特許権又は専用実施権を侵害した者(第百一条の規定により特許権又は専用実施権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)は、十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
この条文が問われた枝 7問
誤り。違うのは「刑事罰が課されることはない」の部分である。実用新案法56条の侵害の罪は特許法196条のようにみなし侵害を行った者を除くかっこ書を置いておらず、28条のみなし侵害を行った者も56条で処罰される。
実用新案法56条は、実用新案権又は専用実施権を侵害した者は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定め、同法28条は、登録実用新案に係る物品の製造にのみ用いる物の生産や譲渡等、課題の解決に不可欠な物を知りながら業として生産や譲渡等をする行為、物品を譲渡等又は輸出のために所持する行為を、実用新案権又は専用実施権を侵害するものとみなすと定める。特許法では196条がかっこ書で101条のみなし侵害を行った者を除き、196条の2がその者を別に5年以下の拘禁刑等に処する二段構えになっているが、これは直接侵害の法定刑を10年以下に引き上げた際にみなし侵害との刑の均衡を図ったものである。実用新案法では直接侵害の法定刑がもともと5年以下であるため56条にかっこ書を置く必要がなく、28条により侵害とみなされる行為を行った者もそのまま56条の侵害した者として処罰される。本枝は、実用新案のみなし侵害には刑事罰がないとしており、条文の構造と食い違う。

実用新案権又は専用実施権を侵害した者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
| 特許 | 実用新案 | |
|---|---|---|
| 直接侵害 | 10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、又は併科(196条) | 5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又は併科(56条) |
| みなし侵害 | 196条から除かれ、196条の2で5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又は併科 | 56条にかっこ書がなく、28条のみなし侵害も56条で同じ刑 |
誤り。違うのは「宣誓を拒むことができない」の部分である。151条が準用する民事訴訟法201条4項により、配偶者の関係にあった者に著しい利害関係のある事項について尋問を受ける証人は宣誓を拒むことができる。
151条は、特許無効審判の証拠調べに民事訴訟法の証人尋問の規定を準用しており、同法201条4項は、証人が自己又は自己と同法196条に規定する関係にある者に著しい利害関係のある事項について尋問を受けるときは宣誓を拒むことができると定める。196条が挙げる関係は、配偶者、四親等内の血族若しくは三親等内の姻族の関係にあり又はあったこと、及び後見人と被後見人の関係にあることである。近い身内の利害に直結する事項では、宣誓の上で真実を述べる義務と身内をかばいたい気持ちとの板挟みになり、偽証の罪に問われる危険にさらすのは酷であるから、宣誓だけを拒んで証言は宣誓なしでさせる仕組みである。離婚した元配偶者は、配偶者の関係にあった者として196条の関係に含まれる。したがって、元配偶者に著しい利害関係のある事項について尋問を受ける証人は宣誓を拒むことができ、拒むことができないとする枝はずれている。

証人が自己又は自己と前条に規定する関係にある者に著しい利害関係のある事項について尋問を受けるときは、宣誓を拒むことができる。
誤り。違うのは「侵害する行為とみなされる行為を行った者に対する懲役刑及び罰金額の上限と同じである」の部分である。直接侵害は10年以下・1000万円以下(196条)、101条のみなし侵害は5年以下・500万円以下(196条の2)で、上限が異なる。
196条は、特許権又は専用実施権を侵害した者(101条の規定により侵害する行為とみなされる行為を行った者を除く)を10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定め、196条の2は、101条の規定により侵害する行為とみなされる行為を行った者を5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定める。平成18年改正で直接侵害の法定刑が引き上げられた際に、間接侵害は特許発明の実施そのものではなく直接侵害を誘発する前段階の行為であって違法性の程度が異なることから、別条を設けて直接侵害より軽い法定刑とされた。本枝は両者の上限が同じであるとしており、この区別を見落としている。なお201条の両罰規定では、法人に科される罰金はどちらも3億円以下で同じである。

第百一条の規定により特許権又は専用実施権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
| 罪 | 自然人 | 法人(201条) |
|---|---|---|
| 侵害の罪(196条) | 10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、又は併科 | 3億円以下の罰金 |
| みなし侵害の罪(196条の2) | 5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又は併科 | 3億円以下の罰金 |
| 詐欺の行為の罪(197条)・虚偽表示の罪(198条) | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金 | 1億円以下の罰金 |
正しい。特許権を侵害した者は196条により10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金又はその併科に処せられ、侵害と判断された製品を判決確定後に型番だけ変えて販売する行為は故意の侵害に当たり得る。出題当時は懲役であったが(令和4年改正前)、処せられることがある点は変わらない。
196条は、特許権又は専用実施権を侵害した者(101条により侵害とみなされる行為を行った者を除く)を10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金に処し又はこれを併科すると定める。特許権の侵害は民事上の差止めや損害賠償の対象になるだけでなく、故意に他人の特許発明を業として実施する行為は刑罰の対象でもあり、平成10年改正で非親告罪とされ、平成18年改正で刑の上限が引き上げられた。犯罪の成立には侵害の故意が要るが、侵害訴訟で敗訴して終局判決が確定した被告は、その製品が特許発明の技術的範囲に属することを裁判所の判断として知っているので、型番だけを変えて同一の製品を販売すれば、侵害の認識があったことを否定しにくい。型番の変更は製品の構成を変えるものではなく、特許発明の技術的範囲に属するかどうかの判断に影響しないため、販売行為は業としての譲渡として侵害に当たる。したがって刑罰に処せられることがあるとする枝は正しい。法人の業務なら201条により法人にも罰金刑が科される。

特許権又は専用実施権を侵害した者(第百一条の規定により特許権又は専用実施権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)は、十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
誤り。違うのは「特許権を侵害した者に対する罰則規定と同一の罰則規定が適用される」の部分である。101条のみなし侵害は196条のかっこ書で除かれ、196条の2が別に軽い法定刑を定めている。
196条は、特許権又は専用実施権を侵害した者を十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定めるが、かっこ書で、101条の規定により侵害する行為とみなされる行為を行った者を除いている。その者については196条の2が、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると別に定める。101条の行為は、特許発明そのものの実施ではなく、専用品の生産や譲渡、不可欠品の譲渡、譲渡目的の所持など、侵害に至る前段階の行為を侵害とみなして差止めや損害賠償の対象に取り込んだものであるから、直接侵害と同じ重さの刑罰を科すのは過剰であるとして、平成18年改正で別条を設けて法定刑を半分にした。本枝は、別条で法定刑の異なる規定が適用されることを、直接侵害と同一の罰則規定が適用されるとしている点が条文と食い違う。

第百一条の規定により特許権又は専用実施権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
誤り。違うのは「告訴がなければ公訴を提起することができない」の部分である。196条の侵害の罪には告訴を公訴提起の要件とする定めがなく、非親告罪である。
196条は、特許権又は専用実施権を侵害した者は十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定めるだけで、告訴がなければ公訴を提起することができないという定めを置いていない。特許法で親告罪とされているのは200条の3第2項の秘密保持命令違反の罪だけであり、侵害の罪は平成10年改正で告訴の要件が外されて非親告罪となった。特許権の侵害は権利者個人の財産の侵害にとどまらず、公開の代償として与えられた独占権の秩序を乱す行為であるから、権利者の意思にかかわらず国が訴追できるようにしたものである。秘密保持命令違反の罪が親告罪とされるのは、訴追によって営業秘密がかえって公になるおそれがあり、保護を受ける者の意思に委ねるのがよいからであり、侵害の罪とは事情が異なる。本枝は、親告罪である秘密保持命令違反の罪の扱いを侵害の罪に当てはめている点が条文と食い違う。

特許権又は専用実施権を侵害した者(第百一条の規定により特許権又は専用実施権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)は、十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
誤り。違うのは「特許権を侵害した者に科される法定刑の上限と同じである」の部分である。196条の直接侵害は10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金であるのに対し、196条の2の間接侵害は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金であり、上限は低い。
196条は、特許権又は専用実施権を侵害した者を10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定めるが、そのかっこ書で101条の規定により侵害する行為とみなされる行為を行った者を除いている。その者については196条の2が別に置かれ、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定める。間接侵害は特許発明の実施そのものではなく、直接侵害を誘発する蓋然性が高い行為を侵害とみなしたものであるから、民事の差止めや損害賠償では直接侵害と同じ扱いをしても、刑罰については行為の悪質さに応じて直接侵害より軽い法定刑にとどめたものである。したがって間接侵害の法定刑の上限は直接侵害の半分であり、同じではない。出題当時の刑名は懲役であったが、令和4年改正で拘禁刑に改められた。

第百一条の規定により特許権又は専用実施権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
| 行為 | 条文 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 特許権・専用実施権の侵害(直接侵害) | 196条 | 10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、又は併科 |
| 101条により侵害とみなされる行為(間接侵害) | 196条の2 | 5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又は併科 |
















