願日から数えられ、現実に出願した時点ですでに3年を過ぎていることがある。その場合に請求の機会を全く与えないのは酷なので、現実の出願日から30日という短い期間を別に置いたものである。分割に係る新たな特許出願も実用新案登録に基づく特許出願も、この30日の期間の対象に含まれており、枝は条文のとおりである。

第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であつても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。
正しい。出願審査の請求は48条の3第1項により特許出願の日から3年以内にできるのに対し、優先権の主張を伴う出願の出願公開は優先日から1年6月で行われるから、公開から2年後でも3年の期間内である場合がある。
48条の3第1項は、特許出願があったときは何人もその日から3年以内に出願審査の請求をすることができると定め、64条1項は、特許庁長官は特許出願の日から1年6月を経過したときは出願公開をしなければならないと定める。通常は公開から1年6月後に審査請求の期限が来るが、パリ条約や41条の優先権の主張を伴う出願では、出願公開は優先日から1年6月で行われる。36条の2第2項や43条2項が翻訳文や優先権証明書類等の提出期限を優先日から1年4月としているのは、この公開の時期に合わせたものである。一方、審査請求の3年の期間は41条2項にも挙げられておらず、優先日ではなく現実の特許出願の日から数える。最初の出願から12月後に優先権を主張して出願すれば、出願公開は出願から6月後に行われ、審査請求はその後2年6月までできるので、公開から2年後に請求できる場合がある。

特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。
出願審査の請求をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した請求書を特許庁長官に提出しなければならない。
1 請求人の氏名又は名称及び住所又は居所
2 出願審査の請求に係る特許出願の表示
1特許庁長官は、出願公開前に出願審査の請求があつたときは出願公開の際又はその後遅滞なく、出願公開後に出願審査の請求があつたときはその後遅滞なく、その旨を特許公報に掲載しなければならない。
2特許庁長官は、特許出願人でない者から出願審査の請求があつたときは、その旨を特許出願人に通知しなければならない。
誤り。違うのは「審査官は」の部分である。48条の5第2項により、特許出願人でない者から出願審査の請求があったときにその旨を特許出願人に通知するのは特許庁長官である。
48条の5第2項は、特許庁長官は、特許出願人でない者から出願審査の請求があったときは、その旨を特許出願人に通知しなければならないと定める。出願審査の請求は48条の3第1項により何人もできるため、出願人の知らないうちに第三者の請求で審査が始まることがある。審査が始まれば出願人は拒絶理由通知への対応や補正の準備を迫られ、また出願人が請求した場合にはできる審査請求料の納付に代えて取下げを選ぶ余地もなくなるから、出願人に知らせる必要がある。この通知は、審査請求を受け付けて出願を審査に付す特許庁長官の事務であり、個々の出願の審査を担当する審査官の職務ではない。同条1項が、出願公開前に出願審査の請求があったときは特許庁長官が出願公開の際にその旨を特許公報に掲載すると定めているのと同じく、主体は特許庁長官である。枝は主体を審査官としており、条文と異なる。

特許庁長官は、特許出願人でない者から出願審査の請求があつたときは、その旨を特許出願人に通知しなければならない。
特許庁長官は、出願公開後に特許出願人でない者が業として特許出願に係る発明を実施していると認める場合において必要があるときは、審査官にその特許出願を他の特許出願に優先して審査させることができる。
誤り。違うのは「優先して審査させなければならない旨特許法に規定されている」の部分である。48条の6の優先審査は、特許庁長官が必要があるときに審査官に優先して審査させることが「できる」と定める裁量の規定である。
48条の6は、特許庁長官は出願公開後に特許出願人でない者が業として特許出願に係る発明を実施していると認める場合において必要があるときは、審査官にその特許出願を他の特許出願に優先して審査させることができると定める。出願公開の後に第三者が発明を実施している状態では、出願人は補償金請求権の警告はできても特許権としての差止めができず、実施者の側も特許になるかどうかが分からないまま事業を続けることになるため、早く審査を終えて権利の有無を確定させる必要がある。しかし優先審査は他の出願の審査順序を変える措置であり、実施の事実や必要性の判断を長官に委ねる必要があるので、要件を満たせば必ず優先して審査させる義務とはされていない。枝は「必要があるときは」の要件を落とし、「できる」を「しなければならない」と述べているので誤りである。

特許庁長官は、出願公開後に特許出願人でない者が業として特許出願に係る発明を実施していると認める場合において必要があるときは、審査官にその特許出願を他の特許出願に優先して審査させることができる。
審査官は、特許出願が第三十六条第四項第二号に規定する要件を満たしていないと認めるときは、特許出願人に対し、その旨を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えることができる。
誤り。違うのは「同号に規定する要件を満たしていない旨を通知しなければならない」の部分である。48条の7の通知は審査官の裁量であり、「通知することができる」と定められている。
48条の7は、審査官は、特許出願が36条4項2号に規定する要件を満たしていないと認めるときは、特許出願人に対し、その旨を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えることができると定める。文献公知発明の情報の記載は、審査官が先行技術を把握しやすくするために出願人に協力を求める趣旨の要件であり、発明そのものの特許性に関わるものではない。そのため、情報の記載がないことを審査官がいちいち指摘する義務まではなく、通知するかどうかは審査官の判断に委ねられている。通知を受けても補正や意見書で応じなかったときに初めて49条5号の拒絶理由となる仕組みであり、その場合は50条の拒絶理由通知を経て査定に至る。本枝は、48条の7の通知を義務であるかのように書いている点が条文と食い違う。

審査官は、特許出願が第三十六条第四項第二号に規定する要件を満たしていないと認めるときは、特許出願人に対し、その旨を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えることができる。
誤り。違うのは「同条の規定により指定された期間内に限り」の部分である。拒絶理由通知を受ける前は、特許査定の謄本の送達前であればいつでも補正でき、48条の7の指定期間に限られない(17条の2第1項本文)。
17条の2第1項本文は、特許出願人は特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができると定め、ただし書で、50条の拒絶理由通知を受けた後は各号に掲げる場合に限ると定める。補正の時期を絞るのは、審査官が拒絶の理由を示した後に出願人が内容を動かし続けると審査が収束しないからであり、その起点はあくまで拒絶理由通知である。同項2号が48条の7の通知で指定された期間内の補正を挙げるのは、拒絶理由通知を受けた後に48条の7の通知を受けた場合であって、拒絶理由通知の前に48条の7の通知を受けたときの定めではない。枝は最初の拒絶理由通知を受ける前の段階であるから本文がそのまま適用され、48条の7の指定期間内に限られず、特許査定の謄本の送達前であればいつでも補正できる。枝は本文の自由な補正の場面に2号の制限を持ち込んでいる点で条文とずれる。

特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
誤り。違うのは「その後拒絶理由通知を受けることなく、「発明の詳細な説明に、その発明に関連する文献公知発明に関する情報の所在が記載されていない。」との理由で拒絶をすべき旨の査定がされる場合がある」の部分である。拒絶をすべき旨の査定をするには50条の拒絶理由通知が要り、48条の7の通知はそれに代わらない。
48条の7は、審査官は特許出願が36条4項2号の要件を満たしていないと認めるときは出願人にその旨を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えることができると定め、49条5号は、その通知をした場合であって、明細書の補正又は意見書の提出によってもなお同号の要件を満たすこととならないときを拒絶の理由とする。しかし50条本文は、審査官が拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは出願人に拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと定め、その例外は補正の却下の決定をする場合に限られる。48条の7の通知は文献情報の記載を促す段階の通知であり、拒絶理由通知ではないため、これに応じなかったことを理由に拒絶査定をするには、改めて49条5号の拒絶理由を50条により通知しなければならないという仕組みである。枝は拒絶理由通知を受けることなく拒絶査定がされる場合があるとしており、50条本文とずれる。

審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
誤り。違うのは「事前に出願人に意見書を提出する機会を与えることなく、直ちに拒絶の理由を通知することができる」の部分である。36条4項2号の違反が拒絶理由になるのは、48条の7の通知をした後も補正又は意見書によってなお要件を満たさないときに限られる(49条5号)。
48条の7は、審査官は特許出願が36条4項2号に規定する要件を満たしていないと認めるときは、特許出願人に対しその旨を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えることができると定め、49条5号は、この通知をした場合であって、明細書についての補正又は意見書の提出によってもなお同号の要件を満たすこととならないときを拒絶理由とする。先行技術文献の情報の記載は審査の効率のために出願人に協力を求める要件であり、発明の内容そのものに関わる記載要件とは性質が違うので、いきなり拒絶理由とせず、まず48条の7の通知で記載を促し、それでも応じないときに初めて拒絶理由にするという二段構えになっている。したがって審査官は、48条の7の通知を経ずに36条4項2号の違反を理由として50条の拒絶理由を通知することはできない。36条4項1号や6項の違反が49条4号で直ちに拒絶理由になるのとは扱いが異なる。

前条の規定による通知をした場合であつて、その特許出願が明細書についての補正又は意見書の提出によつてもなお第三十六条第四項第二号に規定する要件を満たすこととならないとき。
正しい。補正の時期が制限されるのは50条の拒絶理由通知を受けた後であり(17条の2第1項ただし書)、48条の7の通知は拒絶理由通知ではないので、最初の拒絶理由通知を受ける前であれば、その指定期間の経過後でも特許査定の謄本の送達前は補正ができる。
17条の2第1項は、特許出願人は特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができると定め、ただし書で、50条の規定による通知を受けた後は各号に掲げる場合に限り補正をすることができるとする。補正の時期を区切る出来事は50条の拒絶理由通知であり、48条の7の通知、すなわち文献公知発明に係る情報の記載が36条4項2号の要件を満たしていないときに意見書を提出する機会を与える通知は、拒絶理由通知ではない。1項2号が48条の7の通知後の補正を指定期間内に限るのは、「拒絶理由通知を受けた後」に同通知を受けた場合だけである。最初の拒絶理由通知を受けていない段階では1項本文の原則がそのまま当てはまるから、48条の7の指定期間が経過していても、特許査定の謄本の送達前なら補正ができる。したがって枝は条文のとおりである。

特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
誤り。違うのは「特許庁長官は、相当の期間を指定して、その補正をすべきことを命ずることができる」の部分である。36条4項2号の先行技術文献情報の開示の要件を満たさないときは、48条の7により審査官が通知して意見書の機会を与え、なお満たさなければ49条5号の拒絶理由になるのであって、17条3項の補正命令の事由ではない。
48条の7は、審査官は特許出願が36条4項2号に規定する要件を満たしていないと認めるときは、特許出願人にその旨を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えることができると定め、49条5号は、この通知をした場合であって、明細書の補正又は意見書の提出によってもなお同号の要件を満たすこととならないときを拒絶の理由とする。先行技術文献情報の開示は明細書の記載の中身に関わる要件であり、その充足は発明の内容を審査する審査官が判断するものだから、審査官の通知と拒絶理由の仕組みで扱われている。これに対し17条3項の補正命令は、特許庁長官が、手続能力や代理権の違反(1号)、方式違反(2号)、手数料の不納付(3号)という形式的な事項について命ずるものであり、明細書の記載要件の不備は含まれない。枝は審査官の通知を長官の補正命令に取り違えており誤りである。

審査官は、特許出願が第三十六条第四項第二号に規定する要件を満たしていないと認めるときは、特許出願人に対し、その旨を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えることができる。
審査官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
1 その特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項又は第四項に規定する要件を満たしていないとき。
2 その特許出願に係る発明が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条、第三十八条又は第三十九条第一項から第四項までの規定により特許をすることができないものであるとき。
3 その特許出願に係る発明が条約の規定により特許をすることができないものであるとき。
4 その特許出願が第三十六条第四項第一号若しくは第六項又は第三十七条に規定する要件を満たしていないとき。
5 前条の規定による通知をした場合であつて、その特許出願が明細書についての補正又は意見書の提出によつてもなお第三十六条第四項第二号に規定する要件を満たすこととならないとき。
6 その特許出願が外国語書面出願である場合において、当該特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき。
7 その特許出願人がその発明について特許を受ける権利を有していないとき。
誤り。違うのは「拒絶をすべき旨の査定の理由にはならないが」の部分である。184条の18の読替えにより、外国語特許出願の原文の範囲外の記載は、49条6号の拒絶理由にも、特許異議の申立て・特許無効審判の理由にもなる。
特許法184条の18は、外国語特許出願に係る拒絶の査定、特許異議の申立て及び特許無効審判については、49条6号、113条1号・5号、123条1項1号・5号中「外国語書面出願」とあるのは「184条の4第1項の外国語特許出願」と、「外国語書面に」とあるのは「国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に」と読み替えると定める。読替え後の49条6号は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないときを拒絶理由とし、113条5号と123条1項5号が同じ事由を異議理由・無効理由とする。原文の範囲を超える内容が特許になれば第三者は原文で開示されていない技術について権利を主張されるから、PCT46条を受けて審査段階から排除する扱いにしている。拒絶理由にならないとする枝は、184条の18が49条6号を読み替えている点と合わない。

外国語特許出願に係る拒絶の査定、特許異議の申立て及び特許無効審判については、第四十九条第六号、第百十三条第一号及び第五号並びに第百二十三条第一項第一号及び第五号中「外国語書面出願」とあるのは「第百八十四条の四第一項の外国語特許出願」と、第四十九条第六号、第百十三条第五号及び第百二十三条第一項第五号中「外国語書面に」とあるのは「第百八十四条の四第一項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に」とする。
正しい。36条6項4号の委任省令要件の違反は49条4号で拒絶の理由とされるが、123条1項4号は「第六項(第四号を除く。)」として無効理由から外している。
49条4号は、特許出願が36条4項1号若しくは6項又は37条に規定する要件を満たしていないときは拒絶をすべき旨の査定をしなければならないと定め、6項の各号を区別していない。これに対して123条1項4号は、その特許が36条4項1号又は6項(4号を除く)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたときを無効理由とし、6項4号を明示して除いている。36条6項4号は、特許請求の範囲の記載を経済産業省令で定めるところにより記載することを求める要件であり、請求項の区分や引用の形式など記載の形式を整えるためのものである。形式の不備は審査の段階で補正により直させれば足り、発明の実体に瑕疵があるわけではないから、いったん特許された後にまで遡って無効にする理由としては不適当であるという考えによる。113条4号の特許異議の申立ての理由からも同じく除かれている。本枝はこの区別と理由をそのまま述べている。

その特許が第三十六条第四項第一号又は第六項(第四号を除く。)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたとき。
| 要件 | 拒絶理由(49条) | 異議理由(113条) | 無効理由(123条) |
|---|---|---|---|
| 36条4項1号(実施可能要件) | あり | あり | あり |
| 36条4項2号(文献公知発明の情報) | 48条の7の通知後に限りあり | なし | なし |
| 36条6項1〜3号(サポート・明確性・簡潔性) | あり | あり | あり |
| 36条6項4号(委任省令要件) | あり | なし | なし |
| 37条(発明の単一性) | あり | なし | なし |
正しい。37条の発明の単一性と17条の2第4項の補正の要件の違反は49条の拒絶理由であるが、123条1項の無効理由には挙げられていない。
49条は、審査官が拒絶をすべき旨の査定をしなければならない場合を各号で定め、1号で補正が17条の2第3項又は4項の要件を満たしていないとき、4号で36条4項1号若しくは6項又は37条の要件を満たしていないときを挙げる。これに対して123条1項の無効理由は、1号で17条の2第3項(新規事項の追加)に違反する補正、4号で36条4項1号又は6項(4号を除く)の記載要件違反を挙げるにとどまり、17条の2第4項の特別な技術的特徴を変更する補正や37条の発明の単一性の違反は含まれていない。発明の単一性や補正における技術的特徴の維持は、審査を効率よく進めるための手続上の要件であって、成立した特許の実体的な瑕疵ではないから、特許になった後に第三者が無効審判で争う理由にはしない理屈である。ほかに36条4項2号の先行技術文献開示要件や36条6項4号の委任省令要件も拒絶理由だけである。

その特許出願が第三十六条第四項第一号若しくは第六項又は第三十七条に規定する要件を満たしていないとき。
| 要件 | 拒絶理由(49条) | 無効理由(123条1項) |
|---|---|---|
| 17条の2第3項(新規事項の追加) | 1号 | 1号(外国語書面出願を除く) |
| 17条の2第4項(特別な技術的特徴の変更) | 1号 | なし |
| 37条(発明の単一性) | 4号 | なし |
| 36条4項2号(先行技術文献開示) | 5号 | なし |
| 36条6項4号(委任省令要件) | 4号 | なし |
| 36条4項1号・6項1〜3号 | 4号 | 4号 |
誤り。違うのは「違反以外の理由のすべてである」の部分である。49条5号の36条4項2号(先行技術文献開示要件)違反も拒絶理由でありながら123条1項の無効理由には入っていないから、本枝の三つ以外にも無効理由にならない拒絶理由がある。
49条の拒絶理由と123条1項の無効理由は大部分が重なるが、審査で直させれば足りる要件は無効理由から外されている。本枝が挙げる36条6項4号の委任省令要件は123条1項4号が明文で除き、37条の発明の単一性は4号に含まれず、17条の2第4項のシフト補正の禁止は1号が17条の2第3項だけを対象とするので、いずれも無効理由にならない。しかし49条5号は、48条の7の通知をしてもなお36条4項2号の先行技術文献開示要件を満たさないときを拒絶理由とするのに対し、123条1項にはこれに対応する号がない。先行技術文献の情報は審査を助けるための記載であって、発明の内容や権利の範囲を決めるものではないから、特許になった後に無効にしてまで問う必要がないという理屈である。したがって無効理由にならない拒絶理由は本枝の三つに尽きず、すべてであるとする本枝は誤りである。

前条の規定による通知をした場合であつて、その特許出願が明細書についての補正又は意見書の提出によつてもなお第三十六条第四項第二号に規定する要件を満たすこととならないとき。
| 要件 | 拒絶理由(49条) | 無効理由(123条1項) |
|---|---|---|
| 36条4項1号(実施可能) | 4号で拒絶理由である | 4号で無効理由である |
| 36条6項1〜3号(サポート・明確性・簡潔) | 4号で拒絶理由である | 4号で無効理由である |
| 36条4項2号(先行技術文献開示) | 48条の7の通知後も満たさなければ5号で拒絶理由である | 無効理由ではない |
| 36条6項4号(委任省令) | 4号で拒絶理由である | 無効理由ではない |
| 37条(単一性) | 4号で拒絶理由である | 無効理由ではない |
| 17条の2第4項(シフト補正) | 1号で拒絶理由である | 無効理由ではない |
| 17条の2第3項(新規事項) | 1号で拒絶理由である | 1号で無効理由であるが外国語書面出願は除かれ、5号の原文新規事項が無効理由である |
誤り。違うのは「当該規定に違反すると、同項に違反する旨の拒絶の理由が通知される」の部分である。49条が拒絶の理由として挙げるのは36条4項1号と6項であり、36条5項の違反は拒絶の理由になっていない。
36条5項は、特許請求の範囲には請求項に区分して各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならないと定める。しかし49条4号が拒絶の理由として挙げる記載要件は36条4項1号若しくは6項又は37条であり、5項は含まれていない。5項は、何を発明特定事項として記載するかを出願人の判断に委ねる趣旨の規定であり、出願人が必要と認める事項を書いたかどうかを審査官が外から判断することはできないので、違反を理由に拒絶する要件としては組み立てられていない。記載した事項に不足があれば、発明が明確でないとして6項2号の違反、発明の詳細な説明に裏づけがないとして6項1号の違反が問われることになる。したがって、36条5項に違反する旨の拒絶の理由が通知されるとする枝は誤りである。拒絶理由は49条に列挙されたものに限られ、列挙外の条文違反では拒絶されない。

その特許出願が第三十六条第四項第一号若しくは第六項又は第三十七条に規定する要件を満たしていないとき。
正しい。翻訳文に外国語書面に記載した事項の範囲内にない事項が含まれていることは49条6号の拒絶理由であり、審査官は拒絶査定をしようとするときは50条により拒絶の理由を通知しなければならない。
36条の2第8項により、外国語書面出願の翻訳文は願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされる。49条6号は、特許出願が外国語書面出願である場合において、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないときを拒絶の理由とする。出願日の根拠は原文である外国語書面にあり、翻訳で原文にない事項が入り込めば出願時に開示していなかった発明に権利を与えることになるからである。出願人は誤訳訂正書による補正で翻訳文を原文の範囲に戻すことができるが(17条の2第2項)、補正されないまま審査に入れば審査官は49条6号で拒絶査定をすることになり、50条により、拒絶査定をしようとするときは出願人に拒絶の理由を通知し意見書を提出する機会を与えなければならない。枝は、翻訳文に外国語書面の範囲内にない事項が含まれていることを理由に拒絶理由を通知しなければならないとしており、49条6号と50条のとおりである。

その特許出願が外国語書面出願である場合において、当該特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき。
誤り。違うのは「その後拒絶理由通知を受けることなく、「発明の詳細な説明に、その発明に関連する文献公知発明に関する情報の所在が記載されていない。」との理由で拒絶をすべき旨の査定がされる場合がある」の部分である。拒絶をすべき旨の査定をするには50条の拒絶理由通知が要り、48条の7の通知はそれに代わらない。
48条の7は、審査官は特許出願が36条4項2号の要件を満たしていないと認めるときは出願人にその旨を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えることができると定め、49条5号は、その通知をした場合であって、明細書の補正又は意見書の提出によってもなお同号の要件を満たすこととならないときを拒絶の理由とする。しかし50条本文は、審査官が拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは出願人に拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと定め、その例外は補正の却下の決定をする場合に限られる。48条の7の通知は文献情報の記載を促す段階の通知であり、拒絶理由通知ではないため、これに応じなかったことを理由に拒絶査定をするには、改めて49条5号の拒絶理由を50条により通知しなければならないという仕組みである。枝は拒絶理由通知を受けることなく拒絶査定がされる場合があるとしており、50条本文とずれる。

審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
誤り。違うのは「いずれも特許の無効理由となる」の部分である。無効理由に挙げられているのは17条の2第3項の新規事項の追加の違反だけであり、4項の違反は拒絶理由にとどまる(123条1項1号・49条1号)。
49条1号は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が17条の2第3項又は4項に規定する要件を満たしていないときを拒絶の理由とする。これに対し123条1項1号は、その特許が17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたときだけを無効理由とし、4項を挙げていない。新規事項の追加は出願当初に開示していなかった発明に独占権を与えることになり、第三者の利益を害するので特許後も無効理由として争わせる必要がある。一方で4項が禁じる技術的特徴の異なる別発明への補正は、審査の負担を避けて先行技術調査の結果を有効に使うための審査上の規律であり、いったん特許された後にまで遡って無効にするほどの瑕疵ではないという理屈である。枝は3項と4項の違反をいずれも無効理由としており、123条1項1号が3項だけを挙げている点とずれる。なお5項・6項の違反は49条の拒絶理由にも挙がっておらず、53条の補正の却下で対応する。

その特許が第十七条の二第三項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願(外国語書面出願を除く。)に対してされたとき。
| 違反した項 | 補正の却下(53条) | 拒絶理由(49条1号) | 無効理由(123条1項1号) |
|---|---|---|---|
| 3項(新規事項の追加) | 対象 | 該当する | 該当する |
| 4項(別発明への補正) | 対象 | 該当する | 該当しない |
| 5項・6項 | 対象 | 該当しない | 該当しない |
誤り。違うのは「第17条の2第2項に規定する誤訳訂正書の提出の要件を満たしていないものとして、拒絶の理由が通知されることがある」の部分である。49条1号が拒絶理由とするのは17条の2第3項又は4項の違反であり、2項の違反そのものは拒絶理由ではない。
17条の2第2項は、外国語書面出願の出願人が誤訳の訂正を目的として補正をするときはその理由を記載した誤訳訂正書を提出しなければならないと定め、3項は、誤訳訂正書を提出してする場合を除き、補正は翻訳文に記載した事項の範囲内でしなければならないと定める。49条1号が拒絶理由として挙げるのは3項又は4項の要件を満たしていない補正であって、2項は挙げられていない。誤訳訂正書は原文との対応を審査官に示させる手続上の要求であり、それ自体の不備を拒絶理由にするまでもなく、誤訳訂正書を伴わない補正は翻訳文の範囲で3項の判断を受けるという仕組みである。外国語書面にはあるが翻訳文には無い事項を誤訳訂正書なしで追加する補正は、翻訳文に記載した事項の範囲を超えるので、3項の違反として49条1号の拒絶理由が通知される。拒絶理由が通知されること自体はあるが、その根拠は2項ではなく3項である。

その特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項又は第四項に規定する要件を満たしていないとき。
誤り。違うのは「事前に出願人に意見書を提出する機会を与えることなく、直ちに拒絶の理由を通知することができる」の部分である。36条4項2号の違反が拒絶理由になるのは、48条の7の通知をした後も補正又は意見書によってなお要件を満たさないときに限られる(49条5号)。
48条の7は、審査官は特許出願が36条4項2号に規定する要件を満たしていないと認めるときは、特許出願人に対しその旨を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えることができると定め、49条5号は、この通知をした場合であって、明細書についての補正又は意見書の提出によってもなお同号の要件を満たすこととならないときを拒絶理由とする。先行技術文献の情報の記載は審査の効率のために出願人に協力を求める要件であり、発明の内容そのものに関わる記載要件とは性質が違うので、いきなり拒絶理由とせず、まず48条の7の通知で記載を促し、それでも応じないときに初めて拒絶理由にするという二段構えになっている。したがって審査官は、48条の7の通知を経ずに36条4項2号の違反を理由として50条の拒絶理由を通知することはできない。36条4項1号や6項の違反が49条4号で直ちに拒絶理由になるのとは扱いが異なる。

前条の規定による通知をした場合であつて、その特許出願が明細書についての補正又は意見書の提出によつてもなお第三十六条第四項第二号に規定する要件を満たすこととならないとき。
誤り。違うのは「特許庁長官は、相当の期間を指定して、その補正をすべきことを命ずることができる」の部分である。36条4項2号の先行技術文献情報の開示の要件を満たさないときは、48条の7により審査官が通知して意見書の機会を与え、なお満たさなければ49条5号の拒絶理由になるのであって、17条3項の補正命令の事由ではない。
48条の7は、審査官は特許出願が36条4項2号に規定する要件を満たしていないと認めるときは、特許出願人にその旨を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えることができると定め、49条5号は、この通知をした場合であって、明細書の補正又は意見書の提出によってもなお同号の要件を満たすこととならないときを拒絶の理由とする。先行技術文献情報の開示は明細書の記載の中身に関わる要件であり、その充足は発明の内容を審査する審査官が判断するものだから、審査官の通知と拒絶理由の仕組みで扱われている。これに対し17条3項の補正命令は、特許庁長官が、手続能力や代理権の違反(1号)、方式違反(2号)、手数料の不納付(3号)という形式的な事項について命ずるものであり、明細書の記載要件の不備は含まれない。枝は審査官の通知を長官の補正命令に取り違えており誤りである。

審査官は、特許出願が第三十六条第四項第二号に規定する要件を満たしていないと認めるときは、特許出願人に対し、その旨を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えることができる。
正しい。17条の2第3項に違反する補正は49条1号の拒絶理由であり、50条本文により拒絶査定の前に拒絶理由を通知して意見書を提出する機会を与えなければならず、ただし書で53条1項の却下の決定をする場合も既に通知した拒絶理由で査定するから、意見書の機会なしに拒絶査定がされることはない。
49条1号は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が17条の2第3項又は4項の要件を満たしていないときを拒絶の理由とし、50条本文は、審査官は拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは特許出願人に拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと定める。50条ただし書は、最初の拒絶理由通知に併せて50条の2の通知をした場合又は最後の拒絶理由通知の後にした補正について53条1項の却下の決定をするときは通知を要しないとするが、これは新規事項を含む補正を決定で却下したうえで、補正前の内容について既に通知してある拒絶理由により査定する場面であり、意見書の機会はその拒絶理由について与えられている。いずれの道でも、意見書を提出する機会を一度も与えずに拒絶査定がされることはない。

審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
誤り。違うのは「特許庁長官から拒絶の理由が通知される場合がある」の部分である。拒絶査定不服審判で査定の理由と異なる拒絶の理由を発見したときの通知は、159条2項で準用する50条により審判を行う審判官の合議体(審判長)がするものであり、特許庁長官ではない。
159条2項は、50条及び50条の2の規定を、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。50条は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、出願人に拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと定めており、審判では査定の理由と異なる理由で請求を不成立にしようとするときに、同じく通知と意見書の機会が保障される。審判は136条により審判官の合議体が行い、その手続は審判長が進めるから、この通知も合議体を代表して審判長の名でされ、実務上も拒絶理由通知書は審判長名で発せられる。特許庁長官は審判官の指定や審判書記官の指定(137条・144条の2)などの事務を行うにとどまり、審判の内容に関わる通知の主体ではない。本枝は通知の主体を特許庁長官としている点で誤っている。

第五十条及び第五十条の二の規定は、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。この場合において、第五十条ただし書中「第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)」とあるのは、「第十七条の二第一項第一号(拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限るものとし、拒絶査定不服審判の請求前に補正をしたときを除く。)、第三号(拒絶査定不服審判の請求前に補正をしたときを除く。)又は第四号に掲げる場合」と読み替えるものとする。
誤り。違うのは「審査官に限り特許出願について拒絶の理由を通知することができる」の部分である。拒絶査定不服審判では審判官も50条の準用により拒絶の理由を通知する(159条2項)。
50条は、審査官が拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと定める。159条2項は、この50条と50条の2を、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。審判は査定の続審であり、審判官が査定とは別の拒絶の理由で請求を退けるのであれば、審査と同じく出願人に反論と補正の機会を与えなければ不意打ちになるから、審判官にも通知を義務づけたという理屈である。再審でも174条2項が同様に準用する。したがって拒絶の理由を通知するのは審査官に限られず、審判官もする。なお前置審査では163条2項の準用により審査官が通知するが、これは審査官が通知する場面であって、枝の「限り」を支える根拠にはならない。

第五十条及び第五十条の二の規定は、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。この場合において、第五十条ただし書中「第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)」とあるのは、「第十七条の二第一項第一号(拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限るものとし、拒絶査定不服審判の請求前に補正をしたときを除く。)、第三号(拒絶査定不服審判の請求前に補正をしたときを除く。)又は第四号に掲げる場合」と読み替えるものとする。
誤り。違うのは「請求人は、当該請求を指定商品又は指定役務ごとに取り下げることができる」の部分である。請求の一部の取下げを認める特許法155条3項は、56条2項により46条1項の無効審判にだけ準用されている。
56条1項は特許法の審判に関する規定を商標法の審判に広く準用するが、請求の取下げを定める特許法155条については1項及び2項だけを準用し、同条3項は除いている。そして56条2項は、特許法155条3項(審判の請求の取下げ)の規定は46条1項の審判に準用すると定め、二以上の指定商品又は指定役務について請求したときに指定商品又は指定役務ごとに取り下げることができるのは、無効審判に限られている。46条1項は無効審判を指定商品又は指定役務ごとに請求できると明記しており、請求の単位が指定商品等ごとであるから一部の取下げも整合するが、50条1項の不使用取消審判は56条2項に挙げられていない。したがって不使用取消審判を二以上の指定商品又は指定役務について請求した場合、請求人は審決が確定するまで請求の全部を取り下げることはできるが、指定商品又は指定役務ごとに一部を取り下げることはできない。枝は不使用取消審判にも一部取下げを認めており、56条2項の準用の範囲と食い違う。

特許法第百五十五条第三項(審判の請求の取下げ)の規定は、第四十六条第一項の審判に準用する。
誤り。違うのは「異なる拒絶の理由を出願人に通知することなく、その審査の結果を特許庁長官に報告しなければならない」の部分である。前置審査で査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合には50条が準用され、審査官は拒絶の理由を通知して意見書を提出する機会を与える(163条2項)。
163条2項は、前置審査において審判の請求に係る査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に50条及び50条の2を準用すると定める。準用される50条により、審査官は出願人に対し拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならない。査定の理由は進歩性であったのに、前置審査で記載要件など別の理由が見つかったとき、出願人がその理由について一度も意見や補正の機会を得ないまま審判に戻されるのは手続の保障を欠くため、審査の段階と同じく通知と意見書の機会を要求したものである。審査官が査定をすることなく審査の結果を特許庁長官に報告するのは164条3項の定めであるが、それは特許査定ができない場合の出口であって、異なる拒絶の理由を通知する手続を省く根拠にはならない。本枝は、通知をせずに報告する義務を審査官に負わせている点が条文と食い違う。

第五十条及び第五十条の二の規定は、前条の規定による審査において審判の請求に係る査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。
誤り。違うのは「前置審査には準用されない」の部分である。163条2項は、前置審査において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に、50条とともに50条の2を準用すると明記している。
50条の2は、審査官が拒絶の理由を通知しようとする場合において、その拒絶の理由が、分割によって同時にされたこととなっている他の特許出願についてすでに通知された拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならないと定める。そして163条2項は、50条及び50条の2の規定を、前置審査において審判の請求に係る査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用すると定めている。分割出願を繰り返して同じ拒絶理由の審査をやり直させることを防ぐため、同一の拒絶理由であることを知らせたうえで、その通知後の補正に最後の拒絶理由通知の後と同じ制限を課すのが50条の2の仕組みであり、この手当てが前置審査で欠けると、審判の請求と同時の分割を使って制限を逃れる道が残る。そのため159条2項が審判に、163条2項が前置審査に、それぞれ50条の2を準用している。本枝は、この準用を否定している点が条文と食い違う。

第五十条及び第五十条の二の規定は、前条の規定による審査において審判の請求に係る査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。
誤り。違うのは「補正の制限が課されることはない」の部分である。審判の請求後に159条2項が準用する50条の拒絶理由通知を受けた場合、その指定期間内にする特許請求の範囲の補正は17条の2第1項3号の場合に当たり、同条5項各号の目的に限られる。
17条の2第1項は、拒絶理由通知を受けた後は各号の場合に限り補正ができると定め、1号の拒絶理由通知の定義は、159条2項及び163条2項において準用する場合の50条の通知を含むとかっこ書で明記している。拒絶査定不服審判で審判官が査定の理由と異なる拒絶の理由を発見し、159条2項が準用する50条により通知をした場合、出願人はすでに審査で拒絶理由通知を受けているから、この通知は「拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合」として1項3号に当たる。そして同条5項は、1項1号、3号及び4号の場合に特許請求の範囲についてする補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに限ると定める。審査で一度審理を尽くした後の補正が審査のやり直しにならないよう、審判の段階でも同じ目的の制限を課す趣旨であり、減縮のときは6項の独立特許要件も課される。本枝は、この制限が課されないとしている点が条文と食い違う。

前二項に規定するもののほか、第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶理由通知と併せて第五十条の二の規定による通知を受けた場合に限る。)において特許請求の範囲についてする補正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
誤り。違うのは「当該理由aに基づいて審判の請求は成り立たない旨の審決をすることはできない」の部分である。159条2項が50条を準用するのは査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合であり、査定の理由aで不成立の審決をするのに改めて通知は要らない。
159条2項は、50条及び50条の2の規定を、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用すると定める。50条の拒絶理由の通知を審判で準用するのは、請求人がまだ反論の機会を与えられていない新たな理由で不利益を受けないようにするためである。査定の理由aについては、審査の段階で拒絶理由通知と拒絶査定を通じて請求人がすでに意見を述べる機会を得ており、審判の請求もその理由aを争って行われている。だから審判官が理由aは解消していないと判断するときは、改めて理由aを通知することなく、理由aに基づいて審判の請求は成り立たない旨の審決をすることができる。前置審査で審査官が別の理由bを発見して報告したことは、理由bで審決するなら通知が要るというだけで、理由aについての判断を妨げない。

第五十条及び第五十条の二の規定は、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。この場合において、第五十条ただし書中「第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)」とあるのは、「第十七条の二第一項第一号(拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限るものとし、拒絶査定不服審判の請求前に補正をしたときを除く。)、第三号(拒絶査定不服審判の請求前に補正をしたときを除く。)又は第四号に掲げる場合」と読み替えるものとする。
誤り。違うのは「文書をもって行い、かつ、理由を付さなければならないことが特許法において規定されている」の部分である。特許法が文書と理由の付記を定めているのは52条1項の査定であり、50条の拒絶の理由の通知にはその定めがない。
50条は、審査官は拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと定めるだけで、通知の方式には触れていない。これに対し52条1項は、査定は文書をもって行い、かつ、理由を付さなければならないと定め、同条2項で査定の謄本の送達を特許庁長官に義務づけている。査定は審査を終わらせる処分であり、不服申立ての対象と期間がその謄本の送達で決まるため、法律で方式を固めておく必要がある。拒絶の理由の通知は審査の途中の中間手続であって、処分ではなくから、法律の方式規定は置かれず、実務上は特許法施行規則と審査の運用に委ねられている。本枝は、査定について52条1項が定める文書と理由の付記の要件を、拒絶の理由の通知にも特許法が定めているかのように述べており、条文の所在がずれている。

査定は、文書をもつて行い、かつ、理由を付さなければならない。
正しい。50条本文は拒絶査定の前に拒絶の理由を通知して意見書を提出する機会を与えることを義務づけ、同条ただし書は53条1項の補正の却下の決定をするときはこの限りでないと定めている。
50条本文は、審査官は拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと定める。出願人に反論と補正の機会を保障し、審査官の見落としを正す手続保障の規定である。同条ただし書は、17条の2第1項1号又は3号に掲げる場合、すなわち50条の2の通知を併せて受けた最初の拒絶理由通知の後と最後の拒絶理由通知の後の補正について、53条1項の却下の決定をするときはこの限りでないとする。補正が却下されれば出願は補正前の状態に戻り、その状態についてはすでに拒絶の理由が通知されて出願人が意見を述べる機会を持っていたのであるから、改めて同じ理由を通知する必要がなく、通知を繰り返すと審査が終わらない。本枝は、50条本文の義務と、ただし書で補正の却下の決定をするときが除かれることを述べており、条文のとおりである。

審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
正しい。50条3項は査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に特許法50条を準用しており、審判官は拒絶の理由を通知して意見書を提出する機会を与えなければその理由で請求不成立の審決をすることができない。
50条3項は、特許法50条の拒絶理由の通知の規定を、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。準用される特許法50条は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと定める。審判は査定に対する不服を審理する続審であり、査定で示された拒絶の理由については出願人がすでに審査段階で意見を述べ補正をする機会を得ているが、審判で初めて発見された新たな理由についてはその機会がない。そこで、新たな理由で請求を退けるときは審査と同じく通知と意見書提出の機会を保障し、出願人が補正や反論によって対応できるようにしたのである。したがって、審判官が新たな拒絶理由を通知せずにその理由で審判請求が成り立たない旨の審決をすることはできず、本枝は正しい。

特許法第五十条(拒絶理由の通知)の規定は、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。
正しい。翻訳文に外国語書面に記載した事項の範囲内にない事項が含まれていることは49条6号の拒絶理由であり、審査官は拒絶査定をしようとするときは50条により拒絶の理由を通知しなければならない。
36条の2第8項により、外国語書面出願の翻訳文は願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされる。49条6号は、特許出願が外国語書面出願である場合において、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないときを拒絶の理由とする。出願日の根拠は原文である外国語書面にあり、翻訳で原文にない事項が入り込めば出願時に開示していなかった発明に権利を与えることになるからである。出願人は誤訳訂正書による補正で翻訳文を原文の範囲に戻すことができるが(17条の2第2項)、補正されないまま審査に入れば審査官は49条6号で拒絶査定をすることになり、50条により、拒絶査定をしようとするときは出願人に拒絶の理由を通知し意見書を提出する機会を与えなければならない。枝は、翻訳文に外国語書面の範囲内にない事項が含まれていることを理由に拒絶理由を通知しなければならないとしており、49条6号と50条のとおりである。

その特許出願が外国語書面出願である場合において、当該特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき。
誤り。違うのは「特許庁長官を被告としなければならない」の部分である。63条2項で読み替えて準用する特許法179条ただし書により、取消審判の審決に対する訴えでは審判の請求人又は被請求人を被告とする。
63条1項は、取消決定又は審決に対する訴えを東京高等裁判所の専属管轄とし、2項は特許法179条を準用して、同条中「特許無効審判若しくは延長登録無効審判」とあるのを「商標法第四十六条第一項、第五十条第一項、第五十一条第一項、第五十二条の二第一項、第五十三条第一項若しくは第五十三条の二の審判」と読み替える。特許法179条は、審決に対する訴えでは特許庁長官を被告とするのを原則としつつ、ただし書で当事者系の審判の審決については審判の請求人又は被請求人を被告としなければならないとする。査定系では特許庁長官が被告になるが、無効審判や取消審判は請求人と商標権者が対立する当事者系であり、裁判所で争う相手方も審判の相手方とするのが構造に合う。東京高等裁判所の専属管轄である点は枝のとおりであるが、被告は審判の請求人又は被請求人である。

前条第一項の訴えにおいては、特許庁長官を被告としなければならない。ただし、特許無効審判若しくは延長登録無効審判又はこれらの審判の確定審決に対する第百七十一条第一項の再審の審決に対するものにあつては、その審判又は再審の請求人又は被請求人を被告としなければならない。
誤り。違うのは「その後拒絶理由通知を受けることなく、「発明の詳細な説明に、その発明に関連する文献公知発明に関する情報の所在が記載されていない。」との理由で拒絶をすべき旨の査定がされる場合がある」の部分である。拒絶をすべき旨の査定をするには50条の拒絶理由通知が要り、48条の7の通知はそれに代わらない。
48条の7は、審査官は特許出願が36条4項2号の要件を満たしていないと認めるときは出願人にその旨を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えることができると定め、49条5号は、その通知をした場合であって、明細書の補正又は意見書の提出によってもなお同号の要件を満たすこととならないときを拒絶の理由とする。しかし50条本文は、審査官が拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは出願人に拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと定め、その例外は補正の却下の決定をする場合に限られる。48条の7の通知は文献情報の記載を促す段階の通知であり、拒絶理由通知ではないため、これに応じなかったことを理由に拒絶査定をするには、改めて49条5号の拒絶理由を50条により通知しなければならないという仕組みである。枝は拒絶理由通知を受けることなく拒絶査定がされる場合があるとしており、50条本文とずれる。

審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
誤り。違うのは「審判請求人に意見書を提出する機会を与えなくてもよい」の部分である。拒絶査定不服審判で査定の理由と異なる拒絶の理由を発見したときは50条が準用され、拒絶の理由を通知して意見書を提出する機会を与えなければならない(159条2項)。
159条2項は、50条及び50条の2の規定を、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。準用される50条本文は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは出願人に拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないというものである。拒絶査定不服審判は審査の続審であり、請求人は査定の理由aについては審査段階で意見を述べ補正をする機会を得ているが、審判で初めて現れた理由bについては何も反論していない。反論の機会がない理由で不利益な審決をすることは手続の保障に反するので、審判長が新しい拒絶の理由を通知し、意見書と補正の機会を与えてから審決するという理屈である。枝は査定の理由と異なる理由bで請求不成立の審決をするのに意見書の機会を与えなくてもよいとしており、159条2項で準用される50条本文とずれる。なお、この通知の後にする補正は17条の2第1項3号の最後の拒絶理由通知の後の補正と同じ制限を受ける。

第五十条及び第五十条の二の規定は、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。この場合において、第五十条ただし書中「第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)」とあるのは、「第十七条の二第一項第一号(拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限るものとし、拒絶査定不服審判の請求前に補正をしたときを除く。)、第三号(拒絶査定不服審判の請求前に補正をしたときを除く。)又は第四号に掲げる場合」と読み替えるものとする。
誤り。違うのは「審判請求に係る指定商品ごとにその請求を取り下げることができる場合がある」の部分である。請求項ごとの取下げを定める特許法155条3項は、56条2項で46条1項の無効審判にだけ準用され、50条1項の審判には準用されない。
56条1項は特許法155条1項・2項を商標法の審判に準用し、審判の請求は審決が確定するまで取り下げることができ、答弁書の提出があった後は相手方の承諾を得なければ取り下げることができないとする。特許法155条3項は、二以上の請求項について特許無効審判を請求したときはその請求を請求項ごとに取り下げることができると定めるが、56条2項はこの項を46条1項の審判に準用すると定めるだけで、50条1項の審判は挙げていない。無効審判は46条1項後段により指定商品又は指定役務ごとに請求できるので、その単位に合わせて取下げも指定商品ごとに認めたのであり、この準用は平成23年改正で加わった。不使用取消審判も指定商品ごとに請求できるが、56条2項はこれを準用の対象にしていないので、2以上の指定商品について請求した取下げは請求の全部について行うほかない。枝は被請求人の承諾と審理終結の通知までという条件を付けて指定商品ごとの取下げができる場合があるとしているが、準用の範囲と食い違う。

特許法第百五十五条第三項(審判の請求の取下げ)の規定は、第四十六条第一項の審判に準用する。
誤り。違うのは「審査官は、請求人に対し、相当の期間を指定して、その審判請求書について補正をすべきことを命じなければならない」の部分である。審判請求書の方式違反について補正を命ずるのは133条1項の審判長であり、前置審査の審査官にその権限は準用されていない。
133条1項は、審判長は、請求書が131条の規定に違反しているときは、請求人に対し相当の期間を指定して請求書について補正をすべきことを命じなければならないと定める。請求の趣旨及びその理由は131条1項3号の必要的記載事項なので、その記載が無い請求書は補正命令の対象になるが、命ずる主体は審判長である。前置審査の審査官に準用されるのは、163条1項の48条、53条、54条、同条2項の50条、50条の2、同条3項の51条、52条に限られ、審判請求書の方式を扱う133条は含まれていない。前置審査は審判の請求に係る特許出願の内容を審査官に見させる手続であり、審判の請求そのものが適式かどうかは審判手続の問題として審判長が扱うという役割分担である。審判請求書の不備は、前置審査に付される前後を問わず審判長が補正を命じ、補正が無ければ133条3項により決定で請求書を却下する。

審判長は、請求書が第百三十一条の規定に違反しているときは、請求人に対し、相当の期間を指定して、請求書について補正をすべきことを命じなければならない。
誤り。違うのは「その指定期間の経過後であっても、その期間の延長を請求することができる場合がある」の部分である。5条3項で経過後の延長請求ができるのは経済産業省令で定める期間に限られ、前置審査で審査官が指定した期間は省令から除かれている。
5条1項は、特許庁長官、審判長又は審査官が指定した期間を請求により又は職権で延長することができると定め、同条3項は、その延長のうち経済産業省令で定める期間に係るものに限り、期間が経過した後であっても省令で定める期間内に限り請求することができるとする。経過後の延長請求は期間徒過の不利益を和らげるためのものであるが、どの期間を対象にするかは省令に委ねられている。特許法施行規則4条の2は、審査における50条の拒絶理由通知の指定期間を対象に含める一方で、拒絶査定不服審判の請求後に163条2項で準用する50条により審査官が指定した期間、すなわち前置審査の指定期間を除いている。前置審査は審判の請求と同時にした補正を審査官が短期間で見直す手続であり、期間を後から延ばすと審判の進行が遅れるからである。したがって本枝の場面で経過後に延長を請求できる場合はない。

第一項の規定による期間の延長(経済産業省令で定める期間に係るものに限る。)は、その期間が経過した後であつても、経済産業省令で定める期間内に限り、請求することができる。
正しい。補正の時期が制限されるのは50条の拒絶理由通知を受けた後であり(17条の2第1項ただし書)、48条の7の通知は拒絶理由通知ではないので、最初の拒絶理由通知を受ける前であれば、その指定期間の経過後でも特許査定の謄本の送達前は補正ができる。
17条の2第1項は、特許出願人は特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができると定め、ただし書で、50条の規定による通知を受けた後は各号に掲げる場合に限り補正をすることができるとする。補正の時期を区切る出来事は50条の拒絶理由通知であり、48条の7の通知、すなわち文献公知発明に係る情報の記載が36条4項2号の要件を満たしていないときに意見書を提出する機会を与える通知は、拒絶理由通知ではない。1項2号が48条の7の通知後の補正を指定期間内に限るのは、「拒絶理由通知を受けた後」に同通知を受けた場合だけである。最初の拒絶理由通知を受けていない段階では1項本文の原則がそのまま当てはまるから、48条の7の指定期間が経過していても、特許査定の謄本の送達前なら補正ができる。したがって枝は条文のとおりである。

特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
正しい。17条の2第3項に違反する補正は49条1号の拒絶理由であり、50条本文により拒絶査定の前に拒絶理由を通知して意見書を提出する機会を与えなければならず、ただし書で53条1項の却下の決定をする場合も既に通知した拒絶理由で査定するから、意見書の機会なしに拒絶査定がされることはない。
49条1号は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が17条の2第3項又は4項の要件を満たしていないときを拒絶の理由とし、50条本文は、審査官は拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは特許出願人に拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと定める。50条ただし書は、最初の拒絶理由通知に併せて50条の2の通知をした場合又は最後の拒絶理由通知の後にした補正について53条1項の却下の決定をするときは通知を要しないとするが、これは新規事項を含む補正を決定で却下したうえで、補正前の内容について既に通知してある拒絶理由により査定する場面であり、意見書の機会はその拒絶理由について与えられている。いずれの道でも、意見書を提出する機会を一度も与えずに拒絶査定がされることはない。

審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
誤り。違うのは「請求人に意見書を提出する機会が与えられることなく、審判請求は成り立たない旨の審決がされることがある」の部分である。159条2項が準用する50条により、査定の理由と異なる拒絶の理由を発見したときは、拒絶の理由を通知して意見書を提出する機会を与えなければならない。
159条2項は、50条の規定は、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用すると定め、50条は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは出願人に対し拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと定める。拒絶査定不服審判は審査の続審であり、審判官は査定の理由に縛られずに新たな拒絶の理由を見つけて判断できるが、請求人がまだ反論していない理由で請求を退けるのであれば、審査の段階と同じように意見書と補正の機会を与えなければ手続の保障を欠く。本枝の理由bは、審査でも審判でも請求人が意見を述べていない理由であるから、審判長は理由bを通知して意見書の提出の機会を与えなければならず、それを飛ばして請求不成立の審決をすることは許されない。もし通知なく審決がされれば、その審決は手続違背として取消しの対象になる。枝は、意見書の機会なしに審決がされることがあるとしている点で条文と食い違う。

審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
審査官は、前条の規定により特許出願について拒絶の理由を通知しようとする場合において、当該拒絶の理由が、他の特許出願(当該特許出願と当該他の特許出願の少なくともいずれか一方に第四十四条第二項の規定が適用されたことにより当該特許出願と同時にされたこととなつているものに限る。)についての前条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知(当該特許出願についての出願審査の請求前に当該特許出願の出願人がその内容を知り得る状態になかつたものを除く。)に係る拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならない。
正しい。最初の拒絶理由通知であっても、それと併せて50条の2の通知を受けた場合には、特許請求の範囲の補正は17条の2第5項各号の目的に限られる。
17条の2第5項は、1項1号・3号・4号に掲げる場合の特許請求の範囲の補正を請求項の削除・特許請求の範囲の減縮・誤記の訂正・明りょうでない記載の釈明の四つの目的に限るが、1号の最初の拒絶理由通知の場合については、拒絶理由通知と併せて50条の2の通知を受けた場合に限るとかっこ書で絞っている。50条の2の通知は、分割の関係にある他の特許出願で既に通知された拒絶理由と同一の拒絶理由を通知するときに、審査官がその旨を併せて通知するものである。もとの出願で一度指摘された理由であるから出願人はそれを知り得た立場にあり、最初の通知であっても最後の拒絶理由通知の後と同じ目的の制限を課しても酷ではないという理屈である。分割に係る新たな特許出願は50条の2の通知を受け得るから、最初の拒絶理由通知の指定期間内の補正でも目的が制限されることがあるとする本枝は条文どおりである。

前二項に規定するもののほか、第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶理由通知と併せて第五十条の二の規定による通知を受けた場合に限る。)において特許請求の範囲についてする補正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
誤り。違うのは「特許出願Aについて、特許法第 50条の2の通知がされることはない」の部分である。50条の2は当該出願と他の出願の少なくともいずれか一方に44条2項が適用されていれば働くから、もとの出願Aにも通知される。
50条の2は、審査官が特許出願について拒絶の理由を通知しようとする場合において、その拒絶の理由が他の特許出願についての拒絶理由通知に係る拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならないと定め、他の特許出願を、当該特許出願と当該他の特許出願の少なくともいずれか一方に44条2項の規定が適用されたことにより当該特許出願と同時にされたこととなっているものに限る。分割の関係にある出願の間で同じ拒絶の理由を繰り返し通知される出願人には、既に反論の機会があったとみて最初の通知から補正の目的を制限するのがこの通知の趣旨であり、どちらが先に拒絶理由を受けたかは問わない。分割出願Bに44条2項が適用されてAと同時にされたこととなっている以上、Bに通知した拒絶の理由と同一の理由をAに通知するときはAについても50条の2の通知がされる。したがって、Aに通知がされることはないとする枝はずれている。

審査官は、前条の規定により特許出願について拒絶の理由を通知しようとする場合において、当該拒絶の理由が、他の特許出願(当該特許出願と当該他の特許出願の少なくともいずれか一方に第四十四条第二項の規定が適用されたことにより当該特許出願と同時にされたこととなつているものに限る。)についての前条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知(当該特許出願についての出願審査の請求前に当該特許出願の出願人がその内容を知り得る状態になかつたものを除く。)に係る拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならない。
誤り。違うのは「特許出願Aの審査における拒絶理由の通知と併せて」の部分である。50条の2の通知は、出願Aの出願審査の請求前に出願人が知り得る状態になかった出願Bの拒絶理由については要らない。
50条の2は、審査官が拒絶の理由を通知しようとする場合に、その拒絶の理由が、分割により同時にされたこととなっている他の特許出願についての拒絶理由通知に係る拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならないと定めるが、かっこ書で、当該特許出願についての出願審査の請求前に出願人がその内容を知り得る状態になかった通知を除く。この通知を受けると、出願人の補正は最初の拒絶理由通知の段階から17条の2第5項の目的制限を受ける。他の出願で既に示された拒絶理由を知ったうえで審査請求をした出願人には、改めて広い補正の機会を与える必要がないという理屈であり、裏返せば、審査請求の時点で知りようがなかった拒絶理由には当てはまらない。枝では出願Aと出願Bの出願審査の請求が同じ日にされ、出願Bの拒絶理由通知はその後であるから、出願Aの審査請求前に出願人が知り得る状態になかったものに当たり、50条の2の通知をしなければならないという定めはない。

審査官は、前条の規定により特許出願について拒絶の理由を通知しようとする場合において、当該拒絶の理由が、他の特許出願(当該特許出願と当該他の特許出願の少なくともいずれか一方に第四十四条第二項の規定が適用されたことにより当該特許出願と同時にされたこととなつているものに限る。)についての前条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知(当該特許出願についての出願審査の請求前に当該特許出願の出願人がその内容を知り得る状態になかつたものを除く。)に係る拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならない。
誤り。違うのは「前置審査には準用されない」の部分である。163条2項は、前置審査において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に、50条とともに50条の2を準用すると明記している。
50条の2は、審査官が拒絶の理由を通知しようとする場合において、その拒絶の理由が、分割によって同時にされたこととなっている他の特許出願についてすでに通知された拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならないと定める。そして163条2項は、50条及び50条の2の規定を、前置審査において審判の請求に係る査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用すると定めている。分割出願を繰り返して同じ拒絶理由の審査をやり直させることを防ぐため、同一の拒絶理由であることを知らせたうえで、その通知後の補正に最後の拒絶理由通知の後と同じ制限を課すのが50条の2の仕組みであり、この手当てが前置審査で欠けると、審判の請求と同時の分割を使って制限を逃れる道が残る。そのため159条2項が審判に、163条2項が前置審査に、それぞれ50条の2を準用している。本枝は、この準用を否定している点が条文と食い違う。

第五十条及び第五十条の二の規定は、前条の規定による審査において審判の請求に係る査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。
誤り。違うのは「請求項の削除を目的とするもののみに限られる」の部分である。17条の2第5項により、補正の目的は請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明の四つに限られる。
17条の2第5項は、1項1号、3号及び4号に掲げる場合において特許請求の範囲についてする補正は、次に掲げる事項を目的とするものに限ると定め、1号の場合については、拒絶理由通知と併せて50条の2の規定による通知を受けた場合に限るとかっこ書で絞っている。各号は、36条5項に規定する請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明の四つである。50条の2の通知は、分割出願に対する拒絶理由が、もとの出願などで既に通知された拒絶理由と同一であることを知らせるものであり、出願人は既にその拒絶理由に対応する機会を得ていたから、最初の拒絶理由通知であっても最後の拒絶理由通知の後と同じ制限をかける理屈である。したがって課される制限は5項各号と6項の独立特許要件であり、請求項の削除だけに限られるわけではない。枝は四つの目的のうち一つだけを残しており、条文に反する。

前二項に規定するもののほか、第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶理由通知と併せて第五十条の二の規定による通知を受けた場合に限る。)において特許請求の範囲についてする補正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
誤り。違うのは「特許法第 50 条の2の規定による通知をしなければならない」の部分である。50条の2の通知の対象は、もとの出願について50条により通知した拒絶理由と同一の場合であり、補正の却下の決定の理由aは拒絶理由通知に係る拒絶の理由ではない。
50条の2は、審査官が特許出願について拒絶の理由を通知しようとする場合において、当該拒絶の理由が、44条2項の適用により当該特許出願と同時にされたこととなっている他の特許出願についての50条の規定による通知に係る拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならないと定める。もとの出願で通知済みで出願人が対応の機会を得た拒絶理由を分割出願で繰り返す場合に、17条の2第5項の制限を課すための仕組みであるから、対象は「50条の規定による通知」に係る拒絶の理由に限られる。出願Aで理由aが示されたのは、最後の拒絶理由通知の後の補正イについて独立特許要件を欠くとした53条の補正の却下の決定においてであり、拒絶理由通知として通知された理由ではない。理由aについて甲は意見書と補正で応答する機会を得ていないから、出願Bで理由aを通知するときに50条の2の通知を併せてする義務はない。

審査官は、前条の規定により特許出願について拒絶の理由を通知しようとする場合において、当該拒絶の理由が、他の特許出願(当該特許出願と当該他の特許出願の少なくともいずれか一方に第四十四条第二項の規定が適用されたことにより当該特許出願と同時にされたこととなつているものに限る。)についての前条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知(当該特許出願についての出願審査の請求前に当該特許出願の出願人がその内容を知り得る状態になかつたものを除く。)に係る拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならない。
誤り。違うのは「既に通知された拒絶の理由と同一である旨を、その拒絶の理由と併せて通知しなければならない」の部分である。50条の2のかっこ書は、出願Bの出願審査の請求前に出願人乙がその内容を知り得る状態になかった出願Aの拒絶理由通知を除いている。
50条の2は、審査官が拒絶の理由を通知しようとする場合において、その拒絶の理由が、分割によって同時にされたこととなっている他の特許出願についての拒絶理由通知に係る拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならないと定め、かっこ書で、当該特許出願についての出願審査の請求前に当該特許出願の出願人がその内容を知り得る状態になかった通知を除く。同一である旨の通知を受けると、出願人は最初の拒絶理由通知に対する補正であっても17条の2第5項の目的の制限を受けるから、その不利益を課してよいのは、他の出願の拒絶理由を知りながら同じ内容で審査を求めた出願人に限られる。出願Bの特許を受ける権利を承継した乙は甲から出願Aの拒絶理由を知らされておらず、出願Aは出願公開前で書類の閲覧もできなかったから、乙が出願審査の請求をした時点で出願Aの通知は知り得る状態になかったものにあたる。

審査官は、前条の規定により特許出願について拒絶の理由を通知しようとする場合において、当該拒絶の理由が、他の特許出願(当該特許出願と当該他の特許出願の少なくともいずれか一方に第四十四条第二項の規定が適用されたことにより当該特許出願と同時にされたこととなつているものに限る。)についての前条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知(当該特許出願についての出願審査の請求前に当該特許出願の出願人がその内容を知り得る状態になかつたものを除く。)に係る拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならない。
正しい。最初の拒絶理由通知であっても、50条の2の通知を併せて受けたときは、指定期間内にする特許請求の範囲の補正は17条の2第5項各号の事項を目的とするものに限られる。
17条の2第5項は、1項1号、3号及び4号に掲げる場合において特許請求の範囲についてする補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに限ると定め、1号の最初の拒絶理由通知の場合については、拒絶理由通知と併せて50条の2の規定による通知を受けた場合に限ると括弧書で絞っている。50条の2の通知は、分割出願とその原出願のように44条2項で同時にされたこととなっている他の出願について既に通知された拒絶の理由と同一であるときに審査官が併せてする通知である。出願人は原出願の審査で同じ拒絶の理由を既に知り、それに応じて補正する機会を得ていたのだから、分割出願で初めての通知を受けたときも、最後の拒絶理由通知の後と同じ目的の制限を課して、同じ審査を繰り返させないという理屈である。出願Bは出願Aの分割出願で、拒絶理由通知bと併せて出願Aに通知済みの理由と同一である旨の通知を受けているから、枝の場合は1項1号の括弧書に当たり、補正の目的は5項各号に限られる。

前二項に規定するもののほか、第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶理由通知と併せて第五十条の二の規定による通知を受けた場合に限る。)において特許請求の範囲についてする補正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
誤り。違うのは「審査官は、請求人に対し、相当の期間を指定して、その審判請求書について補正をすべきことを命じなければならない」の部分である。審判請求書の方式違反について補正を命ずるのは133条1項の審判長であり、前置審査の審査官にその権限は準用されていない。
133条1項は、審判長は、請求書が131条の規定に違反しているときは、請求人に対し相当の期間を指定して請求書について補正をすべきことを命じなければならないと定める。請求の趣旨及びその理由は131条1項3号の必要的記載事項なので、その記載が無い請求書は補正命令の対象になるが、命ずる主体は審判長である。前置審査の審査官に準用されるのは、163条1項の48条、53条、54条、同条2項の50条、50条の2、同条3項の51条、52条に限られ、審判請求書の方式を扱う133条は含まれていない。前置審査は審判の請求に係る特許出願の内容を審査官に見させる手続であり、審判の請求そのものが適式かどうかは審判手続の問題として審判長が扱うという役割分担である。審判請求書の不備は、前置審査に付される前後を問わず審判長が補正を命じ、補正が無ければ133条3項により決定で請求書を却下する。

審判長は、請求書が第百三十一条の規定に違反しているときは、請求人に対し、相当の期間を指定して、請求書について補正をすべきことを命じなければならない。
審査官は、特許出願について拒絶の理由を発見しないときは、特許をすべき旨の査定をしなければならない。
正しい。特許査定を定める51条は、159条3項により拒絶査定不服審判に、163条3項により前置審査に準用されている。
51条は、審査官は特許出願について拒絶の理由を発見しないときは特許をすべき旨の査定をしなければならないと定める。159条3項は、51条などの規定を拒絶査定不服審判の請求を理由があるとする場合における当該審判について準用すると定め、163条3項は、51条及び52条の規定を162条の審査において審判の請求を理由があるとする場合に準用すると定める。拒絶査定不服審判は査定の続審であり、審判官が拒絶の理由がないと判断したときは、160条でさらに審査に付す審決をする道もあるが、審判の中でそのまま特許をすべき旨の審決をして手続を終えるのが原則であるから、51条を準用して特許審決の根拠にしている。前置審査でも、審査官は補正後の内容で拒絶の理由を発見しなければ特許査定をし、164条1項により審判の請求に係る拒絶査定を取り消す。どちらの手続でも51条が準用されているから、枝は準用されている規定に当たる。

第五十一条、第六十七条の三第二項から第四項まで及び第六十七条の七第二項から第四項までの規定は、拒絶査定不服審判の請求を理由があるとする場合における当該審判について準用する。
誤り。違うのは「特許をすべき旨の審決をしなければならず、当該審決において」の部分である。前置審査で審査官がするのは特許をすべき旨の査定であり(163条3項が準用する51条)、その査定をするときに拒絶査定を取り消す(164条1項)。審決は審判官の合議体がするものである。
163条3項は、前置審査において審判の請求を理由があるとする場合に51条及び52条を準用すると定め、準用される51条により、審査官は拒絶の理由を発見しないときは特許をすべき旨の査定をしなければならない。そして164条1項は、審査官は162条の審査において特許をすべき旨の査定をするときは、審判の請求に係る拒絶をすべき旨の査定を取り消さなければならないと定める。前置審査は審判官の合議体が審理する前に審査官が補正後の出願をもう一度見る手続であり、審査官の処分は審査と同じ査定の形をとる。審決は136条の合議体が審判事件について下す判断であり、審査官が審決をすることはない。前置審査で特許にできるときは審査官自身が拒絶査定を取り消して特許査定をし、できないときは164条3項により査定をせずに長官に報告し、そこで初めて審判官の審理が始まって審決に至る。本枝は、審査官がする処分を審決としている点が条文と食い違う。

審査官は、第百六十二条の規定による審査において特許をすべき旨の査定をするときは、審判の請求に係る拒絶をすべき旨の査定を取り消さなければならない。
誤り。違うのは「特許をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から30日以内であれば、その特許出願は、出願の分割をすることができる」の部分である。前置審査における特許をすべき旨の査定は、44条1項2号のかっこ書で分割できる場合から除かれている。
44条1項2号は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から30日以内に分割できると定めるが、かっこ書で、163条3項において準用する51条の規定による特許をすべき旨の査定、すなわち前置審査で審判の請求を理由があるとしてされる特許査定と、160条1項の審査に付された出願についての特許査定を除いている。査定後の分割を認めた2号は、通常の特許査定を受けた出願人に、明細書に残した発明を別出願にする機会を与えるものであり、拒絶査定を受けて審判を請求した出願には、3号により拒絶査定の謄本の送達から3月以内の分割の機会がすでに与えられている。前置審査の特許査定にまで30日の期間を重ねて認めれば二度目の機会を与えることになるため、かっこ書で除外された。本枝の出願は前置審査による特許査定を受けており、最初の拒絶査定の謄本の送達から3月を経過していれば、特許査定の謄本の送達から30日以内でも分割することはできない。

特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。
正しい。51条により審査官は拒絶の理由を発見しないときは特許をすべき旨の査定をしなければならず、52条1項により査定は文書をもって行い理由を付さなければならない。
51条は、審査官は特許出願について拒絶の理由を発見しないときは特許をすべき旨の査定をしなければならないと定める。審査官に裁量はなく、49条各号の拒絶理由のどれにも当たらない以上、特許査定をする義務を負う。52条1項は、査定は文書をもって行い、かつ理由を付さなければならないと定め、ここでいう査定は拒絶査定と特許査定の両方を含む。特許査定にも理由を付すのは、どの請求項についてどのような判断で特許を認めたかを文書に残し、後の審判や訴訟で審査の経過を確かめられるようにするためである。したがって、拒絶理由を発見しないときは特許査定をしなければならず、その特許査定には理由を付さなければならないという枝は、51条と52条1項のとおりである。拒絶査定の前には50条により拒絶理由の通知が要るが、特許査定の前にそのような通知は要らない点が両者の違いである。

査定は、文書をもつて行い、かつ、理由を付さなければならない。
誤り。違うのは「特許庁長官を被告としなければならない」の部分である。63条2項で読み替えて準用する特許法179条ただし書により、取消審判の審決に対する訴えでは審判の請求人又は被請求人を被告とする。
63条1項は、取消決定又は審決に対する訴えを東京高等裁判所の専属管轄とし、2項は特許法179条を準用して、同条中「特許無効審判若しくは延長登録無効審判」とあるのを「商標法第四十六条第一項、第五十条第一項、第五十一条第一項、第五十二条の二第一項、第五十三条第一項若しくは第五十三条の二の審判」と読み替える。特許法179条は、審決に対する訴えでは特許庁長官を被告とするのを原則としつつ、ただし書で当事者系の審判の審決については審判の請求人又は被請求人を被告としなければならないとする。査定系では特許庁長官が被告になるが、無効審判や取消審判は請求人と商標権者が対立する当事者系であり、裁判所で争う相手方も審判の相手方とするのが構造に合う。東京高等裁判所の専属管轄である点は枝のとおりであるが、被告は審判の請求人又は被請求人である。

前条第一項の訴えにおいては、特許庁長官を被告としなければならない。ただし、特許無効審判若しくは延長登録無効審判又はこれらの審判の確定審決に対する第百七十一条第一項の再審の審決に対するものにあつては、その審判又は再審の請求人又は被請求人を被告としなければならない。
誤り。違うのは「特許をすべき旨の審決をしなければならない」の部分である。延長登録の出願についての拒絶査定不服審判で請求に理由があるときは、159条3項が準用する67条の3第2項により延長登録をすべき旨の審決をする。
159条3項は、51条、67条の3第2項から4項まで及び67条の7第2項から4項までの規定を、拒絶査定不服審判の請求を理由があるとする場合における当該審判について準用する。51条は特許出願について拒絶の理由を発見しないときの特許をすべき旨の査定であり、67条の3第2項は、67条2項の延長登録の出願について拒絶の理由を発見しないときは延長登録をすべき旨の査定をしなければならないと定める。延長登録の出願は既に成立した特許権の存続期間を延ばす手続であり、新たに特許を与える手続ではないから、審判で請求に理由があるときの結論も特許ではなく延長登録になるという対応である。67条の7が対象とする67条4項の延長登録の出願も同じく延長登録をすべき旨の審決である。枝は特許出願の場合の51条の結論を延長登録の出願に持ち込んでおり、準用される条文がずれている。

第五十一条、第六十七条の三第二項から第四項まで及び第六十七条の七第二項から第四項までの規定は、拒絶査定不服審判の請求を理由があるとする場合における当該審判について準用する。
| 対象 | 準用される条文 | 審決 |
|---|---|---|
| 特許出願 | 51条 | 特許をすべき旨の審決 |
| 67条2項の延長登録の出願(審査の遅れ分) | 67条の3第2項 | 延長登録をすべき旨の審決 |
| 67条4項の延長登録の出願(処分を待った分) | 67条の7第2項 | 延長登録をすべき旨の審決 |
誤り。違うのは「審査官は、請求人に対し、相当の期間を指定して、その審判請求書について補正をすべきことを命じなければならない」の部分である。審判請求書の方式違反について補正を命ずるのは133条1項の審判長であり、前置審査の審査官にその権限は準用されていない。
133条1項は、審判長は、請求書が131条の規定に違反しているときは、請求人に対し相当の期間を指定して請求書について補正をすべきことを命じなければならないと定める。請求の趣旨及びその理由は131条1項3号の必要的記載事項なので、その記載が無い請求書は補正命令の対象になるが、命ずる主体は審判長である。前置審査の審査官に準用されるのは、163条1項の48条、53条、54条、同条2項の50条、50条の2、同条3項の51条、52条に限られ、審判請求書の方式を扱う133条は含まれていない。前置審査は審判の請求に係る特許出願の内容を審査官に見させる手続であり、審判の請求そのものが適式かどうかは審判手続の問題として審判長が扱うという役割分担である。審判請求書の不備は、前置審査に付される前後を問わず審判長が補正を命じ、補正が無ければ133条3項により決定で請求書を却下する。

審判長は、請求書が第百三十一条の規定に違反しているときは、請求人に対し、相当の期間を指定して、請求書について補正をすべきことを命じなければならない。
正しい。159条3項が準用する51条により、拒絶査定不服審判の請求を理由があるとする場合には、審判官は拒絶の理由を発見しないときは特許をすべき旨の審決をしなければならず、160条1項の差戻しの審決をしないときは特許審決になる。
159条3項は、51条の規定を拒絶査定不服審判の請求を理由があるとする場合における当該審判について準用する。51条は、審査官は特許出願について拒絶の理由を発見しないときは特許をすべき旨の査定をしなければならないと定めるから、準用により、審判官は請求を理由があると判断し拒絶の理由を発見しないときは特許をすべき旨の審決をしなければならない。一方、160条1項は、拒絶査定不服審判において査定を取り消すときはさらに審査に付すべき旨の審決をすることができると定め、同条3項は、この審決をするときは159条3項を適用しないとする。差戻しの審決は審判官が自ら特許審決をせずに審査官に続きを委ねる道であり、これを選ばないのであれば、拒絶の理由がない以上は特許審決をするほかない。本枝は、請求に理由があり、査定と異なる拒絶理由もなく、差戻しもしないときは特許審決をしなければならないとしており、条文の仕組みのとおりである。

第五十一条、第六十七条の三第二項から第四項まで及び第六十七条の七第二項から第四項までの規定は、拒絶査定不服審判の請求を理由があるとする場合における当該審判について準用する。
1査定は、文書をもつて行い、かつ、理由を付さなければならない。
2特許庁長官は、査定があつたときは、査定の謄本を特許出願人に送達しなければならない。
正しい。51条により審査官は拒絶の理由を発見しないときは特許をすべき旨の査定をしなければならず、52条1項により査定は文書をもって行い理由を付さなければならない。
51条は、審査官は特許出願について拒絶の理由を発見しないときは特許をすべき旨の査定をしなければならないと定める。審査官に裁量はなく、49条各号の拒絶理由のどれにも当たらない以上、特許査定をする義務を負う。52条1項は、査定は文書をもって行い、かつ理由を付さなければならないと定め、ここでいう査定は拒絶査定と特許査定の両方を含む。特許査定にも理由を付すのは、どの請求項についてどのような判断で特許を認めたかを文書に残し、後の審判や訴訟で審査の経過を確かめられるようにするためである。したがって、拒絶理由を発見しないときは特許査定をしなければならず、その特許査定には理由を付さなければならないという枝は、51条と52条1項のとおりである。拒絶査定の前には50条により拒絶理由の通知が要るが、特許査定の前にそのような通知は要らない点が両者の違いである。

査定は、文書をもつて行い、かつ、理由を付さなければならない。
誤り。違うのは「審査官は、請求人に対し、相当の期間を指定して、その審判請求書について補正をすべきことを命じなければならない」の部分である。審判請求書の方式違反について補正を命ずるのは133条1項の審判長であり、前置審査の審査官にその権限は準用されていない。
133条1項は、審判長は、請求書が131条の規定に違反しているときは、請求人に対し相当の期間を指定して請求書について補正をすべきことを命じなければならないと定める。請求の趣旨及びその理由は131条1項3号の必要的記載事項なので、その記載が無い請求書は補正命令の対象になるが、命ずる主体は審判長である。前置審査の審査官に準用されるのは、163条1項の48条、53条、54条、同条2項の50条、50条の2、同条3項の51条、52条に限られ、審判請求書の方式を扱う133条は含まれていない。前置審査は審判の請求に係る特許出願の内容を審査官に見させる手続であり、審判の請求そのものが適式かどうかは審判手続の問題として審判長が扱うという役割分担である。審判請求書の不備は、前置審査に付される前後を問わず審判長が補正を命じ、補正が無ければ133条3項により決定で請求書を却下する。

審判長は、請求書が第百三十一条の規定に違反しているときは、請求人に対し、相当の期間を指定して、請求書について補正をすべきことを命じなければならない。
1第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて第五十条の二の規定による通知をした場合に限る。)において、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項から第六項までの規定に違反しているものと特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。
2前項の規定による却下の決定は、文書をもつて行い、かつ、理由を付さなければならない。
3第一項の規定による却下の決定に対しては、不服を申し立てることができない。ただし、拒絶査定不服審判を請求した場合における審判においては、この限りでない。
誤り。違うのは「その補正後の特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない」の部分である。17条の2第5項に違反する補正は、審査官が決定をもって却下するのであり、拒絶の理由にはならない。
17条の2第5項2号は、特許請求の範囲の減縮を、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限ると定める。この要件を欠く減縮は5項に違反する補正であり、53条1項は、最後の拒絶理由通知の後にした補正が17条の2第3項から6項までの規定に違反していると特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は決定をもってその補正を却下しなければならないと定める。一方、49条1号が拒絶の理由として挙げるのは17条の2第3項又は4項の要件を満たしていない補正だけで、5項・6項の違反は含まれていない。目的外の補正は補正そのものを却下し、補正前の特許請求の範囲について審査を続ければ足りるのであって、出願全体を拒絶する理由にはならないという仕組みである。したがって審査官は補正を却下するのであり、そのことを理由に拒絶査定をするとする本枝は条文と食い違う。

第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて第五十条の二の規定による通知をした場合に限る。)において、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項から第六項までの規定に違反しているものと特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。
正しい。53条3項ただし書により、補正の却下の決定は拒絶査定不服審判を請求した場合のその審判において争うことができる。
53条3項は、補正の却下の決定に対しては不服を申し立てることができないと定めつつ、ただし書で、拒絶査定不服審判を請求した場合における審判においてはこの限りでないとする。補正の却下は審査の途中で行われる中間的な処分であり、これに独立の不服申立てを認めると審査が止まってしまうから、単独では争わせない。他方、却下された補正前の明細書等で審査が続いて拒絶査定に至れば、出願人が受ける不利益は却下と査定とが一体になって生じるので、拒絶査定不服審判の中で却下の当否も併せて審理させるのが筋である。枝のように補正の却下の決定とともに拒絶査定がされた場合、出願人は拒絶査定不服審判を請求し、その審判において却下の決定の可否を争うことができるから、枝のとおりである。審判で却下が不当と判断されれば、補正後の内容で特許の可否が審理される。

第一項の規定による却下の決定に対しては、不服を申し立てることができない。ただし、拒絶査定不服審判を請求した場合における審判においては、この限りでない。
誤り。違うのは「その補正を却下することなく、拒絶をすべき旨の査定をすることができる」の部分である。最後の拒絶理由通知の後の補正が17条の2第3項に違反するときは、審査官は決定でその補正を却下しなければならない。
53条1項は、17条の2第1項3号に掲げる場合、すなわち最後の拒絶理由通知に対する指定期間内にした補正が、同条3項から6項までの規定に違反しているものと特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は決定をもってその補正を却下しなければならないと定める。最後の拒絶理由通知の後は審査がほぼ終わった段階であり、違反する補正を審査の対象に取り込んで改めて通知を繰り返すのではなく、補正を却下して補正前の状態で審査を終えるのが制度の建前である。本枝では、新規事項の追加を理由とする最後の拒絶理由通知に対する補正がその拒絶理由を解消していないのであるから、補正後の明細書等はなお3項に違反しており、53条1項の却下の要件を満たす。審査官は決定で補正を却下したうえで、補正前の明細書等について49条1号により拒絶査定をするのであり、却下を省いて査定することはできない。

第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて第五十条の二の規定による通知をした場合に限る。)において、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項から第六項までの規定に違反しているものと特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。
誤り。違うのは「特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないときは、当該補正は却下される」の部分である。独立特許要件(17条の2第6項)が課されるのは5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正だけで、明りょうでない記載の釈明のみを目的とする補正には課されない。
17条の2第5項は、最後の拒絶理由通知を受けた後の特許請求の範囲の補正を、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに限り、同条6項は、126条7項の独立特許要件を前項2号の場合、すなわち減縮を目的とする補正に準用する。減縮は発明を特定する事項を限定して新たな発明にする補正であるから、補正後の発明が特許を受けられないのであれば改めて審査する実益がなく、却下して補正前の状態で審査を終えるのが合理的である。これに対し明りょうでない記載の釈明は、拒絶の理由に示された事項について記載を明確にするだけで発明の内容を変えないから、補正後の発明の特許性を改めて問う理由がない。53条1項が却下の対象とするのは3項から6項までの違反であり、本枝の補正は4号の目的に適合し6項の適用もないから、独立して特許を受けられないことを理由に却下されることはない。

第百二十六条第七項の規定は、前項第二号の場合に準用する。
誤り。違うのは「行政不服審査法の規定による審査請求をすることができる」の部分である。補正の却下の決定に対しては不服を申し立てることができず、拒絶査定不服審判の中で争う(53条3項)。
53条3項は、補正の却下の決定に対しては不服を申し立てることができないと定め、ただし書で拒絶査定不服審判を請求した場合における審判においてはこの限りでないとする。補正の却下は審査の途中でされる処分であり、これを独立に争わせると審査が止まるうえ、却下の当否は補正前の明細書等でされた拒絶査定の当否と一体で判断するのが合理的だから、拒絶査定不服審判の中でまとめて争わせる仕組みである。したがって却下の決定を単独で行政不服審査法の審査請求の対象とすることはできず、195条の4も、補正の却下の決定などについては行政不服審査法による審査請求をすることができないと定めている。枝のように最後の拒絶理由通知の後の補正が新規事項の追加を理由に却下され拒絶査定がされた場合、出願人は拒絶査定不服審判を請求し、その審判の中で却下の当否を争う。

第一項の規定による却下の決定に対しては、不服を申し立てることができない。ただし、拒絶査定不服審判を請求した場合における審判においては、この限りでない。
正しい。補正の却下を定める53条は、159条1項により拒絶査定不服審判に、163条1項により前置審査に準用されている。
53条1項は、最後の拒絶理由通知の指定期間内などにした明細書等の補正が17条の2第3項から6項までの規定に違反しているときは、審査官が決定をもってその補正を却下しなければならないと定める。159条1項は、53条を拒絶査定不服審判に準用し、その際に17条の2第1項1号又は3号とあるのを1号、3号又は4号と読み替え、審判の請求前にした補正を除くとする。4号は審判の請求と同時にする補正であるから、審判の中で審判官が審判請求時の補正を却下できるようにしたものである。163条1項も、48条、53条及び54条を162条の前置審査に準用し、同じ読替えを置く。ただし164条2項により、前置審査の審査官は特許査定をする場合を除いて補正の却下の決定をしてはならず、却下すべきと考えるときは査定をせずに特許庁長官に報告して審判に戻す。却下の当否は審判で判断させる趣旨である。したがって53条はどちらの手続にも準用されており、枝は数に入る。

第五十三条の規定は、拒絶査定不服審判に準用する。この場合において、第五十三条第一項中「第十七条の二第一項第一号又は第三号」とあるのは「第十七条の二第一項第一号、第三号又は第四号」と、「補正が」とあるのは「補正(同項第一号又は第三号に掲げる場合にあつては、拒絶査定不服審判の請求前にしたものを除く。)が」と読み替えるものとする。
正しい。審判の請求と同時にした特許請求の範囲の補正が17条の2第4項に違反すると特許をすべき旨の審決の謄本の送達前に認めたときは、審判官は159条1項が準用する53条1項により決定でその補正を却下しなければならない。
17条の2第4項は、同条1項各号の場合に特許請求の範囲について補正をするときは、補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かの判断が示された発明と、補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならないと定める。審判の請求と同時にする補正は同条1項4号の場合であるから、この制限を受ける。そして159条1項は53条を拒絶査定不服審判に準用し、その読み替えにより、1項4号の場合の補正が17条の2第3項から6項までに違反していると特許をすべき旨の審決の謄本の送達前に認められたときは、審判官は決定をもってその補正を却下しなければならない。審査済みの発明と単一性のない別の発明に差し替える補正を許すと審査の結果が無駄になるため、4項違反の補正は却下して補正前の内容で審理する仕組みである。本枝は、この要件と効果をそのまま述べており、条文のとおりである。

前項に規定するもののほか、第一項各号に掲げる場合において特許請求の範囲について補正をするときは、その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、第三十七条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。
誤り。違うのは「東京高等裁判所に、補正の却下の決定に対する訴えを提起することができる」の部分である。159条1項で準用する53条3項により補正の却下の決定には独立の不服申立てができず、審決に対する訴えの中で争う。
53条3項は、補正の却下の決定に対しては不服を申し立てることができないと定め、ただし書で、拒絶査定不服審判を請求した場合における審判においてはこの限りでないとする。159条1項はこの53条を拒絶査定不服審判に準用するので、審判請求と同時にした補正が新規事項の追加を理由に審判で却下されたときも、その却下の決定だけを取り出して争うことはできない。補正の却下は出願の審理の途中の判断であり、これを独立に争わせると審理が止まるため、終局の判断である審決にまとめて争わせる仕組みである。178条1項が訴えの対象として挙げるのも取消決定又は審決と、特許異議申立書・審判若しくは再審の請求書・訂正の請求書の却下の決定であって、補正の却下の決定は入っていない。審判請求人が補正の却下に不服であれば、審決がされた後に審決に対する訴えを東京高等裁判所に提起し、その中で却下の当否を主張することになる。

第一項の規定による却下の決定に対しては、不服を申し立てることができない。ただし、拒絶査定不服審判を請求した場合における審判においては、この限りでない。
正しい。審判請求と同時の補正が17条の2第3項に違反するときは159条1項で準用する53条により決定で却下され、拒絶の理由が査定と同じなら159条2項で準用する50条ただし書により意見書の機会なしに不成立の審決ができる。
159条1項は53条を拒絶査定不服審判に準用し、17条の2第1項4号の場合、すなわち審判請求と同時にした補正が17条の2第3項から6項までに違反すると認められたときは、決定をもってその補正を却下しなければならないとする。却下は決定で行われ、却下の前に意見書を求める定めはない。却下された後は補正前の明細書等で審理が続き、査定の理由がそのまま残っていれば、159条2項が準用する50条ただし書の読み替えにより、17条の2第1項4号の場合に53条1項の却下の決定をするときは拒絶の理由の通知を要しないので、審判長は意見書を提出する機会を与えずに請求は成り立たない旨の審決をすることができる。意見書の機会が要るのは、159条2項本文のとおり査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合である。補正が新規事項の追加であり、かつ却下後の内容が査定の理由を解消していない場合には、枝のとおり意見書の機会なしに補正の却下と不成立の審決がされることがある。

第五十三条の規定は、拒絶査定不服審判に準用する。この場合において、第五十三条第一項中「第十七条の二第一項第一号又は第三号」とあるのは「第十七条の二第一項第一号、第三号又は第四号」と、「補正が」とあるのは「補正(同項第一号又は第三号に掲げる場合にあつては、拒絶査定不服審判の請求前にしたものを除く。)が」と読み替えるものとする。
誤り。違うのは「この補正が却下されることはない」の部分である。159条1項で準用する53条1項により、最後の拒絶理由通知に対する補正は明細書又は図面だけの補正であっても、17条の2第3項(新規事項の追加)に違反すれば決定をもって却下される。
53条1項は、17条の2第1項1号又は3号に掲げる場合において、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が17条の2第3項から6項までの規定に違反しているものと認められたときは、審査官は決定をもってその補正を却下しなければならないと定め、159条1項はこれを拒絶査定不服審判に準用して、同項1号・3号・4号の場合に読み替えている。却下の対象は特許請求の範囲の補正に限られておらず、明細書又は図面の補正であっても対象である。5項の目的の制限は特許請求の範囲についての補正だけに働くが、3項の新規事項の追加の禁止は明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての補正に及ぶから、最後の拒絶理由通知に応じて明細書に当初明細書等にない事項を書き加えれば、特許請求の範囲に手を付けていなくても3項違反として却下される。

第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて第五十条の二の規定による通知をした場合に限る。)において、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項から第六項までの規定に違反しているものと特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。
誤り。違うのは「発明特定事項イを削除する補正は却下されることはない」の部分である。最後の拒絶理由通知後の特許請求の範囲の補正は17条の2第5項各号の目的に限られ、発明特定事項を削除して特許請求の範囲を広げる補正はいずれの目的にもあたらず、53条1項で却下される。
17条の2第5項は、最後の拒絶理由通知で指定された期間内に特許請求の範囲についてする補正を、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに限ると定め、53条1項はこれに違反する補正を決定をもって却下するとする。最初の拒絶理由通知に対する補正で発明特定事項イ及びロを追加して減縮した以上、審査官はその補正後の特許請求の範囲について審査をやり直しており、最後の拒絶理由通知の後にまた広げる補正を許せば審査のやり直しが際限なく続く。5項は既にされた審査の結果を活かせる範囲でだけ補正を認めている。発明特定事項イを削除する補正は、イの追加が新規事項にあたるという拒絶理由を解消するものではあるが、補正後の特許請求の範囲は補正前より広くなるので減縮ではなく、誤記の訂正や明りょうでない記載の釈明でもない。5項違反の補正であるから、却下されることはないとはいえない。

前二項に規定するもののほか、第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶理由通知と併せて第五十条の二の規定による通知を受けた場合に限る。)において特許請求の範囲についてする補正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
正しい。請求項の削除は最後の拒絶理由通知の後も認められる補正であり(17条の2第5項1号)、独立特許要件は減縮の場合にしか課されないので、補正は却下されず、拒絶の理由が残れば拒絶をすべき旨の査定がされる。
17条の2第5項は、最後の拒絶理由通知を受けた後に特許請求の範囲についてする補正は、1号の請求項の削除、2号の特許請求の範囲の減縮、3号の誤記の訂正、4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに限ると定め、6項は、2号の減縮の場合に限って126条7項の独立特許要件を準用する。請求項を削除するだけの補正は審査の対象を減らすだけで審査官の負担を増やさないから、削除後に残る請求項が特許を受けられるかどうかを補正の適否の段階で問わないのである。したがって枝の補正は3項から6項までのいずれにも違反せず、53条1項の却下の対象にならない。残った請求項について進歩性の拒絶の理由が解消されていなければ、審査官は49条2号により拒絶をすべき旨の査定をする。却下されずに査定に進むという枝の流れは条文のとおりであり正しい。枝ハの明細書のみの補正と同じく、却下の有無は補正の要件違反だけで決まる。

第百二十六条第七項の規定は、前項第二号の場合に準用する。
誤り。違うのは「拒絶の理由が解消されていないと審査官が認めた場合、この補正は却下される」の部分である。53条1項の却下は補正が17条の2第3項から6項までに違反する場合に限られ、拒絶の理由が解消しないことは却下の理由ではない。
53条1項は、最後の拒絶理由通知を受けた場合などに明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が17条の2第3項から6項までの規定に違反しているものと認められたときは、審査官は決定をもってその補正を却下しなければならないと定める。却下の理由はこの四つの項の違反に限られ、3項は新規事項の追加の禁止、4項は発明の特別な技術的特徴の変更の禁止、5項は目的の制限、6項は減縮の場合の独立特許要件である。このうち4項から6項までは特許請求の範囲についてする補正の要件であるから、明細書のみについてする補正に課される要件は3項だけであり、枝の補正は3項を満たしている以上、却下の理由がない。補正と意見書によっても拒絶の理由が解消されていないと審査官が認めたときは、補正後の明細書等を前提に49条により拒絶をすべき旨の査定がされるのであって、補正そのものが却下されるのではない。

第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて第五十条の二の規定による通知をした場合に限る。)において、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項から第六項までの規定に違反しているものと特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。
誤り。違うのは「特許庁長官を被告としなければならない」の部分である。63条2項で読み替えて準用する特許法179条ただし書により、取消審判の審決に対する訴えでは審判の請求人又は被請求人を被告とする。
63条1項は、取消決定又は審決に対する訴えを東京高等裁判所の専属管轄とし、2項は特許法179条を準用して、同条中「特許無効審判若しくは延長登録無効審判」とあるのを「商標法第四十六条第一項、第五十条第一項、第五十一条第一項、第五十二条の二第一項、第五十三条第一項若しくは第五十三条の二の審判」と読み替える。特許法179条は、審決に対する訴えでは特許庁長官を被告とするのを原則としつつ、ただし書で当事者系の審判の審決については審判の請求人又は被請求人を被告としなければならないとする。査定系では特許庁長官が被告になるが、無効審判や取消審判は請求人と商標権者が対立する当事者系であり、裁判所で争う相手方も審判の相手方とするのが構造に合う。東京高等裁判所の専属管轄である点は枝のとおりであるが、被告は審判の請求人又は被請求人である。

前条第一項の訴えにおいては、特許庁長官を被告としなければならない。ただし、特許無効審判若しくは延長登録無効審判又はこれらの審判の確定審決に対する第百七十一条第一項の再審の審決に対するものにあつては、その審判又は再審の請求人又は被請求人を被告としなければならない。
誤り。違うのは「当該補正が却下される場合がある」の部分である。53条1項の却下は17条の2第3項から6項までの規定に違反する補正に限られ、枝の補正はその全部を満たしているから却下の根拠がない。
53条1項は、最後の拒絶理由通知を受けた後にした明細書、特許請求の範囲又は図面の補正が17条の2第3項から第6項までの規定に違反していると特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は決定をもってその補正を却下しなければならないと定める。却下の事由はこの4つの項に限られており、審査官の裁量で広げることはできない。最後の拒絶理由通知の後は審査がほぼ尽くされているので、新規事項の追加、別発明への変更、目的外の補正、独立して特許を受けられない減縮だけを排して、再度の審査の負担を抑えるという理屈である。枝の補正は、当初の明細書等の範囲内で(3項)、4項を満たし、発明特定事項を限定し課題と利用分野が同一の減縮であり(5項2号)、補正後の発明が独立して特許を受けることができる(6項が準用する126条7項)とされているから、却下すべき事由がどこにもなく、却下される場合があるとはいえない。

第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて第五十条の二の規定による通知をした場合に限る。)において、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項から第六項までの規定に違反しているものと特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。
誤り。違うのは「拒絶査定不服審判の請求前にされた補正が、特許法第17条の2第4項の規定(いわゆる技術的特徴の異なる別発明への補正の禁止)に違反しているものと認められたときは、審査官は、決定をもってその補正を却下しなければならない」の部分である。前置審査で却下できるのは審判の請求と同時にした補正であり、請求前の補正は除かれる。
163条1項は、前置審査に53条を準用し、その際に53条1項の「補正が」を「補正(同項第一号又は第三号に掲げる場合にあつては、拒絶査定不服審判の請求前にしたものを除く。)が」と読み替える。つまり前置審査の審査官が決定で却下できるのは、17条の2第1項4号の審判の請求と同時にした補正であり、最後の拒絶理由通知の後などに審判の請求前にした補正は却下の対象から外れる。請求前の補正は審査段階で審査官が見ており、却下すべきであれば既に却下されているか、却下されずに査定に至った以上はそのまま審判の審理の対象にするのが筋であって、前置審査で改めて蒸し返す必要がないという理屈である。枝は請求前にされた補正を審査官が却下しなければならないとしており、読替え後の53条1項の括弧書に反する。なお前置審査の審査官は、特許をすべき旨の査定をする場合を除いて却下の決定をしてはならない(164条2項)。

第四十八条、第五十三条及び第五十四条の規定は、前条の規定による審査に準用する。この場合において、第五十三条第一項中「第十七条の二第一項第一号又は第三号」とあるのは「第十七条の二第一項第一号、第三号又は第四号」と、「補正が」とあるのは「補正(同項第一号又は第三号に掲げる場合にあつては、拒絶査定不服審判の請求前にしたものを除く。)が」と読み替えるものとする。
誤り。違うのは「審査官は、請求人に対し、相当の期間を指定して、その審判請求書について補正をすべきことを命じなければならない」の部分である。審判請求書の方式違反について補正を命ずるのは133条1項の審判長であり、前置審査の審査官にその権限は準用されていない。
133条1項は、審判長は、請求書が131条の規定に違反しているときは、請求人に対し相当の期間を指定して請求書について補正をすべきことを命じなければならないと定める。請求の趣旨及びその理由は131条1項3号の必要的記載事項なので、その記載が無い請求書は補正命令の対象になるが、命ずる主体は審判長である。前置審査の審査官に準用されるのは、163条1項の48条、53条、54条、同条2項の50条、50条の2、同条3項の51条、52条に限られ、審判請求書の方式を扱う133条は含まれていない。前置審査は審判の請求に係る特許出願の内容を審査官に見させる手続であり、審判の請求そのものが適式かどうかは審判手続の問題として審判長が扱うという役割分担である。審判請求書の不備は、前置審査に付される前後を問わず審判長が補正を命じ、補正が無ければ133条3項により決定で請求書を却下する。

審判長は、請求書が第百三十一条の規定に違反しているときは、請求人に対し、相当の期間を指定して、請求書について補正をすべきことを命じなければならない。
誤り。違うのは「決定をもってその補正を却下しなければならない」の部分である。17条の2第6項が独立特許要件を課すのは5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正だけで、誤記の訂正のみを目的とする補正には及ばない。
17条の2第6項は、126条7項の規定は前項第2号の場合に準用すると定める。126条7項は、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないという独立特許要件であり、これが準用されるのは5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に限られる。減縮の補正は請求項の内容を実質的に変えて審査をやり直させるから、補正後の発明がそのまま特許になり得るものに限って認める趣旨であり、記載の誤りを本来の意味に直すだけの誤記の訂正には独立特許要件は課されない。53条1項は、最後の拒絶理由通知の後の補正が17条の2第3項から6項までの規定に違反するときに決定をもって却下しなければならないと定めるが、誤記の訂正のみを目的とする補正は6項の適用対象でないから、独立特許要件を理由に却下されることはない。本枝は、6項の対象を誤記の訂正にまで広げている点が条文と食い違う。

第百二十六条第七項の規定は、前項第二号の場合に準用する。
誤り。違うのは「その補正後の特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない」の部分である。最後の拒絶理由通知の後の補正が17条の2第6項の独立特許要件に違反するときは、53条1項により審査官は決定をもってその補正を却下しなければならない。
53条1項は、最後の拒絶理由通知の指定期間内などにした明細書、特許請求の範囲又は図面の補正が17条の2第3項から6項までの規定に違反しているものと特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は決定をもってその補正を却下しなければならないと定める。17条の2第6項の独立特許要件は、最後の拒絶理由通知の後の減縮の補正について、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとする要件であり、これに違反する補正は3項から6項までの違反として53条1項の却下の対象になる。独立特許要件の違反は49条の拒絶の理由に挙げられていないから、審査官はそれを理由に拒絶査定をするのではなく、補正を却下して補正前の出願について審査を続け、拒絶の理由が解消していなければ拒絶査定をする。本枝は、却下の決定によるべきところを補正後の出願に対する拒絶査定にすり替えている点が条文と食い違う。

第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて第五十条の二の規定による通知をした場合に限る。)において、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項から第六項までの規定に違反しているものと特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。
誤り。違うのは「審判官は、そのことを理由としてその補正を却下する場合がある」の部分である。補正の却下の理由は17条の2第3項から6項までの違反に限られ、誤訳訂正書による補正には3項の制限が及ばず、外国語書面の範囲を超えることは49条6号の拒絶理由にとどまる。
159条1項が拒絶査定不服審判に準用する53条1項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が17条の2第3項から第6項までの規定に違反しているものと認められたときは決定をもってその補正を却下しなければならないと定める。17条の2第3項は、補正は願書に最初に添付した明細書等、外国語書面出願では翻訳文に記載した事項の範囲内でしなければならないと定めるが、冒頭で「誤訳訂正書を提出してする場合を除き」としており、誤訳訂正書による補正にはこの制限がかからない。誤訳の訂正は翻訳文を原文に合わせて直す手続だからである。その代わり、外国語書面出願の明細書等が外国語書面に記載した事項の範囲内にないことは49条6号の拒絶理由とされ、123条1項5号の無効理由にもなる。したがって外国語書面の範囲を超える誤訳訂正は却下の理由ではなく拒絶の理由であり、審判官がそのことを理由に補正を却下することはない。

その特許出願が外国語書面出願である場合において、当該特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき。
誤り。違うのは「裁判所に当該決定に対する訴えを提起することができる」の部分である。拒絶査定不服審判における補正の却下の決定には独立して不服を申し立てることができず(159条1項で準用する53条3項)、その当否は審決に対する訴えの中で争う。
53条3項は、補正の却下の決定に対しては不服を申し立てることができないと定め、ただし書で、拒絶査定不服審判を請求した場合における審判においてはこの限りでないとする。このただし書は、審査官がした却下の決定を拒絶査定不服審判の中で争えるという意味であり、審判官がした却下の決定に裁判所への訴えを認める趣旨ではない。159条1項はこの53条を拒絶査定不服審判に準用しているから、審判における補正の却下の決定にも独立の不服申立ては認められない。178条1項が東京高等裁判所の専属管轄とする訴えは、取消決定又は審決に対する訴えと、異議申立書、審判や再審の請求書、訂正の請求書の却下の決定に対する訴えであり、明細書等の補正の却下の決定はここに含まれていない。補正の却下は審判の中間的な判断であり、請求人は審決に対する訴えの中で却下の違法を主張することになる。

第一項の規定による却下の決定に対しては、不服を申し立てることができない。ただし、拒絶査定不服審判を請求した場合における審判においては、この限りでない。
誤り。違うのは「決定をもってその補正を却下し、その審査の結果を特許庁長官に報告しなければならない」の部分である。前置審査で補正を却下すれば特許査定ができるときは、審査官は却下の決定をし、拒絶査定を取り消して特許査定をする(164条1項・2項)。長官への報告は査定をしない場合の手続である(同条3項)。
164条1項は、審査官は前置審査において特許をすべき旨の査定をするときは審判の請求に係る拒絶をすべき旨の査定を取り消さなければならないと定め、同条2項は、1項に規定する場合を除き、163条1項で準用する53条1項の規定による却下の決定をしてはならないと定め、同条3項は、1項に規定する場合を除き、査定をすることなく審査の結果を特許庁長官に報告しなければならないと定める。前置審査で審査官に許されているのは特許査定だけであり、特許査定ができないときは補正の却下も拒絶査定もせずに審判に戻す。したがって、補正を却下すれば特許査定ができると判断した審査官は、却下の決定をしたうえで拒絶査定を取り消して特許査定をするのであり、審査の結果を特許庁長官に報告するのは特許査定ができない場合である。枝は特許査定ができる場合の手続に報告の手続を接ぎ木している。

審査官は、前項に規定する場合を除き、前条第一項において準用する第五十三条第一項の規定による却下の決定をしてはならない。
正しい。最後の拒絶理由通知の指定期間内にした補正が17条の2第3項から6項までに違反していると特許査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は決定をもってその補正を却下しなければならない(53条1項)。
53条1項は、17条の2第1項1号又は3号に掲げる場合において、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が同条3項から6項までの規定に違反しているものと特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は決定をもってその補正を却下しなければならないと定める。1項3号は最後の拒絶理由通知の指定期間内にする補正であり、3項は新規事項の追加の禁止であるから、最後の拒絶理由通知の後に新規事項を追加する補正をした場合は却下の対象になる。審査がほぼ終わった段階では、改めて拒絶理由を通知するより補正を却下して補正前の内容で審査を進める方が早いという考えである。却下が「されることがある」のは、違反が特許査定の謄本の送達前に認められることが要件であり、気付かれずに特許された場合には123条1項1号の無効理由として扱われるからである。枝は条文のとおりである。

第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて第五十条の二の規定による通知をした場合に限る。)において、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項から第六項までの規定に違反しているものと特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。
正しい。最後の拒絶理由通知の後の特許請求の範囲の減縮は、補正前後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られ(17条の2第5項2号)、これを満たさない補正は53条1項により却下されることがある。
17条の2第5項は、1項1号(50条の2の通知を併せて受けた場合)、3号及び4号の場合において特許請求の範囲についてする補正は、各号に掲げる事項を目的とするものに限ると定め、2号は、特許請求の範囲の減縮について、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、補正前の当該請求項に記載された発明と補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限るとかっこ書で絞る。それまでの審査の結果を生かすため、審査の対象を大きく変えない補正しか認めないという考えである。そして53条1項は、1項3号の場合の補正が3項から6項までに違反するときは審査官が決定をもって却下しなければならないと定めるので、利用分野又は課題が同一でない減縮は5項2号に違反する補正として却下の対象になる。枝は条文のとおりである。

特許請求の範囲の減縮(第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)
正しい。17条の2第3項に違反する補正は49条1号の拒絶理由であり、50条本文により拒絶査定の前に拒絶理由を通知して意見書を提出する機会を与えなければならず、ただし書で53条1項の却下の決定をする場合も既に通知した拒絶理由で査定するから、意見書の機会なしに拒絶査定がされることはない。
49条1号は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が17条の2第3項又は4項の要件を満たしていないときを拒絶の理由とし、50条本文は、審査官は拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは特許出願人に拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと定める。50条ただし書は、最初の拒絶理由通知に併せて50条の2の通知をした場合又は最後の拒絶理由通知の後にした補正について53条1項の却下の決定をするときは通知を要しないとするが、これは新規事項を含む補正を決定で却下したうえで、補正前の内容について既に通知してある拒絶理由により査定する場面であり、意見書の機会はその拒絶理由について与えられている。いずれの道でも、意見書を提出する機会を一度も与えずに拒絶査定がされることはない。

審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
1審査において必要があると認めるときは、特許異議の申立てについての決定若しくは審決が確定し、又は訴訟手続が完結するまでその手続を中止することができる。
2訴えの提起又は仮差押命令若しくは仮処分命令の申立てがあつた場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、査定が確定するまでその訴訟手続を中止することができる。
誤り。違うのは「特許出願Bの出願人からの申立てがなければ、当該審判の審決が確定するまで特許出願Bの審査が中止されることはない」の部分である。54条1項の審査の中止は審査官が必要があると認めるときに職権でするものであり、申立てを要しない。
54条1項は、審査において必要があると認めるときは、特許異議の申立てについての決定若しくは審決が確定し、又は訴訟手続が完結するまでその手続を中止することができると定める。出願Aを分割した出願Bの審査は、出願Aの特許請求の範囲がどう確定するかによって39条の先後願や分割の適法性の判断が左右されることがあり、出願Aの拒絶査定不服審判の結論を待った方が手戻りのない審査ができる場合がある。この中止は審査官が審査の必要に応じて判断するものとして定められており、出願人の申立てを要件にしていない。したがって出願Bの出願人から申立てがなくても、審査官が必要があると認めれば審決の確定まで出願Bの審査は中止され得る。本枝は申立てがなければ中止されることはないと断じており、職権による中止を見落としている。なお同条2項の裁判所による訴訟手続の中止も、裁判所が必要があると認めるときにするものである。

審査において必要があると認めるときは、特許異議の申立てについての決定若しくは審決が確定し、又は訴訟手続が完結するまでその手続を中止することができる。
正しい。54条1項により、審査において必要があると認めるときは、審決が確定するまでその手続を中止することができ、分割出願Bの審査で原出願Aの拒絶査定不服審判の審決の確定を待つことができる。
44条1項1号は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内に分割できると定め、17条の2第1項4号により拒絶査定不服審判の請求と同時に補正ができるから、審判の請求時に出願Aの一部を新たな出願Bとすることができる。そして54条1項は、審査において必要があると認めるときは、特許異議の申立てについての決定若しくは審決が確定し、又は訴訟手続が完結するまでその手続を中止することができると定める。出願Bは44条2項により出願Aの時にしたものとみなされ、両出願は同じ明細書に由来する発明を含むから、出願Aの審判で引用文献の評価などがどう判断されるかは出願Bの審査の結論に影響し得る。審判と食い違う結論を先に出すより、審決の確定を待って整合のとれた判断をする方が合理的な場合があるため、審査官に中止の裁量が与えられている。本枝は、この54条1項の場面をそのまま述べており、条文のとおりである。

審査において必要があると認めるときは、特許異議の申立てについての決定若しくは審決が確定し、又は訴訟手続が完結するまでその手続を中止することができる。
正しい。54条2項は、訴えの提起又は仮差押命令若しくは仮処分命令の申立てがあった場合に、裁判所は必要があると認めるときは査定が確定するまでその訴訟手続を中止することができると定め、拒絶査定の謄本の送達後でも確定前であれば中止できる。
54条2項は、訴えの提起又は仮差押命令若しくは仮処分命令の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、裁判所は査定が確定するまでその訴訟手続を中止することができると定める。乙の製造方法が甲の特許権に係る製造方法と同一かどうかは、乙の出願が特許されるか拒絶されるかという特許庁の判断と密接にかかわるので、裁判所が先に判断して特許庁の結論と食い違うことを避けるため、裁判所に中止の裁量を与えたものである。中止できる期間の終わりは査定の確定である。拒絶をすべき旨の査定の謄本が送達されただけでは、乙はまだ拒絶査定不服審判を請求して争うことができ、査定は確定していないから、裁判所は必要があると認めればその確定まで仮処分の手続を中止することができる。1項は逆に特許庁が審査を中止できる場合を定める。

訴えの提起又は仮差押命令若しくは仮処分命令の申立てがあつた場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、査定が確定するまでその訴訟手続を中止することができる。
| 項 | 中止する者 | いつまで |
|---|---|---|
| 1項 | 特許庁(審査) | 特許異議の申立てについての決定若しくは審決が確定し、又は訴訟手続が完結するまで |
| 2項 | 裁判所(訴え・仮差押え・仮処分) | 査定が確定するまで |
誤り。違うのは「審査官は、請求人に対し、相当の期間を指定して、その審判請求書について補正をすべきことを命じなければならない」の部分である。審判請求書の方式違反について補正を命ずるのは133条1項の審判長であり、前置審査の審査官にその権限は準用されていない。
133条1項は、審判長は、請求書が131条の規定に違反しているときは、請求人に対し相当の期間を指定して請求書について補正をすべきことを命じなければならないと定める。請求の趣旨及びその理由は131条1項3号の必要的記載事項なので、その記載が無い請求書は補正命令の対象になるが、命ずる主体は審判長である。前置審査の審査官に準用されるのは、163条1項の48条、53条、54条、同条2項の50条、50条の2、同条3項の51条、52条に限られ、審判請求書の方式を扱う133条は含まれていない。前置審査は審判の請求に係る特許出願の内容を審査官に見させる手続であり、審判の請求そのものが適式かどうかは審判手続の問題として審判長が扱うという役割分担である。審判請求書の不備は、前置審査に付される前後を問わず審判長が補正を命じ、補正が無ければ133条3項により決定で請求書を却下する。

審判長は、請求書が第百三十一条の規定に違反しているときは、請求人に対し、相当の期間を指定して、請求書について補正をすべきことを命じなければならない。
誤り。違うのは「その手続を中止することはできない」の部分である。163条1項は前置審査に54条を準用しており、必要があると認めるときは特許異議の申立てについての決定若しくは審決が確定し、又は訴訟手続が完結するまで手続を中止することができる。
163条1項は、48条、53条及び54条の規定を162条の規定による審査、すなわち前置審査に準用すると定める。54条1項は、審査において必要があると認めるときは、特許異議の申立てについての決定若しくは審決が確定し、又は訴訟手続が完結するまでその手続を中止することができると定めるから、前置審査でも同じ中止ができる。前置審査は、拒絶査定不服審判の請求と同時に補正があった場合に、審判の合議体に先立って原査定をした審査官に補正後の出願を再審査させる手続であり、審査の延長にあたる。関連する特許異議の申立てや訴訟の結論を待ってから判断するほうが適切な場合に、通常の審査と同じく手続を中止できなければ、前置審査だけが結論を急ぐことになって整合しない。枝は、必要があると認められるときであっても中止できないとしており、準用された54条1項と逆である。審判についても168条1項が同じ趣旨の中止を定めている。

審査において必要があると認めるときは、特許異議の申立てについての決定若しくは審決が確定し、又は訴訟手続が完結するまでその手続を中止することができる。
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