1産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
1 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
2 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
3 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明
2特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。
この条文が問われた枝 7問
誤り。違うのは「当該私信メールの送信により」3号に該当するとする部分である。公衆に利用可能となった発明とは不特定の者がアクセスして見得る状態に置かれた発明をいい、特定の個人だけに宛てた私信メールはその状態に当たらない。
29条1項3号は、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を、特許を受けることができない発明として挙げる。公衆に利用可能となったとは、不特定の者が電気通信回線を通じてアクセスし、その内容を見得る状態に置かれたことをいう。出願前に公衆が知り得た技術には独占を与えないという新規性の趣旨からすれば、基準は技術が公衆の手の届く状態に置かれたかどうかであって、送信という行為そのものではない。甲が発明イを記載した私信メールを個人の第三者である乙だけに送信しても、そのメールは乙以外の者が見得る状態に置かれていないから、公衆に利用可能となったとはいえない。乙が秘密を保つ義務を負わずに知ったのであれば同項1号の公然知られた発明には当たり得るが、本枝が問うのは3号への該当であり、送信により直ちに該当するとする点が条文と食い違う。

特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明
- 公然知られた発明(1号):秘密を保つ義務のない者に知られた発明である。人数の多少は問わない
- 公然実施をされた発明(2号):不特定の者が知り得る状況で実施された発明である
- 頒布された刊行物に記載された発明(3号前段):不特定の者が見得る状態に置かれた文書・図面に記載された発明である。現実に閲覧された事実は要らない
- 電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(3号後段):不特定の者がアクセスして見得る状態に置かれた発明である。特定の個人だけに宛てた私信は当たらない
誤り。違うのは「書籍αは特許出願Aの出願前までに閲覧されず複写もされていないから」該当しないとする部分である。頒布とは不特定の者が見得る状態に置かれることをいい、現実に閲覧や複写がされた事実は要らない。
29条1項3号は、特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明を、特許を受けることができない発明として挙げる。刊行物とは公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書や図面をいい、頒布されたとは、その刊行物が不特定の者が見得る状態に置かれたことをいう。新規性を失わせるのは技術が公衆の知り得る状態に置かれたことであって、現実に誰かが読んだかどうかは偶然にすぎないから、閲覧や複写の事実を問わない。書籍αは令和5年4月2日から公衆の自由な閲覧に供され、複写物も要求に即応して交付される態勢が整ったのであるから、4月2日に頒布された刊行物になり、最初の閲覧が同年10月1日であったことは頒布の時期を動かさない。したがって同年9月30日までにした特許出願Aの出願前に書籍αは頒布されており、発明イは頒布された刊行物に記載された発明に該当する。納本されただけの4月1日ではなく、閲覧に供された日が基準になる。

特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明
誤り。違うのは「秘密を保つ義務を有するか否かにかかわらず」の部分である。公然知られた発明に当たるかは秘密を保つ義務のない者に知られたかで決まり、知っている者の数が少ないことは理由にならない。
29条1項1号は、特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明は特許を受けることができないと定める。公然知られたとは、秘密を保つ義務を負わない者に発明の内容が知られたことをいい、守秘義務のない者が一人でも知れば、その者を通じて社会一般に伝わり得る状態になったものとして公知になる。出願前に公衆が知り得る状態に置かれた技術に独占権を与えないという新規性の趣旨からは、発明を知っている者の人数ではなく、その者が秘密を保つ義務を負うかどうかが決め手になるからである。逆に、発明者の下で研究する従業者や契約で守秘義務を負う者がいくら多く知っていても、公然知られたことにはならない。本枝は、知っている者が極めて少数であれば秘密を保つ義務の有無にかかわらず1号に該当することはないとしており、人数の多少を問わず守秘義務の有無で判断するという考え方と食い違う。

特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
- 公然知られた発明(1号):秘密を保つ義務のない者に知られた発明である。人数の多少は問わない
- 公然実施をされた発明(2号):不特定の者が知り得る状況で実施された発明である
- 頒布された刊行物に記載された発明(3号前段):不特定の者が見得る状態に置かれた文書・図面に記載された発明である。現実に閲覧された事実は要らない
- 電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(3号後段):不特定の者がアクセスして見得る状態に置かれた発明である
誤り。違うのは「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明となることにより、拒絶の理由を有する」の部分である。テレビの生放送は一方向の放送であって29条1項3号の電気通信回線に当たらず、出願Aが拒絶理由を有するのは1号の公然知られた発明によってである。
29条1項3号は、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を挙げる。電気通信回線は、インターネット上の情報を刊行物と並ぶ公知の類型として加えたもので、双方向に通信できる電気通信手段を指し、一方向にしか情報を流せない放送は含まれないと説明されている。テレビの生放送で発明の内容がすべて説明されれば不特定の視聴者がその内容を知るから、同日15時30分の出願Aにとっては出願前に公然知られた発明となり、1号によって拒絶理由を有する。新規性は出願の時を基準に判断するから、同じ日でも時刻の先後で出願前かどうかが決まる。後段について、出願Bは出願Aと同日の出願であるから39条1項の異なった日の先願には当たらず、2項の協議の問題になるという点は正しいが、前段が条文の号を取り違えており、枝は誤りである。

特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明
- 1号:公然知られた発明。不特定の者に秘密でなく知られた状態で、テレビ放送や講演による公開はここに入る
- 2号:公然実施をされた発明。内容を知り得る状況で実施された場合である
- 3号:頒布された刊行物に記載された発明、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明。電気通信回線は双方向の通信手段で、一方向の放送は含まれない
- 判断の基準時は出願の時であり、同じ日でも時刻の先後で出願前かどうかを決める
正しい。29条1項3号の電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明は、不特定の者が見得る状態に置かれたかどうかで決まり、パスワードが要るウェブページでも、不特定の者がそのパスワードを入手できるなら該当する。
29条1項3号は、特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明は特許を受けることができないと定める。この要件は、刊行物の頒布と同じく、不特定の者がアクセスして内容を見得る状態に置かれたことを問題にするものであり、現実に誰かが閲覧したことや、閲覧が無条件であることまでは求めていない。パスワードの入力が必要なウェブページであっても、申込みをすれば誰でもパスワードの付与を受けられるなど、不特定の者がそのパスワードを入手して閲覧できる状態にあれば、公衆に利用可能となったものに当たる。逆に、秘密を保つ義務を負う特定の者にだけパスワードが与えられている場合は該当しない。枝は「該当する場合がある」と述べるにとどまるので、パスワードの要否だけで判断されないという意味で正しい。有料のデータベースも同じ考え方で扱われる。

特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明
- 公然知られた発明(1号):秘密を保つ義務のない者に知られた発明である。人数の多少は問わない
- 公然実施をされた発明(2号):不特定の者が知り得る状況で実施された発明である
- 頒布された刊行物に記載された発明(3号前段):不特定の者が見得る状態に置かれた文書・図面に記載された発明である。現実に閲覧された事実は要らない
- 電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(3号後段):不特定の者がアクセスして見得る状態に置かれた発明である。有料やパスワード付きでも、誰でも条件を満たせば見られるなら該当する
誤り。違うのは「出願Cが出願Aの時にされたものとみなされることはない」の部分である。出願Cは出願Aの日から10月後なので出願Aを基礎とする国内優先権も主張でき、出願Aに記載された発明イについては41条2項により出願Aの時にされたものとみなされる。
41条1項は、特許を受けようとする者は、その特許出願が先の出願の日から1年以内にされたものでない場合などを除き、先の出願の願書に最初に添付した明細書等に記載された発明に基づいて優先権を主張することができると定め、2項は、その発明について29条や39条などの規定の適用については当該特許出願を先の出願の時にされたものとみなすとする。2項のかっこ書は、先の出願自体が優先権の主張を伴う出願であるときに、その基礎とされた出願に記載された発明を除くが、これは出願Bだけを基礎にした場合に出願Aの日まで二重にさかのぼることを防ぐものである。出願Cは出願Aの5月後の出願Bからさらに5月後、つまり出願Aの日から10月後にされているので、甲は出願Aと出願Bの双方を基礎として優先権を主張することができる。出願Aを基礎に含めれば、出願Aに記載された発明イについて出願Cは出願Aの時にされたものとみなされる。みなされないのは出願Bのみを基礎とした場合に限られ、枝はその場合だけを一般化している。

特許を受けようとする者は、次に掲げる場合を除き、その特許出願に係る発明について、その者が特許又は実用新案登録を受ける権利を有する特許出願又は実用新案登録出願であつて先にされたもの(以下「先の出願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(先の出願が外国語書面出願である場合にあつては、外国語書面)に記載された発明に基づいて優先権を主張することができる。ただし、先の出願について仮専用実施権を有する者があるときは、その特許出願の際に、その承諾を得ている場合に限る。
- 1号:後の出願が先の出願の日から1年以内でないときである。故意でなく省令期間内にした出願は除かれる(令和3年改正)
- 2号:先の出願が分割に係る新たな出願、変更に係る出願、実用新案登録に基づく特許出願であるときである
- 3号:後の出願の際に先の出願が放棄され、取り下げられ、又は却下されているときである
- 4号:後の出願の際に先の出願について査定又は審決が確定しているときである
- 5号:後の出願の際に先の出願について実用新案登録の設定の登録がされているときである
- ただし書:先の出願に仮専用実施権者があるときは、後の出願の際にその承諾を得ている場合に限る
誤り。違うのは「料金を払った者のみがアクセス可能な発明が該当する場合はない」の部分である。公衆に利用可能とは不特定の者が見得る状態に置かれたことをいい、料金を払えば誰でもアクセスできるものは不特定の者に開かれている。
29条1項3号は、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を新規性のない発明とする。刊行物の頒布が不特定の者が見得る状態に置かれたことで足りるのと同じく、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったとは、不特定の者が見得るような状態にウェブページ等が置かれたことをいい、現実に誰かが閲覧した事実は要らない。公衆とは不特定の者を指すのであって無料で見られることを意味せず、料金の支払いが条件であっても、支払う意思のある者なら誰でもアクセスできるなら特定の者に閉じた情報ではない。特許庁の審査基準も、ここでいうインターネット等に商用データベースを含めており、有料の商用データベースに掲載された発明は3号に当たる。したがって料金を払った者のみがアクセス可能な発明が該当する場合はないとする枝は、公衆を無料の公開に限って読んでいる。

特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明
- 1号 公然知られた発明:不特定の者に秘密でないものとして内容が知られた発明である
- 2号 公然実施をされた発明:不特定の者が知り得る状況で実施された発明である
- 3号 刊行物記載:不特定の者が見得る状態に置かれた刊行物に記載された発明である。現実に閲覧された事実は要らない
- 3号 電気通信回線:不特定の者が見得る状態に置かれたウェブページ等に掲載された発明である。有料の商用データベースも含む











































































































































































































































































































